2,3-ジメチルナフタレン, 2-メチル-7-
t-ブチルナフタレンおよび種々の2,6-ジアルキルナフタレンのチオ尿素付加反応を273.2~303.2Kの温度範囲で行い, 平衡定数を測定した。2,6-ジメチルナフタレン, 2-メチル-6-エチルナフタレンおよび2-メチル-6-イソプロピルナフタレンはこの温度範囲においては付加物を形成しなかった。2-メチル-7-
t-ブチルナフタレンを除き, 本研究で得られたジアルキルナフタレン類のチオ尿素付加物分解反応の平衡定数は, シクロヘキサン-チオ尿素付加物の値よりも小さく, ヘキサデカン-尿素付加物の値より大きかった。このことは, ジアルキルナフタレン-チオ尿素付加物の安定性がチオ尿素付加物の中では相対的に高く, 代表的な
n-パラフィン-尿素付加物のそれより低いことを示している。付加物形成能の序列は2,6-ジ-
t-ブチルナフタレン>2,3-ジメチルナフタレン>2,6-ジイソプロピルナフタレン~2,6-ジエチルナフタレン>2-メチル-6-
t-ブチルナフタレン>2-メチル-7-
t-ブチルナフタレンであった。また, 付加物組成
m (付加物を構成するゲスト分子に対するチオ尿素分子の比) は5.0~6.7の範囲にあり, 包接される分子の大きさ, アルキル基のかさ高さに依存した。
チオ尿素付加物の形成は発熱反応であり, 低温ほど有利であった。ジアルキルナフタレン類のチオ尿素付加物の生成熱は28~37kJmol
-1であり, イソパラフィンあるいはシクロパラフィン類のチオ尿素付加物の値と同程度であった。生成熱は付加物組成
mと弱い相関を示すことから, チオ尿素付加物の構造の多様性が示唆された。
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