石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
36 巻, 1 号
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  • 持田 勲, 坂西 朱美, 大山 隆
    1993 年 36 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    生産性向上のため採用されているピッチの多孔紡糸では, 静電気を防止し繊維を集束させるために, 集束剤が用いられている。本研究では, 市販のシリコン系油剤を水に懸濁させた集束剤3種について, その集束機構, 役割を検討した。水だけの場合でも静電気を除去できるが, ピッチの疎水性のため, 過集束を起こし, 繊維が密集し繊維束内の空気の流通が阻害され, 不融化時の除熱が不十分となりピッチ繊維の融着を誘発する。シリコン油は水による過集束を防ぐ意味で添加されているが, 3種のシリコン油の中では, フェニルシリコン系集束剤が過集束の防止, 不融化時の発熱抑制に最も有効であったが, 炭素繊維強度を相当低下させた。シリコン油の繊維上の分散状態をEPMAで観測したところ, 数μm程度のシリコン塊が観測された。そこで, フェニルシリコン油/水懸濁液にエタノールを添加した集束剤 (エタノール25%) を用いたところ, 集束性を維持したまま不融化時の発熱量が低下し, 炭素繊維強度の低下も防止できた。
    水により静電気は除去されるが, ピッチ繊維表面は疎水性であり水の反発力を受け, ピッチ繊維束は凝集する。シリコン油は繊維間隔の確保のため水に懸濁されているが, エタノールの添加によりシリコン油の分散およびピッチに対する水のぬれ性を改良し, 疎水性反発を減少させ, 炭素繊維物性を改善する。シリコン油は不融化, 炭化時においても, 繊維間隔を維持するのに必要であるため, 使用温度に合ったシリコン油を選択しなければならない。
  • 劉 芳芝, 山田 幾穂, 森 秀樹, 新垣 勉, 平岡 節郎
    1993 年 36 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    還流比無限大 (R=L0/D→∞) における不均一系共沸蒸留操作を全還流問題 (D=0) と無限還流問題 (L0→∞) に分けて考察する。これまでに報告されている共沸蒸留の無限還流比問題に対する議論は Cairns1) による均一系に対する全還流問題の解法に関するもののみであった。
    不均一系共沸蒸留の全還流問題に対して, 次のような解法を提出した。仮定されたリボイラー液組成から始め, デカンターに向けて, 筆者らが先に提出した不均一系気液平衡計算法7)とxMji=yj+1,iの関係を用いて, 逐次段計算を行い各段の気液組成と温度を求める。得られた塔内組成分布からコンデンサー/デカンター, リボイラー, および塔内各段のホールドアップが初期投入原料との物質収支を満足するように, 正規化θ収束法を用いてリボイラーの液相組成を修正する。
    この解法を用いて, エタノール/ベンゼン/水系において, 同一のエタノール-水原料に対してベンゼンの投入量による初期投入原料組成を変化して全還流蒸留計算を行った。全還流蒸留曲線は二種類 (Type I and Type II) があることが分かった(Figs. 1a, 1b)。一つはエタノール-ベンゼン共沸物と三成分共沸物の間にある蒸留境界線とエタノール-ベンゼン軸に沿って, 三成分共沸物の近くからエタノール頂点へ向かう。このとき, リボイラーのベンゼン濃度は水の濃度より高い。もう一つは三成分共沸物近くからエタノール-水軸に突き当たり, そしてエタノール-水軸に沿ってエタノール頂点へ向かう。Fig. 1bで示したように全還流蒸留曲線の種類が変わる点で, 一番高い純度のエタノールを得ることが分かった。これによって共沸蒸留のスタートアップ時の共沸剤の必要量を決めることができる。原料中の水の組成の変化と各部へのホールドアップの分配比が共沸剤の必要量へどのように影響するかを検討した(Figs. 2, 3)。
    各段の計算方法は上述全還流問題と同じで, 塔への流入量と流出量の物質収支を収束判定条件とする無限還流問題の解法を提出した。
    この無限還流問題の解法を用いて二塔共沸蒸留プロセスを解析した結果, 共沸蒸留プロセスにおいて, 共沸剤の補給量の有効操作範囲が存在することが分かった (Fig. 5)。無限還流蒸留計算より共沸塔の最小理論段数を決定することもできる。(Fig. 6)。
  • 神谷 佳男, 熊倉 敏裕, 林 信夫, 宮田 英明
