日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
29 巻, 1 号
(2003 Aug.)
選択された号の論文の65件中1~50を表示しています
論文
  • 大澤 啓志, 徳丸 沙織, 勝野 武彦
    2003 年 29 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物ミズキンバイの国内の分布確認を行い,その生育立地や生育規模を把握するとともに,開放止水域における群落維持機構について考察した。生育地数は4県で僅か12箇所しか確認されなかった。生育立地の特性は,休耕田,水路,畦畔,溜め池等の水田耕作に関わる生育地点が大部分を占めており,人為撹乱が定期的に行われる農的な土地利用空間が本種の生育にとってより重要であることが示された。国内総生育規模は約2,160 m2と計算され,そのうち約73 %が千葉県に含まれた。弱撹乱地の池沼では,高茎の抽水植物との光競争のない開放水面の中央方向に浮葉を伸ばして群落形成を行うことで,群落を維持してきたものと推察された。
  • 市川 貴美代, 前中 久行
    2003 年 29 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物ツチグリ(Potentilla discolor Bunge)を圃場で栽培し,3年間の実生の個体群動態を調査した。その結果,開花株から60 cm以上離れて発生する実生の割合は1 %で,実生による更新範囲は極めて狭いことがわかった。実生は発芽後1年以内に枯死する個体が多く,1年以上経過した実生の生残率は高くなることが明らかになった。実生の発芽は,植被率が低く裸地に近い場所では多数みられたが,被陰された場所では実生の発芽は確認されなかった。実生による更新によってツチグリの個体群を保全していくためには,裸地に近いセーフサイトを結実株の近くに確保するような土地の管理が不可欠であるといえる。
  • 村上 健太郎, 前中 久行, 森本 幸裕
    2003 年 29 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    京都市内の孤立林22箇所および京都盆地周辺にある山林内において, 生殖様式や受精様式,染色体の倍数性の異なるシダ植物の種数,優占度を調べた。山林と孤立林における二倍体種,高倍数体種の種数および被度を比較した場合,孤立林において二倍体種の種数,被度は減少した。孤立林の林床では,山林に比べて,高倍数体無配生殖種の割合が高かった。これは無配生殖種が,必ずしも水分を必要としない,より簡便な生殖法を持っていることが影響していると考えられた。自家受精ができない二倍体種は,十分な湿度と他の個体から生じた複数の胞子がある場所でしか更新することができないので,孤立距離の増大や林床の乾燥化とともに移入率が低下すると考えられ,高倍数体無配生殖種や林床性の二倍体種の割合は都市化の指標となりえることが考察された。
  • 湯谷 賢太郎, 田中 規夫, 武村 武, 浅枝 隆
    2003 年 29 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    ヒメガマ(Typha angustifolia)の刈取り時期の違いが,その後の再成長特性に及ぼす影響を調査するために,湿地にて調査を行った。ヒメガマ群落内に1 m × 1 mのコドラートを4つ設置し,その周囲を対照区とした。コドラート内に生息していたヒメガマは,2002年の6月,7月,8月,9月にそれぞれ水面上20 cmで刈取った。全てのコドラートで,刈取り後の刈り口からシュートの再成長が見られた。6月と7月の刈取りでは,再成長シュートは対照区と同程度の草高まで成長した。12月時のシュート現存量は刈取り時期が遅くなるに従って減少した。12月時の地下茎現存量は8月刈取りが最も低い値となった。ヒメガマの抑制を目的に刈取りを行う場合には,8月にシュートを刈取るのが効果的である。
  • 城野 裕介, 田中 規夫, 渡辺 肇
    2003 年 29 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    海浜植物コウボウムギの長期的成長動態を解析モデルにより評価した。竜洋海岸での観測により得られた横走地下茎の特性と群落が老化とともに穂をつける特性とにもとづき構築されたモデルは,現地の地上部, 地下部バイオマスの季節動態をよく表現した。このモデルは移植後のバイオマスの拡大と平面分布を計算するものである。移植間隔を0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0, 1.6 mとし平面分布の計算を行った結果,0.2 - 0.4 mでは広い範囲での飛砂抑制は数年間は期待できず,1.0 - 1.6 mでは飛砂抑制効果を発揮するまで長期間を要することがわかった。拡大範囲と地下部バイオマスを考慮すると,適正な移植間隔は0.6 m - 0.8 mであると考えられる。
