石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
37 巻, 3 号
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  • 仲 勇治
    1994 年 37 巻 3 号 p. 213-225
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エネルギー多消費型の化学プロセスを省エネルギー化するために様々な技術が開発されてきた。特に, 蒸留システムの省エネルギー技術は数多く提案されている。本論文は, 省エネルギー技術を効果的に蒸留システムに導入し, 評価できる統一的な手法に基づいたプロセス設計法について述べる。また, 今後利用が大いに期待できるヒートポンプ付き蒸留システムの設計法とその有効性や操作性について議論する。
  • 小松崎 茂樹, 本間 吉治
    1994 年 37 巻 3 号 p. 226-235
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    オゾン層の破壊を防止するため, カーエアコンや家庭用冷蔵庫に広く用いられてきたCFC-12はHFC-134aに替わりつつある。しかし, これらの機器に対して, 単にCFC系冷媒をHFC-134aに替えただけでは従来と同じ信頼性は得られない。新しい冷媒を用いた場合, 新しいシステムとそれに用いられる新たな材料の開発が必要である。材料の中で, 潤滑油の特性は圧縮機の耐久性に直接影響するので, 適正な潤滑油の開発は極めて重要である。本報では, 冷媒圧縮機用潤滑剤に対して要求される特性, 冷媒との相溶性, 潤滑性, 化学安定性などについてポリアルキレングリコール油とポリオールエステル油を評価した。潤滑油の分子構造の変性と多くの添加剤の適用によってバランスの取れた潤滑剤が得られた。しかし, 冷凍システムの信頼性をさらに高めるためには, 次の課題を解決しなければならない。(a)添加剤の消耗速度の低減, (b)添加剤間の相互作用, (c)添加剤の相互作用の化学安定性, 潤滑性等への影響。さらに, 潤滑剤がどんなに潤滑性に優れていても, 冷媒の濃度が高くなると潤滑性は極度に低下することも考慮しなければならない。
  • 栃木 勝己, 小島 和夫
    1994 年 37 巻 3 号 p. 236-245
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    活量係数の推算法であるグループ溶液モデルは常圧気液平衡の推算に広く使われており, 代表的なモデルであるASOG, UNIFACや修正UNIFACは現在約50グループからなる系に適用できるようになっている。グループ溶液モデルは最近, 3次型状態式と過剰自由エネルギー型混合則とを組み合わせた高圧気液平衡の推算にも利用できるようになった。また, 適用する混合物も極性物質はもちろん, 電解質やポリマーを含む系にまで拡張されている。さらに, 液液平衡, 固液平衡, ガス溶解度, 固気平衡などの溶解度や過剰エンタルピーへの適用性も拡大されている。
    本論文は筆者らが開発してきたASOGと, 世界的に広く使われているUNIFACによる熱力学物性の推算について, 最近の文献を中心にまとめたものである。
  • 丸谷 健一
    1994 年 37 巻 3 号 p. 246-254
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    酸化物触媒を用いるCOの水素化反応は選択的に分岐型炭素骨格の化合物を与える。ZrO2触媒を用いて623および673Kで生成するイソブテンの選択性は全炭化水素中70%以上である。CeO2触媒ではエチレンが主生成物となりC4炭化水素の選択性は約30%である。しかし, C4炭化水素中のイソブテンの選択性は80%以上である。反応温度が523Kの時ZrO2触媒ではもっぱらメタノールが生成するが, CeO2触媒ではジイソプロピルケトンと2-メチルプロパナールが二つの主生成物として生成する。反応機構をin situ IR, CP MASNMR, およびケミカルトラッピング法を用いて調べた。