石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
33 巻, 6 号
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  • 廣安 博之
    1990 年 33 巻 6 号 p. 337-346
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    液体燃料を微粒化し噴霧燃焼させる燃焼方式は工業的に広く使用されている。そこで本研究では, ガソリン, 灯油, 重油を揮発性の高, 中, 低程度の燃料として取り上げ, それらを平均粒径と噴霧推力の等しい噴霧として燃焼装置に供給し, 燃焼特性, 吹き消え限界, 温度分布などに及ぼす燃料性状とスワール数の影響について調べた。さらに, 火炎長さ, O2, NOx, THC, すすの各濃度に及ぼす燃料性状とスワールの影響を調べた。
    使用燃料はガソリン, 灯油, C重油を用い, 燃料噴射弁には気流噴射弁を使用した。微粒化用空気オリフィスを交換することにより, 噴霧の平均粒径を燃料が異なっても同じ値になるよう調整した。また噴霧の推力も同一になるようにして実験を行った。燃焼装置はスワーラにより火炎の安定をはかり, 5種類のスワール数のスワーラを用意した。
    燃料の違いによる吹き消え限界の変化は, Fig. 6に示すようにガソリン, 灯油, 重油, C重油と燃料の揮発性の順に燃料流量の少ない方から並ぶ。スワールが大きくなると吹き消え限界は燃料性状ではあまり大差がなく, 噴霧の平均粒径の異なるC重油のみが異なった吹き消え限界を示す。すなわちスワール数の小さい場合, いいかえれば燃焼筒内の保炎効果が弱い場合には燃料の揮発性や平均粒径による吹き消え限界の差が著しく現れ, スワール数が大きく保炎効果も良好な場合にあまり顕著に現れない。
    中心軸上の温度の変化を調べると, Fig. 11に示すようにガソリンの場合は噴射弁近くから温度の上昇が開始されるが, その温度の立ち上がりは緩慢である。灯油の場合は軸距離250mm付近で急激な温度の立ち上がりがみられる。重油の場合は灯油よりもさらに下流で温度の立ち上がりがある。火炎長さはスワール数が大きくなるにつれて短くなる。そして, スワール数にかかわらず, ガソリンの場合に火炎長さは一番短く, 灯油, 重油の順に長くなる。その差はスワール数が小さい場合に顕著に現れることがわかった。
    3種類の燃料についてスワールのない流れの場合, ある場合の燃焼筒中心軸上の酸素, 窒素酸化物, 未燃炭化水素, すすの各濃度分布を調べた。窒素酸化物濃度はガソリンの場合に灯油よりもいくぶん高い値を示す。また燃焼筒出口において重油は他の燃料の場合の約2倍の値を示す。すす濃度の変化は, 灯油, ガソリン, 重油の順に出口方向に移動している。
    未燃炭化水素の排出濃度はスワール数の増加とともに減少していくが, すすについてはスワール数の増加とともに増加する傾向を示すことなどがわかった。
  • 酸化, 還元, 硫化状態の構造及び表面化学
    瀬川 幸一, 添谷 友常, 金 斗晟
    1990 年 33 巻 6 号 p. 347-359
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    平衡吸着法を用いてモリブデンを高分散したMoO3/TiO2触媒を調製した。チタニア表面上のモリブデンアニオンの吸着量は含浸液のpHに強く依存し, チタニア担体の等電点 (pH=6.2) より塩基性側では吸着量は少なく, 酸性側になるにつれ増加した (Table 1)。XRD, XPS (Fig. 3) およびラマン(Fig. 4) の結果から, モリブデン種はpH=3.98(6.6wt%) 付近でモノレイヤーを形成し, それより低いpHでは多分子層(結晶性MoO3) で存在していることが分かった。なお, 表面モリブデン種の構造は含浸液のpHと関係なく, すべて四角すい形で存在することが明らかになり, Scheme 1にモノレイヤー触媒の酸化表面モデルを提案した。
    773Kで焼成して得た触媒を用いてメタノールの酸化反応を行った結果, 触媒活性および選択性は触媒の表面状態および反応温度に強く依存することが分かった。反応主生成物は低い反応温度では (CH3O)2CH2であり, 473Kよりも高い反応温度ではHCHOであった (Fig. 5)。本反応条件ではCOとCO2はほとんど生成せず, 本触媒は高選択性の部分酸化触媒であることを見いだした。反応副生成物であるCH3OCH3の選択率は担持率が増加するにつれて増大した。
