日本緑化工学会誌
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48 巻, 1 号
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論文
  • 島田 博匡
    2022 年 48 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    RBMwを用いて間伐後のスギ・ヒノキ林における水平根による補強強度を推定する上で,伐採木の腐朽根にも一定期間は引き抜き抵抗力が残存することから,腐朽根の補強強度を求めて生立木の根の補強強度に加える必要がある。間伐後5年経過した腐朽根を対象とする引き抜き試験などからRBMwパラメータを推定するとともに,伐採後の補強強度の経年変化を表す減衰係数を求めた。38年生スギ林,53年生ヒノキ林の間伐後6年経過した間伐地と無間伐地で得た水平根分布データをRBMwに適用して得られた補強強度は,スギ林の間伐地10.9 kN/m2,無間伐地12.5 kN/m2,ヒノキ林は5.9 kN/m2,6.0 kN/m2 で,そのうち間伐地で腐朽根の補強強度が占める割合はスギ林0.9%,ヒノキ林3.4%に過ぎなかった。

  • 加藤 顕, 山口 洵, 彦坂 晶子, 栗木 茂, 大島 佳保里, 上柳 燎平, 浅野 涼太
    2022 年 48 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    壁面緑化は都市におけるヒートアイランド現象の緩和,緑化空間の形成,低炭素化など様々な機能を有する。壁面緑化の多面的機能を評価する手法が建築分野で望まれている。本研究では壁面緑化の植物形態に注目し,混植されている壁面緑化の葉の枚数と葉面積を深層学習で自動推定した。植物形態を計測できる地上レーザーからパノラマ距離画像を作成し,葉の有無や枚数といった深層学習に必要な入力データを準備した。葉の有無については90%の正確性,枚数については72%の正確性で推定できるモデルを作成できた。さらにすべての葉を採取して実測した葉面積と比較し,27%の誤差で壁面緑化の葉面積を推定できた。

  • 五郎部 生成, 中村 大, 川尻 峻三, 川口 貴之, 宗岡 寿美, 菖蒲 哲也
    2022 年 48 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,地域性種苗を利用した植生工の雨滴に対する侵食防止効果を明らかにすることを最終目的として,クサヨシを生育させた供試体に対する侵食抵抗試験を実施した。比較対象には,外来草本植物のケンタッキーブルーグラスを用いている。土中の根系の発達状況や試験後の侵食深を求めるためにX線CTスキャンを用いた。試験結果から,地上部と根系の両者によって発揮される耐侵食性は,クサヨシもケンタッキーブルーグラスと同程度であることが明らかとなった。ただし,根系のみの耐侵食性は土中に発達した根の太さや根系量等によって,増減することが明らかとなった。

  • 宇高 優介, 中村 大, 川口 貴之, 三浦 直己, 宗岡 寿美, 川尻 峻三
    2022 年 48 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,植物根系が存在するのり面の極表層の土被り圧を模擬した低鉛直応力で定圧一面せん断試験を行うことにより,草本植物の根系を含む土のせん断強度特性を明らかにすることに取り組んだ。供試体は砂質土を締固めて作製し,これに外来草本植物の種子を播種している。ここでは,せん断試験時に周面摩擦力の増大で鉛直応力の制御が困難となることを防ぐため,供試体断面を学会基準より大きくしている。試験結果から,根系が発達した供試体ほど,大きなせん断変位においてせん断抵抗が増加することが明らかとなった。本研究により,土被り圧の小さなのり面の極表層においても,植生工の根系による補強効果が発揮されることが確認できた。

  • 鍜冶元 雅史, 中村 大, 川口 貴之, 川尻 峻三, 宗岡 寿美
    2022 年 48 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,のり面を流れる表流水に対する植生工の侵食防止効果を明らかにするため,SfM写真測量を活用した試験方法の開発に取り組んだ。試験には粘性土を締固めた供試体と,草本植物を生育させた供試体を用いた。試験装置は傾斜台とタンク付の水路からなり,タンクを越流した水が供試体表面を流下するようにした。試験後には写真を撮影し,Agisoft社のMetashapeで3次元モデルを作成して,侵食体積の測定を行った。試験結果から,草本植物の茎葉や根系には侵食開始時間を大幅に遅延させる効果があることが明らかとなった。ただし,一旦侵食が始まって植生が流されると,その侵食防止効果が失われることもわかった。

  • 宗岡 寿美, 新田 祥吾, 山崎 由理, 木村 賢人, 辻 修
    2022 年 48 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    植生工を想定して作製された10種類の草本植物の根系を含む土供試体の一面せん断試験を実施し強度定数(c・φ)を経年評価した。生育1年目と比較すると,生育2年目には全10種類で粘着力cの増加量⊿cが増大した。さらに,8種類ではせん断抵抗角φの増加量⊿φが前年よりも増大していた。以上より,根系のうち種子根・節根の存在が土供試体の粘着力cを増大させていた。さらに,側根の発達による緊縛力がせん断抵抗角φに作用していることを確認した。このとき,強度定数(⊿c・⊿φ)が経年的に増大するRCG・ChF・MFは,産業管理外来種であるTFの代替種を考える上で植生工に適用可能な草本植物として検討に値する。

