石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
30 巻, 3 号
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  • 松田 常雄, 宮内 勉, 三浦 弘, 杉山 和夫
    1987 年 30 巻 3 号 p. 141-148
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    エチルセロソルブ (EC) とエーテルまたはエタノールとの反応を活性炭担持12-タングストリン酸触媒上で流通式反応装置を用い行った。反応生成物はエチレングリコールジエチルエーテル, ジエチレングリコールモノおよびジエチルエーテルとジオキサンであった。種々の反応条件下で反応を行い, 160°Cでの反応がECの定常時での最大転化率を与えた。エタノールとの反応で接触時間が17 (g•hr/mol) のときジエチレングリコールモノおよびジエチルエーテルの最大収率を与えた。初期の活性劣化は触媒の溶出と酸性点消失によることがわかった。生成物分布より反応機構について検討した。エーテルおよびエタノール共存下の方がEC転化率が高くなった。
  • 脱窒素率と生成物性状の相関
    堀田 善治, 古本 正史, 有岡 秀躬, 中村 宗和, 丹治 日出夫
    1987 年 30 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水素化脱窒素反応生成物の性状を明らかにし, 併せて重質油の脱窒素反応機構について考察した。脱窒素反応に並行して軽質油の割合が増加し, 生成油の比重, 粘度, 軟化点, 残留炭素分が大きく増加した。脱窒素率は全分子量領域においてほぼ均一であった。生成油の軽質化原因は芳香環の核水素化による沸点低下および非芳香族性抽出溶媒に対する親和力の増大によるものであり, 水素化分解の寄与は小さいものと分かった。核水素化の度合は, 窒素化合物の方がやや高いが, 脱窒素率60%で平均的に2~3環程度であった。重質留分の脱窒素反応機構については2~3環の芳香環が飽和された部分水素化段階からC-N結合が解裂するものと考えられた。
  • 秋吉 亮, 服部 英, 田部 浩三
    1987 年 30 巻 3 号 p. 156-160
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールのCOとH2への分解反応に対して, 活性, 選択性の高い触媒を探索することを目的とし, まず, 活性炭に種々の遷移金属を担持した触媒を調製し (Table 1), 触媒能を調べた。用いた遷移金属 (Co, Ni, Zn, Fe, Cu, Cr, Pt, Rh, Ru) の中では, Niが活性, 選択性, 活性低下および価格を考慮すると, 実用上最も良い触媒であることがわかった (Table 2)。
    Ni触媒の能力を高める目的で, Niを種々の担体に担持させ触媒活性を調べた。最も活性が高く, 選択性も良い触媒は, Ni/SiO2-MgOであった (Table 3)。
    アルカリ, アルカリ土類の添加効果を調べた結果, 活性炭担持Ni触媒の場合, K, Cs添加により活性が低下するが, Li, Mg添加により活性が増大することが認められた (Table 4)。種々の担体に担持されたNi触媒にKを添加したときの効果では, 活性は低下するが, CoとH2生成の選択性が向上した (Table 5)。
    昇温還元法 (TPD) によると, NiOの還元の難易性は担体によって異なり (Fig. 1), NiOの還元が困難な触媒ほど, 活性は高いことがわかった (Fig. 2)。Ni/SiO2-MgOが高活性なのは, NiとSiO2-MgOの相互作用が大きく, 還元された後も分散状態を保っているためと推測した。
  • 早川 孝, 折田 秀夫, 竹平 勝臣, 石川 敏夫
    1987 年 30 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シリカ担持Ce系酸化物触媒を用いてシクロヘキサンの酸化脱水素反応を温度275~475°Cで行った。主生成物はシクロヘキセン, ベンゼンおよび炭素酸化物であった。Ceをシリカに担持すると350°Cでもかなり高いシクロヘキセン合成能を示し, 収率14.7%, 選択率44.2%の値を得た。含浸法で調製した触媒で最高のシクロヘキセン選択率を示す組成比はCe/Si〓0.1 (原子比) であった。担持Ce触媒にV, FeまたはNiを添加すると酸化脱水素反応が促進されてベンゼンが多く生成した。このCe-Ni触媒にNaを添加すると, ベンゼンの生成は低下してシクロヘキセンの選択率が上昇した。