  • 閻 根柱, 嶋 一徹, 千葉 喬三
    2003 年 29 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    劣悪土壌での肥料木生育に及ぼす緑化牧草類混植の影響を調査した。試験は肥料木としてニセアカシアとメラノキシロン, アカシア, 緑化牧草としてイタリアンライグラスを用いて混植の密度と時期そしてリン施肥が及ぼす影響を検討した。その結果, イタリアンライグラスの混植は肥料木の成長を抑制することが判明した。また混植にともない肥料木では, 根粒着生量が減少することが明らかになった。しかし, この成長低下はリン施肥により回避することができた。これらの結果より緑化牧草混植にともなうリン欠乏が肥料木の根粒着生を阻害することで成長を著しく低下させると考えられた。
  • 石丸 香苗, 岩間 哲士, 大澤 直哉, 武田 博清
    2003 年 29 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    滋賀県大津市田上山で,遷移段階の異なる広葉樹3種,コナラ(Quercus serrata),ヤマモモ(Myrica rubra),アラカシ(Q. glauca)において,植栽時の苗サイズが成長に与える影響を4年間調査した。コナラは,植栽時の苗サイズが成長やバイオマスの増加に与える影響が3種の中で最も大きかった。ヤマモモの樹冠サイズやバイオマスは,初期サイズには依存しなかった。アラカシは,植栽時の苗サイズが与える影響は小さく,どの苗サイズでも同程度の樹冠成長やバイオマス増加を示した。これらの結果から,本調査地では,アラカシおよびヤマモモでは小さな苗を,コナラでは大きな苗を植えるのが,適当であると考えられた。
  • 藤原 宣夫, 山岸 裕, 田中 隆, 新島 啓司, 中居 恵子
    2003 年 29 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    街路樹を対象として,1回の剪定作業による剪定枝発生量の実測調査と,剪定頻度についての管理者ヒヤリングと全国アンケートを行い,両調査の結果から,剪定管理により持ち出される樹木1本あたりの年間木質部重量を,形状寸法との関係を踏まえて算定し,無剪定下にある樹木の年間木質部成長量と比較することにより,剪定管理が街路樹のCO2固定量に与える影響について考察した。実測の結果,剪定枝発生量は,樹木の成長とともに増大し,胸高直径25cmにおいて,4樹種平均で,無剪定樹木の年間木質部成長量の45.3%に達することが判明した。また,アンケート調査からは,無剪定管理下にある樹木が,6樹種平均で17.9%存在することが判明し,今後のCO2固定促進方策において,剪定枝の有効利用,無剪定管理を可能とする植栽方法の検討の必要性が示唆された。
  • 高梨 聡, 谷 誠, Abdul Rahim NIK
    2003 年 29 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    半島マレーシア熱帯雨林において行われた1998年の気象観測データを用いて,群落コンダクタンスの解析を行った。群落コンダクタンスと日射量,大気飽差との関係には良い相関がみられた。飽差と日射量を説明変数とする群落コンダクタンスモデルを適用した結果,年間を通して良好な再現結果が得られた。熱帯雨林の中では,かなり大気や土壌が乾燥する当試験地において,土壌が乾燥しても群落コンダクタンスの特性に変化はなく,蒸散が低下することがなかった。
  • 橘 隆一, 西村 香奈子, 宮本 沙織, 福永 健司
    2003 年 29 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    土壌動物群はそれぞれ地域環境の特性を把握するのにしばしば用いられる。そこで,緑化法面に生息するアリ類とトビムシ類について調査し,アリ類では群構成と植生構造,トビムシ類では群構成と土壌微生物相との相互関係をみた。その結果,アリ類は,その生息環境としての植生構造が発達している法面ほど,種構成が周辺の林に類似していった。一方,トビムシ類は,堆積有機物の中でも落葉層よりもF層やH層など原型をとどめない有機物が多い法面土壌ほど腐植食性群が多くなり,周辺林との類似性が高まった。また,C/N比,トビムシ相,土壌微生物相の3者間に強い相互作用がうかがわれた。さらに,緑化法面の土壌では,有機物量が森林と同様の平衡状態に近づくとともに,主に腐植食性のトビムシ類が優占する土壌環境になると考えられた。