  • 平井 茜, 杉浦 徳利, 上町 あずさ
    2022 年 48 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,緑地空間の風景をVR動画で視聴させ,その印象評価実験を行い,緑地空間の風景が人に及ぼす心理的な効果を明暗の観点から明らかにした。その結果,画像下部が暗く,明るさのコントラストが弱い動画の評価が低かった。また,印象評価の評定の平均値から因子分析を行った結果,「空間快適性因子」と「活性因子」が認められた。この2つの因子の因子得点を目的変数とし,画像の各特長を説明変数とした重回帰分析を行った結果,「画像上部の画素値の標準偏差」のみ説明変数に採用することが望ましいと判断され,視野上部の明るさのコントラストが高いほど緑地空間の快適性が向上することが示唆された。

  • 飯田 義彦
    2022 年 48 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    トチノキ90個体を対象に花序と葉芽の状態変化を把握する個体レベルのフェノロジー判定手法を開発した。京都府綾部市でトチノミ採集に利用されているトチノキ個体群3群の比較から,花序の状態変化を10段階で判定することで,トチノキ個体や個体群の開花期間の開始期,最盛期,晩期が時系列的に識別され,個体間の開花の同調性や開花期間と生態学的なプロセスとの関係解明に有効な視点を提供する可能性が示された。今後,トチノキ林保全に係るフェノロジー情報について経年的なデータの蓄積が期待される。

  • 原 悠里, 我妻 尚広, 岡本 吉弘, 森 志郎
    2022 年 48 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    余市岳におけるエゾコザクラのtrn L (UAA) 3' exon - trn F (GAA) 領域とatp B - rbc L 領域の2領域における葉緑体ゲノムの遺伝変異を調査した。また,草丈,筒長,花径,葉長,葉幅,ロゼット径といった形態特性を調査した。その結果,20個体を分析し,11個体のハプロタイプを決定することができた。そのことから,余市岳のエゾコザクラの葉緑体ゲノムは先行研究で明らかになった大雪山・日高山系グループの主要ハプロタイプと一致し,大雪山・日高山系グループであることが分かった。一方,余市岳の個体群は標準的なエゾコザクラの形態的特徴と一致していたことが分かった。また,個体群内の花型割合も同程度であった。

  • 中島 宏昭, 森山 蒼大, 田中 聡, 鈴木 貢次郎
    2022 年 48 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    ムラサキシキブおよびヤブムラサキは,関東地方における二次林(落葉広葉樹)の低木層を構成する。しかし,管理放棄によるアズマネザサの生育は低木層や草本層を著しく衰退させる。そこで,夏期に一度のアズマネザサの刈り取りが両種の種子発芽と実生の初期成長に与える影響について調査した。実験室および二次林内での種子発芽実験の結果,採取直後は明条件で発芽率が高く,6か月間低温湿潤貯蔵することで暗条件でも発芽率が向上することが判明した。また,実生個体の栽培実験でアズマネザサ下の生存率は0~16.7%であったのに対し,アズマネザサを刈り取ることで,生存率が60%以上に向上し,実生の成長に大きく影響することが明らかとなった。

  • 川原田 圭介, 包清 博之
    2022 年 48 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    高速道路の盛土のり面樹林(以下,「高速道路樹林」)において,管理計画に必要となる生物多様性の保全について,地域住民からみた魅力の条件を把握するため,アンケート調査を行った。その結果,65.5%の回答者は,高速道路樹林を認識したうえで視認し,その印象は中立的または肯定的であった。高速道路樹林の役割に関しては,自然環境・生物多様性の向上に肯定的であり,生物多様性の保全を踏まえた管理手法が望まれていた。高速道路樹林への関心は,一般緑地と同様に「緑のある景色」「季節変化」が高いものの,一般緑地よりは低く,「季節変化」「野鳥のさえずり」「木陰」への配慮が,一般緑地と同等の魅力の拠り所となる可能性が示唆された。

  • 栗栖 寛和, 岡 浩平, 平吹 喜彦, 松島 肇
    2022 年 48 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    2011年3月に大津波を受けた仙台市海岸部で,海岸林造成に伴う盛土の回避による海浜植物の保全効果を検証するために,自律的に再生したケカモノハシの分布様態を明らかにした。調査は,津波から10生育期が過ぎた2020年12月に実施し,小型UAVを用いて画像を取得し,奥行約375 m,幅600 mの範囲で,ケカモノハシの分布位置と個体投影面積の判読を行った。その結果,ケカモノハシは,盛土エリアで顕著に少なく,砂浜エリアと非盛土エリアで多かった。非盛土エリアでは,株の小さい個体が顕著に少なく,さらに天然更新した低木のクロマツが多かったことから,ケカモノハシの新規個体が定着・成長しづらい条件にあると考えられた。

