日本緑化工学会誌
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29 巻, 3 号
(2004 Feb.)
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集
  • 山辺 正司, 渡辺 哲也
    2004 年29 巻3 号 p. 393-395
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    第二名神高速道路の滋賀県内では,道路予定地にある従来伐採廃棄処分されていた樹木等を移植活用した樹林復元を目的とした「森のお引越し」と称する森づくりに取り組んでいる。「森のお引越し」では,樹林を構成する高木層から表土に至るまでの森林の階層構造をそのまま移植することにより,地域の自然環境の早期復元を目的とする樹林の復元に取り組んだ。こうした復元樹林と,道路予定地で移植前の既存樹林,滋賀県内で開通後38年を経過した名神高速道路の盛土のり面の自然林である比較樹林の3 箇所の樹林について,樹林構成,植生遷移,土壌動物の生息環境の視点から調査,比較した結果,既存樹林と同程度の樹林が構成され復元されていると評価できた。この既存林の有効利用による「森のお引越し」の実施により,既存樹林の樹種構成が早期に復元されただけでなく,多種多様な動植物が生存する樹林環境の早期復元を行うことができ,自然環境復元技術の新たな可能性を確認することができた。
  • 津下 圭吾, 谷口 伸二, 実松 秀夫
    2004 年29 巻3 号 p. 396-399
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    人工芝による緑化工は早期の侵食防止目的に使用されることが多かったので,施工後の植生状況に関する調査,特に長期にわたる追跡調査が少なく,遷移進行に関する資料が不足している。今回の人工芝工の植生追跡調査事例で,植生の回復の度合いは,現地環境条件,導入植物の種類,製品・工法内容などの要因により違いが生ずることも観察された。早期緑化により土壌侵食防止をはかりながら木本導入の促進,次に周辺植生の侵入を促すなどの機能が発揮され,次第に植生が回復されることが確認できた。今後の緑化工は,侵食防止機能を果たしながら植生の自然回復をはかるための手段としても利用できる。
  • 辻 盛生, 軍司 俊道
    2004 年29 巻3 号 p. 400-403
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    ヤシ繊維を基盤とする植生ロール(ベストマンロール)は,水辺緑化を目的として多自然型川づくりやビオトープ整備における素材の一つとして用いられている。ここでは既存の事例を基にその有効性を検証した。その結果,植生ロールは植生護岸を形成させるための補助材料としての役割を果たし,それをさらに確実なものとするためには,(1)施工目的と現地の環境条件に適合した根のしっかりと張る多年生草本を積極的に植栽する必要がある,(2)強度的な限界があり,他工法との組み合わせが必要となる場合がある,(3)施工後に目的に応じた維持管理を実施する必要があることが明らかになった。
  • 辻 盛生, 軍司 俊道, 斉藤 友彦
    2004 年29 巻3 号 p. 404-407
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    多自然型川づくりや水辺ビオトープの創出の中で, 水辺の早期緑化を目的として水辺植物の植栽が実施されている。その中で用いられる種苗は,地域を越えて流通していることが多く,自然界には起こりえない生物種の人為的移動が問題視されている。ここでは,その解決策の一つとして契約生産を取り上げ,生産の可能性の検討とそのコストの試算を実施したものである。その結果,ロットによって単価が大きく変動するが,ある程度の数量がまとまればコスト的に十分実現可能であることがわかった。しかし,発注体制や契約条件,枯損の際の保障など解決すべき問題は多い。
  • 倉本 宣, 野村 康弘
    2004 年29 巻3 号 p. 408-411
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    多摩川におけるカワラノギクの保全活動を, 保全活動を開始した1993年度から2001年度までの第1期,移行期である2002年度の第2期,2003年度以降の第3期に分けて,役割分担の面から協働のあり方について検討した。市民との合意が得られるまでには時間を要するので,保全策が後手に回ることが多かった。自然復元が社会的に認められるためには,多くの市民の理解と参加が不可欠なので,回り道でも市民との協働を続ける意義がある。
論文
  • 細木 大輔, 米村 惣太郎, 亀山 章
    2004 年29 巻3 号 p. 412-422
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    関東地方の東京都と栃木県, および山梨県において,森林表土中の土壌シードバンクの組成について調べて,緑化材料としての利用可能性について検討した。実生出現法による試験を行って土壌シードバンクの組成を調べた結果,いずれの場所の表土を緑化に用いた場合でも,自生種の優占する植物群落の形成が可能であると推察された。3 地域の間で多くの共通種が確認され,自生種であるアオスゲ,オカトラノオ,ケスゲ,タチツボスミレなどの草本や,キブシ,コウゾ,コゴメウツギ,タラノキ,ヌルデなどの先駆性木本の種子が種数,個数ともに多く含まれていることが確認された。以上のことから,本研究の対象とした地域においては,森林表土を用いて緑化を行うことで,先駆性木本を多く含む,種構成の類似した植物群落を形成させられることが示唆された。一方,実生出現法による試験を1 年以上続けた後の表土中には,休眠状態で生存している埋土種子はほとんど存在しないことが確かめられた。また,森林の土壌シードバンクの緑化材料としての利用可能性は,野外で春先から実生出現法による試験を行うことで,短期間で調べられることが明らかとなった。
総説
  • 高橋 和也, 土岐 靖子, 中村 太士
    2004 年29 巻3 号 p. 423-437
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    米国では,水辺林の有する生態学的機能を維持するために,水辺緩衝林帯の保全, 整備を目的とした多くの指針や法令等基準値が導入されている。本論では,これらをレビューし,米国における水辺緩衝林帯管理に関する最新の方法や考え方を明らかにするとともに,我が国への導入の可能性に関して検討することを目的とした。米国では,主に,1)水質保全,2)河岸の安定化,3)水域の生息地保全,4)陸域の生息地および生態的回廊の保全を目的に水辺緩衝林帯の保全, 整備が検討されており,それぞれについて緩衝林帯幅の基準値が設定されている。また,これらの基準値に加えて,流域における緩衝林帯の配置の考え方や整備する植生の種類も併せて検討されている。このような指針づくりや法制化と並行して,奨励制度や教育プログラム等のソフト面での施策の充実も図られており,法令等の実効性をより高めている。我が国においても水辺林の重要性に対する認識が高まってきているが,これらの社会的要請にこたえるためにも,水辺緩衝林帯の保全, 整備に対する指針の策定が望まれる。
技術報告
  • 吉田 寛, 古田 智昭, 伊藤 健一, 高柳 浩樹
    2004 年29 巻3 号 p. 438-445
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    「厚層基材吹付工(斜面樹林化工法)2層吹付システム」は,空気圧縮機とモルタルコンクリート吹付機を用いて植生基材を吹付造成するエアー方式の厚層基材吹付工において,これまでの種子入り植生基材の「1層吹付」という常識を打ち破り,種子を含まない生育基盤の上に種子を含む生育基盤を1工程で重ねて造成する「2層吹付」を行うことにより,多くの木本種子の出芽可能覆土厚である基盤表面から2 cmの範囲に種子を混合し,さらにこれら2 層からなる生育基盤を一体化させることにより,2層目(表層)の剥離等が生じることのない生育基盤を効率的かつ経済的に施工することを実現した緑化工法である。本システムの適用により,木本種子を主体に用いた厚層基材吹付工(斜面樹林化工法)による自然回復緑化において,高価な国内産自生種や地域性系統の木本種子の有効利用とコストダウンを実現した。
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