    CO2がチタニアの表面に選択的に吸着する性質を用いて, 各々の還元状態における触媒表面の変化を調べた (Fig. 9)。モノレイヤー触媒は酸化状態ではチタニア表面がモリブデン種に覆われているためCO2はまったく吸着せず, 還元が進行するにつれ吸着量は増加した。これは還元処理によって再びチタニアの表面が現れてくることを示唆している。NOは還元処理により生じたモリブデンの配位不飽和サイトに選択的に吸着する。吸着NOのTPDスペクトルからはいずれの場合でも二種類の脱離ピークが得られ, 還元により構造が異なる二種類の活性サイトが生成することが分かった (Fig. 10)。例えば, 水素化反応は配位不飽和度3のサイト (Mo3+) が, メタセシスは配位不飽和度2のサイト (Mo4+) が最も活性が高く, 反応の種類によって要求される活性点の構造が異なることを見いだした。
    還元硫化処理することにより, モリブデン種はMoS2と類以な構造に変化することがXPSスペクトルから明らかにされた (Fig. 13)。吸着NOのTPDからは還元状態と同様に二種類の脱離ピークが観察され, 配位不飽和度3のサイトは硫化処理した方が還元処理した場合より低い温度で発現することが分かった (Fig. 14)。一方, チオフェンの水素化分解反応には隣接した二種類の配位不飽和度サイトが必要であることが分かった。
  • 岡上 明雄, 羽田野 祐治, 山田 宗慶, 天野 杲
    1990 年 33 巻 6 号 p. 360-366
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高分散したニッケル硫化物の触媒作用の特徴を, その構造の面から明らかにするため, 硫化度の異なるけいそう土担持硫化ニッケル触媒に平衡するH2S/H2比を573~723Kの範囲で測定した。硫化物Ni3S2の周辺に明らかに不定比相が出現し, 高温ほどその出現範囲が広くなった。比較のため同様の測定を粉末状Niについても行ったが, 担持物に比べてはるかに高温でのみ不定比相の存在が認められた。2相共存領域および不定比相領域を熱力学的に解析して, 高分散ニッケル硫化物と粉末状ニッケル硫化物とを比較した。
  • 持田 勲, 光来 要三, 安部 聡, 坂西 朱美, 藤堂 義夫, 大山 隆
    1990 年 33 巻 6 号 p. 367-372
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高品質ニードルコークス製造のため, 3種の脱ろうFCCデカント油 (FCC-DO) と低硫黄減圧残さ油 (LSVR) (Table 1) との共炭化を行った。共炭化によって得られたコークスの評価は, 熱膨張係数 (CTE) (Table 2) とボトムモザイクコークス厚さによって行った。使用したデカント油は, 単に減圧残さ油と共炭化するだけでは, 上部に配向性の良い流れ組織が認められるものの, かなりの量のボトムモザイクコークスを生成した (Fig. 1)。これを脱ろうすることにより, 一つのDOではボトムモザイクコークスを消去できると同時にわずかではあるが, CTEも改善できた。他のDOでは脱ろう後にもボトムモザイクコークスを生成した。
    脱ろうデカント油中の軽質芳香族を分析してみると (Fig. 2), アルキル側鎖数と側鎖の長さの点でデカント油間にかなりの差が見られた (Tables 4, 5)。一方, 重質芳香族成分間の差は小さい。LSVRとの共炭化では軽質芳香族成分の芳香族性の高いFCC-DOほどボトムモザイクコークスの消去には有効であると考えられる。一般に脱ろうによって最適炭化温度は上昇するが, 脱ろう後解析した軽質芳香族の構造と最適炭化温度の相関についても言及した。
  • 持田 勲, 光来 要三, 曽 曙明, 坂西 朱美, 藤堂 義夫, 大山 隆
    1990 年 33 巻 6 号 p. 373-377
