マツ枯れが都市近郊アカマツ林の林分構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的として, マツ枯れ被害の微小な林分, マツ枯れ被害を受け放置された林分, マツ枯れ被害を受け伐倒駆除の行われている林分の3林分の構造を調査した.ツ枯れ被害林において生物量の低下が著しかったが, 特に, 伐倒駆除林分において下層の低下が著しかった.被害が微小な林分と放置された林分においては, 下層において耐陰性が高いと考えられる常緑広葉樹の優占度が高かったが, 伐倒駆除林分では, 下層において耐陰性が低いと考えられる落葉広葉樹の優占度が高かった.構成樹種の肥大生長の年変化から, マツ枯れ被害による上層のアカマツの一斉的な枯死によって, 残存する個体が被圧から解放され生長が好転することがわかった.以上から, マツ枯れ被害によって, 放置された林分では植生遷移が進行し, 伐倒駆駆除を行っている林分では植生遷移が後退しつつあることが示唆された.
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