石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
26 巻, 1 号
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  • 横野 哲朗, 金清 二郎, 小沢 広, 真田 雄三
    1983 年 26 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    11種類の石油系重質油についてTLC-FIDにより組成分析を行い, 組成分析値および硫黄含量の両方を考慮し, 炭化物の組織との関係を三角図を用いて表すことにより, 光学異方性の異なる三つのグループに分けることができた。試料1, 5および6について初期炭化生成物のBS分の化学組成変化について検討した。試料1と試料5, 6で炭化反応に伴う化学組成変化に大きな相違が見られた。試料5, 6のアスファルテン量は炭化過程で最高40%に達するのに対し, 試料1のそれは10%の値を示した。また, 昇温速度のコークスの異方性組織に及ぼす影響についても検討した。昇温速度が速くなると異方性組織の単位が小さくなることが判明した。
  • 加熱, 加圧下における1-ブテンと塩化パラジウム-塩化第二銅水溶液との反応
    入内島 眞
    1983 年 26 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ワッカー法によるn-ブデンからの工業的メチルエチルケトン製造の可能性をさぐるため, 加熱, 加圧下における1-ブテンと塩化パラジウム-塩化第二銅触媒水溶液とのカルボニル化反応を行わせた。カルボニル化反応によって生成した金属パラジウムは直ちに塩化第二銅によって塩化パラジウムに再生され, 触媒的に反応することが確認された。反応温度が130°C以上の場合, MEKへの選択率が低下し, 副生物が生成していることが推測された。副生物としては, MEKと塩化第二銅の反応によって生成する3-クロロ-2-ブタノンが主なものであった。塩酸の添加がカルボニル化反応を阻害することは, 常温常圧での反応と同様の結果であった。
  • 的場 康浩, 大西 基司, 籠橋 正則, 石井 康敬, 小川 雅弥
    1983 年 26 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シクロペンタジエンとブタジエンの Diels-Alder 反応から得られる種々の二量体の利用を目的として, 触媒量のOsO4を用いるcis-ヒドロキシル化反応を試み, 反応における位置選択性および生成物の立体化学について検討した。ノルボルネン骨格をもつ3, 9, 12へのヒドロキシル化はexo方向から起こった。また, 5, 9のシクロペンテン骨格も一方向から立体選択的にヒドロキシル化された。一方, シクロヘキセン骨格をもつ1, 5へのヒドロキシル化は上下二方向から起こり, 熱力学的に安定な配座をとる生成物が優先して得られた。ビニル基にはヒドロキシル化は起こらなかった。反応の位置および立体選択性は二重結合の反応性と立体因子により説明された。
  • FCC触媒およびゼオライトにおけるニッケルとバナジウムの被毒効果
    増田 立男, 緒方 政光, 吉田 新一, 西村 陽一
    1983 年 26 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    耐メタル能を有するFCC触媒を開発する目的で, FCC触媒のニッケル, バナジウムに対する被毒特性を検討した。ゼオライト系FCC触媒にニッケルを約10,000ppm付着させても, VGO分解活性の低下はわずかであったが, ニッケルによる脱水素反応により, コークおよび水素生成率の著しい増加が見られた。バナジウムの場合は活性の低下が著しく, ガソリン収率も大きく低下した。ゼオライト単味の耐メタル性を検討した結果, バナジウムは700°C以上の高温スチーム雰囲気下で, ゼオライトの構造を著しく破壊することが認められた。さらにバナジウムの被毒効果は, ゼオライト中の交換性Naイオンにより, 著しく促進されることがわかった。
  • 早川 孝, 竹平 勝臣, 石川 敏夫
    1983 年 26 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Si-Ce-X型 (X:P, As, BiまたはSb) 酸化物上エチルベンゼンの酸化脱水素で, 接触活性に対するVa族の効果を調べた。反応は常圧固定床流通式, 480°Cで行った。シリカやSi-Ce二元触媒でもスチレンは生成したが, 収率や選択率は低かった。Si-Ce二元系触媒にSbを添加すると活性は著しく低下したが, スチレンの選択率は極めて高かった。触媒組成を変化させたところ, Si:Ce:Sb=1:1:1でスチレン収率44.0%, 同選択率87.0%が得られ, 他に酸化炭素以外の生成物はこん跡程度であった。この触媒上では長時間にわたって反応に変化が見られた。触媒上に析出した炭素質はエチルベンゼンの酸化脱水素能を有し, スチレンを生成すると思われた。