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    FCC デカント油 (FCC-DO) と低硫黄減圧残さ油(LSVR) から共炭化によってニードルコークスを製造する場合, FCCデカント油の性状によっては均質なコークスが得られないことがある。本研究ではこのように, 均質なコークスの得られないパラフィン系のFCCデカント油を, あらかじめ熱処理することによって, コークス品質の改善, とくにボトムモザイクコークスの消去を試みた。ここでは本DOに410°C-5~10h, 430°C-1h, 450°C-1hの熱処理を施すことによってLSVRとの共炭化によって生じるニードルコークス塊からボトムモザイクコークスを消去し, かつ熱膨張係数 (CTE) を0.3~1.1×10-6/°Cとすることができた (Fig. 1, Table 1)。FCCデカント油は熱処理によって芳香族環の長アルキル側鎖が切断し, 芳香族性が向上することがNMR, TLCによって確認できた (Tables 2,3,4)。熱処理によって生成した高芳香族性FCCデカント油は, 共炭化初期段階において低硫黄残さ油中の反応性の高い成分から生成する粘性の高いメソフェーズを溶解する能力が高いので, ボトムモザイク消去に有効であると理解できる。ニードルコークス生成機構を考慮し, 熱処理したDOとLSVRの組合わせ, 共炭化条件を選ぶことによって, 高温熱処理によって芳香族性を高くしたDOからもコークスの熱膨張係数 (CTE) を0.3×10-6/°Cにすることができた。
  • 柳沢 和博, 斎藤 政行, 松永 充史, 中村 靖
    1990 年 33 巻 6 号 p. 378-382
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    銅と接触した絶縁油の酸化初期に見られる誘電正接 (tan δ) が一時的に増大する現象を明らかにするためラジカルおよび銅 (I) イオンの分析を行った。ラジカルは Phenyl-t-butylnitron (PBN) によってスピントラップして電子スピン共鳴 (ESR) で測定した。また銅 (I) イオンは絶縁油からエタノールで抽出後, ネオクプロインとの錯体を生成させ吸光光度法で定量した。この結果, tan δが一時的に増大する時にはC4~5のアルコキシおよびベンジルなどと推定されるラジカルの生成が増大し, また銅 (I) イオンの濃度も増大している現象が見られた。
  • 小木 知子, 横山 伸也, 美濃輪 智朗, 土手 裕
    1990 年 33 巻 6 号 p. 383-389
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    著者らは木質系バイオマスの直接液化に関する一連の研究を行っているが, これまでに水素や一酸化炭素などの還元性ガスを用いることなく, 木粉を触媒存在下, 水溶液中高温 (~300°C), 高圧 (~100気圧) で反応させるとアセトン可溶の重油状の液化油が得られること (Ref. 12~16), またこの反応系にアセトンやC3, C4の低級アルコール等を添加すると流動性に富む液化油が得られること (Ref. 17) を報告した。前回, 添加溶媒として2-プロパノールを用いて実験を行ったところ, この液化反応が2-プロパノールを水素供与体とする水素化反応でない可能性が示唆された (Ref. 18)。そこで今回, 添加有機溶媒として水素供与性の異なるブタノールの異性体4種 (1-, 2-, i-, t-ブタノール) を用いて液化を試み, 反応に及ぼす影響とその役割を検討した。
    原料として用いたコナラ木粉の組成, 元素分析値を Table 1に示す。触媒には炭酸ナトリウムを5wt% (対木粉重量) 用いた。実験は前報 (Ref. 18) で述べたのと同じ手法で行った。反応後, 反応溶液から液化油を抽出, 分離する操作はFig. 1に示されている手順にしたがって行った。液化油の収率はジクロルメタン可溶分として定義し, Eq. (1) より求めた。
    収率[%]=生成油の重量/料原木粉の重量×100 (1)
    水/ブタノール=1:1の条件下での液化の結果をTable 2に示す。Run 1~8は木粉の存在しない水/ブタノール混合溶媒のみを反応させたブランク•テストである。1-ブタノールが反応を通じて安定であるのに対し, t-ブタノールは不安定であった。特に触媒が存在しない場合では, t-ブタノールの20%が脱水反応により分解してブテンになってしまい, 反応後のブタノール存在比は0.3であった。ちなみに本論文中に度々述べられるブタノール存在比とは, Table 2中*1)で示した [BuOH("Final"/"Initial")] (後以略してブタノールF/I比) を指し, 反応に用いたブタノール量に対する反応終了後の反応混合溶液中に存在するブタノールの量の比で, ブタノール回収の目安となるものである。
