石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
44 巻, 3 号
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  • 長期等温試験における劣化機構の解明
    関 浩幸, 熊田 文雄, 斉藤 健, 吉本 昌雄
    2001 年 44 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    二段直接脱硫プロセスにおける後段脱硫触媒の長期等温劣化試験を脱メタル処理したアラブヘビー常圧残油を用いて行い, その劣化機構に関して検討した。触媒上のコークは, 運転初期に急激に増加したが, 30日を境に減少した。この原因は, 蓄積した硫化ニッケルの水素化作用であると結論づけられた。細孔分布測定の結果, 運転初期には径の小さな細孔の消失 (2nm付近) および全体的な細孔の狭まりが観測された。前者はアスファルテンの分子サイズとほぼ一致することより, アスファルテンによる細孔の完全閉そくと推定される。また, 運転中期においては, メタル蓄積による細孔の狭まりおよび閉そく空間の存在が確認された。以上の結果および使用済み触媒の残存活性評価試験から, 長期等温運転における初期はコーク劣化が, 中期はメタル劣化が支配的であることが明らかとなった。
  • 脱メタルおよび脱硫反応後のアスファルテンのキャラクタリゼーション
    関 浩幸, 佐藤 信也, 吉本 昌雄
    2001 年 44 巻 3 号 p. 154-162
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アラブライト常圧残油を用いて脱メタルおよび脱硫の二段反応を行い, 各々で得られたアスファルテン平均構造の変化を調べた。脱メタル反応後には, 芳香環数および脂肪族側鎖の減少に伴い, 芳香族性の増加が見られた。一方, 脱硫反応では主にナフテン環の生成が顕著であり, 脱硫温度の増加とともに減少する傾向が見られた。そのため, 脱硫温度とともに芳香族性が増加した。片山らのSAAH法によって得られた構造パラメーターを元に, 各反応における平均構造を提案した。この構造変化からは, アラブライト系アスファルテンの芳香族単位骨格は脱硫反応の進行とともにコロネン構造に近づくことが推測される。
  • 瀬川 敦司, 渡辺 克哉, 吉本 昌雄
    2001 年 44 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素処理した活性炭を触媒担体および添加剤として用いて重質油アップグレーディング反応を行った。
    二酸化炭素処理 (400~1000°C) を施した活性炭に活性金属 (モリブデンとニッケル) を担持すると処理温度が上昇するにつれ, モリブデンが高分散され, 1-メチルナフタレンの水素化反応に高い水素化能を示すことがわかった。また, 1000°Cで処理した触媒は重質油の水素化熱分解において, 優れたアスファルテン-コーク吸着能を示した。二酸化炭素処理により, 活性炭の表面から官能基と一酸化炭素が脱離し, Interactive site が形成され, それがモリブデンの高分散化とアスファルテン-コークの吸着に寄与すると考察した。
    二酸化炭素処理条件を最適化することにより, メソポアの増大した活性炭をつくることができた。この活性炭から調製した触媒はさらに優れたアスファルテン-コーク吸着能を示した。また, 二酸化炭素処理活性炭を添加剤として, 重質油水素化熱分解反応に供したところ, 活性金属をあらかじめ担持しない場合でも優れたアスファルテン-コーク捕そく剤として機能した。これらのことより脱アスファルテンおよび脱コークには担体のメソポアが必須であることがわかった。
    二酸化炭素処理活性炭由来の触媒または添加剤は, スラリープロセスの運転性向上に大きく貢献するものである。
  • 豊田 昌宏, 盛屋 考治, 稲垣 道夫
    2001 年 44 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 自然環境下の様々な温度条件で起こる重油あるいは原油の漏えい事故を考慮し, 膨張黒鉛への重油収着量の温度依存性について検討を行った。すべての場合, 収着量は温度の低下とともに減少した。しかし, その依存性は重油の種類によって異なった。A重油では30°Cから0°Cまでの温度の低下でも収着量の減少はほとんどなく, 原油に対しては0°Cでも依然, 膨張黒鉛1gあたり60gの収着量を有し, 収着量の温度依存性は大きなものではなかった。B重油の収着量はやや大きな温度依存性を示し, 収着量は0°Cで40g/gとなった。C重油は15°C以下で, 収着が不可能となり, 温度の低下による収着量の低下が最も顕著であった。収着量と粘度の相関から, 温度の低下に伴う膨張黒鉛への重油の収着量の減少は, 重油の粘度が大きく関与していることが明らかとなった。
  • 進藤 隆世志, 星野 真仁, 北林 茂明, 小沢 泉太郎
    2001 年 44 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    2,3-ジメチルナフタレン, 2-メチル-7-t-ブチルナフタレンおよび種々の2,6-ジアルキルナフタレンのチオ尿素付加反応を273.2~303.2Kの温度範囲で行い, 平衡定数を測定した。2,6-ジメチルナフタレン, 2-メチル-6-エチルナフタレンおよび2-メチル-6-イソプロピルナフタレンはこの温度範囲においては付加物を形成しなかった。2-メチル-7-t-ブチルナフタレンを除き, 本研究で得られたジアルキルナフタレン類のチオ尿素付加物分解反応の平衡定数は, シクロヘキサン-チオ尿素付加物の値よりも小さく, ヘキサデカン-尿素付加物の値より大きかった。このことは, ジアルキルナフタレン-チオ尿素付加物の安定性がチオ尿素付加物の中では相対的に高く, 代表的なn-パラフィン-尿素付加物のそれより低いことを示している。付加物形成能の序列は2,6-ジ-t-ブチルナフタレン>2,3-ジメチルナフタレン>2,6-ジイソプロピルナフタレン~2,6-ジエチルナフタレン>2-メチル-6-t-ブチルナフタレン>2-メチル-7-t-ブチルナフタレンであった。また, 付加物組成m (付加物を構成するゲスト分子に対するチオ尿素分子の比) は5.0~6.7の範囲にあり, 包接される分子の大きさ, アルキル基のかさ高さに依存した。
