栃木県の環境税等を用いて下刈り管理が再開された雑木林において,林床の木本植物の種多様性を調査した。10年継続管理区,5年前管理区,20年放置区を設け,10 m2の調査区各8箇所で種毎の個体数と樹高を計測した。その結果,47種,計3,947個体の生育を確認した。下刈りが再開された10年継続管理区,5年前管理区では,ヤマツツジ,ウリカエデが個体数で優占し,それらは低い樹高階層に集中して生育していた。下刈りの継続に伴い,これらの種は矮性状態となり,多数の萌芽により生残すると考えられた。管理強度に伴って種数及び個体数は有意に増加し,特に10年継続管理区では平均360個体/10 m2と高い密度を示した。下刈りの再開で,多様度指数は20年放置区に対して有意に増加した。しかし,下刈りを1回実施した5年前管理区に対しては,下刈りを継続した10年継続管理区の指数値の増加は認められなかった。アズマネザサの高さとの関係では,種数(r=-0.906),個体数(r=-0.766),多様度指数(r=-0.690~-704)ともに負の相関が見られた。多様度指数の相関係数が最も低かったのは,10年継続管理区でヤマツツジやウリカエデ等の一部の種が突出して多く生育したためと考えられた。
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