日本緑化工学会誌
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35 巻, 3 号
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特集
  • 「第40 回日本緑化工学会大会研究集会」開催の趣旨と概要
    福永 健司
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 411-412
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    「外来生物法」の施行,「特定外来生物」の指定,それに伴う「要注意外来生物」とその中で特別に取り上げられた「別途総合的な検討を進める緑化植物」のリスト公表,「第三次生物多様性国家戦略」の策定など,法面緑化をとりまく情勢は急変している。そのため,従来からの法面保護を主目的とし,外来草本類や外国産在来植物を多用する法面緑化手法のみでは対応が困難になった。特に緑化植物は,導入可能な在来植物を増やす必要があるのと同時に,その繁殖材料の産地まで問われる状況になった。しかし,地域性種苗の調達,検査基準やモニタリング・長期的管理などに関して整備が遅れているために,現場では対応に苦慮し,一時期混乱が生じた。
    そこで本学会では,生物多様性保全に配慮した法面緑化の理解と推進のため,2002 年に「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提言」3)を社会に発信したが,現場での具体的な対応策については今後の課題とされている部分が多い内容であった。
    このようなことから,斜面緑化研究部会は,2004 年に「のり面における自然回復緑化の基本的な考え方のとりまとめ」4)を発表した。また,環境省,国土交通省,農林水産省,林野庁の法面緑化に関連する4 省庁でも,亀山章座長の下,2005~2006 年度に“ 別途総合的な検討を進める緑化植物”とそれに準じる外来緑化植物や外国産在来緑化植物も対象として,緑化植物の取り扱い方についての合同調査を行い検討を行った1,2)
    その検討結果も受け,研究部会では,より具体的なガイドラインづくりを目指すべく,自然回復を目的とする切土法面緑化の現場で生じている諸問題や今後の課題について,2007 年の第38 回日本緑化工学会大会時に「法面自然回復緑化の現場をとりまく課題と今後の展望―四省庁による緑化植物取扱方針の推進にあたって―」と題する研究集会を開催した5)。また翌年には,積雪寒冷地研究部会との共催で「積雪寒冷地における自然回復緑化―地域生態系に配慮した“のり面保全”への取組み―」と題する合同研究集会を開催し,議論を行った6)
    さらに2008 年は,全国都道府県の法面緑化担当部署に対し,「検査基準」についてアンケート調査を実施した。その結果,法面保護以外に自然回復を法面緑化の目的としているものは皆無に近く,したがって自然回復緑化の実施も困難であることがわかった。それをもとに,2008 年の第39 回日本緑化工学会大会(ELR 2008)時の研究集会では「法面自然回復緑化の現場をとりまく課題と展望(II)― これからの植生工の検査基準を考える―」と題し,自然回復緑化を目指すための検査基準について議論を行った7)。そこでは,現行の検査基準に関する問題点,自然回復緑化のための検査基準のあり方に関する要望や課題など,参加者から貴重なご質問,ご意見をいただき,新たな植生工の検査基準の今後の方向性が明確になったと考えている。
    そこで,同主題で3 回目となる2009 年の第40 回大会時の研究集会は,技術の確立と社会的な環境整備が早期に望まれている法面の自然回復緑化について,すでにその最前線の現場で実行に携わった方々から,当初突き当たった問題点,その解決策,実施後の経過,今後の課題など,リアルな体験談を話題として提供いただき,それらケーススタディをもとに,課題をより明確にすることを目的に開催した。同時に,2009 年6 月に改訂版が発行された「道路土工指針―切土工・斜面安定工指針」における生物多様性保全に対する基本的な考え方や具体的な取り組み策についても概略を説明していただき,今後に向けての議論を深めたいと考えた。
  • 道路土工指針の改訂と生物多様性
    松江 正彦
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 413-416
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
  • 淡路夢舞台における造成地回復緑化-岩盤斜面地緑化の実態と課題-
    井上 芳一
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 417-420
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
  • 自然回復緑化事例に基づく検査方法の提案
    齋藤 与司二
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 421-425
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
  • 現地採取種子を利用した自然回復緑化の現状と課題
    田中 賢治
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 426-429
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    法面に多様な植物群落を形成する自然回復緑化を行うために,対象となる法面周辺の森林から表土を採取して播種する手法や無播種で植生基盤を造成して周辺からの植物の侵入を期待する手法等が行われてきた。しかし,このような遅速型の緑化手法においても,初期の植被率や木本植物の密度の高い低いによって播種後の成績判定が行われていたことから,その適用が難しくなっていた経緯がある。しかし,2009 年に道路土工の管理基準が改訂されたことで,郷土種を用いた緑化が注目されてきた。今回の報告では,対象となる法面周辺のマント群落の植物から直接種子を採取して法面で自然復元を行った事例について紹介し,現状における現地採取種子を用いた緑化における課題について報告する。
  • 研究集会を振り返って
    吉田 寛
    原稿種別: 特集
    2009 年35 巻3 号 p. 430-431