    1993 年 36 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    2-イソプロピルナフタレンを酢酸中Co-Mn-Br系触媒により酸素酸化すると, 2-アセチルナフタレンおよび2-ナフチル-2-プロパノールを経由して2-ナフトエ酸を生成する。基質濃度の増加に対して, 酸化速度は極大値に達したのち減少し, ある濃度以上では基質濃度は負の効果を示した。また, 酸化速度は触媒濃度に比例して増加し, Br/Metal 比に対しては3.0において最大値を示した。遷移金属触媒の混合により, Co-Mn系およびCo-Ce系では相乗効果が認められた。酸化機構の検討によれば, アセチル基は選択的にカルボキシル基を生成するが, ジメチルオキシメチル基からのカルボキシル基の収率は低温反応ではあまり高くないことが明らかにされた。
  • アルミナ•セラミックス/超高分子量ポリエチレン系におけるすべり摩擦
    広中 清一郎, 甲本 忠史, 中村 好雄
    1993 年 36 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    空気中および水中でのアルミナ•セラミックスと超高分子量ポリエチレン (UHMWPE) のすべり摩擦における摩擦摩耗機構について研究された。摩擦試験はセラミックス半球ピン/UHMWPE円板系で行われ, UHMWPEおよびセラミックスの摩擦表面のモルホロジー, およびUHMWPEのセラミックス表面への移着状態が透過電子顕微鏡によって検討された。このすべり摩擦系の摩擦摩耗は, 水の潤滑作用, 水の高荷重による摩擦面間からの排斥, UHMWPEのセラミックス表面への接着および移着, せん断によるUHMWPE表面の変形によって考察された。
  • 小川 幹雄, 田中 寛之, 石井 康敬
    1993 年 36 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    低および高分子量のポリ (4-ビニル) ピリジン, L-PVP (Mw=2,900) およびH-PVP (M=31,000), の4級塩を対カチオンとするヘテロポリ酸塩を調製し, オレフィンおよびアルコール類の過酸化水素酸化について検討した。L-PVPを対カチオンとする12-モリブドリン酸塩 (L-PV/Mo) 触媒は過酸化水素を酸化剤としてオレフィンをグリコールに比較的よい収率で変換することがわかった。また, 部分的に塩酸で4級化したL-PVPとペルオキソタングストホスフェートから調製したL-PV/PW触媒はアルコールおよびジオール類の2級水酸基の相当するカルボニル化合物への酸化に対して優れた触媒作用を示すことがわかった。これらの触媒は反応後, ろ過により容易に回収でき, 回収触媒の活性は初期触媒の活性をほぼ維持していることがわかった。
    一方, H-PVPに担持したH-PV/MoおよびH-PV/PW触媒の活性は, 相当するL-PV/MoおよびL-PV/PW触媒と比べ著しく活性が低くなることがわかった。
  • アルキルチオフェン類の反応性
    三木 康朗, 杉本 義一, 山田谷 正子
    1993 年 36 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ニッケルーモリブデナ/アルミナ触媒上におけるアルキルチオフェン類の反応性を脱硫, 含硫黄化合物の脱硫を伴わない水素化, 含硫黄化合物の脱硫を伴わない水素化開環, 脱硫生成物の付加および脱硫生成物の水素化の5反応の面から比較, 検討した。反応はバッチ式装置を用い, 温度225~300°C, 水素圧力8MPaで行った。
    脱硫反応性は置換基の位置に大きく依存し, 硫黄原子に対してβ-位に置換基を有するものは置換基をもたないチオフェンよりも反応性が高く, α-位に置換基を有するものはチオフェンよりも反応性が低かった。脱硫生成物のオレフィン類が他の含硫黄化合物に付加してアルキルチオフェン類やジアルキルスルフィド類を生成する付加反応性は, 置換基の位置よりも構造に依存し, エチルチオフェン類はメチルチオフェン類よりも付加生成物の収率が高かった。
    脱硫生成物であるオレフィン類の水素化は, 脱硫活性点上で脱硫に伴って起こる水素化と, 脱硫後水素化活性点上で起こる2次的な水素化の二つの過程で進行すると考えられた。いずれの水素化もα-位に置換基を有するものが高かった。含硫黄化合物の脱硫を伴わない水素化, すなわちテトラヒドロチオフェン類の生成率はこの逆で, β-位に置換基を有するものの方が高かった。