  • 武松 敏弌, 小川 清, 島田 和夫, 栗木 安則, 大嶋 哲, 鈴木 守夫, 加藤 順, 藤堂 尚之
    1983 年 26 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    窒素含量が高く, 硫黄濃度の低い中国産の大慶常圧蒸留残油の水素化脱窒素反応を, 市販のNi-Mo/Al2O3触媒を充てんした固定床上向並流型反応器を用いて, 380°C~440°C, 50~200kg/cm2, LHSV=1~5, H2/Oil=500~4,000vol/volの条件下で行い, 脱窒素, 脱硫反応の特徴, 中東系カフジ常圧蒸留残油との反応性の相違, 硫黄化合物添加の効果, 水素化分解反応等について調べた。
    大慶重油は, Table 2に示される性状から推測されるよりはるかに重質であり, カフジ重油にくらべて, 脱窒素脱硫反応性が著しく低く (Figs. 2, 3), 水素化分解による軽質化もわずかであった (Figs. 13, 14)。この反応性の低い原因の一つは, 大慶重油の硫黄濃度が低いため, 触媒を常に十分な硫化状態に保ち, 高い活性を維持させることができないことにあると考えられる。従って, 原料にチオフェンを添加することにより, 脱窒素率が大幅に向上した (Fig. 9) ことは, このことを裏づけるものである。しかし, 硫黄を添加しただけでは, 脱窒素•脱硫率とも, カフジ重油のレベルにまで到達しない (Figs. 10, 11) ことから, 大慶重油は, 水素の攻撃を受けにくい構造的な因子を持つものと推測される。
    また, 脱窒素反応は脱硫反応にくらべて, 著しく反応性が低いことは, 両重油に共通している (Figs. 2, 3)。この原因は, 窒素が, 硫黄にくらべて, 極端に重質留分中に偏って存在している (Table 3) ため, その除去がより困難なためと考えられる。窒素の重質偏在の効果は, 反応次数にもあらわれており, 脱窒素反応の反応次数が全窒素濃度に一次 (Fig. 6) で, 脱硫の場合 (Fig. 7) と異っていることも, これに起因するものと考えられる。
    大慶重油の水素化分解は, 本反応条件下では非常にわずかであるが, 反応温度400°C以上で急速に進行することが観測された (Fig. 4)。また脱窒素反応は, 水素化分解反応と密接な関係をもつことがわかった。平均分子量の減少率であらわした水素化分解率と脱窒素率は, 脱窒素率30%以上で直線関係があり (Fig. 15), このような条件下では, 脱窒素反応が, 水素化分解反応の結果として進行しているものと推測される。
  • アスファルテンとヨウ素との相互作用
    山田 能生, 真田 雄三
    1983 年 26 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    原油および残油中に含まれているアスファルテンと電子受容体であるヨウ素との相互作用をESR法によって調べた。カフジおよびミナス原油から採取したアスファルテンにヨウ素を10, 20, 30wt%と添加していくと, 10wt%まででは主としてヨウ素はアスファルテンミセル内に入り, ミセル内ですでに存在するアスファルテン同士の錯体を解離するとともに, アスファルテン中に単独に存在する縮合芳香族分子と電荷移動錯体を形成する。10wt%以上の添加では, ヨウ素とアスファルテンからなる錯体の濃度が増加し, 錯体中のホールや電子が非局在化する。また, 熱処理した残油にヨウ素を20wt%加えると, カフジではミセル内に入りにくくなるが, 一方ミナスでは分子が動きやすくなる結果, 逆に入りにくくなることが推定された。
  • 脱硫装置より排出された触媒によるオイルサンドビチューメンの水素化分解
    近藤 輝男, 小島 芳元, 請川 孝治, 松村 明光, 坂部 孜, 小西 秀樹
    1983 年 26 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    10l/hrの粉末触媒懸濁床式連続装置を用い, 反応温度430~450°C, 反応圧力100kg/cm2, LHSV0.27~1.25vol/vol•hr, 触媒として商業用重油直接脱硫反応装置から排出された触媒でカナダ産オイルサンドビチューメンの水素化分解を行った。反応温度450°C, LHSV0.67では500°C+留分の分解率は88%に達するが, 分解生成油中のナフサ留分は11.7wt%, 170~340°Cの灯軽油留分は49.5wt%と比較的中間留分の多い油が得られた。しかし, 留出油各留分には硫黄, 窒素, オレフィン分が多く2次処理の必要がある。なお, 500°C+留分の分解速度は擬一次で表され, 活性化エネルギーは55kcal/molであった。
