石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
21 巻, 1 号
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  • 森田 義郎
    1978 年 21 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    現在重質燃料のガス化はエネルギー資源の低公害有効利用法として注目されている。この重質燃料のガス化プロセスは種々提案1)されているが, ドロマイトや石灰を用いるプロセスはこれらの物質が脱硫能力を有することから最も経済的でしかも環境問題に対して有効なプロセスであり, 第3のガス化法として最も期待されているものである。実際, 残油のガス化法として石灰の流動層を用いるイギリスの Esso Research Center の開発によるCAFB法4)や Westinghouse Research Laboratories によって開発されたドロマイトを用いる石炭の流動層によるガス化プロセス5)等がある。さらにこれらの塩基性物質が高温での残油のガス化に対し活性な触媒であることも従来の研究6),7)15)-17)から明らかにされている。この塩基性物質を触媒としてガス化プロセスに用いたものとして東洋エンジニアリングと東京瓦斯が開発したTHR法8)や三井造船と三井鉱山コークスで開発した M-Gas 法がある。
    しかし工業的な開発研究に比較してこれらの塩基性物質の触媒作用や反応に関する基礎的研究は少ない。そこで本論文では燃料ガス製造を目的として焼成ドロマイト流動装置を用い常圧下での8種の異なる残油の水蒸気改質の研究を行った。
    まず反応温度 (Table 2), 滞留時間 (Fig. 4), 水蒸気比(Fig. 5) 等の諸条件を検討したがその最適条件は反応温度900°C, 滞留時間0.4秒以上, 水蒸気比2~9である。この条件下では90wt%以上のガス収率が得られた。
    いずれの残油を原料油に用いてもほぼ45%の炭素がCO, CO2に改質された (Fig. 6)。一方CH4, C2H4のような気体炭化水素の収率は使用した残油によって変化した。そしてその収率は残油の飽和成分の含有量と良い相関性を示した(Fig. 6)。この相関関係から気体炭化水素は主として残油中の飽和成分の分解により生成することが示唆された。気体生成物 (CO+CO2, 炭化水素, H2, H2S) へ転化されない原料残油の割合とアスファルテックス成分 (アスファルテン分+レジン分) の含有量とが良い対応を示した (Fig. 7)。このことからアスファルテックス成分のように重質な成分はガス化されにくいことが推定された。
    水蒸気改質により生成する水素の経時変化と析出炭素量のそれとが対応すること (Fig. 9), 析出炭素と水蒸気との反応速度と水蒸気改質活性 (CO, CO2の生成速度) とが良く対応すること(Table 3)から, ドロマイト上での水蒸気改質は中間体が活性点上に析出した炭素であるという機構によって説明された。
    ガス化中同時に硫化水素はドロマイト中のCaOによって除去された。滞留時間の影響 (Fig. 12) および水蒸気比の影響(Fig. 13) の検討から脱硫反応速度は大で, 次に示される反応の熱力学的平衡近くで抑えられていることが示された (CaO+H2S〓CaS+H2O)。生成ガス中のH2S濃度は残油中の硫黄含有量にほとんど無関係であり900°Cでは約0.1vol%であった (Fig. 14, Table 4)。この結果からもドロマイトは生成ガス中のH2S濃度を上式の平衡値まで減少させることが明らかとなった。このガス化で得られた燃料ガスを燃焼に必要な化学量論量の105%の空気で燃焼すると, 燃焼廃ガス中のSO2濃度はほぼ200ppmになる。このSO2濃度はミナスの常圧残油を同じ空気量 (燃焼に必要な化学量論量の105%) で燃焼したとき生成するSO2濃度の2/3である。
  • 無触媒反応 (1)
    冨田 忠義, 菊地 克俊, 坂本 隆幸, 大塚 広次, 石田 寿広