二つのキー反応からなる次のような反応経路が提案された: COとH2から生成したη2-ホルムアルデヒド種が熱分解してメチル, μ-メチレン, またはカルベン種を生成する。それはさらにカルボニル化反応によりアセトアルデヒドとなる。このように生成したアセトアルデヒドはホルムアルデヒドとのアルドール縮合型反応により, 2-メチルプロパナールを与え, このものはさらに水素化と脱水反応を受けてイソブテンを生成する。アセトアルデヒドはケトン化反応によりアセトンとなり, さらにアルドール縮合型反応によりジイソプロピルケトンのような化合物を与える。酸化物触媒でのCO水素化反応速度は通常遷移金属触媒に比べ二けたほど低い。より高い活性を持つ酸化物触媒を探索した結果, Fe2O3-またはCoO-CeO2-ZrO2触媒がZrO2に比べ約6倍の活性を示すことを見い出し, それぞれの金属イオンの役割を検討した。
  • イソブチレンオリゴマーの低圧コッホ反応
    川崎 宏, 加藤 正, 今田 宗一郎, 三輪 秀明, 山田 侃
    1994 年 37 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    銅カルボニル触媒を用いたイソブチレンオリゴマーの低圧コッホ反応の工業化を検討した。技術開発のポイントとなる1バッチあたりの反応収率および触媒リサイクルについて改良した結果, 高活性, 高選択率, 長寿命のCu(CO)n+-H2SO4-H3PO4-H2O触媒系を開発した。このH2SO4-H3PO4-H2O混酸系を使用して, 銅濃度1.5wt%, 反応温度5°C, 一酸化炭素圧力1.6MPaの低温低圧条件でトリイソブチレンを反応させ, 転化率100%で, C5~C8酸14.3%, C9酸18.2%, C13酸67.5%の高純度三級カルボン酸混合物を得た。三級カルボン酸をn-ヘキサンで抽出した後の触媒は次のカルボキシル化反応に再使用できた。
  • 分岐ドデセンからの分岐三級トリデカン酸合成における触媒のリサイクル
    川崎 宏, 加藤 正, 山田 侃
    1994 年 37 巻 3 号 p. 261-269
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    分岐ドデセンの低圧コッホ反応の工業化において触媒コストおよび廃硫酸量の低減等を目的として, Cu(CO)n+-H2SO4-H3PO4-H2O系触媒のリサイクル実験について検討した。そして, 触媒活性に重要な影響を及ぼす酸強度の目安となる「付随硫酸比」(溶媒抽出されたカルボン酸に対して一定比で同伴する硫酸とカルボン酸の当量比) を見い出した。触媒活性を維持するため, 触媒中への有機物蓄積の程度に応じて触媒への水の添加量が制御された。また, 生成物の2回抽出により触媒中への有機物蓄積による触媒失活を抑制した。その結果15°C, 1.6MPaの反応条件において, 平均カルボン酸回収率104mol%, 生成物中の平均分岐三級トリデカン酸81wt%で100回の触媒リサイクルを実現し, 製品1重量あたりの触媒使用量を0.05以下にまで低減した。同時に, 不純物の少ない分岐三級トリデカン酸を低コストで製造する技術を確立した。
  • ジメチルシリコーンオイルのゲル化機構
    矢野 法生, 関根 顕一, 池沢 淳
    1994 年 37 巻 3 号 p. 270-277
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ビスカスカップリングオイルの中で, ジメチルシリコーンオイルはプレートの摩擦や摩耗粉に起因してゲル化すると推定される。これを検証し, その反応機構を明らかにすることを目的とした。実機台上試験および熱酸化安定度試験での試験後オイルや発生ガスの分析を行うとともに, 摩擦試験による粘度変化を調べ, 酸化反応および摩擦の要因について詳細に検討した。この結果, ジメチルシリコーンオイルはトライボケミカル反応によりゲル化し, この反応は窒化鉄の存在により促進されることがわかった。また, ゲル化防止に有効な特定の極圧剤の主な作用機構は窒化鉄の不活性化にあることを明らかにした。
  • 山内 正一, 薩摩 篤, 服部 忠, 村上 雄一