    Run 9~16は木材の液化の結果である。触媒存在下では液化油の収率は45~55%で, ブタノールの種類にかかわりなくほぼ一定していた。それに対しブタノールF/I比は1-ブタノールで1.0 (Run 9) と反応前のほぼ全量が残存しているのに対し, t-ブタノールでは0.03 (Run 16) とほとんど残存しておらず, ブタノール種により大きく変化した。2-ブタノールは, ブタノール異性体4種のうち水素供与体として最も有効であると考えられたが, 2-ブタノールを用いた場合の液化油の収率は45% (Run 11) で, t-ブタノールを用いた場合の液化油の収率とほぼ同じであった。これらの結果や反応のマス•バランスの検討から, ブタノール異性体4種につき, 水素供与性の違いは液化油の収率にほとんど影響を及ぼさず, 液化反応がブタノールを水素供与体とする水素化反応によるものではないことが判明した。
    触媒 (Na2CO3) の効果は顕著であるが, セルロースやヘミセルロース等の高分子の加水分解触媒として, また反応中に木材より生じてくる酸 (酢酸など) を中和し, ブタノールの酸触媒分解反応を阻止する塩基中和剤として作用していると考えられる。
    液化反応は, 木材中のセルロースやヘミセルロース高分子が水溶液中で加水分解され, ついで脱酸素反応や種々の分解反応により低分子化しながら進行する。この反応の途中に生じるフラグメント中間体は不安定で, フラグメント同士で再結合して重合体を作りやすい。ブタノールが存在する場合, 反応中に生成されるフラグメントは生じるそばからブタノール層に移動し, ブタノールがこの不安定なフラグメントをかこむことにより, フラグメント同士の再重合などの二次反応を阻止すると考えられる。すなわち, 添加ブタノールは抽出溶媒として作用し, 不安定なフラグメント中間体に対し希釈剤, 安定化剤として機能する。
    以上, 水/ブタノール (1:1) 溶媒中で木材の液化反応を行い, ブタノール異性体4種につき各々その液化に及ぼす効果を検討したところ, ブタノール種によりブタノールF/I比は大きく変動するにもかかわらず, 液化油の収率は45~55%で大きな差はみられなかった。ブタノールは水素供与体として作用しているのではなく, 不安定なフラグメント中間体の抽出剤, 安定化剤として作用していると考えられる。
    本液化反応において, 添加ブタノールが消費されないことが判明したが, これにより添加有機溶媒をリサイクルして液化反応を行う展望が大きく開けたと考えられる。
  • 分解油性状に及ぼす水素化前処理の効果
    佐藤 芳樹, 山本 佳孝, 加茂 徹, 稲葉 敦, 三木 啓司
    1990 年 33 巻 6 号 p. 390-396
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石炭液化油の接触分解反応に与える予備水素化処理の効果を実験的に検討した。試料としたカナダ産バトルリバー炭からの液化油重質成分の水素化処理は通常の固定床流通反応装置によってNi-Mo/Al2O3触媒を用いて反応温度350~390°C, 水素圧50~150kg/cm2•GおよびLHSV 0.5~2hr-1の条件で行った。水素化処理油のH/C原子比は水素化処理深度が高くなるに従って上昇し, 芳香族化合物の環水素化反応が効果的に進行した。次に得られた水素化処理油について, ASTMに準じて設計された小型試験装置によってFCC触媒を使用して反応温度452~502°C, WHSV 8~36wt/wt/hrの条件で接触分解反応を行った。ガス生成量は水素化処理深度の高いほど多くなり, 逆にコークの生成量は減少した。また, 十分水素化処理を行った試料では部分水素化物等の接触分解によって重質留分が減少し, 軽質留分を効果的に生成できることがわかった。
  • 三浦 弘, 安斎 竜一, 水嶋 洋二, 栗田 彰, 松田 常雄
    1990 年 33 巻 6 号 p. 397-401
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    酸化鉄を主成分とする種々の触媒を用いてジエチルベンゼンの脱水素反応を試みた。X線回折より, 鉄-カリウム系触媒は複合酸化物KFeO2を形成するが, CO2により分解することが分かった。カリウム以外のアルカリ金属は複合酸化物を形成しにくく高活性が得られない。原子レベルでの混合を促進させるために, 触媒前駆体として鉄とアルカリ金属を含むシュウ酸錯体をアルミナに担持して, 脱水素反応に用いた。鉄-カリウム系で従来の触媒をしのぐ高活性が得られた。さらにカリウム以外のアルカリ金属•アルカリ土類金属でも高活性が得られ, セシウム系で最も高い活性が得られた。しかしエチルベンゼンの脱水素反応では異なった傾向がみられた。
  • 新井 雅隆, 斎藤 孝三, アルテンカーク R.D.
