石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
35 巻, 5 号
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  • 桑原 昌宏, 林 洋夫, 田中 通雄
    1992 年 35 巻 5 号 p. 367-375
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アミノ化技術の一つとして, m-アミノフェノール (MAP) の新規製造技術の開発に成功した。本技術はレゾルシンとアンモニアの脱水縮合反応によりMAPを合成する方法であり, モリブデン酸塩が触媒として特異的に高活性, 高選択性を示すことを見い出した。ニトロベンゼンからスルホン化, 還元, アルカリ溶融でMAPを製造する従来法と比べ, 地球環境に優しい製造プロセスを開発した。さらに, アンモニアをアルキルアミンに置き換え, 種々のN-アルキルアミノフェノール (AMAP) 誘導体の開発を行った。AMAP合成反応では有機酸類の添加が効果的であることが明らかになった。
  • Mokhtar M. EL-GASSIER
    1992 年 35 巻 5 号 p. 376-381
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    天然ガス井における圧力損失を計算するときに, ガスの運動エネルギーを考慮に入れるか否かによって, 計算結果がどのように異なるかについて検討した。運動エネルギーに影響を及ぼす因子のうちで, ガスの比重, 流速, 井戸の径, および井戸の深さが増大すると, ガスの運動エネルギーを考慮に入れる場合と入れない場合の圧力損失の差がより大きくなる。一方, フリクションファクターおよび井戸の底の温度が上昇すると, 両者の差は小さくなる。圧力損失に最も大きな影響を及ぼす因子は, ガスの比重と井戸径である。
    標準的な井戸についてケーススタディーを行うと, ガスの運動エネルギーを考慮に入れる場合と入れない場合の違いは約0.2%である。また, 極端なケースではその差は約3%にも達する。
  • 程 暁明, 松前 祐司, 橋本 文作, 鹿毛 聡, 大隅 角治, 堀井 清之
    1992 年 35 巻 5 号 p. 382-389
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油化学工業のパイプラインの修理には通線工事が伴う。スパイラル流発生ノズルによる効率的な通線技術を開発したことを前報で述べた。本報はジェットを噴出する環状スリットと漸縮小構造からなるコアンダスパイラルノズル内におけるスパイラル流の発生メカニズムを解析するものである。環状スリットから流体が噴出すると, その不安定性によって初期旋回成分が発生し, コアンダ効果と漸縮小構造によって旋回成分が成長し, 乱れが少ないスティーパーな軸流速分布を持つスパイラル流へ変化することが分かった。これにより, ノズル内の中心にロープが位置決めされ, 通線効率が高くなったものと思われる。
  • ロープの位置決めと安定性の解析
    大隅 角治, 程 暁明, 松前 祐司, 橋本 文作, 鹿毛 聡, 堀井 清之
    1992 年 35 巻 5 号 p. 390-396
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油化学工業のパイプライン修理には通線工事が伴う。スパイラル流発生ノズルによる効率的な通線技術を開発したことを前報で述べた。本報はスパイラル流通線におけるパイプライン内のロープの位置決めとその安定性を解析するものである。
    従来の乱流による通線ではロープがパイプラインの半径方向でランダムに振動するのに対し, スパイラル流通線ではロープがパイプラインの軸を中心とする円柱面上に位置決めされ, 安定したら旋運動を行う。
    スパイラル流通線では, ロープに加わる半径方向の静圧力こう配と半径速度による形状抗力からなる求心力と旋回運動による遠心力とが, パイプラインの半径方向のある位置で力学的に釣り合い, ロープが常にその位置からなる定位円上に保持される。このスパイラル流による位置決め作用は, ロープの自励振動や管壁との衝突, 摩擦現象を効果的に抑え, 通線に伴うエネルギーの損失を低減させ, 高い通線能力をもたらしたものと思われる。
  • ロープに作用する搬送力の解析
    大隅 角治, 程 暁明, 松前 祐司, 橋本 文作, 鹿毛 聡, 堀井 清之
    1992 年 35 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油化学工業のパイプライン修理には通線工事が伴う。スパイラル流通線におけるロープの位置決めとその安定性について前報で報告した。本報はロープに加わる搬送力を解析するものである。
    流れとロープとの相互作用によって発生する搬送力は, ロープ表面の接線方向に働く摩擦抗力と法線方向に作用する形状抗力の軸方向成分によって構成される。スパイラル流通線では, ロープがパイプラインの軸を中心とする定位円柱面上に位置決めされ, 安定したら旋運動を実現する。このスパイラル流の位置決め作用は, 持続かつ安定した搬送力をもたらし, 高い通線効率を実現した。
  • (第2報) 脱硫反応に及ぼす反応圧力の影響と難脱硫化合物の反応性
    坂西 欣也, 安藤 亮, 持田 勲