  • 中田 亜洲生, 野田 浩生, 日向 昭好
    1983 年 26 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油添加剤であるジアルキルジチオリン酸亜鉛 (ZnDTP) のアルキル基の構造決定および定量を13C-NMRで行った。単一のアルキル基から成るZnDTPのアルキル基は, 4-メチル-2-ペンチル基と2-エチルヘキシル基の2種類だけであり, 他のものは2ないし3種類のアルキル基から成るZnDTPであった。上記の2種類のアルキル基の他に, イソプロピル基, イソブチル基, sec-ブチル基等の枝分かれしたアルキル基が同定された。13C-NMRスペクトルの解析には, α位およびβ位炭素とリンとのカップリング, P=O基による化学シフトの変化と Lindeman-Adams の加成則の利用が有効であった。
  • 原子力製鉄における還元ガス製造の実験プラントと運転結果
    鈴木 昭, 店網 和雄, 高橋 太, 酒井 直樹
    1983 年 26 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油ピッチを650°Cで熱分解してコークを得て, それを2,000°C水蒸気, あるいは酸素により950°Cでガス化して鉄鉱石還元用の還元ガス (H2+CO) を製造するピッチガス化プロセスについて, 多目的高温ガス炉の核熱利用を想定して検討した。本プロセスは, 核熱を利用することにより, 化石エネルギーを19-28%節約して還元ガスを製造することがでぎる。ピッチ処理量4.8t/dayの実験プラントによる800hrの連続ガス化を含む合計3,000hrの運転を達成した。コーク化工程におけるガスおよびコーク収率と, ガス化工程におけるメタン濃度およびシフト反応平衡についての知見が得られた。
  • 田中 達生
    1983 年 26 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    定常的にガスが流れている一本のパイプラインに対し, 一端の圧力あるいは流量に外乱 (昇圧•増量等) を与えた時, その外乱の影響がどのようにパイプライン内に伝達するかを, シュミレーションにより考察した。すなわち, パイプラインにおける, ガスの非定常流動を運動の式 Eq. (1) および連続の式Eq. (2) としてとらえ, これを展開した後, フィールド•ユニットを入れて連立差分方程式 Eqs. (5), (6) としてとらえた。これを用いて単一パイプライン系に対するユニット•シュミレーターをコンピューター内に作成し, 外乱発生後の流動状況を諸ケースについて調査した。
    シュミレーターの構成および使用したシュミレーション方法は次の通りである。
    (I) 初期条件: 外乱発生前の流動状態は定常流とするという仮定より Eq. (10) を用いて求めた。なお Eq. (10) の摩擦係数fmは, モデルに使用した実パイプライン•データより求めた。
    (II) 外乱の与え方: 問題を明解にするため, 外乱はパイプラインのいずれかの端に一度与え, それを保持するものとした。
    (III) 境界条件: Eqs. (5), (6) を解くには4個の境界条件 Qn(0,t) P(0,t), Qn(L,t), P(L,t) が要求される。この内2個は与えられた外乱数値および (I) で定めた初期値として定め得るが, 他の2個は Eqs. (5), (6) の解として求められるもので, 前もって定めることが出来ない。
    そこで (Fig. 2参照), (a)パイプライン両端 (境界点) よりΔx/2はなれた所に内点をもうけ, この内点と境界点におけるガス流動は瞬時に定常流となるという仮定を立て, Eqs. (5), (6)によりΔt時間後の内点の圧力, 流量をもとめ, この数値より Eqs. (8), (9) を用いてその時刻における境界点の圧力, あるいは流量を求める。(方法A) (b)内点としてΔx/4を取り(a)と同様な方法により境界値を求める。(方法B) (c)パイプラインの系外Δxの所に架空点を定め, この点と境界点におけるガス流動が瞬時に定常流となるという仮定を立て他は(a)(b)と同様とする。ただし外乱時における境界値のみは適当な点を選択点として用い方法Aを用いる。(方法C) の3方法を使用した。
