日本緑化工学会誌
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最新号
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学会賞受賞寄稿
特集「OECMで活きる!生物のすみかとしての文化的緑地」
特集「ランドスケープの生態的レジリエンスを考える」
短報
  • 古澤 優佳, 千葉 翔
    2024 年 49 巻 3 号 p. 305-308
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    積雪量の異なるスギの再造林地に2種類のツリーシェルターを3年間設置し,融雪後の破損と積雪深の調査による耐雪性の比較から,積雪寒冷地域における導入の難易を考察した。資材高170 cmのチューブタイプは,恒常的に160 cm前後の積雪を記録した試験地において50%が破損したため,補修作業を前提としない導入は困難と考えられた。これに対し,3年間の最大積雪深が85 cmの試験地ではまったく破損がなく,75 cmの試験地でも破損は6.7%に留まった。したがって,毎年の積雪深が80cm前後の地域であれば,チューブタイプを導入しても支障は少ないと思われた。一方,ネットタイプの破損本数は,すべての試験地でチューブタイプよりも多かったことから,積雪寒冷地域においては,チューブタイプの使用を優先的に検討するのが望ましいと考えられた。

技術報告
  • 戸田 克稔
    2024 年 49 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    土壌への雨滴衝撃や踏圧等によって土壌の表面や表層が硬化し降雨の浸透能が現に低下している都市内の林地において,土壌の表面を落葉や木チップによって単に被覆するだけで降雨の浸透能が向上するのか否か,また,土壌の表面を落葉等によって被覆する前に土壌の表面をほぐしたり表層を耕耘したりすることで降雨の浸透能がさらに向上するのか否か等を把握するために,横浜市内の落葉広葉樹林地において,実証実験として散水型浸透計により120 mm/h程度の人工の雨を降らせ,浸透率(終期浸透能÷降雨強度×100%)を算定した。その結果,強い雨滴衝撃等を受けた後の土壌の表面を単に落葉や木チップによって被覆するだけでは,降雨の浸透率は向上せずむしろ低下すること,土壌の表面を落葉等によって被覆する前に表面から深さ1 cmまでほぐせば,その下部の土壌の浸透能に応じて降雨の浸透率が向上することが分かった。その一方で,土壌の表面を落葉等によって被覆する前に土壌の表層を表面から深さ5 cmまで耕耘することで,表面から深さ1 cmまでほぐした場合に比べて降雨の浸透率がさらに向上するのか否かについては,今回の実験では十分に実証できなかった。

  • 中川 宏治
    2024 年 49 巻 3 号 p. 314-319
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    二次林に隣接する針葉樹人工林の林分における,択伐と防護柵の設置を組み合わせた天然更新に着目し,択伐して5年後の更新木の種組成とその要因について検討した。その結果,実生と稚樹の種組成および幹本数は立地条件の影響を受け,プロットにより大きく異なることが示された。稚樹の幹本数に基づきクラスター分析を行ったところ,各プロットは5つのグループに分類された。各グループについて,更新木の生活型ごとの種組成と,相対照度,隣接する広葉樹林の状況や地表撹乱の有無との関係について検討した。その結果,相対照度が低い状態が続いていても一定数の先駆種の稚樹の生存が可能であること,スギとヒノキの稚樹が生育する条件として地表撹乱が重要であることなどが示唆された。

  • 大澤 啓志, 吉岡 威, 能勢 彩美, 肥後 昌男
    2024 年 49 巻 3 号 p. 320-325
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    施工後27年が経過したアクロス福岡の植栽基盤中の真菌相についての実態把握を試みた。DNA検出数は,担子菌門Basidiomycota及び子嚢菌門Ascomycotaがそれぞれ4割程度を占め,次いでケカビ門Mucoromycotaもしくはクサレケカビ亜門Mortierellomycotaの割合が多くなっていた。-10 cm,-30 cm,-50 cmの採取深度による真菌相の群集構造の差は必ずしも明瞭ではなく,有意差が認められたのは極一部の分類群のみであった。むしろ,採取階(採取地点)による群集構造の差がより顕著であった。有効態P,交換性Ca,全窒素,CEC,腐植含量で下層にいくに従い値が下がる傾向が認められたものの,真菌相の群集構造にはあまり影響しなかったものと判断された。周辺の自然的立地(南公園・立花山)と比較した結果,本屋上緑化地の真菌相は門レベルでは概ね類似した割合傾向ではあったが,属レベルで見ると自然的立地とは異なる,独特の群集構造を形成していることが明らかになった。アクロス福岡の屋上緑化地は,地上部の樹々の成長に加え,分解者そして菌根共生としての植栽基盤中の真菌相も含め,成熟した都市の森になりつつあると判断された。

技術資料
  • 吉田 寛
    2024 年 49 巻 3 号 p. 326-329
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    1974年に富士スバルライン(山梨県)で行われた,わが国初の厚層基材吹付工(植生基材吹付工)の試験施工地を紹介する。この試験施工は,東興建設株式会社(当時)がON吹付緑化工法の開発を目的に実施したもので,標高2,020 mの高標高地において外来牧草類と在来木本類の混播が行われた。これまで施工後の植生の経年変化に関する報告はなされておらず,残された写真を見ると,施工9年後時点で外来草本類が優占しており,その状態がしばらく持続したと思われる。その後は,約27年後時点で木本植物の混生が認められ,約48年後の追跡調査時には,開発の痕跡がわからないまで自然回復が進んでいることを確認した。

コラム 緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る
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