    1994 年 37 巻 3 号 p. 278-284
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    還元剤である炭化水素から高付加価値物質を製造しつつ二酸化炭素を触媒還元する可能性を検討する目的で, Ga, Zn, Pt添加HZSM-5触媒上でのプロパンと二酸化炭素の常圧流通反応を行った。金属添加HZSM-5触媒を用いることにより, プロパンの芳香族化に伴う二酸化炭素の一酸化炭素への還元が可能であることが示された。すなわち, 二酸化炭素は一酸化炭素に還元され, プロパンはベンゼン, トルエン, キシレンを主とする芳香族化合物と低級オレフィンに変換された。試験した触媒の中では, Zn添加HZSM-5触媒が二酸化炭素の還元に最も有効であった。さらに, 二酸化炭素がプロパン芳香族化に好ましい影響を持つことが明らかとなった。すなわち, 二酸化炭素の導入によりコーク析出による触媒劣化が抑制され, また副生成物であるエタンの生成が抑えられ, エチレンやプロピレンのようなオレフィンの選択性が向上した。
  • 佐藤 利夫, 亀岡 隆, 葭村 雄二, 島田 広道, 松林 信行, 今村 元泰, 西嶋 昭生
    1994 年 37 巻 3 号 p. 285-292
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    CANMETプロセスより得られたコプロセシングオイルの灯•軽油留分についてアップグレーディング反応のあり方, およびその触媒についての検討を行った。灯•軽油留分からガソリン留分への軽質化反応は一段の反応では進行せず, 芳香環の水素化および脱ヘテロからなる第一段アップグレーディング反応と水素化されたナフテン環の開裂を行う第二段アップグレーディング反応の組み合わせが必要なことが明らかになった。アップグレーディング反応に二段階反応, 第一段反応にNi-Mo/Al2O3触媒, 第二段反応にNi-W/USY-Al2O3触媒を用いることによりコプロセシングオイルの灯•軽油留分から効率よくガソリン留分を得ることができた。また, 二段階反応によりトータルの脱ヘテロ効率も大幅に向上した。
  • 秋吉 亮, 田中 裕敏, 小幡 英二, 安藤 公二
    1994 年 37 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    均一沈殿法で調製したNi/MgO触媒の性状と触媒活性を研究した。沈殿生成の条件を検討し, 触媒の熱処理, 昇温還元, 一酸化炭素の水素化, メタノールの分解について調べた。シュウ酸マグネシウムとシュウ酸ニッケルからなる沈殿の収率は [(C2H5)2C2O4]/{[Mg(NO3)2]+[Ni(NO3)2]}≒4 (mol/mol) で, 酢酸濃度が10~12mol•l-1の時に最も高かった。触媒の昇温還元試験から, ニッケルの担持率の低い時および高温焼成時触媒中のニッケルは固溶体を形成していることが認められた。担持率が高くなると, ニッケルは固溶体および遊離のニッケルとして存在していることが認められた。焼成温度500°Cのの時ニッケルの還元率が最も高かった。500°C以上で固溶体の生成が進む傾向にある。還元雰囲気では触媒上のニッケルは固溶体になりにくかった。触媒活性はニッケル還元率と深く関係することがわかった。一方, 含浸法触媒Ni/MgO(I)は焼成雰囲気では特に固溶体を形成しやすかった。その結果, 含浸法触媒は還元率が低く, したがって触媒活性も低かった。含浸法触媒と比較して, 均一沈殿法触媒は触媒活性, ニッケル還元率の点ですぐれ, NiO-MgO系で固溶体を作りにくい触媒の調製法の一つであると思われる。
  • アルミナ担持アニオン性ルテニウムカルボニルより調製した水素化脱硫触媒
    石原 篤, 野村 正敏, 加部 利明
    1994 年 37 巻 3 号 p. 300-310
