アラブ首長国連邦 (UAE) は極乾燥地に属し, 年平均雨量は100mm以下でしかも年変動がかなり大きい。したがって, UAEの農業は井戸水などによる潅がいに依存しているが, 無計画な農業開発は貴重な水資源の枯渇を招くおそれもあり, 灌がい水の有効利用のためには圃場に於ける水収支の研究が非常に重要である。本研究は (1) 灌がい頻度がアルファルファの蒸散速度や葉温の日変化及び季節変化に及ぼす影響, (2) これらの因子がアルファルファの生長に及ぼす影響, 及び (3) 気象因子がアルファルファの蒸散速度に及ぼす影響などを検討するために行った。
ポロメータを用いてアルファルファの蒸散速度及び葉温の日変化及び季節変化を1988年4月, 8月, 11月及び1989年1月に測定した。毎日灌水する高頻度潅がい (F) 区及び2日に1日灌水する対照 (N) 区の2つの区を設定した。灌水頻度が蒸散速度及び葉温に及ぼす影響は11月や1月の比較的寒い時期よりも, 4月や8月の暑い時期の方が大きかった。F区とN区の差は, N区の灌がいをしない日に大きく, 4月と8月におけるN区の蒸散速度はF区のそれよりも小さかった。葉温はN区よりもF区の方が低く, 両区の最大葉温差は4月及び8月にそれぞれ4℃及び6℃であった。アルファルファの草丈及び乾物収量は, 両区における蒸散速度や葉温の違いを反映してF区のほうがN区よりともに10%ずつ高かった。
灌がいしない日におけるN区の推定蒸散量 (TRn) はF区のそれ (TRf) よりも少なく, TRnとTRfの比は4月, 8月, 11月及び1月についてそれぞれ77%, 72%, 70%及び92%であった。
F区の測定データを用いて蒸散速度と光量子量 (QU), 飽差 (VPD), 相対湿度 (RH), 葉温 (LT), ポロメータチェンバー温度 (CT) との相関を調べた結果, QUとの相関が最も高いことがわかった。また, 光強度を変えて蒸散速度を測定した別の実験でも両因子問に高い相関関係がみられた。さらに, 重回帰分析により上記因子による蒸散速度の予測モデルを検討した。各月のデータについては, かなり高い相関が認められたが, それぞれの同帰係数については季節により違いがみられた。
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