    1992 年 35 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ディーゼル軽油の深度脱硫 (硫黄含量0.05wt%) を達成するため, 市販のCoMoおよびNiMo触媒を各段で用いる低圧 (30~40atm) 二段水素化脱硫反応を行った。320°Cで深度脱硫を達成するには少なくとも水素圧50atmが必要であった。340°Cでは30~40atmで硫黄含量を0.06wt%まで低減できたが, 生成油が蛍光を呈した。第二段反応で深度脱硫を達成し, かつ蛍光着色のない生成油を得るには, 少なくとも40atmの水素圧が必要であった。また第一段反応で, 強い蛍光発色なしに硫黄含量を0.15wt%以下まで低減させておくべきであることが明らかになった。脱硫反応前後の硫黄化合物の分析により, ディーゼル軽油中で最も脱硫されにくい化合物は, 4-メチルジベンゾチオフェンおよび4,6-ジメチルジベンゾチオフェンであり, 深度脱硫の達成にはこれらの化合物の脱硫が不可欠であることがわかった。4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの脱硫反応生成物は主として, メチルシクロヘキシルトルエンおよびジメチルビシクロヘキシルであり, ジメチルビフェニルは少量であった。前者の生成物ではメチル基の転位が起こっていたが, 後者では起こっていなかった。したがって, 隣接するフェニル基の水素化あるいはメチル基の転位によって, メチル基の立体障害を解消することにより, 脱硫反応が促進されると考えられる。NiMo触媒は, フェニル基の水素化活性がCoMoより高いため, より高い脱硫活性を示した。二段水素化脱硫は, 第一段で大部分の脱硫されやすい化合物を水素化を伴わず脱硫して水素の消費量を抑え, メチル基の立体障害で触媒上に吸着されにくい4,6-ジメチルジベンゾチオフェンを, 第二段反応でより効率よく水素化脱硫できる。つまり, 穏和な反応条件での効率のよい脱硫が行え, さらに全体の水素消費量を低減できる点で優れている。4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの高温•低圧脱硫反応で生成する蛍光物質は, 分子量268であった。その構造と生成経路について議論した。
  • 長田 秀夫, 田中 欣之, 柴 茂栄, 若林 勝彦
    1992 年 35 巻 5 号 p. 409-415
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    白金族貴金属触媒における二酸化炭素の吸着挙動とその水素化反応特性との相関を調べ, 白金族貴金属触媒による二酸化炭素接触水素化反応特性の支配因子を反応分子の吸着挙動から検討した。その結果, 触媒の吸着点における金属と二酸化炭素との相互作用が強いほどターンオーバー頻度が増大した。また, 二酸化炭素との相互作用が比較的弱いパラジウムや白金では一酸化炭素の生成が観察された。これらの結果は吸着点での金属と二酸化炭素との相互作用が二酸化炭素の接触水素化反応特性に影響を及ぼすことを示している。
    一方, 触媒の吸着点における金属と水素の相互作用の強さに関しては触媒金属による差異はほとんど認められず, しかもその相互作用は二酸化炭素とのそれに比べ弱かった。したがって, 触媒上での吸着点と水素との相互作用の強さは水素化反応特性の支配因子にはならないと考えられる。
    また, 一酸化炭素は二酸化炭素の吸着を阻害するため, 一酸化炭素の共存は二酸化炭素の接触水素化活性を低下させた。
  • 山本 佳孝, 三木 啓司, 佐藤 芳樹
    1992 年 35 巻 5 号 p. 416-422
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石炭液化油等の化石資源から製造される重質油中には, 医薬品あるいは機能性高分子材料の原料として利用可能な特異な骨格構造を持つ化合物が数多く含まれている。しかし, 液化油は多様なアルキル芳香族化合物の混合物であり, 含有されるそれぞれの化合物の濃度は低い。そこでこれを脱アルキル反応によりいくつかのアルキル側鎖の少ない化合物に整理•濃縮することが分離•精製のための有効な手段と考えられる。
    本研究では, 前報に引き続きアルキルベンゼン類から高純度ベンゼンを生成する反応として知られている熱的水素化脱アルキル反応により, 石炭液化油を高濃度の単純な化合物に整理•濃縮する方法について検討した。また, コールタールや石油系のLCO等由来の異なる油についても同様の反応を行い, 原料による生成物性状の違いについて検討した。その結果, (1) 水素化脱アルキル反応により, これらの重質油の中の成分をいくつかの単純な芳香族骨格構造を有する化合物に整理•濃縮できることがわかった。(2) これらの油に特徴的な芳香族基本骨格構造はこの反応によってほとんど変化しない。(3) 油種の違いについては, 同じ石炭系重質油でも循環溶剤留分では常圧軽油留分には少ないアントラセン, フェナンスレン, ピレン等の3~4環芳香族が多く含まれること, 石炭液化油中に多いジベンゾフラン等の含酸素化合物は石油系のLCOでは見られない等, 油種により含有される化合物やその濃度は異なり, また脱アルキル反応温度により生成物中のナフタレンとメチルナフタレンの濃度比が異なることがわかった。したがって, 原料となる油の種類や分離目的とする化合物の種類等により, 反応条件の最適化が必要と考えられた。さらに, 石炭系重質油からの脱アルキル生成油中にはキノリン, インドール等の含窒素化合物が, 一方, 石油系重質油の場合にはベンゾチキオフェン等の硫黄化合物が検出され, 個々の芳香族炭化水素を精製する過程で不純物として混入する可能性が指摘できる。
  • 浦上 裕次, 大塚 潔
    1992 年 35 巻 5 号 p. 423-428
    発行日: 1992/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ホウ素とリンの酸化物からなるB-P-O(S)触媒を用いて, エタンからのアセトアルデヒド合成反応について研究した。このB-P-O(S)触媒をXRD•化学分析などで調べ, その構成成分を再現する目的でホウ素添加BPO4触媒(B/BPO4) を調製した。このB/BPO4触媒について, 反応活性とホウ素添加量の関係について調べた結果, アセトアルデヒド生成の活性点は土台のBPO4上に分散したホウ素酸化物と推定した。NH3-TPDの実験結果は, この高分散ホウ素酸化物がBPO4と強く相互作用していることを示した。提案した触媒モデルをもとに, アセトアルデヒド生成活性の高い触媒を設計した。
    また, エタンの気相無触媒反応を行い, 生成物分布, 流速依存性などについて触媒を用いた場合と比較した結果, 触媒を用いた場合には気相反応の寄与を無視できることがわかった。
    エタンと同じ軽アルカンの一つであるメタンからのホルムアルデヒド合成反応に対しても, B-P-O(S)触媒が有効であることを示した。
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