「外来生物法」の施行,「特定外来生物」の指定,それに伴う「要注意外来生物」とその中で特別に取り上げられた「別途総合的な検討を進める緑化植物」のリスト公表,「第三次生物多様性国家戦略」の策定など,法面緑化をとりまく情勢は急変している。そのため,従来からの法面保護を主目的とし,外来草本類や外国産在来植物を多用する法面緑化手法のみでは対応が困難になった。特に緑化植物は,導入可能な在来植物を増やす必要があるのと同時に,その繁殖材料の産地まで問われる状況になった。しかし,地域性種苗の調達,検査基準やモニタリング・長期的管理などに関して整備が遅れているために,現場では対応に苦慮し,一時期混乱が生じた。
そこで本学会では,生物多様性保全に配慮した法面緑化の理解と推進のため,2002 年に「生物多様性保全のための緑化植物の取り扱い方に関する提言」
3)を社会に発信したが,現場での具体的な対応策については今後の課題とされている部分が多い内容であった。
このようなことから,斜面緑化研究部会は,2004 年に「のり面における自然回復緑化の基本的な考え方のとりまとめ」
4)を発表した。また,環境省,国土交通省,農林水産省,林野庁の法面緑化に関連する4 省庁でも,亀山章座長の下,2005~2006 年度に“ 別途総合的な検討を進める緑化植物”とそれに準じる外来緑化植物や外国産在来緑化植物も対象として,緑化植物の取り扱い方についての合同調査を行い検討を行った
1,2)。
その検討結果も受け,研究部会では,より具体的なガイドラインづくりを目指すべく,自然回復を目的とする切土法面緑化の現場で生じている諸問題や今後の課題について,2007 年の第38 回日本緑化工学会大会時に「法面自然回復緑化の現場をとりまく課題と今後の展望―四省庁による緑化植物取扱方針の推進にあたって―」と題する研究集会を開催した
5)。また翌年には,積雪寒冷地研究部会との共催で「積雪寒冷地における自然回復緑化―地域生態系に配慮した“のり面保全”への取組み―」と題する合同研究集会を開催し,議論を行った
6)。
さらに2008 年は,全国都道府県の法面緑化担当部署に対し,「検査基準」についてアンケート調査を実施した。その結果,法面保護以外に自然回復を法面緑化の目的としているものは皆無に近く,したがって自然回復緑化の実施も困難であることがわかった。それをもとに,2008 年の第39 回日本緑化工学会大会(ELR 2008)時の研究集会では「法面自然回復緑化の現場をとりまく課題と展望(II)― これからの植生工の検査基準を考える―」と題し,自然回復緑化を目指すための検査基準について議論を行った
7)。そこでは,現行の検査基準に関する問題点,自然回復緑化のための検査基準のあり方に関する要望や課題など,参加者から貴重なご質問,ご意見をいただき,新たな植生工の検査基準の今後の方向性が明確になったと考えている。
そこで,同主題で3 回目となる2009 年の第40 回大会時の研究集会は,技術の確立と社会的な環境整備が早期に望まれている法面の自然回復緑化について,すでにその最前線の現場で実行に携わった方々から,当初突き当たった問題点,その解決策,実施後の経過,今後の課題など,リアルな体験談を話題として提供いただき,それらケーススタディをもとに,課題をより明確にすることを目的に開催した。同時に,2009 年6 月に改訂版が発行された「道路土工指針―切土工・斜面安定工指針」における生物多様性保全に対する基本的な考え方や具体的な取り組み策についても概略を説明していただき,今後に向けての議論を深めたいと考えた。
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