  • 小林 達明, 野田 泰一, 鈴木 奈津子, 稲田 陽介, 清水 良憲, 桑原 茜, 高橋 輝昌
    2003 年 29 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    東京湾内の主な自然渚, 人工渚におけるマクロベントスの種と個体数さらに海水, 底土等の性質を2001年夏に一斉に比較調査した。種組成による主成分分析の結果,底生動物群集は前浜, 河口, 潟湖という基本的なハビタットタイプによって規定されていた。いっぽう自然渚, 人工渚といった人為的関与の類型による違いは明らかでなかった。主成分得点を環境要因によって重回帰分析した結果,海水の化学的酸素要求量と塩分量および底土のシルト, クレイ率が主要な規定要因だった。しかし同じ前浜ハビタットでも,湾口部と湾奥部では生物相が異なり,水域の影響があることを示した。カニ相は潮間帯のヨシ群落の発達状況とシルト, クレイ率および潮上帯の植生空間の豊富さにより規定されていた。
  • 鈴木 悠里, 柴田 昌三, 田中 和博, 酒井 徹朗
    2003 年 29 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    IKONOS画像を用い,NDVIを指標とした活力度が高く単木レベルでの特定が可能な樹木の葉の色彩評価を,カラーモデルHSVによって行った。ピクセルレベルでは,色彩から樹種を判別することは困難であり,樹種ごとにピクセルの平均値をサンプルとしたときは,色彩がより類似したカテゴリーに分類でき,クスノキ(Cinnamomum camphora)とトウネズミモチ(Ligustrum lucidum),クスノキとヒマラヤスギ(Cedrus deodara)は色彩の差が大きいグループであると示唆された。
  • 内田 泰三, 田崎 冬記, 丸山 純孝, 佐藤 洋平
    2003 年 29 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    ヨシ(Phragmites australis(Cav.)Trin.)およびツルヨシ(P. japonica Steud.)は,水域緑化や河畔緩衝帯の材として高い頻度で導入されている。しかし,これらを取り巻く水圏では侵食,堆積等の攪乱を受けることも少なくない故,各種攪乱に対する両種の耐性,反応を検討する必要性は高い。そこで本論では,攪乱の1つとして地上部の損失に着目,その基礎としてヨシおよびツルヨシ群落を異なる高さで刈取った(低刈り; 強攪乱 / 高刈り; 弱攪乱)。その結果,両種群落は,攪乱強度を問わずほぼ同数の茎を再生した。これに対して,両種群落のC/F比は強攪乱より弱攪乱で,地下茎のTNC(全非構造性糖)含量は弱攪乱より強攪乱で低く,両種群落ともに強攪乱でより大きな負荷を受けることが示唆された。しかし,ツルヨシ群落では,強攪乱に対して旺盛に匍匐茎を再生,新たな群落を形成する傾向にあった。
  • 稲垣 栄洋
    2003 年 29 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    里山構成植物であるササユリ(Lilium japonicum Thunb.)の生態特性について,特に生活史の観点から調査を行った。幼植物の葉状リン片の葉状部分を除去した場合の再生率は15%と低く,葉の破損が危惧される幼植物生育時期の保全管理作業は好ましくないと考えられた。開花株の開花翌年の再開花率は50%程度であり,一部の個体は地上型植物に幼齢化する現象も認められた。また,?刮ハの生存率は食害,折損等により開花3ヶ月以降に低下した。このため自生条件では,開花株が再開花し,正常に種子繁殖を行う率は極めて低いものと推察された。また,ササユリは部分自殖性に相当し,自殖を行うものの他殖傾向が強いため,自生地の保全のためには訪花昆虫の個体密度を維持する環境整備も必要であると考えられた。
  • 石井 義朗, 李 玉霊, 斯 慶図, 坂本 圭児, 王 林和, 吉川 賢