    1990 年 33 巻 6 号 p. 402-408
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水面上に広がった原油の表面を伝播する火炎の速度を, 原油層の厚さ, 初期温度, 雰囲気にさらされている時間を変えて測定した。実験は3種類の原油について燃料層の幅が13mmのトレイを用いて行い, ビデオカメラにより録画した現象の解析から次のような結果が得られた。
    水面上を浮遊する原油の厚みが薄くなると火炎伝播速度は低下し, 予熱帯の幅が広がる。原油の種類により火炎伝播の形態は異なるが, 原油の温度や雰囲気中に放置した後の露出時間の影響も受ける。しかし, 露出時間を十分長くとれば原油の種類の影響や温度の影響は小さくなり, 拡散火炎が現象を支配する火炎伝播の形態となる。
  • 日秋 俊彦, 穴澤 一郎
    1990 年 33 巻 6 号 p. 409-412
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    尿素は樹脂の原料や肥料として重要な物質であり, その製造法はアンモニアと二酸化炭素を原料とする高温, 高圧下での直接合成法である。ところが, 製品である尿素が貯蔵中に淡黄色を帯びることがまれにみられ, その原因はこれまで不明であった。そこで尿素の製造過程について詳細に検討した結果, 原料の二酸化炭素が合成系に導入されるまでに, 圧縮機内で超臨界状態になることが分かった。
    本研究は, 尿素が着色する直接的な原因の究明を目的として, 以下の項目について検討を行った。すなわち (1) 二酸化炭素の圧縮に用いられる注油型6段往復圧縮機の運転条件に基づいて圧縮機内の潤滑油の超臨界二酸化炭素による抽出を行う。(2) 抽出された成分のIRおよび1H-NMRによる同定。(3) 抽出成分である酸化防止剤, BHTを含んだ尿素の太陽光照射による着色の確認。
    本研究で用いた超臨界抽出装置の略図をFig. 1に示す。実プラントで用いられている注油型6段往復圧縮機で, 二酸化炭素の臨界点を超える5段吐出ならびに6段吐出の各条件を選び, 圧縮機用潤滑油の超臨界二酸化炭素による抽出を行った。その結果, 白色針状結晶と微量の油成分が抽出された。主な抽出成分である針状結晶の抽出量をFig. 2に示した。次に抽出成分の同定をIRおよび1H-NMR分析により行った結果, Fig. 3およびFig. 4に示すように2,6-di-tert-butyl-p-cresol (BHT) であることが分かった。抽出されたBHTが尿素の着色の直接的な原因であることを確認するために, BHTを微量添加した尿素に太陽光を照射した結果, 約8時間後には淡黄色となった。吸光光度計による測定結果をFig. 5に示す。同時に行った尿素のみ, BHTのみの太陽光照射実験では, いずれも着色しなかったこと, また太陽光の照射時間経過に伴ってBHTの濃度は減少することから, BHTが尿素によって酸化され可視部に吸収をもつ成分に変化していることが分かる。新たに生成した着色成分の同定を種々の方法で試みたが, その確認はできなかった。
  • 上田 耕造, 松井 久次, 宋 春山, 許 維春
    1990 年 33 巻 6 号 p. 413-417
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石炭の水素化熱分解では多環芳香族化合物を主成分とする多量の液状生成物が得られる。これらの液状生成物のアップグレーディングにより付加価値の高い1~2環の芳香族化合物を生産することは石炭利用の経済性向上に対して非常に重要である。本研究では, コールタール中の含有量が高いフェナントレンの接触水素化分解反応を, 初期水素圧7MPa, 反応温度400°C, 反応時間1時間で行い, 従来検討の少ない金属担持Y型ゼオライトの触媒としての可能性について調べた (Table 1)。