    チオ尿素付加物の形成は発熱反応であり, 低温ほど有利であった。ジアルキルナフタレン類のチオ尿素付加物の生成熱は28~37kJmol-1であり, イソパラフィンあるいはシクロパラフィン類のチオ尿素付加物の値と同程度であった。生成熱は付加物組成mと弱い相関を示すことから, チオ尿素付加物の構造の多様性が示唆された。
  • 溶媒への塩化アルミニウム添加による分離性能向上
    江頭 竜一, Chris SALIM
    2001 年 44 巻 3 号 p. 178-182
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールおよび塩化アルミニウム (AlCl3) の水溶液を溶媒として, コールタール吸収油留分-溶媒間における含窒素複素環式化合物 (含窒素成分, 2,3-ベンゾピリジン (キノリン), 3,4-ベンゾピリジン (イソキノリン), 2,3-ベンゾピロール (インドール)), 同素環式化合物 (芳香族成分), および含酸素複素環式化合物の液液平衡関係を実測した。いずれの条件においても, 他の成分に比較して含窒素成分は選択的に抽出され, また含酸素複素環式化合物は抽出相中に検出されなかった。抽出相におけるAlCl3の質量分率の増加とともに含窒素成分および芳香族成分の分配比は増加し, この傾向は特にキノリンおよびイソキノリンについて顕著であった (それぞれAlCl3を添加しない場合の最大26倍および85倍程度)。抽出相におけるAlCl3の質量分率の増加とともに, 芳香族成分に対するキノリンおよびイソキノリンの分離の選択度は大きく増加し, それぞれAlCl3を添加しない場合の最大で5倍および17倍程度となった。また, インドールの分離の選択度に対するAlCl3添加の影響はなかった。
  • 鈴木 崇, 岩本 治, 北原 太美男
    2001 年 44 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    現在, 主要都市ではメタンを主体とする13A等の高カロリー都市ガスが供給されている。一方, 地方都市ではLPG (主にプロパン, ブタン等) が供給されているところが多い。現在, IGF (integration of gas family) 21計画により供給ガス種の統合が進められており, LPGを供給している都市ガスの熱量変換 (天然ガス転換) が今後, 加速される状況にある。地方都市の中小ガス事業者に関しては, LPGなどの軽質石油留分を天然ガスの主成分であるメタンに変換する代替天然ガス (SNG: substitute natural gas) 製造設備を導入すると, たとえばLNGを導入するケースに比べ設備投資の抑制効果が期待できるため, 注目される技術となってきている。LPG等の軽質石油留分からメタン分に富むガスを得るためには, 450°C前後の低温かつ低スチーム/カーボン (S/C) 比で水蒸気改質するのが望ましい。したがって, 低温で高活性を示し, かつ低S/C比であっても炭素析出を起こし難い優れた触媒が求められる。開発Ru/CeO2-Al2O3系触媒を用いてLPGの低温水蒸気改質をラボスケールで行った結果, 反応温度450°C, S/C=0.8で約8000時間 (約1年に相当) 以上安定した寿命を示した。この結果を受けて, コスモ石油(株) 千葉製油所構内にパイロットプラントを建設し, ヘビーナフサフィードによる実証試験を行った。本報告では, 開発触媒の特徴を中心に, ラボスケールおよびパイロットプラントでの結果についても紹介したい。
  • Michiaki ADACHI, Kaoru FUJIMOTO
    2001 年 44 巻 3 号 p. 188-191
    発行日: 2001/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Properties of the active site precursor for hydrodesulfurization reaction are dependent on the support. Co-Mo on alumina has higher thiophene hydrodesulfurization activity than catalysts on silica containing supports. Although similar species is detected on the catalysts by potentiometric titration, the reducibility of the species on the catalysts is different among each other. This fact suggests that not only surface species itself but the interaction between support and the species reflects on the difference in the hydrodesulfurization activity.
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