日本緑化工学会誌
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41 巻, 4 号
4号
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特集
論文
  • 田端 敬三, 小宅 由似, 奥村 博司, 若月 利之, 阿部 進
    原稿種別: 論文
    2015 年 41 巻 4 号 p. 448-458
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,都市近郊二次林の衰退による減少が懸念されている日本固有の野生サクラ類のヤマザクラ (Cerasus jamasakura) と近縁種ウワミズザクラ (Padus grayana) を調査対象として,両種の保全を図る上で重要となる基本的生態情報の取得を目的としている。そのため,奈良市郊外の二次林内に設置した観測プロット (面積:2.21 ha) において, 2006年と 2011年に毎木調査を実施し,この期間での胸高直径 (DBH) の差から上記 2種の断面積成長量 (ΔBA) を求めた。さらに,ΔBAの自然対数 (ln ΔBA) を目的変数とする成長予測モデルの構築によって,近隣個体間競争の他,地形条件 (凸状指数,傾斜量,斜面位置,斜面方位) などの環境要因との関係性を検討した。その結果,2樹種とも,2006年から 2011年にかけて幹密度,胸高断面積合計は低下した。また,この期間での断面積成長量は 2cm2/年未満の小さな値を示した個体が高頻度で見られ,成長量低下,個体群衰退傾向にあることが示唆された。ヤマザクラでは競争指数を説明変数とする成長予測モデルの説明力は 54%であり,近隣の競争個体からの被圧による成長への影響が強く見られた。しかし,ウワミズザクラの成長予測モデルでは説明力は 17%程度にとどまり,他要因からの影響の可能性も考えられた。
  • 近藤 哲也, 山田 啓介
    原稿種別: 論文
    2015 年 41 巻 4 号 p. 459-467
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/18
    ジャーナル フリー
    既往研究ではタニウツギの種子は,明条件下では高い発芽率を示すが,暗条件下では低温湿潤処理を施しても全く発芽しないか 3%以下しか発芽しないとされている。しかし,これらの研究は比較的狭い温度と限られた湿潤処理の条件のもとで行われたものであった。もしタニウツギの種子を暗条件下でも発芽させることができれば,土中の種子も発芽させることができ,播種工の際に発芽率の向上が期待できる。本研究では,より広い範囲の温度と湿潤処理の条件を設定して既往研究の結果を確認した。さらに,タニウツギの種子を暗条件でも発芽させる方法を探るために湿潤処理と光照射処理の条件,そして GA3の効果を明らかにした。タニウツギの種子に 5℃の湿潤処理を 15日以上施した後, 25~30℃の温度で 7 μmol・m-2・s-1以上の光を 1~2日照射すると,その後暗条件に置いても発芽した。室内で 401日間貯蔵した種子でさえも,この処理によって暗条件の 20~30℃の範囲で約 80%が発芽した。ただし,これらの低温湿潤処理と光照射処理の後,発芽を抑制するために暗区・5℃で湿潤貯蔵した種子は, 3日以上の貯蔵によって,その後の暗条件での発芽率が低下した。
技術報告
  • 田中 淳, 山口 幸紀
    原稿種別: 技術報告
    2015 年 41 巻 4 号 p. 468-471
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/18
    ジャーナル フリー
    クズの伸張防止を目的とした物理的阻害部材の形状を比較する実験を行った。阻害部材の形状は,高さ 1.0 m の平板形状,高さ 0.7 m の平板形状,高さ 0.7 m の『く』の字形状,高さ 0.7 m の『コ』の字形状の 4種類とし,これらを設置した場合の,茎の登上数を比較した。その結果,高さが 1.0 m の平板状のフェンスがあれば茎の登上を抑制する傾向があることがわかった。また, 0.7 m でも同じ高さであれば,『く』の字や『コ』の字形状の方が,平板形状よりも茎の登上を抑制する傾向にあった。さらにその形状は,より茎を下方へ導く『コ』の字形状がより効果が高い傾向であった。しかし,生育盛期になると,物理的阻害部材近傍に生育した高茎草本を支柱に,部材を超える茎も多かった。また,超えた茎に絡みつき,さらに多数の茎が部材を超える事象も確認できた。このような物理的阻害部材の設置により,維持管理の頻度や管理時期の平準化が可能であるが,その場合にも物理的阻害部材付近の草刈りは必須であることが予想される。
  • 山根 明, 原田 佐良子, 内田 泰三
    原稿種別: 技術報告
    2015 年 41 巻 4 号 p. 472-478
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/18
    ジャーナル フリー
    近年,九州の河川堤防では,草丈が 2mを超えて成長するセイバンモロコシの繁茂が著しく,河川管理上問題となっている。本研究では,福岡県遠賀川水系において本種の除草回数および除草時期の間隔 (以下,除草間隔という) を変えて植被率・乾燥重量の変化を調査した。また,本種の発芽実験を行い,除草時期と除草間隔について発芽率との関係も調査した。それらの結果,本種の栄養繁殖と種子繁殖の両方を抑制するためには年 3回以上の除草を行い,除草間隔を 50日以内とし,1回目の除草を 7月上旬までに,最終除草を 9月中旬以降に実施する必要があることを見いだした。一方,栄養繁殖のみを抑制する場合は,年 3回除草 (1回目の除草は 6月中旬) では除草間隔 70日以内とし, 3回目の除草を 9月中旬以降に設定することで抑制できると考えられた。また,除草間隔が短いほど抑制効果は大きかった。なお,種子繁殖のみを抑制する場合は, 1回目の除草を 7月上旬までに,最終除草を 9月中旬以降に実施することに加え,除草間隔を 50日以内に設定する必要があると考えられた。また,両繁殖様式を同時に抑制できない場合は,栄養繁殖の抑制を優先すべきと考えられた。
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