  • 高岸 慧, 森山 実央子, 宮本 太
    2022 年 48 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    三重県を北限とするヒメノボタンは,主に熱帯に生育するノボタン科では日本が分布北限域にあたり,日本国内では半自然草原に生育するが,生育地の減少に伴い県および環境省により希少種に指定されている。本研究はヒメノボタンの発芽特性を明らかにした。段階温度法による発芽試験の結果,短期間の低温環境下で二次休眠が誘導された。また異なる期間の低温湿層処理(無処理,30,60,90日)の結果,無処理区に次いで90日区が高い発芽率を示した。異なる温度条件と光条件(明・暗)の発芽試験から,本種は光発芽性を持たず,変温による発芽の促進も観察されなかった。埋土された種子は永続的埋土種子集団を形成しないと考えられる。

  • 小島 倫直, 花里 真道, 岩崎 寛
    2022 年 48 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    近年義務化された事業所ストレスチェックでは,半数以上の就業者がストレスを抱えることが明らかになった。そこで就業者の状態改善を目的に,オフィスに設けた植栽を活用した園芸活動を,3か月間にわたり就業者に提供した。ワークエンゲージメント・ウェルビーイング・社会的健康の3点に着目した効果検証の結果,就業者のワークエンゲージメントが園芸活動体験後に有意に向上した。また,園芸活動への参加が職場や私的な交流に良い影響を与えたとアンケートで回答した就業者は,UCLA孤独感尺度に基づく社会的孤独感が有意に緩和した。就業者への園芸活動の提供が,ワークエンゲージメント向上や社会的健康促進に寄与する可能性が示された。

  • 三浦 直己, 中村 大, 川口 貴之, 宗岡 寿美, 川尻 峻三
    2022 年 48 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    積雪寒冷地におけるのり面では,のり面とこれを覆う植生工の境界や,のり面表層で滑動する表層崩壊が多く,これらの箇所が弱部となっている可能性がある。この疑問を解明する足掛かりとして,本研究では土質と締固め度Dcが異なる2層構造の土供試体を作製し,その境界面をせん断位置とした定圧一面せん断試験を行い,草本植物の根系が層境界に与える影響について明らかにすることに取り組んだ。ここでは,根系が供試体の下層まで到達していたか否か確認するため,X線CTスキャンを実施している。試験結果から,草本植物根系が下層の土まで発達することができれば,層境界は補強されて靭性が向上することが明らかとなった。

技術報告
  • 大藪 崇司, 荒井 正英, 前田 泰芳
    2022 年 48 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    食品残渣由来のリサイクル堆肥は,元食品のため安全性について問題は少ないものの,食品中の塩や糖により植物生育に問題がないか,また堆肥の投入によって収穫物に変化があるのかについて基礎的な知見が少ない。そこで兵庫県三木市の特産である酒米山田錦にリサイクル堆肥の施用実験を行い,その効果を確認した。その結果,リサイクル堆肥を用いた実験区は使用していない対照区と比較して生育不良は認められなかった。籾の粒数と重量からはリサイクル堆肥の施用区のほうが収量を得られる可能性が示唆された。

  • 小川 泰浩, 上條 隆志, 欒 春陽, 武藤 惠
    2022 年 48 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,火山斜面の地形を改変せずに設置できる三日月形治山緑化資材(ToCR)を三宅島の緩傾斜荒廃斜面に設置した時の植生回復に伴う植被と表面侵食の変動を報告する。植被の変動は,ToCR区(ToCR設置)と対照区(未設置)の1 mコドラートにおける2年間の植被率を求めた。侵食量はToCR設置2年後に2つの区のリル,リル間地,ToCRの堆砂エリアにおける侵食ピン長の差から求めた。ToCR区と対照区の植被率と侵食量の有意差を統計検定により求めた。その結果,植被率は設置2年後の夏季から有意差がみられた。侵食量は対照区リルと対照区リル間地,対照区リルとToCR区リル間地に有意差がみられた。

  • 紀 昊青, 高橋 輝昌, 人見 拓哉, 王 玲玲, 長谷川 啓示
    2022 年 48 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    物理的性質が異なる2種類のウレタン樹脂(茶色樹脂,白色樹脂)の植栽基盤としての適性を明らかにするため,ウレタン樹脂上でバミューダグラスとコムギの栽培実験を行い,樹脂の物理的性質と植物生育の関係について検討した。2種類のウレタン樹脂の最大容水量と細孔隙量には大きな差が見られなかったが,硬度と飽和透水係数には差があった。植物の生育は硬度,飽和透水係数が小さい樹脂で良好であった。白色樹脂ではコムギの根の密度が茶色樹脂より高かった。樹脂内の根の伸ばしやすさが植物生育に重要な要素であった。

  • 寺本 行芳, 下川 悦郎, 江﨑 次夫, 土居 幹治, 松本 淳一
    2022 年 48 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    令和2年7月豪雨によって大きな被害を受けた鹿児島県垂水市の林道切取法面を対象に,崩壊の実態とその発生要因を明らかにするための現地調査を実施した。その結果,崩壊は27箇所で発生し,崩壊面積は90%以上が20 m2未満,崩壊による生産土砂量は95%以上が10 m3未満であったこと,崩壊面積と崩壊による生産土砂量は切取高の増加とともに大きくなっていたことなどが明らかになった。さらに,崩壊した切取法面の肩部に連結する自然斜面の等高線形状などから,崩壊の発生には,切取法面に降った雨に加え,同法面肩部に連結する自然斜面で生じた表面流の切取法面への集中が関係していると考えられた。

