石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
25 巻, 5 号
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  • トリメリット酸による反応の抑制とその酸化反応系中よりの除去
    藤井 健史, 斉木 紀次, 山下 源太郎, 栗原 修
    1982 年 25 巻 5 号 p. 273-280
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    プソイドクメンを酸化しメチルフタル酸類 (MPA) を製造する際の各段階の反応に対するトリメリット酸 (TMA) および4-メチルオルソフタル酸 (MOA) の抑制効果を明らかにし, さらにこれらの反応系外への除去を検討した。ジメチル安息香酸類およびMPAの酸化の速度定数はTMAおよびMOAの共存量の増加に従い直線的に減少するが, 抑制効果はMPAの酸化の場合の方が約3倍大きい。酸化反応ろ液を加熱処理するとTMA, MOAとCoを含む不溶物が生成する。生成量は液中の [Co] と [TMA] に比例し, 種晶を存在させると140°C, 1hrの処理で, 液中の [Co]×[TMA] を0.05~0.08(wt%)2程度まで減少させうる。
  • 玉井 康勝, 京谷 隆
    1982 年 25 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油の機能を支配する粘度をその分子構造から検討するために, この一連の報文では潤滑油の粘度を Eyring の粘性理論を導入して分子論的に解析してきた。第1報1)において, 鉱油系潤滑油を用いてその高圧粘度の指標である流動活性化体積ΔVをその化学組成より推定しうる半経験式を提案した。しかし, この推定式は鉱油系潤滑油に対してのみ適用しうるものであった。
    本報では, エステル系潤滑油の常圧時のΔVを推定するため, 新しい推定式を提案した。また, 他の油についてもその式の適用性を調べた。
    試料として用いたエステル系潤滑油の分子構造を Table 1に示す。これらのエステルの高圧粘度を前報2)と同じ装置, 同じ条件で測定し, それぞれ常圧時のΔVを求めた (Table 4)。ΔVをその分子構造から推定するために, その流動過程を次のように仮定した。
    (1) エステル分子はいくつかの流動単位よりなり, その流動過程はそれら流動単位がおのおの隣接にできた空孔へ相互に独立に移動することによってなりたつ。
    (2)柔軟な化学構造をもつ流動単位は, Fig. 1にあるn-ペンチル基の例のように, セグメント単位で流動し, 多くの流動様式をもつ。一方, 剛直な化学構造をもつ流動単位はそれ全体がいっせいに移動する。
    (3) エステル分子のΔVは, 流動単位が流動するのに必要な空孔の大きさ, つまり流動単位の活性化体積ΔViとEq. (2) のような加成則によって関係づけられる。
    さて, 一般に分子の体積Vはそれに分配される自由体積Vfと van der Waals 体積Vwの和としてEq. (3) のように表せる。そこで, 各流動単位もおのおのの van der Waals 体積Vwiの大きさに比例する自由体積Vfiをもつと仮定すれば, 流動単位の体積ViはEq. (4) のように表せる。同様の取扱いによりΔViもEq. (6) のように表せ, それらよりEq. (7) が導出される。ここでΔVwiは流動単位の van der Waals 活性化体積である。Eq. (7) を用いてΔVを推定することができる。次に, 試料として用いたエステル油の流動単位を Table 5のように決定した。これら流動単位を先に述べたような二つのグループに分け, 剛直な化学構造をもつ流動単位のΔVwiはそのvan der Waals 体積Vwiに等しいことを用いて, また柔軟な構造をもつ流動単位のΔVwiはトリメチロールプロパンエステルのΔVの実測値を用いて, それぞれΔVwiを求めた(Table 7)。なお, van der Waals 体積の値は Bondi3) により報告されているデータを用いた (Table 6)。Eq. (7) より計算されたΔVの推定値と実測値とを Table 8で比較した。ネオペンチルグリコールエステルを除き, 実測値と推定値とはよく一致した。ネオペンチルグリコールエステルの場合, 実測値が推定値よりかなり小さいのは, その分子構造が他のエステルに比べて直線状であるため, 流動配向が生じているからであると思われる。また, Table 9にあるような炭化水素化合物についても, 新しく提案したEq. (7) を用いてそのΔVを推定できることがわかった。
  • システムの設計と試作およびテスト実験
    中村 隆一, 笹本 公明, 佐藤 一哉, 新山 浩雄, 越後谷 悦郎
    1982 年 25 巻 5 号 p. 286-293