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アルミナ担持ルテニウムカルボニルを用いたジベンゾチオフェンの水素化脱硫反応 (HDS) を高圧流通式反応装置で検討した。ルテニウムカルボニル (Ru3(CO)12) をトリエチルアミン (NEt3) およびエタンチオール (EtSH) と反応させ合成したRu-S結合を有するアニオン性の錯体をアルミナに担持して調製したRu3(CO)12-NEt3-EtSH/Al2O3系触媒は, ジベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に活性を示した。Ru3(CO)12-NEt3-EtSH/Al2O3系をH2S, H2あるいはN2気流中で活性化した場合, RuCl3, Ru(acac)3(acac=アセチルアセトナート), Ru(COD)(COT)(COD=シクロオクタジエン, COT=シクロオクタトリエン) およびRu3(CO)12をアルミナに担持して調製した触媒あるいは従来のモリブデナアルミナより高い触媒活性を示した。Ru(COD)(COT), Ru3(CO)12, アニオン性のルテニウムカルボニル等のRu(0)の錯体を用いた場合, モリブデナアルミナより得られる触媒 (71%) よりもビフェニル (BP) への選択率が高く, 86%以上の値を示した。NOおよびCOの化学吸着を検討した結果, Ru3(CO)12-NEt3-EtSH/Al2O3系を活性化して得た触媒では, 分散度の高いルテニウム種が得られていることが推測された。HDS反応前の触媒の光電子分光スペクトル (XPS) を測定した結果, 担持RuCl3およびRu(acac)3系ではS/Ru比がそれぞれ2.31および1.51まで硫化されるのに対して, Ru3(CO)12/Al2O3系では硫化されにくくS/Ru比は0.83であった。しかし, HDS反応後の触媒ではS/Ru比がいずれの触媒においても減少し, 約0.5に近付いた。このことは高圧条件下では, 触媒上のルテニウム種は硫化ルテニウムというよりもルテニウム金属に近い酸化状態であることが示唆された。Ru3(CO)12-NEt3-EtSH/Al2O3系を水素気流中で活性化した触媒では, HDS反応に前後のいずれにおいてもS/Ru比が約0.5であり, このことはこの系では触媒活性種が触媒調製時に既に生成されていることを示している。
  • 川村 和幸, 川村 和将, 森吉 昭博
    1994 年 37 巻 3 号 p. 311-315
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は種々の添加剤を混入したアスファルトの低温での破壊性状と混合物のそれとがどのような関係にあるか検討したものである。アスファルトについては改良型フラースぜい化点試験, 曲げ試験, 応力緩和試験を行い, 一方アスファルト混合物では曲げ試験を実施し, 本研究では主にこれらの破壊強度やぜい化点等の関係について考察している。
    実験の結果, 低温領域において両者は密接な関係にあり, 添加剤混入のアスファルトについてもアスファルトの性状が既知であれば, アスファルト混合物のぜい化点や低温の破壊強度も推定可能であること, また測定されたアスファルトの緩和弾性率は推定されたそれとは著しく異なることが明らかにされた。
  • 森吉 昭博, 徳光 克也, 藤原 正浩
    1994 年 37 巻 3 号 p. 316-320
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は種々の添加剤 (EVA, EEA, EMA, SBS) を1種類混合したアスファルトを用い, 流動領域からぜい性領域までアスファルトでは曲げ試験, オシレイション試験, フラースぜい化点試験, 森吉ぜい化点試験, アスファルト混合物では熱応力試験, 曲げ試験, ホイールトラッキング試験をそれぞれ実施した。実験の結果, 添加剤を混合したアスファルト混合物の破壊性状や流動性状はぜい性領域および流動領域に関係なく, 使用したアスファルトのそれらと対応関係にあり, 添加剤の種類によりこの対応関係が若干異なること等が明らかにされた。
  • 佐古 猛, 山根 すみ代, 根岸 章, 佐藤 眞士