    1978 年 21 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    重質油ガス化の基礎的知見を得るために, 比較的高分子量で, 構造的に単純なn-パラフィンと水蒸気との非接触的反応実験を行った。流通式反応装置を用いて温度範囲900~1,100°C, H2O/C比1.5~3.22 (モル比), 滯留時間4秒以下の条件で反応させた。反応管軸方向のガス組成分布を測定して検討した。(CO+CO2) の生成速度はC2H4について擬2次反応として整理でき, 炭化水素と水蒸気の無触媒反応においてC2H4またはそのラジカルが反応中間体として極めて重要な役割を演じていることが示唆された。またCH4の水蒸気改質反応についてはCH4の反応率は非常に低いことが明らかになった。
  • ピッチ中のキノリン不溶分のアルキル化又はアシル化による可溶化
    持田 勲, 岩永 喜陽, 前田 恵子, 竹下 健次郎
    1978 年 21 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    キノリン不溶分を含有するクレハピッチの炭化性改質を目的として, 塩化アルミニウムを触媒とするフリーデル•クラフトアルキル化およびアシル化によるクレハピッチ中のキノリン不溶分の化学的改質を検討した。キノリン不溶分の90%以上が適当な実験条件下でこれらの反応によりベンゼンに可溶な成分に転換でき, この収率はアルキル化剤あるいはアシル化剤の鎖長および使用量に大きく依存した。これらの可溶化反応はピッチの炭化性を低下せしめ, 出発ピッチが異方性モザイクコークスを生成するのに対して, 等方性コークスを生成した。置換基効果の観点から, 可溶化および炭化反応機構について議論した。
  • 渡辺 竹春, 佐藤 綱一, 大久保 洋二
    1978 年 21 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    560°Cで150,000時間使用後の21/4Cr-1Mo鋼加熱炉管の調査結果から, 極めて著しいぜい化が起こっていることが判り, このことは装置の劣化状況を評価する上で, 重要な因子になるものと考えられた。
    供試材に種々の熱処理を行い, ぜい化に及ぼす熱履歴の影響をみると, 衝撃値特性は極めて複雑な挙動を示し, Larson-Miller パラメーターの如き単純な時間-温度の等価関係のみでは評価し得なかった。
    また, 高温長時間使用により, 著しくぜい化した材料でも, A1以下の短時間加熱によって, 容易に当初のじん性が回復する現象がみられ, 補修やメインテナンスの観点からみたとき, 非常に好都合な性質であると思われた。
  • 大沼 浩, 坂本 和紀, 鈴木 重行
    1978 年 21 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油系減圧残さ分解油の有効利用を企図して, 過熱水蒸気による減圧残さの低温熱分解油中に存在する直鎖成分の分離と分析を行った。直鎖成分の分離には尿素付加法を, その分析にはGC, MS, 13C-NMRなどを用いた。
    直鎖成分は軽質分解油の全沸点範囲に亘ってほぼ均等に分布しており, その含有率は20%を越えた。また直鎖成分はパラフィンとオレフィンから成り, 両者の割合は約7対3であった。直鎖オレフィン (C9~C12) の約80%はα-オレフィンであり, 十数%が2-オレフィン (トランス体が主), 他の内部オレフィンはわずかであった。減圧残さ熱分解工程に直鎖成分分離工程を付置することにより, 分解油の有効利用が期待される。
  • ピッチ性状に及ぼす低濃度酸素吹込みの影響
    福井 行正, 細井 提吉, 向田 平八郎, 牧田 尚, 西村 淳
    1978 年 21 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油減圧残油の熱処理において, 窒素で希釈した酸素を吹込み, 生成したピッチの性状および化学構造に及ぼす影響を検討した。ピッチの軟化点, 固定炭素およびC/H比は, 酸素を吹込むことにより顕著に増大するとともに粘結性も向上した。ピッチをそれぞれn-ペンタン, ベンゼンおよびキノリンで順次溶剤分別し, 各分別成分量の時間的経過から速度定数を求めた結果, 通常の熱処理法と比べて約2倍の値を示し, 重質化が促進されることが分った。また元素分析およびNMRデータから各分別成分の構造パラメーターを求めた結果, いずれも芳香族性 (fa) が増加し, 一方芳香族環の置換度指数 (σ) および側鎖置換基の平均炭素数 (n) は減少する傾向を示した。
