細孔径の異なる3種のニッケル担持ゼオライト (ZSM-5型, モルデナイト, Y型ゼオライト) を触媒に用いたフェナントレンおよびピレンの水素化分解反応を350°C, 70kg/cm
2の水素加圧下で, 0, 15, 60分行った。また, 比較のため予備硫化したNi-Mo/Al
2O
3触媒を用いた反応についても検討を行った。用いたゼオライト触媒により生成物分布は大きく変化することが明らかとなった。フェナントレンを基質とした場合, クラッキング生成物収率はゼオライト触媒の細孔径に依存し, 細孔径の小さいZSM-5ゼオライトを触媒とした場合, ジヒドロフェナントレン, テトラヒドロフェナントレン, オクタヒドロフェナントレンの生成が優先した。これは, フェナントレン分子がこのゼオライト触媒の細孔内へ侵入できないためと考えられる。一方, Y型ゼオライトおよびモルデナイトを用いた場合, フェナントレン骨格の分解が効果的に進行し, プロパン, ブタン, ベンゼン類, インダン類が主生成物となった。Ni-Mo/Al
2O
3触媒を用いた場合, 基質の水素化が優先し, 分解反応はほとんど進行しなかった。分子サイズが大きく, 3種のゼオライト細孔内に侵入できないピレンを基質とした場合は部分水素化物が優先して生成する傾向が観測された。また, 単環, 二環化合物への選択的分解を目的として水素化能の高いNi-Mo/Al
2O
3触媒とクラッキング能の高いNi担持Y型ゼオライトを組み合わせた2段階水素化分解についても検討を行った。
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