石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
33 巻, 5 号
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  • 藤原 康博
    1990 年 33 巻 5 号 p. 255-266
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ディーゼル機関から排出されるすす粒子は, 燃焼室内に噴射された燃料が熱分解し, すす前駆物質が形成され微粒子に至ると考えられているが, その一部は燃焼室内の高温と残留酸素により再燃焼し, 燃焼室内で再燃焼されなかったものがディーゼル微粒子として排出される。
    すす粒子の生成過程を明らかにするために, 透過型電子顕微鏡を用いてその粒径分布, 分散状態, ならびにその微細結晶構造を調べた。その結果, ディーゼル微粒子は直径が5~80nm程度の球形の微粒子であることから, これは燃料の気相における反応により生成されたものと考えられる。また, ディーゼル機関から排出される微粒子中には黒鉛結晶に見られるような層状構造のものは見られないが, 層状構造に近い構造のものがその一部に観察される。また, すす粒子の電子線回折を行った結果, 多結晶構造の回折パターンが得られることから, すす粒子は乱層構造ではあるがやや結晶化が進行したものと考えることができる。
    また, 微粒子の生成は, 燃料がいったん低沸点炭化水素に分解され, その後重縮合等により環状成分を形成し, 多環芳香族炭化水素を経て微粒子に至るのがその主経路と考えられている。そこでつぎに分子構造, ならびに炭素数の異なる燃料の熱分解, 重縮合過程について検討を行った。その結果, パラフィン系燃料とアロマチック系の燃料では熱分解, 重縮合過程が異なることが明らかになった。すなわち, パラフィン系燃料はいったん低沸点炭化水素に熱分解され, その後多環芳香族炭化水素を経て微粒子に至る。
    つぎに炭素数あるいは分子構造の異なる種々の燃料を反応流動管を用いて窒素雰囲気中で加熱し, 微粒子の生成量, 形状ならびに多環芳香族炭化水素などの分析を行った。その結果, 加熱温度が上昇すると最初にSOF成分が増加するが, 高温域になると飽和する。固体状すす粒子は, 初期の微粒子の生成開始温度よりわずかに高い温度から生成が始まり, 温度の上昇と共に急激に増加する。この初期に生成される微粒子は, 固体状のすす粒子の前駆物質である多環芳香族炭化水素 (PAH) と考えられる。このPAH成分は温度の上昇と共に増加し, SOFの生成量が飽和するあたりから急激に減少する傾向を示すが, このように固体状のすす粒子と水素が増加しPAHが減少するのは脱水素と重縮合により環状化が進み, より高沸点のPAHや固体状のすす粒子になるためと考えられる。
    ディーゼル機関の燃焼室内での微粒子の生成過程を明らかにするために, 予燃焼室式機関を用いて予燃焼室および主燃焼室内からガスサンプリング弁を用いてガスを採取し, ガスクロマトグラフによるガス分析, すす濃度, ならびに透過型電子顕微鏡によるすす粒子の分散, 粒径分布の測定を行った結果, すす粒子は燃焼の初期の急激燃焼期に予燃焼室内において生成され, 連絡孔を通して主燃焼室に噴出される。そして燃焼室内の酸素濃度が5%以上存在する場合にはその一部は再燃焼される。
  • 中塩 文行, 後藤 雅宏
    1990 年 33 巻 5 号 p. 267-279
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    液膜法の中で, 既に実用化された乳化型液膜法および今後実用化の可能性が大きい流動液膜法による金属イオン抽出について概説した。
    乳化型液膜による金属イオンの抽出においては, 界面活性剤が重要な役割を果たしている。疎水部に長鎖のアルキル基を2本有する界面活性剤が種々合成され, 液膜の安定性, 金属イオンの抽出速度, 解乳化特性に及ぼす影響が検討された。また, 従来の含浸型液膜の膜劣化の問題を改良した中空糸モジュール型の流動液膜装置を用いて, 銅•亜鉛イオンの抽出分離実験が行われた。解析結果に基づき, 供給相のpHを最適pHに設定することによって, 両金属の分離が良好に行えることが示された。