  • 稲垣 栄洋, 小林 陽平
    2022 年 48 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    刈取り回数の違いが,ヨシススキとススキの生育の優劣に及ぼす影響を置換栽培法によって検討した。その結果,刈取りを行なわない場合や,刈取り回数が1回の場合,混植条件下でススキの地上部乾物重は減少し,ヨシススキの地下茎の乾物重が増加する傾向にあった。一方,刈取りを4回行なった場合には,地上部乾物重や地下茎の乾物重におけるヨシススキの優位性は低下した。しかし,刈取り回数が多い場合には,混植条件下において,ヨシススキの分げつ数が増加し,ススキの分げつ数が抑制される傾向にあった。このことから,刈取りの回数を変えることによって,ススキに対するヨシススキの優位性を抑制することは困難であると考えられた。

  • 横山 裕一, 稲垣 栄洋
    2022 年 48 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    イタドリは河川堤防や道路法面等に群生する強害草である。一方,イタドリは農業資材の原料としての利用価値もある。そこで,イタドリの成長抑制と,成長維持の両面から,効果的な刈取りの時期や刈取り高の影響を検討した。その結果,8月に地際刈りをした場合に,イタドリの地上部および地下部の成長が抑制された上,種子生産も認められなかった。このことから,イタドリ群落を抑制させる場合,8月の地際刈りが効果的であると結論した。一方,高刈りをした場合,6月,7月,8月のいずれの刈取り時期においても,地下茎の成長抑制は小さかった。特に,6月高刈り区は,地上部の成長も大きく,群落維持の点で効果的であると結論した。

  • 横山 裕一, 稲垣 栄洋
    2022 年 48 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    刈取り管理がイタドリ再生茎の生産構造に及ぼす影響を調査した。その結果,6月に地際刈りを行なった場合,1次枝の同化器官が上層に分布して草冠を形成するのに対して,7月の地際刈りや6月~8月の高刈りをした場合には,2次枝の葉が草冠を形成した。さらに,いずれの刈取り時期においても1次枝と2次枝は競合することなく,上層と下層に同化器官が位置し,「見かけ上のすみわけ」のような構造を形成した。また,早い時期に刈取りを行なった場合,草冠部に葉面積あたりの乾物重(LMA)の小さい薄い葉が形成される傾向にあった。

  • 佐藤 厚子, 林 宏親
    2022 年 48 巻 1 号 p. 123-124
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    生育が旺盛で草丈が高く葉の面積が大きいため面状に空間を遮るなど,通行上の安全確保の課題があるオオイタドリの生育抑制方法として,これまでメッシュシートの被覆による方法を検討してきた。この方法では,オオイタドリの生育を抑制できるものの,オオイタドリ以外の草本類の生育も抑制してしまう場合があり,いずれも満足する適切な目合いが必要である。本調査では,異なる目合いのメッシュシートを被覆してオオイタドリとオオイタドリ以外の草本類の生育を調べた。2 年間の調査結果,2.5 mmの目合いであれば,継続的にオオイタドリの生育を抑制でき,わずかではあるが緑化植物の生育が良好であることを確認した。

  • 松本 薫
    2022 年 48 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    関東南部の丘陵地に位置するさいたま緑の森博物館では,2020年にナラ枯れ被害が確認され,2021年10月にはha あたり125本の被害があった。被害は全てコナラであり,胸高直径が大きいほど,また,周辺15 m のナラ枯れ量(ナラ枯れ被害のあるコナラの胸高断面積合計)が多いほど被害割合が高まる傾向となった。2021年1~3月に行われた単木処理の効果について,周辺15 m のナラ枯れ量を比べたところ,伐採・搬出処理の株は無処理のナラ枯れ発生木よりも少ない量になっていた。これらから,ナラ枯れ被害の集中分布する箇所で単木的な対策を行うことで被害割合を減らし,近接木の被害を遅延する効果が期待できる。

  • ―奥能登における事例―
    荒井 菜穂美, 梅原 瑞幾, 岩城 慶太郎, 岩崎 寛
    2022 年 48 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    現在,地方の自然環境を活かしたワーケーションが推奨されているが,ワーケーション実施による勤務者の心理的効果に関する研究はまだまだ少ない。また,これまで日本には長期ワーケーションの習慣が無かったことから,ワーケーションを実際の企業で導入するには,短期間での導入など多様な形態の検討が必要である。そこで本研究は,短期ワーケーションが勤務者の心理に与える効果を明らかにすることを目的に,石川県の奥能登で実施した事例について検証を行った。対象は東京在勤の勤務者とし,ワーケーション前後でVAS(主観評価),POMS 2(感情状態)などの測定を行った。その結果,短期間のワーケーションは,「仕事への効果」よりも,勤務者の「気分転換」において有用であることなどが明らかとなった。

