精神遅滞児の注視過程について、強膜反射法を用いた眼球運動記録により検討した。被験児は、15歳6ヵ月〜17歳10ヵ月で、平均精神年齢が9歳9ヵ月の8人の精神遅滞児とし、生活年齢が遅滞児群と対応する15歳4ヵ月〜17歳8ヵ月の健常児8人と、生活年齢が遅滞児群の精神年齢に対応する8歳4ヵ月〜10歳8ヵ月の健常児8人についても検討した。被験児は、スクリーンの4隅に呈示される4つの選択図形からスクリーン中央に呈示される標準図形と同じ図形を見つけ出すように求められ(Cohen,1981)、3°、6°、12°の3つの異なる図形間距離条件で実験を行った。その結果、1)遅滞児群は健常児群に比べて、より頻繁に図形を注視する傾向があり、その平均注視時間も長かった。2)3°条件において、健常児群は試行の初期段階でターゲットを見る傾向にあったが、遅滞児群ではそのような傾向は認められなかった。3)遅滞児群は、標準図形をより頻繁に再注視していた。以上の結果から、遅滞児の有効視野は健常児よりもやや狭くなっていること、また遅滞児の短期記憶が脆弱であることが推察された。
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