  • 杉岡 正敏
    1990 年 33 巻 5 号 p. 280-290
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    新規の高活性脱硫触媒を開発することは, 燃料油の燃焼により排出される硫黄酸化物を低減するために極めて重要である。一方, 燃料油の脱硫では大量の硫化水素が副生する。現在副生する硫化水素はクラウス反応により単体硫黄と水とに変換され, 単体硫黄のみが回収されている。しかし, 経済的見地から, 将来は副生する硫化水素を積極的に有効利用することも重要な課題となるものと考えられる。本総合論文では著者および共同研究者がこれまでに行ってきた高活性脱硫触媒の開発および副生硫化水素の有効利用に関する系統的研究を述べた。
    著者らは新規の高活性脱硫触媒として水素還元処理した金属イオン交換Y型ゼオライト (Me°Y) 触媒に注目し, 脱硫反応のモデル反応であるチオフェンの水素化脱硫反応に対する種々のMe°Y触媒の活性を検討した。この結果, Ni°YおよびCo°YなどのMe°Y触媒はチオフェンの水素化脱硫反応に対して市販のCoMo/Al2O3系脱硫触媒よりも著しく高い活性を示した (Figs. 1, 2)。また, Me°Y上に吸着したチオフェンの赤外吸収スペクトルなどから, Me°Y触媒はチオフェンの水素化脱硫反応に対して二元機能触媒として作用することが明らかとなった (Fig. 3)。これらのことから, Me°Y系触媒は新規の高活性脱硫触媒として高い可能性を有しているものと考えられた。
    一方, アルミナ担持MoS2系触媒は硫化水素の接触分解による水素生成に対して有効な触媒として作用し, 硫化水素の接触分解による水素と硫黄の同時回収が可能であることが明らかとなった (Figs. 4~7)。また, 硫化処理したMo/Al2O3触媒上では硫化水素によるオレフィンの水素化が進行し, 硫化水素による不飽和炭化水素の接触水素化反応が可能であることが明らかとなった (Figs. 8, 9)。さらに, 非酸性のアルカリ金属ゼオライト触媒による炭化水素の接触転化反応において, 反応系に硫化水素が共存すると転化反応が著しく促進されることがわかった (Figs. 10, 11)。最後に金属イオン交換ゼオライト触媒および担持Mo触媒を硫化水素で硫化処理すると, 炭化水素の種々の反応に対する触媒機能が著しく向上することが明らかとなった (Tables 1, 2, Figs. 12, 13)。このように, 脱硫反応で副生する硫化水素を不均一系触媒反応の技術を応用して, 種々のプロセスに有効利用することが可能であることが明らかとなった。
  • 堀井 清之, 松前 祐司, 程 暁明, 安川 英治, 武居 昌宏, 橋本 文作
    1990 年 33 巻 5 号 p. 291-298
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油化学工業のパイプラインの修理には通線工事が伴う。乱流をスパイラルフローに流体制御し, より効率的な通線技術を開発した。
    この方法を用いて実験した結果, 長さ150mの直線パイプと50mのロール状ビニール管の通線に成功したが, 同じ条件で, 乱流により通線することはできなかった。
    安定した高速スパイラルフローを得るために, 流体制御の新しいユニットを開発した。このユニットは, コニカルシリンダーに環状スリットを接続したものである。圧力流体が環状スリットから噴出すると, コアンダ現象とインスタビリティーの影響で, 中心軸に最大流速を持つスパイラルフローに変化する。
    その結果, ロープがパイプの軸中心領域に引きつけられ, 通線能力が増大された。これはスパイラルフローの流れ特性がロープとパイプ内壁との摩擦を減少させたためである。
  • トリチウムトレーサー法を用いたテトラリンから高性能炭素繊維用コールタールピッチへの水素移行機構