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    コンピューターにより完全に自動化された実験用流通式反応装置を試作し, その原理と特徴をテスト実験の例とともに述べた。試作したシステムではプロセス変数の制御と測定のほか, ガスクロによる自動分析データのオンラインによる解析およびフィードバックができるので, 触媒を充てんし, 初期設定条件をコンピューターに入力すれば, 目的の条件が未知の実験など手動では困難なさまざまな実験をも無人で完遂することができる。得られた結果は高い精度, 再現性, 客観性を持ち, また, テープに一括して収められているので, 保管性がよく, いつでも図表化できる。これらの利点は二つのフィードバック方式の最適化実験により確かめられた。
  • 石井 康敬, 中川 要, 小島 達也, 浜中 佐和子, 小川 雅弥
    1982 年 25 巻 5 号 p. 294-297
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シクロペンタジエン (CP) とイソプレン (IP) の Diels-Alder 反応から得られる1:2付加体の構造について検討するため, CPとIPの反応により得た付加体にさらにCPまたはIPを反応させた。(Tables 1および2) CPとIPの反応により生成する1:2付加体の80%以上がノルボルナンまたはノルボルネン骨格を持っていた。メチルシクロヘキセン環に付加した1:2付加体やIPのホモ二量体にIPまたはCPが付加して生成する三量体は認められなかった。13C-NMR測定から生成する三量体の主なものについて, その立体構造を明らかにした。
  • 榎本 稔, 高橋 至朗, 佐藤 信也, 松沢 貞夫, 中村 悦郎
    1982 年 25 巻 5 号 p. 298-305
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    コロラドとタイ国産のオイルシェールを水素または窒素の加圧下で乾留を行った。乾留炉としては回分式の円筒型レトルト(Fig. 1) を使用し, 圧力は0~10atm•G, 温度は最高500°Cまたは600°Cで行った。研究は乾留生成物, 特に油の性状,収率に対する圧力, レトルト中の導入ガス流速, 導入ガスの種類および乾留炉の型の影響について調べる目的で行った。
    圧力による分解温度の影響について検討するため, ガス発生のピーク時における温度を測定し Table 1に示した。圧力10atmまでの範囲では分解温度の圧力による影響はほとんど認められなかった。
    乾留条件と得られた油の性状をコロラド産オイルシェールについて Table 2に, タイ国産について Table 3に示した。圧力を上げることにより油の収量に大きな変化はなかったが, 大気圧下で乾留生成油に比べて, 圧力を上げるほど軽い油が得られた。すなわち, Figs. 34に示したように, 油の粘度および流動点は圧力を上げると共に低下し, 例えば, タイ国産の場合, 常圧で35°Cの流動点が10atmで約18°Cに, コロラド産の場合, 常圧で22°Cのものが10atmにおいて0°Cまで低下した。また, 粘度も両方のオイルシェール共に, 常圧の場合の半分以下に低下した。これらの油の蒸留試験結果を圧力に対してまとめてFigs. 56に示した。コロラド産の場合, 300°C以下の留分が常圧下の乾留により約40wt%得られたのに対し, 10atmの場合約70wt%まで増加した。タイ国産の場合でも同様に, 40wt%から63wt%に上昇した。
    油の留分別の元素分析結果を Table 4に示した。圧力10atmで乾留した場合, 硫黄分はタイ国産で, 0.31~0.42wt%, コロラド産で, 0.57~0.66wt%で, 各留分にほぼ同量ずつ含まれるが, 窒素分は前者の場合, 0.54~1.68wt%, 後者の場合, 0.79~3.54wt%で, 沸点の高い留分ほど多くなる傾向があった。しかし, 硫黄, 窒素量共に圧力による影響は明確には現れなかった。
    圧力を一定にし, 導入ガスの流速を変えて行った結果をFigs. 78に示した。導入ガスの流速の影響は, この範囲内では, 圧力の影響に比して少なかった。
    導入ガスとして水素の代わりに窒素を使用して得られた結果をFigs. 34に示した。生成ガスの中に水素が30~40vol%含まれて来るので, 大きな差は出なかった。
    箱型6) と円筒型の乾留炉の常圧での乾留結果から, 流動点で2~3°C程度箱型の方が高くなり, 乾留炉の構造によっても油の性状に若干の差が出ることがわかった。
  • 田村 邦光
    1982 年 25 巻 5 号 p. 306-314
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    潤滑油中には極性基を有する各種添加剤が使用され, また使用中の酸化劣化等により各種極性化合物を生ずる。したがって, 潤滑油中での添加剤の吸着はこのようなものが混在した多成分系で行われているものと考えられる。
    しかし現実には, 潤滑油添加剤の吸着研究に関しては溶媒-溶質の2成分系で行われることが多く, 現実に即した多成分系での研究は少ない。そこで本研究では代表的な添加剤であるスルホネートのモデル化合物として, ジノニルナフタレンスルホネート (DNNS) のBa, Ca塩を用い3成分系におけるカーボンブラックへの吸着挙動の検討を行った。実験を行った系は, 溶媒I (無極性溶媒 n-heptane)-溶媒II (極性化合物およびその他の溶媒)-DNNS系であり特に極性化合物がDNNSの吸着におよぼす影響を調べた。
