機能性材料の原料として重要な4,4'-ジヒドロキシビフェニル誘導体の効率的な合成法を確立するために, 4,4'-ジブロモビフェニル(
Ia), 2,7-ジブロモ-9,10-ジヒドロフェナンスレン(
Ib)および2,7-ジブロモフルオレン (
Ic)の銅触媒による加水分解反応を試み, 触媒作用および反応機構の解明を行った。
Iaの加水分解は, 溶媒としてエタノール-水混合物を用いると150°C近辺で起こるようになり, 160°C以上で円滑に進行し, 4,4'-ジフェノール(
IIa)を高い収率で生成した。反応は4-(4'-ブロモフェニル) フェノール (
IIIa) を経由する逐次反応であり, 副反応として臭素の還元的脱離が起こった。酸化第二銅, 酸化第一銅, 金属銅およびヨウ化銅はいずれも同等の触媒活性を示し, 反応後金属銅が回収されたことより本反応の触媒活性種は金属銅であると考えられた。本反応は基質と触媒を十分接触させる必要があり, かくはんが十分でないと中間体である
IIIaおよび還元生成物の生成が多くなった。
Ibの加水分解も
Iaと同様の条件で迅速に進行し, 2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジヒドロフェナンスレン (
IIb) を高収率で与えた。
Icの加水分解反応においては, 加水分解生成物である2,7-ジヒドロキシフルオレン (
IIc) が少量しか得られなかった。これは, 塩基性条件下でフルオレンの9-位の水素が引き抜かれフルオレンアニオンを形成するために親核的反応である加水分解が阻害されることに基づくと思われた。
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