    庄野 弘晃, 丸本 基, 石原 篤, 加部 利明
    1990 年 33 巻 5 号 p. 299-303
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    高性能炭素繊維の原料となるコールタールピッチのテトラリンによる水素化反応機構をトリチウムトレーサー法により水素の挙動および溶媒分別により生成物分布を調べることにより検討した。反応はコールタールピッチ60g, トリチウムでラベルしたテトラリン120g, 反応温度410~470°C, 反応時間1時間の条件で行った。溶媒分別には, ヘキサン, ベンゼン, およびテトラヒドロフランを用いた (Fig. 1)。テトラリン中の水素のピッチへの付加量およびテトラリンとピッチとの水素交換量はEqs.(1) および(2)により計算した。
    トリチウムでラベルしたテトラリンの水素はコールタールピッチに移行した。Fig. 2に生成物分布を示した。THFISは原料ピッチ中に13.6%含まれているが410°Cで約5%まで減少した。これは反応温度を上げても変化せず, 470°Cでもピッチの重縮合によるTHFISの増加は観察されなかった。高性能炭素繊維原料となるHIS-BSは温度の上昇とともに増加し450°Cで最大となった。470°Cでは一部の溶媒が分解しナフサが生成した (Fig. 3)。生成物中のトリチウム濃度は反応温度の上昇とともに向上した (Fig. 4)。溶媒, ピッチ, 並びに気相に放出された水素間の水素移行収支はFig. 6より, ピッチ, 溶媒ともに気相への水素ガスの放出量が反応温度の上昇とともに増加した。一方, 溶媒からピッチへの水素付加量は温度によらずほぼ一定であった。このことは, ピッチ中にテトラリンの水素を受け入れる特定の場所があり, またテトラリンがTHFISの増加を抑制している可能性を示唆した。
  • 佐々木 正和, 滝嶌 繁樹, 舛岡 弘勝
    1990 年 33 巻 5 号 p. 304-310
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    著者ら4)はポリマー中からの不純物の除去操作への超臨界流体抽出法の適用性の検討および除去機構の解明を目的として, ポリ酢酸ビニル (PVAc) およびポリスチレン (PS) 中からのベンゼンの超臨界二酸化炭素 (SC-CO2) による除去実験を行ってきた。今回は実験装置に紫外分光光度計を取り付けて気相組成を連続的に分析し全除去量から脱圧時に除去される量を分離して求めることができるように装置を改造した上で, 温度313K, 圧力7.95MPaにおいてSC-CO2によるPVAcおよびPS中のベンゼンの除去実験を行った。さらに前報4)で報告した物質移動モデルを用いて, 実験値の理論的な整理を行った。
    実験装置の概略図をFig. 1に示す。抽出セル出口側流路に取り付けた紫外分光光度計によって, 抽出されるベンゼンの定量分析を操作圧力下で行い, ポリマー中のベンゼン濃度の経時変化を測定した。実験終了後に抽出セル内を大気圧まで脱圧した後, ポリマー試料をガスクロマトグラフを用いて分析し, 抽出後のポリマー中に含まれるベンゼンの濃度を決定した。Fig. 2は本実験で用いた抽出セルの概略図である。
    Fig. 3に抽出実験の一例として試料厚さ1.25mmのPVAc試料からベンゼンを抽出した結果を示す。本研究の実験法に基づくベンゼンの除去量は, SC-CO2との接触時に試料の内部から拡散してCO2相中に抽出されるものと, 脱圧時にCO2に同伴されて除去されるものの二つに分けることができる。ここではこれらを抽出除去および脱圧除去と呼ぶことにする。
    Fig. 4はPVAc中からのベンゼンの抽出実験を膜厚2.3mmの比較的厚い試料について, 抽出時間を変えて行った結果である。時間の経過と共に抽出除去量は, 次第に頭打ちになっているのに対して, 脱圧除去量は明らかに増加している。これはSC-CO2との接触時間が長いほど, PVAc中へのCO2の溶解量が増すため, 脱圧除去量が増加したものと考えられる。特に, 膜厚が2.3mmと比較的厚い試料の場合, 試料内部までCO2が溶解するのに時間がかかるため, この様な傾向が顕著に現れたものと思われる。