  • 大澤 啓志, 室橋 美早紀, 馬場 湧作, 岡田 陽介, 清水 秀一
    2022 年 48 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    壁面緑化で多く用いられるヘデラ類について,ポット苗の茎の切断時の引張強度に着目し,灌水抑制苗及び一般流通苗で比較した。計測の結果,ヘリックス及びピッツバーグとも単位面積当たりの引張強度は灌水抑制苗が一般流通苗よりも有意に高かった。夏期に灌水抑制で育苗することで成長が抑えられ,引張強度が高まると推察された。また,長尺苗を用いた計測により,引張強度の強弱は基本的には芯部の太さによって決まることも確認された。施工直後の枯死を防ぐために生育良好/非良好の苗を識別する上で,引張強度が一つの指標になることが示唆された。

  • 福丸 拳梧, 大澤 啓志
    2022 年 48 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    水辺ビオトープの普及に向け,物理的な環境操作を行うことにより,薬剤や外来捕食生物に頼らない水辺ビオトープでの蚊の発生を抑制する方法を検討した。光及び流水環境,水替え頻度を組み合わせた実験区を設け,2021年5~9月にかけて2週間毎にボウフラの発生数を計数した。止水条件下での日陰の有無で比較すると,日陰で発生数が多くなる傾向が認められた。日陰条件で止水域~流水域で比較すると,流速が弱い程,発生数が多くなる傾向が認められた。日陰の止水域条件で水替え頻度別で比較すると,頻度が低くなる程,発生数が多くなる傾向が認められた。

  • 黒沼 尊紀, 渡辺 均, 今井 一隆, 手代木 純, 渡部 亮, 有賀 淳
    2022 年 48 巻 1 号 p. 141-143
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    カーボンニュートラルの実現に向け,緑化への関心や期待は大きい。しかしながら,芝地をはじめとした草本性緑地のCO2固定能に関する知見は限られている。そこで本研究では,竣工後20年が経過した屋上緑化芝地を対象に,CO2固定能と土壌保水能および積載荷重の増加量について推定を行った。この結果,屋上緑化芝地は0.031~0.105 kg-C/m2・yearのCO2固定能を有し,土壌保水能および積載荷重も増加することが明らかとなった。本研究結果は,他の屋上緑化芝地における数値と近しい値を示したことから,草本性緑地のCO2固定能に関する一知見として,活用可能であると考えられた。

  • ―底面給水と頭上潅水の比較―
    近藤 晃
    2022 年 48 巻 1 号 p. 144-147
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    スギコンテナ苗の育苗技術の構築を目的に,育苗時の潅水方法(底面給水と頭上潅水(常法))が苗木の成長,物質生産および根鉢形成に及ぼす影響について検討した。1 成長期間,両潅水法で育苗したコンテナ苗の苗高,根元径,形状比および苗木乾重(地上部,粗根,細根)には有意な差異は認められなかった。コンテナ苗の地下部は,根系が培地をしっかり包み込んだ根鉢が形成され,培地の崩落や根腐れは認められず,根鉢硬度(山中式硬度計による指標硬度)および細根率には有意な差異は認められなかった。スギコンテナ苗の育苗において,底面給水は頭上潅水と同等な育苗成績を示したことから,有効な潅水法と考えられる。

  • 辻 盛生, 和田 洋平, 鈴木 正貴
    2022 年 48 巻 1 号 p. 148-151
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    浮葉植物の過繁茂は,水域の景観や水質,生態系に影響を与える。ここでは,排水処理水を主な水源とする富栄養化した浅水人工池を対象に,スイレンの繁殖状況および底泥の堆積状況の調査結果を示すと共に,窒素,リン収支の算出を試みた。排水処理水である流入水の栄養塩濃度は高く,群落の拡大速度は2014年以降増加し,200 m2/年に達した。2019 年の底泥は,4,500 m2の水域全体において底泥乾燥重量で65 t,有機物で14 t,窒素434 kg,リン87 kg に達した。底泥乾燥重量で4.4 t/年の増加量であり,スイレンの葉茎や更新して枯れた地下茎などが主要因と考えられた。これ以上のスイレン群落の拡大を抑えるためには,年間群落拡大面積である200 m2 の除去が必要とされる。

  • 古野 正章, 保浦 成徳, 鶴田 徹, 服部 浩崇, 田中 淳, 吉原 敬嗣, 内田 泰三
    2022 年 48 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    ススキの地域性種苗(種子)を活用した緑化資材を用いて比較試験を実施し,3年間調査を実施した。ススキの被度が最も高くなった施工2年目のススキ被度は,無施工区で1.7%,一般的な斜面緑化資材で,網状で被覆率が低い植生マット,植生シートでは17.5%,13.3%であるのに対し,ワラを主体とした植生マットでは37.5%,24.2%となった。また,ワラにヤシを加えた厚いマットでは30.8%,17.5%となった。一方,3年目にはいずれの試験区もススキの被度が低下ししたが,ススキの草丈は生長していた。導入したススキの発芽や初期生育には適度な被覆と厚すぎない素材さらに補肥力も必要であり,種に適した緑化素材を活用することが重要と示唆された。