  • 新田 登
    1978 年 21 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究はルーズな状態 (低粘度, 高空げき率状態) のアスファルト混合物の力学性状を解析することによって, 良好なパフォーマンスを有するアスファルト舗装の建設に対して施工面からアプローチするための基礎データを得ることを目的としたものであり, 単純ずり試験の原理を用いて試作した装置を用いて実験を行った。実験結果より, 他の条件が同一ならば空げき量によつて力学性状が主としてアスファルトの粘度に依存する領域と, 骨材のかみあわせ効果に依存する領域とに区分されることを明らかにし, 施工時の各段階において管理すべき因子, 採用すべき施工条件の選択に重要な情報を提供するであろうことを指摘した。
  • 持田 勲, 前田 恵子, 竹下 健次郎
    1978 年 21 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ピッチ中に含まれている光学的に等方性のキノリン不溶分 (QI) は, 炭化時中に形成される異方性球晶とはキノリン不溶という点では同じであるが, 炭化性ならびに黒鉛化性が大きく異なつている。このような相違を究明するために, X線回折, 元素分析等の固体の構造解析法に加えて, 可溶化反応を利用して溶媒に可溶となったQIについて, NMR, 分子量分布測定を行い, QIの化学構造を検討し, 球晶と比較した。QIには, 比較的小さな分子の集合が少なく, 芳香族単位の分子量が比較的均一で大きく, 球晶の場合の約2倍である。さらに, 芳香族水素に加えて脂肪族水素も含有されており, 高度に縮合した芳香族環がメチレンあるいはエチレン類似結合で連結されていると考えられる。
  • 横山 宏, 佐野 強, 千々石 勉, 加治屋 隆司
    1978 年 21 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートの重縮合反応は, 速度定数および平衡定数が小さいために副生物の拡散速度が反応の進行に大きく影響する。本研究では純粋な化学反応速度を求めるために実験および解析を行った。実験装置 (Fig. 1) は約1.0lのSUS製で触媒に三酸化アンチモン, 安定剤にリン酸トリフェニルを用い280°C, 0.6 Torr, 40rpm, 安定剤濃度0.06% (w/wモノマー) で, 触媒濃度を0.01, 0.03, 0.06および0.09%(w/wモノマー) での実験を行った (Fig. 3)。
    さらに無触媒の場合と触媒濃度0.06%, 0.6 Torr, 40rpm, 安定剤濃度0.06%で280°C, 275°C, 285°Cでの各温度条件下で実験を行い (Fig. 4), 得られた結果を解析して (Fig. 5) 速度定数を求めた (Fig. 6)。
    ポリマーの分析はフェノール: テトラクロロエタンの混合溶媒 (1:1w/w) を用いて極限粘度より算出した (Fig. 2)。
    Fig. 6の結果から, 無触媒および触媒存在下における活性化エネルギーE1, nonおよびE1, catを求めて触媒濃度Cxとひん度因子の関係 (Fig. 7) から速度定数k1を次式により決定した。
    k1=84.5Cx•108e-E1,cat/RT+4.0•1016e-E1,non/RT
    ここで R: 1.987 (cal/mol•°K) E1,cat=18,500cal/mol
    T: 絶対温度 (°K) E1,non=40,000cal/mol
    である。
    この結果からの計算値は他の実験結果を含めて±9%以内の誤差で実測値と一致した (Fig. 8)。
    得られた結果は反応器の設計に適用できる。
  • アイソタクティックポリプロピレン粉末の光酸化
    塩野 武男, 二木 鋭雄, 神谷 佳男