    同様な実験をベンゼン+PS系について行った結果をFig. 5に示す。試料の膜厚は0.50mmである。ベンゼン+PS系においても抽出除去および脱圧除去が存在することが分かる。
    抽出除去と脱圧除去が全除去率に対してどの程度寄与しているのかを検討するためにベンゼン+PVAc系について試料の膜厚を変えて抽出実験を行った結果をFig. 6に示す。試料が厚くなるにつれて, 全除去率および抽出除去率は低下する。また, 脱圧除去率は厚くなるにつれて上昇する。つまり, 試料の厚さを薄くすれば抽出除去のみでPVAc中のベンゼンを十分除去することが可能である。しかし, 膜厚が厚い試料については抽出除去のみでは不十分であり脱圧除去が重要であることが分かる。
    前報4)では物質移動モデルを作成し, 全除去をSC-CO2が溶解したポリマー中のベンゼンの見かけの拡散係数で整理した。しかしながら, その後の研究によって全除去には抽出除去に加え脱圧除去も含まれることが明らかとなったため, 拡散係数の相関値の物理的な意味は希薄であることが分かった。そこで本研究ではこれらの実験結果を踏まえ, 抽出除去および全除去について,前報4)で報告した単純な物質移動モデルを用い, SC-CO2が溶解したポリマー中のベンゼンの拡散係数という形で実験結果を整理することを試みた。
    Fig.7に, 試料膜厚2.3mmにおけるベンゼン+PVAc系の抽出実験値の相関結果を示す。また, Fig. 8に, 試料膜厚0.45mmにおけるベンゼン+PS系の実験値の相関結果を示す。これらの相関によって得られたCO2が溶解したPVAcおよびPS中のベンゼンの拡散係数を Table 1に示す。
    まず, ベンゼン+PVAc系の拡散係数の相関値と Swaid ら9)によるSC-CO2中のベンゼンの拡散係数の実験値,およびKokesら10)によるCO2が存在しない場合のPVAc中のベンゼンの拡散係数の実験値を比較する。CO2が溶解したPVAc中のベンゼンの拡散係数の計算値は, SC-CO2中のベンゼンの拡散係数とCO2が存在しない場合のPVAc中のベンゼンの拡散係数の中間的な値をとることが分かる。CO2が溶解したPVAc中のベンゼンの拡散係数はCO2が存在しない場合に比べて約5けた大きくなっている。
  • 木村 孝夫, 兼子 隆雄, 蔭山 陽一, 川合 智
    1990 年 33 巻 5 号 p. 311-317
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    褐炭液化油の水素化処理触媒として開発されたCa-Ni-Mo/Al2O3触媒について, Raman, TPS-XPS, EXAFS, AES等の分析により触媒活性点の構造および炭素質生成抑制作用について調べた。触媒中のCaは酸化物状態ではCaMoO4として存在し, Moは予備硫化処理によりMo6+ (tetrahedral) からMoS2 (octahedral) へと変化することが分かった。また, 触媒の固体酸性はCa-Ni-Mo/Al2O3触媒ではNi-Mo/Al2O3触媒に比べて強酸点が減少しており, これはCaの一部が触媒活性点であるMoS2に配位した構造をとるためと推定される。この結果, Ca付近の炭素質の生成は抑制されるものと考えられ, AESデータはこれを支持すると結論した。
  • 根角 泰宏, 東 朱美, 大山 隆, 藤堂 義夫, 持田 勲, 光来 要三
    1990 年 33 巻 5 号 p. 318-323
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    低硫黄減圧残油 (LSVR) とFCC-デカントオイル(FCC-DO) とをチューブボムを用いて共炭化すると, 低熱膨張係数 (CTE) の良好なニードルコークス塊が調製できるが, 底部に微小モザイク組織のコークスの薄い層が形成される。本研究ではこの底部微小モザイクコークスを高芳香族性のA-240ピッチを配合することによって消去することを試みた。