    1994 年 37 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    逆行析出分離法による多環芳香族化合物の精製に必要な基礎データを得るために, 308~338Kにおいて超臨界CO2中の純ナフタレン, 純フェナントレン, ナフタレン/フェナントレン混合物の溶解度を測定した。その結果, (1) 超臨界CO2-ナフタレン-フェナントレン系の交差圧力領域は十分広いので, 逆行析出分離法によりナフタレン/フェナントレン混合物中の特定成分を単離できる, (2) Peng-Robinson およびSoave-Redlich-Kwong 状態方程式は超臨界CO2中の純固体の溶解度を良好に表すことができる, (3) 一方, これらの状態方程式は, 固体混合物中の溶解度が大きな成分の溶解度を良好に推算できるが, 溶解度の小さな成分の推算結果は実測データと差異が大きい, ことが明らかになった
  • 花岡 隆昌, 杉 義弘, 内 一隆, 阿部 芳首, 御園生 尭久
    1994 年 37 巻 3 号 p. 328-332
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    機能性材料の原料として重要な4,4'-ジヒドロキシビフェニル誘導体の効率的な合成法を確立するために, 4,4'-ジブロモビフェニル(Ia), 2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナンスレン(Ib)および2,7-ジブロモフルオレン (Ic)の銅触媒による加水分解反応を試み, 触媒作用および反応機構の解明を行った。Iaの加水分解は, 溶媒としてエタノール-水混合物を用いると150°C近辺で起こるようになり, 160°C以上で円滑に進行し, 4,4'-ジフェノール(IIa)を高い収率で生成した。反応は4-(4'-ブロモフェニル) フェノール (IIIa) を経由する逐次反応であり, 副反応として臭素の還元的脱離が起こった。酸化第二銅, 酸化第一銅, 金属銅およびヨウ化銅はいずれも同等の触媒活性を示し, 反応後金属銅が回収されたことより本反応の触媒活性種は金属銅であると考えられた。本反応は基質と触媒を十分接触させる必要があり, かくはんが十分でないと中間体であるIIIaおよび還元生成物の生成が多くなった。Ibの加水分解もIaと同様の条件で迅速に進行し, 2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジヒドロフェナンスレン (IIb) を高収率で与えた。
    Icの加水分解反応においては, 加水分解生成物である2,7-ジヒドロキシフルオレン (IIc) が少量しか得られなかった。これは, 塩基性条件下でフルオレンの9-位の水素が引き抜かれフルオレンアニオンを形成するために親核的反応である加水分解が阻害されることに基づくと思われた。
  • 固液相間移動触媒の効果
    寺西 賢次, 高木 悟, 佐藤 俊彦, 花岡 隆昌, 竹内 和彦, 杉 義弘
    1994 年 37 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    パラジウム-ホスフィン触媒による4,4'-ジブロモビフェニルのエトキシカルボニル化反応における固液相間移動触媒の効果を検討した。固体塩基として炭酸水素ナトリウム, 相間移動触媒としてヨウ化テトラブチルアンモニウムを用いた際, ホスフィンとして1,3-ビス (ジフェニルホスフィノ) プロパンを配位子とするパラジウム触媒が穏和な条件で高い活性を示し, 高選択率で4-ブロモ-4-ビフェニルカルボン酸エチルを与えた。しかし, 生成物の選択性にはあまり影響が認められなかった。相間移動触媒であるハロゲン化テトラアルキルアンモニウムにおいて, アニオンに関しては塩化物, アルキル基に関しては低級のものの促進効果が大きかった。また, 固体塩基としては炭酸カリウム, 炭酸ナトリウム, 炭酸水素ナトリウム等の効果が大きかったが, 炭酸リチウム, 酢酸ナトリウム等では著しく反応が阻害された。また, 一酸化炭素圧も反応に阻害効果を示した。この反応系ではカルボニル化反応は通常の系と同様に進行し, 律速段階は基質のパラジウム触媒への酸化的付加であり, 相間移動触媒は触媒からの臭化水素の脱離を促進していると考えた。
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