出生直後からフェノバルビタールとバルプロ酸ナトリウムを内服していた重症心身障害児(てんかん合併)の4歳の事例が、てんかん発作が多発したためバルプロ酸ナトリウムの単剤療法となった直後から、食事中に頻発していた誤嚥が減少していった。事例の場合は、食物の口への取り込み、咀嚼が障害されておらず、食物摂取時において「むせ」「せき込み」の症状が主であったため、主治医は事例の食物摂取時の状態を「誤嚥を起こしている状態」と判断した。これらのことから、筆頭著者らは食事中の誤嚥とフェノバルビタールには何らかの関係があるのではないかと仮説を立て、11か月間の事例のフェノバルビタールの内服量、10日あたりの誤嚥数((1)学園、(2)家庭)を調査したところ、それらの相関関係を認めた。フェノバルビタールが誤嚥の原因であるということは、1)時間的先行性、2)フェノバルビタールの内服量、10日あたりの誤嚥数の両変数間の相関の強さ、3)関連の整合性の3つの観点から示された。このことから重症心身障害で誤嚥のある子ども(てんかん合併)がフェノバルビタールを内服している場合、食事内容や食事摂取時の姿勢、また、呼吸、口腔機能、嚥下運動に問題のない状態、特にてんかん発作が抑制されている場合でも誤嚥が頻発する場合には、フェノバルビタールからの薬理作用を検討してみる必要があることが示唆された。
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