    Figs. 1, 2および Table 2に示すように炭化温度460, または480°C, 炭化圧力8kg/cm2においてA-240ピッチを配合することによって底部モザイクを減少でき, 各5, 30%の添加により完全に消去できた。生成するコークスの上部はほぼ全域, フロードメイン組織を示すが, A-240を添加しないLSVR/FCC-DO共炭化生成物の上部コークスと比較して, やや大きな熱膨張係数 (CTE) を示した。最適な共炭化条件の選択により, A-240を配合して, 良好なCTEと底部モザイク組織の生成抑制とを同時に達成できると思われる。
    炭化途中の顕微鏡観察, 中間生成物の溶解度ならびに構造解析 (Figs. 3~6) によりLSVR/FCC-DO系では, LSVRの最重質分から炭化初期に生成するQIがパラフィンを相当量含むマトリックスに溶解せず, そのため成長•合体しないで沈降し, 底部モザイクを形成するのに対して, 高芳香族性のA-240を添加すると, 炭化初期に高芳香族性で, 溶解力に優れたHI-BSが相当量存在し, QIの液相での成長, 合体, 共炭化を許容して, 底部モザイクの形成を抑制すると推定できた。
    さらに炭化原料の組成により炭化最適条件が変化することを確認し, また芳香族性の高いFCC-DOの選択により, LSVRの共炭化において底部モザイクの生成を抑制しCTEの小さい優れたニードルコークスが製造できる可能性を指摘した。
  • 秋吉 亮, 八幡 壽雄, 小幡 英二, 安藤 公二
    1990 年 33 巻 5 号 p. 324-326
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    担持Ni触媒の調製法と触媒活性についての研究の一環としてNi/MgO触媒の場合について調べることを目的とした。触媒調製は含浸法 (I), 共沈法 (C), 均一沈殿法 (H) の3通りの方法で行った。調製法の効果を示差熱分析, X線回折, 昇温還元, 水素吸着, CO水素化, n-ヘプタン水素化分解によって調べた。I触媒とC触媒では触媒構造, 触媒活性共にほぼ同じ結果を示した。すなわち触媒中のNiはMgOと化合物を作り, その間の相互作用が強く, 還元しにくい。その結果二つの反応に対し高い活性を与えなかったと考えられる。これに対してH触媒ではNiはMgOと化合物を作らず, 還元し易く, 相互作用も小さく, 均一に微分散してMgO上に担持されていることがわかった。その結果としてNi本来の性能が発揮され, 両反応に対して非常に高い活性を示したのであろう。このように均一沈殿法はMgO上に金属ニッケルを担持することが可能な調製法であるといえる。
  • 石原 篤, 光藤 武明, 森田 直樹, 渡部 良久
    1990 年 33 巻 5 号 p. 327-331
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    [NEt3H][HFe3(CO)11]-アルカリ土類水酸化物/γ-アルミナ系がフィッシャー•トロプシュ (F-T) 反応の高活性な触媒前駆体であることを見出した。この系においてアルカリ土類金属が触媒活性や低級オレフィン選択率へ与える影響を検討した。何れの触媒もF-T反応に高い活性を示し, 生成物は直鎖炭化水素 (主として低級オレフィン), 炭酸ガスおよびこん跡量のメタノールであった。
