日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
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ISSN-L : 0916-7439
45 巻, 3 号
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特集「グリーンインフラの実装に向けて」
論文
  • 岡 浩平, 吉﨑 真司
    2020 年45 巻3 号 p. 377-383
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,海浜植物のケカモノハシとビロードテンツキの分布要因を明らかにするために,2種の実生がどの程度の深さで発芽しているか評価した。調査は,遠州灘に面した福田海岸を対象にして,汀線からクロマツ林の手前にかけて3本の調査測線を設置し,植生調査と微地形,堆砂深の計測を行った。また,前砂丘頂部,前砂丘陸側斜面,前砂丘後背地の3つに分けて,1 m × 1 mの方形区内に発生した2種の実生を掘り取り,発芽深を測定した。また,2種の果実の重量を計測した。調査の結果,ケカモノハシは前砂丘頂部の堆砂の多い立地,ビロードテンツキは前砂丘後背地の堆砂の少ない立地に主に分布していた。2種が混生していた前砂丘陸側斜面の発芽深を比較すると,ケカモノハシは,ビロードテンツキよりも有意に値が高かった。ケカモノハシは,ビロードテンツキよりも種子が重いことから,種子内に含まれるエネルギーが多いために,深い場所から発生できたと考えられる。この2種は,個体群の維持・拡大を種子繁殖に依存していることから,実生の発生段階における堆砂への耐性の違いが分布にも影響していると考えられた。

  • 松田 義徳, 蒔田 明史
    2020 年45 巻3 号 p. 384-393
    発行日: 2020/02/28
    公開日: 2020/04/24
    ジャーナル フリー

    市町村域スケールの植物相調査で,①既存資料を活用した調査ルート設定法を検討し,②それに基づいて植物相調査を行い,調査時間や調査季節と確認種との関係から適切な調査努力量と調査時期を検討した。調査は,2004年春季(5―7月)と秋季(9―10月)に秋田県由利本荘市の第3次地域メッシュ(約1 km × 1 km)12カ所で実施した。事前に作成した地形区分図と立地リストで調査ルートを設定し,1メッシュ当たり各季8時間の植物相調査を行った。その結果,総計937種の生育を確認したが,メッシュ内の全ての地形を含み,より多くの立地を調査するルート設定の重要性が明らかとなり,地形と植生とを把握できる地形区分図と立地リストの有効性が明らかになった。確認種は調査時間が増えるに従って増加したが,累積時間が6時間経過後に増加率は低下した。季節により確認できる種が異なるため,別の季節での2時間の調査を含む1メッシュあたり6時間調査で,全確認種の約7割を把握できることを確認した。こうした調査法により,地域植物相の概要を把握し,地域資源の活用をはかる財産目録づくりに貢献できる。

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