    その結果, 以下の事柄が判明した。
    BaDNNSおよびCaDNNSのカーボンブラックへの n-heptaneだけからの吸着等温線は Langmuir 型 (Figs. 4, 5, 6)であり, 100mg/g以上の吸着量を示すのに対し極性溶媒だけからの吸着においてはいずれもこれより低い吸着量を示す(Table 3)。このことから n-heptane に極性化合物が共存した場合, スルホネートの吸着量が下がることが予想され, 実際(Table 4) のように極性化合物の存在でBaDNNSの吸着量は大幅に低下する。n-heptane に対する極性化合物のフラクションを変えた場合, 1-propanol や 2-butanone は低濃度域から急激にDNNSの吸着量を低下させ, これに対して無極性溶媒である Benzene では影響が小さく, さらに Cyclohexane では影響が全くない (Figs. 7, 8)。このような現象の原因は競争吸着によるものと考えられるので, 溶液吸着の基本的考えに立ちEqs. (2)~(10) のように平衡論より3成分系におけるスルホネートの吸着式Eq. (11) を導いた。その3次元概念図はFig. 9である。Eq. (11) を変形したEq. (12) を用い, プロットした結果はFig. 10のように直線性を示すことがわかった。
    他方, 溶媒の性質とDNNSの吸着との関係については, Fig. 11のように溶解パラメーターと吸着量とにある程度の相関がある。しかし, 直線からのズレもあり吸着には溶解パラメーター以外に溶媒の極性の度合も影響すると推定された。
    1-propanol 存在下におけるBaDNNSの吸着量とカーボンの分散性とは相関がある (Table 6)。しかしこれは 1-propanol の濃度が低い場合の話であって, 1-propanol の割合が増えてくると, 吸着量が低いにもかかわらず分散性が向上する。
    最後に実際の舶用ディーゼルエンジンにおける遠心スラッジへのBaDNNSの吸着挙動を調べたがFig. 13のように1-propanol 存在下でカーボブラックと同様にBaDNNSの吸着量の低下が起こることがわかった。
    以上のように3成分系において, BaDNNSのカーボン類への吸着は極性化合物により影響を受け, かつそれに付随する分散等の現象にも影響が現れることが判明した。
  • 倉知 祥晃, 矢野 法生, 川嶋 耕二, 金井 作信, 生山 亮, 町田 忠太郎
    1982 年 25 巻 5 号 p. 315-322
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    自動車用ギヤ油の耐スコーリング性評価法を確立することを目的に, 乗用車を用いた高速衝撃荷重試験をシャーシー•ダイナモメーター上で行い, 走行抵抗の設定を変えることにより衝撃荷重のかけ方を工夫した。また, 簡易的な実験室試験法としてチムケン極圧試験機を用い, 回転数や油温などの試験条件を検討した。その結果, 実車試験法として走行抵抗を慣性抵抗のみとして衝撃荷重を大きくすることにより, GL-3からGL-5までの品質レベルおよび粘度グレードによる耐スコーリング性の有意差を明らかにすることができた。また, 実車試験と良く相関するチムケン極圧試験条件として, 回転数2,000rpm, 油温95°Cの条件を見い出した。
  • 鈴木 邦夫, 高谷 晴生, 荒木 道郎, 小川 清, 細矢 忠資, 藤堂 尚之
    1982 年 25 巻 5 号 p. 323-330
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタン合成用ジルコニア担持ニッケル-モリブデン合金触媒の耐熱性について検討した。650°C, 80kg/cm2の反応条件下で実際にメタン合成反応を行い, 耐熱性を試験した。担体として用いたジルコニウム化合物は, 単斜晶系ジルコニア, 立方晶系ジルコニア, 炭酸ジルコニルおよび水酸化ジルコニルの4種である。耐熱性は用いた担体により異なり, 単斜晶系ジルコニアを用いた触媒が最も高い耐熱性を示した。X線回折, 炭素含有率等の測定結果から, 触媒の耐熱性は焼成後の触媒におけるジルコニア化合物とニッケルおよびモリブデンの酸化物との相互作用の強さに依存することがわかった。
  • 榎本 稔, 高橋 至朗, 佐藤 信也, 松沢 貞夫, 中村 悦郎
    1982 年 25 巻 5 号 p. 331-334
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    タイ国産およびコロラド産のオイルシェールおよびそれを乾留して生成した廃シェール, 乾留水, 油中の有機および無機質の主として環境汚染性物質の分布, 含量について研究した。