    2003 年 29 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    乾燥地や半乾燥地では,水分条件の異なる様々な立地が形成されているため,種組成は豊かであり,高温乾燥環境へ多様な適応がみられる。ここでは乾燥条件に対するフェノロジカルな反応を明らかにするために,中国半乾燥地の毛烏素沙地で在来種(油蒿,檸条,沙柳,臭柏の4種類)および外来種(旱柳)の新梢の伸長成長の経過と環境条件の関係を1年間測定した。油蒿以外は5月初めまでに伸長成長を開始した。その時期は平均気温が連続的に10℃を越えるころであった。油蒿,檸条,沙柳,臭柏の在来種は高温, 乾燥条件にあった7月に成長を休止または終了した。一方,外来種である旱柳は継続して成長を行った。その後,油蒿と臭柏は秋に成長を再開した。2度目の成長は降雨と強い関係をもっていた。在来種のうち沙柳のみが地下水面に近いほど旺盛な成長を示した。
  • 上地 智子, 小林 達明, 野村 昌史
    2003 年 29 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    ミツバツツジ節自生地復元に用いられている種苗における雑種の発生について調べた。民家由来の種子から苗木を生産育成している花木センターの苗木畑において形態調査を行ったところ, 様々な雑種形態を持つ個体が全調査個体中27 %確認された。また,人工受粉実験を行ったところ,ミツバツツジ節内では結実率が80 %近く,交配親和性は高かった。さらに,ミツバツツジが植栽された庭において,ミツバツツジとキヨスミミツバツツジがコマルハナバチをポリネーターとして共有していることが確認できた。よって導入苗木に雑種が存在する可能性は高く,自生地以外の地より導入されたミツバツツジ節苗木が存在する庭からは,自生地復元用の種子は採取しない方が望ましいと言える。
  • 山本 牧子, 玉井 重信, 徳地 直子, 山中 典和
    2003 年 29 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    半乾燥地緑化に用いられている中国原産のサリュウ(Salix psammophila C.Wang et Ch. Y. Yang), ハンリュウ(S. matsudana Koidz.)と, 日本での緑化に使用されている日本原産のヤマヤナギ(S. sieboldiana Blume), タチヤナギ(S. subfragilis Andersson)の4樹種を異なる施肥条件下で育成し, 施肥が伸長及び肥大成長量, 現存量, T/R比に及ぼす影響を検討した。 中国原産のサリュウやハンリュウでは高濃度の施肥に対して, 日本原産のものと比較して良好な成長反応が認められた。 このことから, サリュウやハンリュウは日本原産のヤナギより幅広い施肥条件下での適応が可能であると考えられた。
  • 吉川 賢, 矢崎 直子, 坂本 圭児
    2003 年 29 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    3年生のケヤキZelkova serrataとコナラQuercus serrataの葉を7月に0 %,50 %,100 %の3段階に摘葉し,その後の葉の展開と光合成,蒸散速度の変化について測定を行った。どちらの種も摘葉処理前に2回新葉の展開が認められ,摘葉処理直後に急速な新葉の出現が起こった。その結果,ケヤキは3月に展開した葉数程度まで回復し,コナラは,摘葉処理をしなかった場合よりも多くの新葉が展開した。両樹種とも摘葉処理によって残存した葉の蒸散速度が増加した。ケヤキは葉面積の回復が十分ではなかったが,摘葉直前に展開した葉の光合成能力が向上したため,生産力はほぼ回復した。コナラは,処理後に残存していた葉の光合成能力が向上し,葉面積が完全に回復したため,生産力も対照区と同じレベルに達した。
  • 李 玉霊, 林 万里子, 坂本 圭児, 吉川 賢
    2003 年 29 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    土壌水分条件をpF1.8(対照区)とpF4.2(乾燥区)の2段階に設定したポットと根箱に植栽した臭柏(Sabina vulgaris Ant.)とカイヅカイブキ(Juniperus chinensis var. kaizuka Hort.)の苗木の地上部、地下部の成長経過や根系分布を調べた。臭柏は水ストレスを受けると地上部の伸長成長が抑制され,当年成長部分のT/R比が低下した。根系の垂直方向への伸長は水ストレスで促進され,7月までに乾燥区の地下部は対照区より深くまで達した。カイヅカイブキでは,水ストレスを受けると地上部,地下部とも伸長成長が抑制されたため,当年成長部分のT/R比は処理区間で変わらなかった。根系分布は両処理区ともほとんどの根が0-10 cm層に分布し,臭柏と違い,下層に根を伸長させる傾向はみられなかった。
  • 長岡 希, 岡田 準人, 下村 孝