  • 谷口 真吾, 田場 睦規, 松本 一穂
    2022 年 48 巻 1 号 p. 156-159
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    沖縄島中南部に道路街路樹として植栽された3樹種(リュウキュウコクタン,ホルトノキ,アカギ)の「胴吹き」(地上高20 cm 以上の樹幹に発生した幹萌芽枝)と「ひこばえ」(地上高20 cm 以下の根株に発生した根萌芽枝)の発生実態を調査した。胴吹きとひこばえの発生本数が多かった方位は3樹種とも東南から西,北西向きの樹幹面であった。このため,胴吹きとひこばえの発生は,東から南,西,北西向きの樹幹面への太陽光の照射がひとつの原因として推察された。胴吹き,ひこばえの発生を防ぐ樹形管理は,太陽光の樹幹への直射を防ぐことが重要であり,東から南,西向きの樹幹には自然枝を出来るだけ低い位置まで残した樹形の確保が望ましいと考えられる。

  • 金 甫炫, 大石 智弘
    2022 年 48 巻 1 号 p. 160-163
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    グリーンインフラ(GI)は,インフラとしての効果が定量的に示されることによって一層の活用が期待され,このことは緑地を導入する場合も同様である。本研究は,緑地が有する雨水貯留浸透機能の評価について,既存研究等の文献調査を行い,評価の考え方を整理した上で,都市緑地の評価に適した方法と浸透能の設定方法等について検討を行った。その結果,地表面貯留,浸透等の評価ができる降雨損失モデルと浸透量を有効降雨から差し引く方法,実測によって土地被覆毎の最終浸透能を補足する方法等が緑地の評価に適していると考えられた。

  • 相澤 章仁, 寺井 学
    2022 年 48 巻 1 号 p. 164-167
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    東京都清瀬市にある大林組技術研究所の外構緑地において,客土区,耕起区,対照区を設置して,6種の草原生植物の播種試験を行った。2020年11-12月に試験区を設定して播種を行い,2021年10月時点で初期定着している個体数を数えて評価した。すべての種において,初期定着数は客土区が最も多かった。アキカラマツ,シラヤマギク,ノハラアザミは対照区ではほとんど初期定着が確認できなかったが,耕起区で一定の初期定着が見られた。一方で,ツルボ,ツリガネニンジンは対照区でも一定程度の初期定着が確認され,条件によっては既存の植物がいる中でも初期定着する可能性があることが示唆された。

  • 紀 正, 倉本 宣
    2022 年 48 巻 1 号 p. 168-171
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    近年,江戸時代以前の日本には広大な草地があったことが明らかになってきた。里山型公園の生田緑地中にも小面積の草地が存在している。本研究では,多摩丘陵の自然を生かした大規模な公園である生田緑地の畦畔草地に着目して,その存続状況について検討した。その結果,里山保全を目的の1つとしている生田緑地において,その中に存在するはずの畦畔草地はほとんど残っていなかった。公園整備の際と管理の際の問題点を検討し,保全手法を提案した。

  • 小野 幸菜, 吉田 寛
    2022 年 48 巻 1 号 p. 172-175
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    自然回復緑化で用いられるイロハモミジと,イネ科外来牧草類のクリーピングレッドフェスク(CRF)について,グロースチャンバーを用いた温度3条件(3,23,33 ℃)と湿度4条件(13,31,57,82%RH)の組合せに種子専用貯蔵施設(RSセンター:3 ℃,50%RH)を加え,種子を2年間貯蔵し,発芽率(早期発芽力検定法)と含水率の推移を調査した。その結果,試験開始時の発芽率が維持されたのは,RSセンターのほか,イロハモミジは3 ℃で含水率10.8%(57%RH)以下,23 ℃で含水率8.0%(31%RH)以下の場合,一方CRFは3 ℃のすべての試験区,23 ℃で含水率10.7%(57%RH)以下,33 ℃で含水率8.6%(31%RH)以下の場合で,イロハモミジはCRFより温度と湿度の影響を受けやすく劣化しやすいことが確かめられた。

  • 大西 貴一, 中村 剛, 藤原 宣夫
    2022 年 48 巻 1 号 p. 176-179
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    シカ不嗜好性植物を用いたのり面緑化における植物材料選択の基本情報とするため,のり面緑化への利用可能性があり,シカ不嗜好性の報告がある植物を12種選定し採食実験を行った。実験は12種の供試植物の鉢苗を生息地に並べて置き,シカの採食状況を自動撮影カメラでモニタリングするものであり,採食状況が異なる大阪府の2か所で,夏と秋の2回,計7回の実験を行った。その結果,採食早さの順位と採食程度の順位は同じ傾向を示し,その順位は3つのグループに分けられた。最も不嗜好性が強いグループには,アセビ,シキミ,センダンが含まれ,強い不嗜好性の要因は有毒成分と考えられた。