  • 榎本 稔, 佐藤 信也, 高橋 至朗
    1987 年 30 巻 3 号 p. 166-173
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    水平線に対して45度の角度で置かれた一本の管から成る傾斜型の乾留炉 (Figs. 1a, 1b) について, コロラドおよびタイ国産のオイルシェールを使用し, 主として空気を送入しながら乾留を行って得られた生成物性状と操作条件の関係, 原料性状の連続操作性能への影響などについて研究した。
    使用したタイおよびコロラドのオイルシェールは, それぞれ13.1および25.2wt%の有機炭素を含み, フィシャーアッセィ値 (F.A.) は約10.2および22.2wt%であった。それらを5mmφ以下に粉砕した時の粒度分布を Table 1Table 2に, さらに2mmφ以下の粉と2~5mmφの粒の物性値をTable 3に示した。
    使用した乾留炉の構成および油の回収装置の概要を Fig. 1Fig. 2に示した。基本的な構成は前報7) に示したものと似ているが, 異なる点は乾留管 (内径90, 長さ1,320mm) が水平に対して45度に傾けてあること, 油回収装置にミスト回収装置を設置したことである。傾斜させることによりシェール層の上部に粒が浮き上り, 乾留管内壁との間に間隙が出来るので, ガスの圧損失が小さく, 油の蒸気が速かに系外に搬出されやすい。
    得られた実験データを Table 4Table 5に示した。炉の温度は4部分で個別に設定され, 圧損失は廃シェール受器(19) に付けたマノメーターで測定された。乾留管内の掃除用装置 (7) はコロラド産シェールの場合は使用する必要がなく, 前の実験で管内に残っている廃シェールをそのまま次の実験の開始時に使用した。タイ国産シェールの場合, 実験終了後, (7) を常温で使用し, 新たに廃シェールをつめてから実験を開始した。
    連続操作性, 特にオイルシェールの流れの円滑さについては, コロラド産の場合, 粉の割合の多少にかかわらず問題は起こらなかったが, タイ産の場合, 粉が26wt%以下, 特に2~5mmφの粒のみの原料の場合, 閉そくが起こった。これを避けるために原料に廃シェールや赤玉土のような不活性固体の混入についても検討し, 処理し得る原料状態に関して Table 6のような結果が得られた。
    油の性状等生成物性状に関しては乾留条件による大きな影響は観測されなかったが, Fig. 3に示したように, 原料供給速度を上げると油の収率が下り, Fig. 4に示したように空気導入量を上げると収率は上った。酸素量を上げると Fig. 5に示すように油の収率には変化がない上, 生成ガス中の酸素量は少ないし, 廃シェールの炭素量も少なくなるので, 乾留炉下部で炭素の部分燃焼が起こっていると考えられた。赤玉土を混入した原料を使用した場合, 油中の窒素含量が他の条件の場合に比して30%も少なくなり, 蒸留によって分けた留分中のそれもTable 7に示したように下っていた。
    実験結果を確認し, また, タイ国産の粒状シェールがなぜ円滑に流れないのか解明するために, Fig. 6に示したようなシリカ管を使った傾斜型のモデルを作り実験を行った。580°Cでシェール試料を入れた後, 一定時間後に下方の栓を抜いてシェールを落し, 管に付着した量をはかると共に, 排出したシェールのF.A. 値を Fig. 7を使用して間接的に算出した。Fig. 8に示すように, 2~5mmφのタイ産シェール場合, 加熱開始後4~5分で50%以上が付着した。その際のシェール中の油分の残量は, Fig. 9に示したように, F. A. で約10wt%であった。一方タイ産の粉 (~2mmφ), コロラド産では残留量は非常に少なかった。タイ産シェールは油分が多く, 加熱によって軟化する傾向があるため, 粒径が大きい場合, 発生した油蒸気が外に逃げる際に発泡が起こり体積が膨らむ。その結果, 粒同士が付着して流れが悪くなると考えられた。一方, 粉では油が拡散しやすいので体積はあまり変わらず, 流れも円滑であったと推定された。また, 粉を38wt%以上混じった原料ではシェールが円滑に流れるのは, 粒の間および乾留管との間に存在する粉が付着を防止する作用をしていると考えられた。コロラド産は乾留前後で粒径がほとんど変わらず, 乾留時硬いままなので, 流れが円滑であったと考えられた。
  • 竹園 哲也, 甘利 崇晧
    1987 年 30 巻 3 号 p. 174-180