    廃シェールおよび乾留水の試料は, 前報2)のオイルシェールの加圧乾留の際に得られたものを使用した。生成油については加圧乾留により得られたタイ産オイルシェールよりの油 (A-2) とコロラド産のそれ (B-2), および常圧乾留3)により得られた油 (A-1, B-1) について分析を行った。
    Table 1に両方のオイルシェールに含まれている主な微量元素の組成を示した。Pb, Mn, Cr, Asについてはタイ国産の方が多く含まれていた。Table 2には廃シェール中の微量元素およびこれを水で浸出して溶出した成分について示した。溶出性のAsはタイ国産で0.23, コロラド産で0.008ppmであった。後者については6価クロムが微量溶出した。
    Table 3に乾留水中の有機, 無機の汚染性物質について示した。タイ国産ではAsの量が23ppmでコロラド産に比べ一けた多い。多量のフェノールおよび少量のCNを両者共に含んでいた。Table 4に生成油の分析結果を示した。Asの含量はタイ国産の油の方が多く, 最大15ppm程度含まれており, その量は乾留圧力を上げると少くなる傾向があった。V, Ni, Hg, Pb, Cr, Cuなどその他の金属は含まれていてもその量は少なかった。
    Table 5にはこれら金属分の各生成物中への分布について, Table 6に示した平均収率を基にして計算し示した。オイルシェールに含まれていたAsの95wt%が廃シェール中に残り, 1wt%程度が水と油に分布することがわかった。またPbの65wt%が廃シェールにまた微量が水に含まれた。触媒被毒性のPb, Mn, Cr, Vは油中には検出できなかった。
  • 井上 清
    1982 年 25 巻 5 号 p. 335-339
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    代表的な清浄分散剤である, Caドデシルサリチレート(CaDDS) のクロロホルム中におけるミセルの動的構造を13C-NMR法により検討した結果, ミセル状態におけるサリチレート分子は二つの部分から成っていることがわかった。CaDDS逆ミセルの内部を構成する芳香族環および芳香族環に最も近いドデシル基の5個の炭素に起因する共鳴吸収は著しく幅広くなる。これは, 極性基間の強い相互作用により, 逆ミセル内部の運動性が極めて制限されていることを示している。一方, 逆ミセルの外側にある残りのドデシル基の炭素の共鳴吸収はあまり影響されないことがわかった。(Fig. 1 (b)) また, 緩和時間の測定から, ドデシル基のセグメント運動は芳香族環から遠ざかるほど大きくなることがわかった。(Fig. 2)
    逆ミセル中に水を可溶化させると Fig. 1 (b) で観測された線幅の広がりが若干, 小さくなる。これは, ミセル内部におけるカチオンへの水和あるいは水溶液の形成により, 局所運動が増大するためと思われる。(Fig. 1 (c))
    Fig. 3にCaDDSミセルの図式を示した。
  • 平間 康子, 森田 幹雄, 広沢 邦男, 日野 雅夫
    1982 年 25 巻 5 号 p. 340-342
    発行日: 1982/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高温排気調整したSiO2-Al2O3上に吸着した Anthracene は, 黄色と暗緑色の吸着種を与えることが知られている。後者はすでに Cation radical に帰属されているが, 前者の黄色吸着種はSiO2-Al2O3表面上の Brönsted 酸点との反応による9-Anthracenium ion なのかまたは Lewis 酸点への配位錯体なのか, それらの電子スペクトルが似ているために区別が困難であった。しかしながら, 赤外分光法によると脂肪族性-CH, -CH2基の生成を確認できるので, 本研究ではこのことに基づいて黄色吸着種を決定しようと試みた。
    Fig. 1は, 黄色ならびに暗緑色混合吸着種のIRスペクトルであり, Table 1には観測された吸収帯の位置を文献値のそれと比較して示した。
    1,600~1,450cm-1にかけての新たな吸収帯はC10H10-K+anion radical の環振動の吸収帯と一致するものであり Anthracene cation radical の生成がIRスペクトルによっても推察される。一方, 観測されたこれらの吸収帯は9-Anthracenium ion の環振動の吸収帯とも酷似しているが, 吸収強度が大きいはずのこの ion の-CH2基に由来する吸収帯は2,950~2,800cm-1領域でも, 1,420cm-1でも観察されなかった。このことは9-Anthracenium ion が生成していないかまたは生成したとしてもその濃度が極少であることを示している。したがって, 調整したSiO2-Al2O3表面は大部分が Lewis 酸点で占められることも考え合わせると, 黄色錯体は大部分 Anthracene と Lewis 酸点で形成する配位錯体であると結論される。ただし, この配位錯体の形成に伴う-CH基が確認されなかったのは, この基の吸収強度が極めて小さいためであろう。
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