    2003 年 29 巻 1 号 p. 113-118
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    ビデオ画像を用い,屋上の緑化形態の違いによる景観評価構造の特性を把握しようとした。屋上緑化の現地調査から緑化形態を分類して12事例(屋上庭園5事例,芝およびセダムの単一種植栽(以下,単植)とその他の多種混植植栽(以下,混植)による緑化6事例,無植栽1事例)を抽出し,評価グリッド法およびSD法を用いて景観評価実験を実施した。プロフィール分析において,セダム単植による屋上緑化の心理的評価が最も低く,無植栽の屋上よりさらに評価が劣った。一方,芝単植による緑化は,屋上庭園よりもさらに心理的評価が高かった。因子分析において,屋上庭園と単植および混植による緑化では,身体感覚的評価因子および自然認知的評価因子が共通の評価因子として抽出された。また,屋上庭園では,上述の2因子に加えて,視覚的評価因子が共通の評価因子として抽出された。
  • 松井 理恵, 村上 健太郎, 森本 幸裕
    2003 年 29 巻 1 号 p. 119-124
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    造成後約30年を経た人工樹林地である大阪府の万国博記念公園自然文化園において,林床植生からみた自然回復度評価についての研究を行った。シダ植物の種数を指標として用い,近隣にある孤立林と比較したところ,調査地における出現種数は評価に値する水準にあるといえる。林床および石垣や水路などの人工構造物におけるシダ植物の出現種数について種数-面積曲線を描くと,林床では落葉樹林を含む場所で,人工構造物では上部を樹冠に覆われた小水路護岸で最も多くの種の出現がみられた。林床と人工構造物で多様度指数に有意な差はみられなかったが,出現種の内容が大きく異なる。調査地においては二次林林床で尾根環境を好む種の出現がみられず,谷地形を好む種についてもわずかな出現にとどまることが明らかになった。今後の緑地造成において多くのシダ植物が定着する環境を創出するためには定着場所となる構造物や変化のある地形,適湿な環境などを組み込んでいくことが有意義であろうと示唆された。
  • 三木 直子, Bardel AL-BALUSHI, 山口 康人, 吉川 賢
    2003 年 29 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    アラビア半島南部のオマーン湾沿岸に分布するヒルギダマシ(Avicennia marina(Forssk.)Vierh.)林において,林分構造の調査を行った。その結果,海に通じた水路沿いに発達したShinasのヒルギダマシ林では最大樹高は約6 m,平均樹冠投影面積は1.21 m2であった。林床には多数の実生が生育していた。一方,水路が海とつながっておらず,陸封された状態にあるQuriyatでは,最大樹高は4.5 m,平均樹冠投影面積は2.26 m2で,実生は全く見られなかった。両調査地ともに25 m2の大きさのコンパクトなコロニーがランダムに分布する空間分布の特性を示した。特に,実生が多数発生しているShinasではコロニー構造が顕著であった。
  • 東 季実子, 小林 達明
    2003 年 29 巻 1 号 p. 131-134
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    二次林の適正な林床管理のため,近年その繁茂が問題となっているアズマネザサ(Pleioblastus chino Makino)の生育に及ぼす諸要因を検討した。数量化I類で分析をおこなった結果,土壌pHの4.9以上の地点でササの生育が良好で,pHの4.3未満の地点でササの生育が抑制されていることが明らかになった。他には,下部の緩やかな斜面,園路, 伐採区に接している地点でササの生育が促進されていた。またアカマツ林下では,ササの生育が劣る傾向にあった。ササの生育の旺盛な地点ではササの防除管理を重点的におこなうことが必要である。
  • 直播きによる野生ツツジ群落復元実験
    森本 淳子, 柴田 昌三, 長谷川 秀三
    2003 年 29 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    里山二次林における野生ツツジ群落復元手法の確立を目的として, 野生ツツジ2種の直播き実験を行い5年間モニタリングを行った結果, 1)種子の着床面が浸食されにくく水分保持能力の高い播種床を用いると, 高い種子発芽率が得られる, 2)実生の定着には1)の条件に加え, 一定の光環境が必要である, 3)明るい光環境下で施肥効果のある播種床を使うと, 耐性のある幼木サイズまでの初期成長が早いため成立本数が多くなる, ことなどが明らかになった。遷移が進み林冠が閉鎖した二次林内に野生ツツジ群落を復元するには, 林冠を疎開した上で, 緩行性の肥料を含むやや荒い粒径組成の土壌を播種床とし, 平滑かつ水平に整備した表面に, 冷蔵乾燥貯蔵種子を, 春の早い段階で播くと効果的であると考えられる。