    チオフェン環内のC-S結合の開裂による水素化開環反応性は置換基の位置に大きく依存し, 置換基からより離れたC-S結合の方が開裂しやすかった。2-メチルチオフェンの反応では, ペンタン-2-チオールはペンタン-1-チオールの約4倍量生成した。
  • 丹羽 幹, 森 徳春, 澤 正彦, 村上 雄一
    1993 年 36 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    バリウムイオン交換脱アルミモルデナイト触媒のメタノールから炭化水素転化反応における活性と寿命を, 脱アルミニウムとイオン交換の両方の程度を変えることによって調べた。触媒の寿命を高めるためには, 脱アルミニウムだけでなくバリウムのカチオン交換も必要であることがわかった。塩酸を用い, その温度を変えて脱アルミニウムを行ったところ, 触媒寿命は357K以上の脱アルミニウムにより効果的に改善され, この寿命はバリウムカチオンを交換することによりさらに改善される。過剰の脱アルミニウムあるいは過剰のカチオン交換は活性を抑制し, 最も適当な活性寿命はアルミニウム濃度0.51mmol/g, イオン交換率52%の触媒で得られた。アンモニアの昇温脱離実験により, 寿命の改良は固体酸点の性質が変えられたことに原因があることがわかった。すなわち, 脱アルミニウムは酸点の量を減らし, バリウムカチオン交換は酸強度を弱めることに効果がある。
  • 荒井 正彦, 和田 康, 西山 〓行
    1993 年 36 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    パラジウムメンブレンリアクターを用いて透過水素によるチオフェンの水素化脱硫を行い (透過系反応), 混合水素による脱硫 (混合系反応) の結果と比較した。反応は一定チオフェン濃度 (4mol%), 一定温度 (650K) で, 水素透過速度を変えて行った。透過系と混合系の全転化率を反応混合ガス中の水素濃度が等しい条件で比較すると, 水素濃度が約50%以上の場合, すなわち水素透過速度が大きい場合, 透過系の全転化率は混合系の約5倍とかなり高い値を示した。生成物分布は, 透過系と混合系で相違は認められず, 典型的な脱硫触媒の硫化モリブデンで見られる分布と類似していた。パラジウム膜の化学的•物理的状態は脱硫に伴って大きく変化した。水素透過速度の小さい透過系や混合系では膜は硫化されていたが, 透過速度の大きい透過系では膜の硫化は見られなかった。膜表面は反応によって粗くなり, 小さな孔が数多く存在する凸凹な面になっていた。この様な表面の変化は脱硫活性が小さい条件で著しかった。
  • 森下 晋一, 大八木 敏博
    1993 年 36 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    アニリンが炭化水素化合物と均一に混合する温度はパラフィン系やナフテン系, 芳香族など炭化水素のタイプによって異なることは良く知られている。この性質を利用して, ディーゼル燃料油中の芳香族分を簡易的に分析する方法を開発した。本方法により燃料油の芳香族分を再現性良く測定できるとともに, 飽和分のアニリン点を測定することで, ナフテン系成分の含有量を推定することも可能である。
    外国で購入した15種類のディーゼル燃料油を試料として, 本方法と従来から行われているカラムクロマトグラフィーの方法で分析を行い, 結果を比較したところ, 芳香族分の差が最大4.5wt%の範囲内であった。このことは, 本方法が従来の方法に比べて簡単な器具と操作で芳香族分の含有量を測定できることを示している。
  • 石油学会製品部会ガソリン分科会オクタン価要求値専門
    1993 年 36 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本調査は1991年型国産乗用車のオクタン価要求値分布を把握することを目的とし, 石油連盟の依頼により実施された。試験はJPI-6S-6-84に準拠し, 低速法でのオクタン価要求値分布を正標準燃料および全沸点型標準燃料(混合系)の計2種で, 試験車18車種55台を対象に実施した。統計処理は'90年度の調査結果のうち仕様変更なく引き続き販売されている14車種49台の結果を加えて行った。その結果, 正標準燃料における低速法オクタン価要求値分布は50および90%充足率でそれぞれ89.3および94.2オクタンであった。これは前年度の50および90%充足率の値より1.1および1.9オクタン高かった。
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