    (IV) シュミレーションの進め方: 基本的には, Eqs. (5), (6) を用いてΔt時間後の各点における圧力, 流量を求めていく方法であるが, 単純にこの方法をくり返すと, 式の係数中にあるまるめの誤差等が系内に伝播し, 長時間後の解析値は, かなり非理論的な数値を示す恐れがある。誤差の大きな伝播はFig. 1より明らかなように, まず1時刻先の流量にあらわれ, 次いで2時刻先の圧力にあらわれるという系路をたどる。そこで, ある地点xおよびその前後xx, xxの3点の圧力が前時刻と変わらなければ, その間の流量は変わらない点に注目し, 系をΔt進める際, まず Eq. (6) により系内の圧力を計算し, 前記3点の圧力変化をみて, 変化量 (ε) の多い時のみ Eq. (5) を使用し, 少ない時は Qn(x,t+Δt)=Qn(x,t) としてシュミレーションを進めることとした。
    ケース•アナリシスは, εはどの位の数値が良いか, 境界値の計算方法はA, B, Cのいずれが良いか, シュミレーションステップΔtxはどの位が最適か等, 最適シュミレーション方法を見つけることを目的として, パイプラインの終点圧力に外乱を与えて行い, 次いで, このようにして作成されたシュミレーターの信頼性を見ることを目的として, 実パイプライン挙動より得られた数値を用いてシュミレーションを行い, 両者の比較を行った。
    その結果 (1) シュミレーションステップは, パイプライン内の流速 (v) により異なり, シュミレーション時間等を考えた時, 1/2.5v~1/5vが最適である。(Table 1参照) (2) 境界値の求め方は, 方法Cが最適である。(Table 2参照) (3) 前記εは, シュミレーション時間等も考えた時1×10-5が最適である。(Table 3参照) (4) 方法Cにおいて外乱時における境界値を求める点は, それ程問題でないがコンピューター操作時間を考慮すべきである。(Table 4参照) の4点が判明した。これら条件を用いた Table 4, A-18のケースにつきシュミレーションを行った結果は Figs. 3~8の通りであり, 通常考えられるパイプライン内の非定常流動を良くあらわしていた。
  • 吉田 英人, 頼実 正弘
    1983 年 26 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    蒸留塔の水蒸気加熱とリボイラー加熱の両者の場合における省エネルギー特性を比較検討した。計算手法として Ponchon-Savarit 法を用いた。原料組成, 塔頂組成, 還流比, 塔底加熱量および全段数が等しい条件で塔底液組成と理論段数を比較する場合と, 原料組成, 塔頂組成, 還流比, 塔底組成および全段数が等しい条件で塔底加熱量を比較検討した。その結果, 塔底液が水以外の成分をかなり含んでいる場合は, 水蒸気加熱方式がリボイラー加熱方式よりもかなりの省エネルギー効果があることが明らかになった。
  • 広中 清一郎, 脇原 将孝, 谷口 雅男
    1983 年 26 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 1983/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    硫化ニオブ, Nb1.158S2が700°Cにおける五酸化ニオブと硫化水素の反応によって合成された (Fig. 1)。Nb1.158S2と市販の固体潤滑剤二硫化モリブデン, MoS2との酸化特性が示差熱分析によって検討され, 従来の結果と相反してNb1.58S2の方が酸化安定性が低いことがわかった (Fig. 2, Table 1)。
    Nb1.158S2およびMoS2をそれぞれ3wt%ずつリチウム石けん/流動パラフィングリースに添加したときの摩擦特性が振子型摩擦試験機によって, 23~110°Cの温度範囲で比較された (Fig. 3)。無添加の場合, 摩擦係数は温度の上昇とともに, グリースの粘度低下による粘性抵抗の減少によってかなり低下した。添加グリースでは, これらの添加剤の層状構造による潤滑性によって, 摩擦は無添加のときよりかなり軽減された。
    MoS2よりNb1.158S2の方が効果的であるのは, Fig. 4に示すような構造との相違によるものと推察される。ファレックステストによる極圧性の比較でも, Nb1.158S2がMoS2と同等以上の結果を示し, 硫化ニオブは潤滑グリース用添加剤として十分期待される。
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