水平線に対して45度の角度で置かれた一本の管から成る傾斜型の乾留炉 (
Figs. 1a, 1b) について, コロラドおよびタイ国産のオイルシェールを使用し, 主として空気を送入しながら乾留を行って得られた生成物性状と操作条件の関係, 原料性状の連続操作性能への影響などについて研究した。
使用したタイおよびコロラドのオイルシェールは, それぞれ13.1および25.2wt%の有機炭素を含み, フィシャーアッセィ値 (F.A.) は約10.2および22.2wt%であった。それらを5mmφ以下に粉砕した時の粒度分布を
Table 1と
Table 2に, さらに2mmφ以下の粉と2~5mmφの粒の物性値を
Table 3に示した。
使用した乾留炉の構成および油の回収装置の概要を
Fig. 1と
Fig. 2に示した。基本的な構成は前報7) に示したものと似ているが, 異なる点は乾留管 (内径90, 長さ1,320mm) が水平に対して45度に傾けてあること, 油回収装置にミスト回収装置を設置したことである。傾斜させることによりシェール層の上部に粒が浮き上り, 乾留管内壁との間に間隙が出来るので, ガスの圧損失が小さく, 油の蒸気が速かに系外に搬出されやすい。
得られた実験データを
Table 4と
Table 5に示した。炉の温度は4部分で個別に設定され, 圧損失は廃シェール受器(19) に付けたマノメーターで測定された。乾留管内の掃除用装置 (7) はコロラド産シェールの場合は使用する必要がなく, 前の実験で管内に残っている廃シェールをそのまま次の実験の開始時に使用した。タイ国産シェールの場合, 実験終了後, (7) を常温で使用し, 新たに廃シェールをつめてから実験を開始した。
連続操作性, 特にオイルシェールの流れの円滑さについては, コロラド産の場合, 粉の割合の多少にかかわらず問題は起こらなかったが, タイ産の場合, 粉が26wt%以下, 特に2~5mmφの粒のみの原料の場合, 閉そくが起こった。これを避けるために原料に廃シェールや赤玉土のような不活性固体の混入についても検討し, 処理し得る原料状態に関して
Table 6のような結果が得られた。
油の性状等生成物性状に関しては乾留条件による大きな影響は観測されなかったが,
Fig. 3に示したように, 原料供給速度を上げると油の収率が下り,
Fig. 4に示したように空気導入量を上げると収率は上った。酸素量を上げると
Fig. 5に示すように油の収率には変化がない上, 生成ガス中の酸素量は少ないし, 廃シェールの炭素量も少なくなるので, 乾留炉下部で炭素の部分燃焼が起こっていると考えられた。赤玉土を混入した原料を使用した場合, 油中の窒素含量が他の条件の場合に比して30%も少なくなり, 蒸留によって分けた留分中のそれも
Table 7に示したように下っていた。
実験結果を確認し, また, タイ国産の粒状シェールがなぜ円滑に流れないのか解明するために,
Fig. 6に示したようなシリカ管を使った傾斜型のモデルを作り実験を行った。580°Cでシェール試料を入れた後, 一定時間後に下方の栓を抜いてシェールを落し, 管に付着した量をはかると共に, 排出したシェールのF.A. 値を
Fig. 7を使用して間接的に算出した。
Fig. 8に示すように, 2~5mmφのタイ産シェール場合, 加熱開始後4~5分で50%以上が付着した。その際のシェール中の油分の残量は,
Fig. 9に示したように, F. A. で約10wt%であった。一方タイ産の粉 (~2mmφ), コロラド産では残留量は非常に少なかった。タイ産シェールは油分が多く, 加熱によって軟化する傾向があるため, 粒径が大きい場合, 発生した油蒸気が外に逃げる際に発泡が起こり体積が膨らむ。その結果, 粒同士が付着して流れが悪くなると考えられた。一方, 粉では油が拡散しやすいので体積はあまり変わらず, 流れも円滑であったと推定された。また, 粉を38wt%以上混じった原料ではシェールが円滑に流れるのは, 粒の間および乾留管との間に存在する粉が付着を防止する作用をしていると考えられた。コロラド産は乾留前後で粒径がほとんど変わらず, 乾留時硬いままなので, 流れが円滑であったと考えられた。
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