比較のために, 市販の工業用水素化分解触媒であるNiMo/Al2O3とCoMo/Al2O3を用いた反応生成物は, GCおよびGC-MSにより同定•定量分析した。Table 2に各反応の生成物分布を示す。フェナントレンの水素化分解反応は, 無触媒の場合にはほとんど進行しないが, NiMoとCoMo担持触媒を用いると70%弱の転化率で主生成物として水素化フェナントレン類とテトラリン類を生成した。H-YとLaH-Y型ゼオライトを用いると転化率が46~47%になり, FeH-Y型ゼオライトの場合にはその活性が低く転化率が20%にとどまった。これに対してNiH-Y型ゼオライトは80%以上のフェナントレン転化率を与え, 高い水素化分解活性を示すとともに, 付加価値の高いナフタリン類やベンゼン類を多く生成した(Fig. 1)。フェナントレンの転化率および1~2環芳香族化合物の収率は, NiH-Y>H-Y≈LaH-Y>NiMo/Al2O3≈CoMo/Al2O3>FeH-Yの順に増加した。これらの結果より, 本研究で調製したNiH-Yゼオライトは多環芳香族化合物の水素化分解による1~2環芳香族化合物製造の触媒としての可能性があることが分かった。
  • 上宮 成之, 佐藤 昇, 安藤 博史, 松田 剛, 菊地 英一
    1990 年 33 巻 6 号 p. 418-421
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    パラジウム膜を用いた水素透過型メンブレンリアクターのメタン水蒸気改質反応への適用を検討した。200~300nmの細孔を有する円筒状多孔質酸化物担体上にパラジウム薄膜を形成し, パラジウム膜厚と水素透過速度の関係について調べた。その結果をFig. 1に示した。パラジウム膜厚はめっき時間により調節した。水素透過速度は支持体の種類に関係なく, パラジウム膜厚に反比例した。これは, パラジウム膜厚が均一であること, および水素透過の律速段階はパラジウム中の水素の拡散過程であり, 水素透過が細孔の影響を受けないことを示している。
    これら担持パラジウム膜を分離膜として用い, メタン転化率と系内水素分圧に与えるパラジウム膜厚の影響について検討した。その結果をFig. 2に示した。パラジウム膜厚が小さくなるにしたがい水素透過が促進され, メタン転化率は大となった。
    Fig. 3は, 系内水素分圧と平衡転化率の関係を示す曲線に得られた実験結果をプロットしたものである。実験結果は平衡値とよく一致したことから, 用いた触媒の水素生成速度は十分に大きく, 本反応条件下では水素透過が律速であることを示している。
  • 中島 功, 馬場 征夫, 大井 明彦, 青山 兵五郎, 小渕 存, 大内 日出夫
    1990 年 33 巻 6 号 p. 422-425
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    硫黄含有量が0.046, 0.20, 0.40wt%と異なるが, そのほかの性状がほとんど変らない3種類の軽油留分により, 我が国で実用となっている直接噴射式ディーゼル機関を搭載したトラックおよび副室式ディーゼル機関を搭載した乗用車を, M15モードおよびディーゼル10モードという加減速を含む試験走行サイクルで運転して, 軽油の硫黄含有量が排出物質性状に及ぼす影響を調べた。
    本実験に使用した試験車および試験走行サイクルでは, 軽油の硫黄含有量が燃料経済性, CO, HC, NOxおよび粒子状物質の排出量に明らかな影響を及ぼさないことがわかった。軽油の硫黄含有量と硫酸イオン排出量との間には正の相関を認めたことから, 軽油の低硫黄化はエンジンから排出される硫酸イオンの低減に有効であることを確かめた。しかし, 燃料の硫黄分の硫酸イオンへの変換率が試験車によって異なっていたことや, 軽油の硫黄含有量によって変化していることなど, これからの実験によって解明されるべき問題点が残されていることもわかった。
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