  • 村上 萌, 加藤 顕, 蝦名 益仁
    2022 年 48 巻 1 号 p. 180-183
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    近年気候変動によって森林火災が大規模化している。主に航空写真やドローンによる空撮を用いて森林火災のモニタリングが行われているが,下層植生の緑被率を正確に測定されることはなかった。本研究ではドローンによる高木とポールカメラによる下層植生の緑被率を別々に測定し,データ取得方法による違いを明らかにした。火災による被害が大きく高木が少ない場所は高木と下層植生の緑被率に差はなかった。火災による被害が小さく高木が多い場所は高木と下層植生の緑被率が異なった。このことから高木が多い場所ではポールカメラを用いた下層植生のモニタリングが重要であると考えられる。

  • 佐藤 康弘, 山梨 太郎, 近藤 保徳, 土田 萌, 山田 守
    2022 年 48 巻 1 号 p. 184-187
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    連続繊維複合補強土工(工法名:ジオファイバー工法)は,連続繊維補強土工とその表面に施す植生工とを組み合わせたのり面保護工である。20 cm以上の厚い生育基盤を造成することから,苗木植栽工を組み合わせることでのり面の早期樹林化が可能である。ダム建設時に苗木(高~低木性樹木)植栽併用のジオファイバー工法を施工した3箇所,約50,000 m2ののり面で,施工後19~25年目にUAV搭載型レーザースキャナーによる3次元測量と空撮および植生追跡調査を実施した。調査結果から施工・立地条件に応じた特徴が異なる3タイプの高木群落に区分され,その群落特性を把握することができた。

  • 中村 華子, 杉万 裕一, 山下 淳一, 中島 敦司
    2022 年 48 巻 1 号 p. 188-191
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    阿蘇くじゅう国立公園阿蘇地域の地域性種苗の利用実態を調べるため,自然公園法の手続きが行われた緑化工事に関する実態調査を実施した。さらに九州地方環境事務所では2年間にわたり九州管内の自然公園における法面緑化指針の活用状況および地域性種苗利用工の施工実態について情報収集を行った。その結果,指針に沿った緑化が行われた工事は6%程度にとどまっていること,指針の認知度が低いこと,地域性種苗の緑化材としての普及不足といった課題を把握できた。今後阿蘇くじゅう国立公園における地域性種苗による緑化の普及推進を目的とし,課題解決に向けた取り組みを進めるため,これまでの調査結果を報告する。

  • 畑川 芳弥, 石坂 健彦, 鈴木 弘武
    2022 年 48 巻 1 号 p. 192-195
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    首都圏中央連絡自動車道あきる野インターチェンジ(略称:IC)では,調整池を活用した「あきる野ICビオトープ」が整備されている。このビオトープは,整備後17年間に亘り継続的なモニタリング調査を実施し,その結果に基づいた順応的管理を実践してきた。また,高速道路の緑地資産を地域に還元するために,地域連携・環境教育の場としての活用策を模索し,地元小学校の児童を対象とした自然観察会を開催した。こうした一連の取り組みは,グリーンインフラの概念を体現したものであり,持続可能で魅力あるビオトープの形成に寄与するものと考えられた。

  • 戸田 克稔
    2022 年 48 巻 1 号 p. 196-199
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    緑地の降雨の浸透能を,現場において必要な精度で簡便に推定できる手法を検討するために,横浜市の特別緑地保全地区内の林地と都市公園内の林地及び芝生地において,それぞれ2地区ずつ計6地区で実証実験を行った。その結果,マクロポアが無い緑地であれば,携帯型ミニディスクインフィルトロメータを用いて算定した現場飽和透水係数から最大浸透能を良好な精度で推定できる可能性があることが分かった。また,山中式土壌硬度計で測定した土壌表面の硬度指数から最大浸透能を良好な精度で推定できる可能性があることも分かった。

  • -ブナ林での開花調査への適用-
    中村 彰宏, 木田 和泉, 木寺 由樹, 唐木 優歌
    2022 年 48 巻 1 号 p. 200-203
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    森林に点在する個体を対象とした調査では個体探しに苦労することがある。そこで,点在する個体を見つけ出すための補助資料となり,データ整理に有効なデータベースを開発した。大阪府和泉葛城山のブナ林を対象に,ブナの開花調査で活用できるデータベースを作成した。UAVから撮影した斜面画像や,オルソ画像にブナ個体位置を入れた分布図を格納したデータベースを作成でき,個体探しに活用できた。複数年の開花期および紅葉期のオルソ化した樹冠画像によって樹冠内の開花状況の変化も把握でき,UAVの有用性も再確認できた。

  • 小島 仁志, 石川 陸斗, 小谷 幸司
    2022 年 48 巻 1 号 p. 204-205
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    室内緑化においては心身への癒しや,快適な生活空間づくりへの支援など多面的機能を有しているが,飲食店の利用者を対象とした研究はあまりみられない。そこで本研究では,カフェレストランの来店者を対象に室内緑化が与える心理的効果と印象解析を目的とした。アンケート調査計4回の調査から156名の回答を得た。結果,(1)快適性やストレス緩和などの心理的効果,(2)来店意欲を高める付加価値(緑の価値を深め,経済的効果へ寄与)としての効果が示唆された。