    [NEt3H][HFe3(CO)11]-Ca(OH)2/γ-アルミナ系を用いた場合の結果を Table 1およびFig. 1に示した。アルカリ土類金属を加えない場合, COの有効転化率 (炭化水素への転化率) は25%であった。Ca(OH)2の添加量の増加に伴い活性は向上しM/Fe=1.00(M=Ca(OH)2, グラム原子比) の時, COの有効転化率は極大値37%となり, COの全転化率は80%に達した (320°C, 14kg/cm2-G, CO/H2=1, SV=2,300h-1)。さらにCa(OH)2を添加すると活性は低下した (Fig. 1)。Mg(OH)2, Sr(OH)2, Ba(OH)2を用いた場合も添加量を増加させると触媒活性の極大値が存在した。COの有効転化率の極大値の順序はM/Fe=1.00(Ca), 0.33(Ba), 1.00(Sr), 1.67(Mg) の時それぞれCa(37%)>Ba(36%)>Sr(34%)>Mg(31%) であった (Fig. 1, Table 1)。何れの触媒系においてもC3フラクションは, 全炭化水素の約23~25%であった。オレフィン選択率はBa(OH)2を用いた場合のみその添加と共に向上した (Fig. 2)。
    担体としてγ-アルミナの代わりにHYゼオライトを用いた場合, Ca(OH)2の添加に伴い活性は向上したが, 活性の極大は現れずCa/Fe比が1.0~3.0の範囲でCOの有効転化率は約16%で一定の値となった。(Fig. 1)。
    アルカリ土類金属の代わりにランタニド化合物を添加した場合の結果を Table 2に示した。La2(CO3)3あるいはNd2-(CO3)3を用いた場合, 添加量の増加に伴い触媒活性は向上した。何れの場合もM/Fe=0.33(M=LaあるいはNd) の時,触媒の活性は極大値を示し, COの有効転化率はそれぞれ34%および31%であった。
  • 滝嶌 繁樹, 仲村 清人, 佐々木 正和, 舛岡 弘勝
    1990 年 33 巻 5 号 p. 332-336
    発行日: 1990/09/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    著者らはポリマー中の低分子不純物の分離への超臨界流体抽出法の適用性を検討してきた1),2)。この研究において除去機構を解明し, 除去実験結果を理論的に整理するためには, 超臨界流体の溶解に伴うポリマーの膨潤やポリマー中への超臨界流体の溶解度などの基礎物性が不可欠である。そこで本研究では温度313.2Kおよび323.2K, 圧力9MPa以下において二酸化炭素+ポリ酢酸ビニル系の膨潤率および溶解度の測定を行った。また, Schotte6)の状態方程式による実験値の相関を行い, その適用性について検討した。
    膨潤率の測定は, Fig. 1に示す様な窓付き高圧セルとカセトメーターを用いて行った。また, 溶解度の測定は, Koros3)の装置を参考にして製作した圧力降下法に基づく装置 (Fig. 2) を用いて行った。Table 1およびFig. 3に二酸化炭素の溶解に伴うポリ酢酸ビニルの膨潤率の測定結果を示す。また, Table 2およびFig. 4にポリ酢酸ビニル中への二酸化炭素の溶解度の測定結果を示す。膨潤率および溶解度とも温度313.2Kでの方が温度323.2Kでの値よりも大きくなった。
    次に, Schotte の状態方程式を用いて溶解度の相関を行った。Schotte の状態方程式中の各物質の特性パラメーターPi*, vi*, Ti*は, 各々の物質の飽和物性あるいはP-v-T関係を相関することにより決定した。決定されたパラメーターの値と相関に使用した物性を Table 3に示す。溶解度の相関に際してはEq. (9) 中のkijをフィッティングパラメーターとして取り扱った。Fig. 4に溶解度の相関結果を示す。比較的低圧においてはほぼ良好な相関が得られたが, 温度323.2K, 圧力7MPa以上では相関値と実験値の差が大きくなった。また, 溶解度を相関して得られたkijの値を用いて膨潤率を推算した結果をFig. 3に示す。温度323.2Kではほぼ良好な推算結果が得られたが, 温度313.2Kにおいては高圧領域で実験値と推算値の差異が大きくなった。これらの結果は Schotte の状態方程式では溶解度と混合物のP-v-T関係の両者を厳密に表現するには不十分であることを示していると思われ, 今後より良い状態方程式および混合側の開発を行う必要があるものと考えられる。
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