定常的にガスが流れている一本のパイプラインに対し, 一端の圧力あるいは流量に外乱 (昇圧•増量等) を与えた時, その外乱の影響がどのようにパイプライン内に伝達するかを, シュミレーションにより考察した。すなわち, パイプラインにおける, ガスの非定常流動を運動の式 Eq. (1) および連続の式Eq. (2) としてとらえ, これを展開した後, フィールド•ユニットを入れて連立差分方程式 Eqs. (5), (6) としてとらえた。これを用いて単一パイプライン系に対するユニット•シュミレーターをコンピューター内に作成し, 外乱発生後の流動状況を諸ケースについて調査した。
シュミレーターの構成および使用したシュミレーション方法は次の通りである。
(I) 初期条件: 外乱発生前の流動状態は定常流とするという仮定より Eq. (10) を用いて求めた。なお Eq. (10) の摩擦係数
fmは, モデルに使用した実パイプライン•データより求めた。
(II) 外乱の与え方: 問題を明解にするため, 外乱はパイプラインのいずれかの端に一度与え, それを保持するものとした。
(III) 境界条件: Eqs. (5), (6) を解くには4個の境界条件
Qn(0,
t)
P(0,
t),
Qn(
L,t),
P(
L,t) が要求される。この内2個は与えられた外乱数値および (I) で定めた初期値として定め得るが, 他の2個は Eqs. (5), (6) の解として求められるもので, 前もって定めることが出来ない。
そこで (
Fig. 2参照), (a)パイプライン両端 (境界点) よりΔ
x/2はなれた所に内点をもうけ, この内点と境界点におけるガス流動は瞬時に定常流となるという仮定を立て, Eqs. (5), (6)によりΔ
t時間後の内点の圧力, 流量をもとめ, この数値より Eqs. (8), (9) を用いてその時刻における境界点の圧力, あるいは流量を求める。(方法A) (b)内点としてΔ
x/4を取り(a)と同様な方法により境界値を求める。(方法B) (c)パイプラインの系外Δ
xの所に架空点を定め, この点と境界点におけるガス流動が瞬時に定常流となるという仮定を立て他は(a)(b)と同様とする。ただし外乱時における境界値のみは適当な点を選択点として用い方法Aを用いる。(方法C) の3方法を使用した。
(IV) シュミレーションの進め方: 基本的には, Eqs. (5), (6) を用いてΔ
t時間後の各点における圧力, 流量を求めていく方法であるが, 単純にこの方法をくり返すと, 式の係数中にあるまるめの誤差等が系内に伝播し, 長時間後の解析値は, かなり非理論的な数値を示す恐れがある。誤差の大きな伝播は
Fig. 1より明らかなように, まず1時刻先の流量にあらわれ, 次いで2時刻先の圧力にあらわれるという系路をたどる。そこで, ある地点xおよびその前後
x+Δ
x,
x-Δ
xの3点の圧力が前時刻と変わらなければ, その間の流量は変わらない点に注目し, 系をΔ
t進める際, まず Eq. (6) により系内の圧力を計算し, 前記3点の圧力変化をみて, 変化量 (ε) の多い時のみ Eq. (5) を使用し, 少ない時は
Qn(
x,t+Δt)=
Qn(
x,t) としてシュミレーションを進めることとした。
ケース•アナリシスは, εはどの位の数値が良いか, 境界値の計算方法はA, B, Cのいずれが良いか, シュミレーションステップΔ
t/Δ
xはどの位が最適か等, 最適シュミレーション方法を見つけることを目的として, パイプラインの終点圧力に外乱を与えて行い, 次いで, このようにして作成されたシュミレーターの信頼性を見ることを目的として, 実パイプライン挙動より得られた数値を用いてシュミレーションを行い, 両者の比較を行った。
その結果 (1) シュミレーションステップは, パイプライン内の流速 (
v) により異なり, シュミレーション時間等を考えた時, 1/2.5
v~1/5
vが最適である。(
Table 1参照) (2) 境界値の求め方は, 方法Cが最適である。(
Table 2参照) (3) 前記εは, シュミレーション時間等も考えた時1×10
-5が最適である。(
Table 3参照) (4) 方法Cにおいて外乱時における境界値を求める点は, それ程問題でないがコンピューター操作時間を考慮すべきである。(
Table 4参照) の4点が判明した。これら条件を用いた
Table 4, A-18のケースにつきシュミレーションを行った結果は
Figs. 3~8の通りであり, 通常考えられるパイプライン内の非定常流動を良くあらわしていた。
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