  • 田崎 冬記, 清水 一平, 吉田 暁, 渡邉 幸一
    2022 年 48 巻 1 号 p. 206-209
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    河川堤防植生の状態確認は,現状は人による近接目視点検が主となっているが,堤防等の河川インフラの老朽化も今後,急激に進むものとされているため,新技術を活用した高度化・効率化が課題となっている。そこで本報告では,マルチスペクトルセンサ搭載UAVを活用して,専門技術者が目視で区分した植生区分(裸地・外来牧草・オオイタドリ・構造物)と6つ植生指数から作成した指数マップを作成したところ,構造物・外来牧草はいずれの植生指数でも良く判別できていた。オオイタドリの判別には,TGI,MCARIといった植生指数が適することが示唆された。

  • 松岡 達也, 平野 尭将, 渡部 陽介, 黒岩 洋一, 小島 啓輔, 隅倉 光博
    2022 年 48 巻 1 号 p. 210-213
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    土壌乾燥化が懸念される人工地盤上緑化等では,保水性の観点から導入する植物種が制限されるほか,適切な潅水管理が求められる。木材等を熱分解して得られるバイオ炭は土壌保水性を向上させることが報告されており,緑化土壌への導入が期待される。一方で,バイオ炭の土壌保水効果に関する研究事例は僅少であり,適切な混合条件の解明に向けた基礎的知見の確立が望まれる。本研究では,木材を原料とするバイオ炭と赤玉土の混合土壌を作成し,ポット実験により土壌保水性を評価した。その結果,バイオ炭の混合率の高い混合条件で保水量が多い傾向がみられ,その保水効果は複数回の潅水を行った場合にも同様にみられることが示された。

  • 山佐 圭吾, 岡 浩平, 吉﨑 真司
    2022 年 48 巻 1 号 p. 214-217
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究は,山口県虹ケ浜の海岸林を対象にして,ギャップに植栽されたクロマツの生長と光環境の関係について調べた。ギャップに植栽されたクロマツは,樹冠付近の相対光合成有効光量子束密度が60%以上の場所で,樹高や地際直径が大きく,形状比や枝下率が小さくなった。また,無人航空機の撮影画像をもとに,樹冠高モデルを算出して,各植栽木の10 mバッファ内のギャップ率を求めた。その結果,ギャップ率の増減に対応して,植栽されたクロマツの樹高や地際直径の値が明瞭に変化した。このことから,無人航空機を活用したギャップの判読により,効率的にクロマツの植栽適地を抽出できると考えられた。

  • 赤尾 智宏, 倉本 宣
    2022 年 48 巻 1 号 p. 218-221
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    雑木林の林床の花に着目し,伐採や下草刈りが,開花期間,開花量,訪花昆虫の組成に与える影響を検討した。調査は管理が継続されている狭山丘陵の皆伐更新地で実施した。全期間を通じて70種以上の草本が開花し,各季節を特徴づける種には草原性植物に加えて外来植物や先駆植物も含まれた。後者が優占して調査区画全体の開花量が減少した可能性のある時期もみられた。昆虫としてはハナバチ類やハナアブ類に加えて,それ以外の分類群も多くの植物種に訪花した。開花期間と訪花適性の関係が昆虫の分類群により大きく異なるため,開花植物の時間軸での種多様性も訪花昆虫にとって重要であろう。定期的な植生管理も視野に入れる必要がある。

  • 室伏 幸一, 遊川 知久, 吉﨑 真司, 朝倉 俊治
    2022 年 48 巻 1 号 p. 222-225
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    ダム建設により湛水の影響を受けるウチョウランの保全対策として,1999年から国立科学博物館筑波実験植物園で繁殖を図りつつ,湛水域外への移植を行った。移植方法はA.岩の隙間に移植,B.蘚類の間に移植の2方法とした。移植開始から5年後の活着率は95%,22年後の活着率は33%であった。岩の隙間に移植した方が活着率は高く,実生・分球による繁殖も確認された。移植困難な種が多いとされるラン科植物が20年以上経過しても生育・繁殖していることから,本種にとって移植は有効な保全対策と考えられた。

  • 中込 光穂, 岡 愛香梨, 岸田 周士, 松本 和浩
    2022 年 48 巻 1 号 p. 226-229
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2022/11/22
    ジャーナル フリー

    2009年に多くのノハナショウブの開花が確認された小田貫湿原A地点は,2021年に開花個体が皆無になった。この原因を探るために,データが残る外部形態のデータを中心に,新たに土壌調査や周辺環境の観察のデータを加え考察を行った。草刈り等人為的介入を行っている小田貫湿原B地点区域では2021年でも開花が確認され,植物残渣の堆積はみられなかった。一方,土壌の栄養成分に大きな違いはみられないものの,A地点では,植物残渣の堆積が見られ,ススキ等非湿生植物の繁茂が見られた。このように,草の刈取り,搬出等の人為的介入の如何がノハナショウブの開花の有無に大きな影響を与えているものと考えられた。

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