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
論文
  • 野見山 誉, 伴 あずさ, 宮角 裕喜, 野見山 明沙, 長谷川 博
    原稿種別: 論文
    2009 年35 巻3 号 p. 432-439
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    水辺環境復元のための基礎資料として,復元事業にしばしば利用されるヨシの生育特性及び水ストレス耐性を調査した。北海道十勝地方当縁川流域の様々な生育環境で自生していたヨシを水田及び畑地に植栽したところ,水田よりも畑地において生育が良くなった。また,ヨシの苗をポットに植栽し,水ストレス反応を調べたところ,植栽直後の水ストレスに対しては,湿地由来の系統において急激な生育の抑制がみられるなど,系統間で水ストレス反応が明らかに異なっていた。一方,定着後の水ストレスに対しては,処理間において有意差が認められたものの,系統間においては,総草丈やシュート数などの主要なパラメータでは有意差は認められなかった。以上の結果から,ヨシはそれぞれの生育環境に適応して生育しており,ヨシ原の復元にあたっては,できるだけその地域の環境に適応したヨシを材料として用いるべきであることを示唆している。また,植栽の際には畑地条件のような状態を保つほうがヨシの生育は良いが,植栽直後の乾燥は避けることが重要であることが示唆された。
  • 呉 初平, 安藤 信
    原稿種別: 論文
    2009 年35 巻3 号 p. 440-447
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    京都市近郊のアカマツ林は,1980 年代に激化したマツ枯れにより,林相を大きく変化させた。これらの林分の動態を明らかにするため,1997 年に毎木調査が行われた4 林分の調査地において,2007 年に再調査を行い,10 年間の林分構造の変化を検討した。1997 年に既にアカマツが消失していた林分では,広葉樹林化が進行し,種多様性が低下していた。一方,高木種が少ないマツ枯れ低質林ではアカマツ更新木が多くみられたが,亜高木種より樹高が低く本数が少なかったことから,自然状態ではアカマツ林の再生は期待できないと考えられる。さらに,マツ枯れが高標高域にまで進行し,マツ枯れ低質林が拡大する可能性が示唆された。マツ枯れ低質林をアカマツ林に誘導するためには,アカマツ更新木が多い林分では亜高木種を除伐し,少ない林分ではさらにアカマツの更新を促進するための森林施業が必要となる。
  • 荒瀬 輝夫, 岡野 哲郎, 木村 誇, 井上 晋
    原稿種別: 論文
    2009 年35 巻3 号 p. 448-461
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    伊豆諸島御蔵島の1995 年12 号台風による崩壊地の植生回復への外来牧草の影響について検証した。本調査地(鳥の尾3 号崩壊地)では地域性苗(オオバヤシャブシ,ハチジョウススキ)が移植され,その後ヘリコプターによる外来牧草類(ベントグラス,フェスク,メドハギ)種子の播種も行なわれた。2004 年に施肥区4 プロット(鶏糞,約200 kg/10 a )と無施肥区3 プロットを設置し,2004~09 年夏季に植生調査を行なった。地域性苗は施肥の有無にかかわらず着実に成長したが,オオバヤシャブシで自己間引きに似た現象が認められ,ハチジョウススキでは2008 年に草高が最大に達した。外来牧草類は全体的に衰退したものの,2009 年において被度百分率で約10% 残存していた。外来牧草類の被度百分率合計と有意な相関関係が認められたのは, 施肥直後の木本類個体数の年変化量のみであった。施肥区では無施肥区に比べ,オオバヤシャブシ,ハチジョウススキ,フェスクで施肥翌年のみ成長量の増大が認められた。また,施肥は周辺からの初期の草本層侵入種の生活形,群落の種多様度にも影響していたが,中長期的な植生遷移への影響は小さいと示唆された。
  • 細木 大輔, 松江 正彦
    原稿種別: 論文
    2009 年35 巻3 号 p. 462-472
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    土地造成時に採取可能な森林表土を緑化材料として効率的に利用するための保存方法について検討すべく,野外において盛土で保存する方法と,室内で風乾および密封湿潤状態で保存する方法について,保存期間を1 年間に設定して実験を行った。その結果,野外で保存した後に埋土種子密度が最も少なかったのは,ブルーシートで覆った盛土の深さ1.5 m の位置に保存した表土であった。この表土には未保存のものと比較して88.2 %に相当する個数の埋土種子が残存していた。既存の森林表土利用工に関する緑化試験の結果と比較した場合,この表土は緑化利用が可能であると判断された。このことから,表土中に緑化利用するのに充分な量の埋土種子が含まれている場合は,表土を緑化材料として1 年間盛土保存することは可能であると考えられた。また,室内で風乾および密封湿潤保存した表土に関しても,緑化利用は可能であったと判断された。本研究では,造成予定地の森林表土を貴重な資源として緑化利用する上で有効な成果が得られた。
技術報告
  • 久保 満佐子, 細木 大輔, 松江 正彦
    原稿種別: 技術報告
    2009 年35 巻3 号 p. 473-478
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    国営明石海峡公園神戸地区の切土法面で,アベマキ林の表土を植生基材に混合して吹付ける緑化を行い,施工後2 年間の法面植生と利用した表土の埋土種子数,法面への飛来種子数を調べた。本調査地の埋土種子は木本のカラスザンショウやヒサカキが多く,その他に1 年生草本のヒメムカシヨモギやベニバナボロギク,多年生草本のセイタカアワダチソウなどがあった。法面への飛来種子はセイタカアワダチソウが最も多かった。法面では,施工当年から施工後2 年目まで植被率は90~100% と高く,当年はオオイヌタデ,施工後2 年目はセイタカアワダチソウが優占した。埋土種子として存在するシラカシやカラスザンショウ,アカメガシワが施工当年から法面で多く生育していたが,2 年目にカラスザンショウとアカメガシワの個体数は減少し,セイタカアワダチソウによる被陰が原因として考えられた。
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