特殊教育学研究
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42 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 太田 真紀, 長澤 泰子
    原稿種別: 本文
    2004 年 42 巻 4 号 p. 259-270
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、学齢期における吃音児の自尊感情の発達の把握および自尊感情とコミュニケーション能力の自己知覚との関係の検討である。対象者は小学3年〜6年までの非吃音児1,421名とことばの教室で通級指導を受ける吃音児171名であった。対象児には自尊感情尺度(42項目)とコミュニケーション能力の自己知覚尺度(19項目)を実施した。分析の結果、以下の3点が明らかになった。(1)吃音児群と非吃音児群の自尊感情得点に有意な差はなく、両群の自尊感情得点はともに学年が上がるにつれ低下していた。(2)吃音児の自尊感情因子には非吃音児と同じ自尊感情因子に加え、家族受容因子がみられた。(3)自尊感情得点と得点コミュニケーション能力の自己知覚は、両群の全学年において有意な正の相関関係がみられた。しかし、非吃音児群の6年生における相関係数は同群の3年生〜5年生および吃音児群の3年生〜6年生の相関係数より有意に小さかった。
  • 宇野 宏幸, 高見 里美, 小谷 裕実, 渡邊 裕貴
    原稿種別: 本文
    2004 年 42 巻 4 号 p. 271-281
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    近年、障害児を対象に認知トレーニングの試みがなされつつある。本研究では、徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん症候群をもち、視空間機能と注意に問題を呈する子どもを対象にPay Attention!による注意力トレーニングを実施し、その効果を注意、認知(記憶)ならびに日常生活レベル(地誌課題)で評価した。トレーニングでは、セッション進行に伴いエラー率は低下し、再トレーニング時にもその効果は維持されていた。視覚的な選択的注意能力の向上が認められる一方で、視覚と聴覚両方への注意力は低下していた。特に、誰が何をしていたなど具体的・叙述的な視覚記憶の成績上昇が認められた。地誌課題では、風景の再認成績の向上があった一方で、方向選択や道順記憶の正答率に変化はなかった。以上の結果は、トレーニングの効果として、視覚刺激の入力段階での改善が認められ、その効果が課題選択的であることを示唆する。
  • 谷口 明子
    原稿種別: 本文
    2004 年 42 巻 4 号 p. 283-291
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    入院児への学校教育導入の推進に伴い、入院児の心理理解の必要性が高まっている。本研究の目的は、病弱教育における子ども理解の一環として、入院児の不安の構造と類型を明らかにすることである。入院という状況下の不安を測定する42項目から成る質問紙を作成し、小学校4年生から高校3年生までの157名の入院児を対象に調査を施行した。その結果、入院児の不安が「将来への不安」「孤独感」「治療恐怖」「入院生活不適応感」「とり残される焦り」の5つの下位構造を有し、さらに入院児が3つの不安の類型に分かれることが明らかになった。性差、入院回数、入院期間、罹病期間、発達段階の子どもの属性と不安の構造との関連を検討した結果、女子のほうがより強い「不安」と「孤独感」をもち、発達段階が高いほうが「将来への不安」「入院生活不適応感」をより多く抱いていることが示され、指導にあたって留意すべき点も示唆された。
  • 森本 茂資, 橋本 俊顕, 高原 光恵
    原稿種別: 本文
    2004 年 42 巻 4 号 p. 293-301
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、ソトス症候群男児について家庭療育を行い、言語獲得を目指した療育の効果とその要因について検討した。幼児期における過成長、発達遅滞等のソトス症候群の特徴と本児の実態から設定した4領域の課題遊びを通して、本児の共同注意行動を高めるために足場作り方略を用いた指導を行い、言語獲得を目指した。その結果、共同注意行動と言語発達の間に関連性が認められ、課題場面での発達、共同注意行動、言語発達面、生活場面での発達における相補う関係も示された。適切な足場作り方略を課題遊びに用いたことで共同注意行動が高まり、本児の言語発達が促進されたということが示唆された。
  • 岡澤 慎一, 川住 隆一
    原稿種別: 本文
    2004 年 42 巻 4 号 p. 303-315
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    重症心身障害者間でのコミュニケーションの促進を目的に、運動障害が重く発信手段が著しく限られているものの、個別的に対応すれば日常会話や状況の変化がおおむね受信可能な者5名を対象として、話し合い活動の場を設定した。かかわり手は、話し合い活動に参加し、重症者間の「通訳」、話し合いの司会、および一参加者としての話題提示の役割を担った。特に「通訳」とは、対象者の発信を明瞭にして他の対象者に伝えたり発信内容を確定する過程を含むものである。経過のなかで、対象者からの自発的な話題提示の割合や、他者の発信に対する感想や意見のための発信の割合などに増加する傾向がみられ、また対象者間での相互理解が促進されつつある。以上の結果より、対象者の変化にかかわった諸条件、重症者間における「通訳」を含めたかかわり手のあり方、話し合い活動の場における対象者個々の特徴について考察した。
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