  • 市川 貴美代, 稲本 勝彦, 土井 元章, 今西 英雄
    2003 年 29 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    温度と期間を変えてクロッカス(Crocus medius Balb.),スイセン(Narcissus cyclamineus DC),ムスカリ(Muscari armeniacum Leithl. ex. Bak)の球根を乾燥で貯蔵し,秋に露地に植付けた。クロッカスにおいては,20°Cでの貯蔵が花芽分化と開花を早めることに,30°Cでの貯蔵がこれらを遅らせることに有効であった。また,スイセンとムスカリでは花茎伸長のための低温要求を9°Cでの貯蔵により満たすことで開花を早めることができた。複数の貯蔵方法を組合わせることにより,クロッカスでは11月から2月まで,スイセンとムスカリでは1月から4月まで,それぞれ連続して花を観賞することができた。冬季に開花した花は,季咲きに比べて観賞価値が長く保たれた。
  • 森田 裕介, 中村 彰宏
    2003 年 29 巻 1 号 p. 147-152
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    近畿地方に分布する5種のヤナギ属苗を湛水条件に設置し,成長量および気孔コンダクタンスを計測し,湛水条件が成長と生理特性に与える影響を評価した。またこれらの湛水条件後に湛水や潅水を停止して乾燥条件を与え,過湿から乾燥状態への環境変化に対する種ごとの反応を気孔コンダクタンスの変化と枯死時の土壌含水率から評価した。不定根の形成は河川下流域に分布する種で早かった。また河川下流域に分布する種は,湛水条件下での気孔コンダクタンスの低下が小さく,耐湛水性があった。湛水後の乾燥条件では,河川下流域に分布する種は,山地,河川上流に分布する種よりも高含水率で枯死した。
  • 三谷 智典, 小杉 緑子, 谷 誠, 高梨 聡, 片山 辰弥, 和田 卓己
    2003 年 29 巻 1 号 p. 153-158
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    滋賀県南部桐生水文試験地のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)人工林において土壌呼吸量の時間的, 空間的変動と,それらに対する地温,土壌水分の影響に関する調査を行った。調査は,流域内に内部を1 m間隔に区切った4 m×4 mのプロットを4箇所設置し,その格子点上の土壌呼吸量,地温,土壌水分の測定を行った。土壌呼吸量は,時間的には地温に大きく依存すること,各プロット内では,そのプロットの平均値周辺を中心とした頻度分布を示すこと,プロット間の比較から,土壌水分の高いプロットや,夏場の乾燥の影響が大きいプロットで小さくなることが示された。各プロットにおける年間土壌呼吸量は,地温との関係から,454-566 gC/m2/yrと推定された。
  • 今西 純一, 杉本 香葉子, 森本 幸裕
    2003 年 29 巻 1 号 p. 159-164
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/09/16
    ジャーナル フリー
    熱慣性特性値(thermal response number, TRN)は,入力放射エネルギーにたいする地表面温度の変化を表す地表面の熱慣性指標である。本研究においてわれわれは,夜明けから約30分後の気温を用いてTRNの観測数を1回に減らす代替熱慣性特性値(alternative thermal response number, ATRN)を新たに提案し,TRNおよびATRNの植生水ストレス指標としての有効性を検証するために,擬似群落を用いた実験を行った。その結果,航空機搭載のTABI同等の熱赤外センサー(相対精度0.1 °C)を用いて,夜明け頃と9:00-11:30に地表面温度を観測し,地上で同時測定した下向き短, 長波放射量とあわせて算出されるTRN(dawn)を用いることにより,LAIがおおよそ4の植生の水ストレスの有無を測定することができる可能性が示された。
技術報告
feedback
Top