    1978 年 21 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーの光酸化反応についてはこれまでに多くの研究がなされているが1)~7), この反応における酸素収支について検討した報告は非常に少ない。我々はアイソタクティックポリプロピレン (PP) 粉末に低圧水銀灯を照射した際の光酸化反応について検討した。PP粉末を水に浮かせ30W低圧水銀灯を照射すると, 低温でも極めて速かに酸化反応が進行することが認められた。Fig. 1に, 70°C, 中性水およびアルカリ水を用いて光酸化を行ったときの酸素吸収曲線を示したが, この図よりいずれの場合も誘導期もなく速かに酸化が進行していることがわかる。
    本反応の特徴は, 反応率によらず吸収酸素の約半分が二酸化炭素生成に関与することである (Table 1)。二酸化炭素と水は酸素酸化反応における最終生成物であるが, 低温で, しかも反応率が低いところで二酸化炭素が高収率で生成する反応は極めて特異なものである。PPについても, バルクの酸化反応では二酸化炭素の生成は微量で, 主生成物はハイドロパーオキサイド, アルコール, ケトン, アルデヒドである12)~14)。本反応においても, 二酸化炭素に加えて, 過酸化物, カルボニル化合物の生成も認められ, 又, 微量のメタノール, 酢酸, アセトン, 過酸化水素の生成も確認された。これらの生成物により, 吸収酸素の80~90%が明らかにされた。
    酸素圧が低い場合, 水素, メタン, 一酸化炭素が検出されたが, 150torr以上になるとこれらの生成はほとんど認められなくなった (Fig. 3)。これらの事実は紫外線照射により水素原子, メチルラジカルがPPより生成することを示唆している。
    30~70°Cの温度範囲では, 酸化速度, 生成物分布に対する温度の影響は小さかった。また水の存在の有無によっても本質的な差は生じなかった (Table 1)。PP粉末の大きさについては, 粉末のサイズが小さくなり, 表面積が大きくなるつれて酸化速度は増加したが, 生成物に対する影響はなかった (Table 2)。
    PPのモノマー単位あたりの酸素吸収量が極めて高い反応率に達しても, 酸化反応後PPの多くは回収され, PP中へとり込まれる酸素の量は非常に小さいことが分かった (Table 3)。
    以上述べたように, PP粉末に低圧水銀灯を照射したときの紫外線酸化の特徴は, 酸化速度が非常に速いこと, さらに二酸化炭素が低温にもかかわらず, しかも反応率によらず高収率で生成することである。本反応の機構についても考察した。
  • 間山 正一
    1978 年 21 巻 1 号 p. 68-76
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本論文は新しい舗装材料として注目されているエポキシアスファルト混合物 (エポキシ樹脂, 硬化剤, アスファルト, 骨材の混合によつて得られる混合物) の基礎的力学性状を明らかにすることを目的に実験を行ったものである。その結果, 温度と載荷時間 (ひずみ速度) に依存する動的性状, 破壊性状, クリープ挙動が明らかにされ, また換算変数法の導入によって長時間の載荷時間領域にわたる各種力学挙動のマスターカーブおよびシフトファクター•温度曲線などを得, さらに従来舗装材料としても最も広く利用されているアスファルト混合物の力学挙動との差異についても検討を行った。
  • 横山 宏, 佐野 強, 千々石 勉, 加治屋 隆司
    1978 年 21 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレートの重縮合反応に及ぼす減圧の効果を検討するために, 0.3~20.0 Torr の各圧力下で実験を行った。
    反応触媒には三酸化アンチモン, 安定剤にはリン酸トリフェニルをモノマー量に対して各々0.03wt%及び0.06wt%添加した。
    重縮合の進行が主として末端エチルエステル基の脱エチレングリコール反応によるものと仮定し, 2次反応モデル式からシミュレーションを行い, 実測値と良好な一致を得た。(Figs. 1~4)
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