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    硫酸法IPAプラントにおける副生IPEを分離精製することによって製造されていたIPEを, スルホン酸型陽イオン交換樹脂を触媒とするIPAとC3'の反応による新しい製造プロセスに置き代えるため, 固定床流通式および回分式反応装置を用いて各種条件下での反応を行い, 工業化のためのデータを蓄積した。その結果, この反応はC3'に関する一次反応であり, 拡散律速ではないことが分かった。さらに, 反応温度, LHSV, 反応圧力, 原料モル比(C3'/IPA) などの影響を検討し, IPEを選択率よく製造するための望ましい条件を見い出し, このプロセスの工業化に成功した。
  • 森 秀樹, 山田 幾穂, 平岡 節郎, 築城 利彦, 守谷 聡
    1987 年 30 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    操作型反応蒸留問題に対して緩和法を用いた新しい解法を提出する。解法は各段における成分物質収支を液組成の総和式と連立させ Newton-Raphson 法によって液組成と温度を同時に修正する。また, 仮想の液相等モル反応を伴う反応蒸留の数値例により, 解法の収束特性を明らかにし, 迅速解を与える有効な初期値の設定とともに, 本解法の有用性を示す。
  • 浜田 秀昭, 桑原 靖, 松野 豊, 若林 勝彦
    1987 年 30 巻 3 号 p. 188-194
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    シリカ担持モリブデン系触媒による合成ガスとアンモニアからの直接アセトニトリル合成について触媒調製条件, 助触媒の影響を調べた。
    まず, Mo/SiO2触媒について調製条件の影響を調べた。触媒は, モリブデン酸アンモニウム水溶液をシリカ仁含浸し空気焼成後還元して調製した。本反応の主生成物はアセトニトリル, 二酸化炭素および炭化水素類であった。空気焼成のみの触媒A, 空気焼成後水素還元した触媒B, 空気焼成後アンモニア還元した触媒Cの三つの触媒の反応結果を Table 1に示したが, ほとんど違いは認められなかった。この原因を調べるため触媒の反応前後のX線回折をとり Fig. 1に示した。触媒Bは反応前後ともMoO2のパターンを示すのに対し, 触媒Aは反応前はMoO3, 反応後はMoO2のパターンを示した。触媒Aは反応中に還元されて触媒Bと同じくMoO2が担持されている形態になるため, 反応結果に変化がないものと理解された。このことは, 触媒Bの活性変化が単純に低下しないことからも支持される。
    次に, Mo/SiO2に対して第二金属成分を添加しその効果を調べた結果を Table 2に示す。アルカリ金属, アルカリ土類金属はアセトニトリル生成活性選択性を低下させ好ましくなく, 第8族金属もほぼ同様の結果であった。しかし, Agはアセトニトリル生成活性を上げると同時に選択率も50%増大させる効果があることが分かった。Agの助触媒効果についてはいまだ報告はない。Fig. 2にAgの添加量の影響を示したが, Agはほんの少量で効果を現すことが分かる。Fig. 3に示した反応温度の影響から, アセトニトリル生成の最適温度は450-500°Cであった。また, 接触時間の影響を示した Fig. 4では, ある範囲内で収率と比例関係にあった。
    Agの効果を調べるため, 種々の触媒分析を行った。熱天秤による還元処理での重量変化からMo/SiO2, Mo-Ag/SiO2いずれの触媒においても水素還元でMoはMoO2の形となっており, 一方 Fig. 5に示したXPS測定でも表面でのMoの価数にAgの影響は認められなかった。しかし, Figs. 6, 7, 8に示したX線回折測定からAgの効果が明らかとなった。Fig. 6は空気焼成後のX線回折図であるが, AgとMoは複合酸化物を形成する。Fig. 7は水素還元後の回折図であり, AgがないときにはMoO2, Agが存在するとMo金属とAg金属の回折ピークが認められる。しかし他の情報からAgが存在する場合でもMoはMoO2の形で存在していると考えられ, おそらくAgの存在はMoO2を無定形か高分散状態にする働きをしているものと推定された。Mo金属が反応活性種となっていないことは Fig. 8の反応後の回折図でそのピークが完全に消失していることからも確かめられた。
    触媒活性の経時変化を Fig. 9に示すが, 活性は時間とともに低下している。X線回折測定からMoO2の結晶成長が触媒劣化と関係があることが示唆されるが, 表面への炭素質あるいは有機物の沈着もひとつの原因になっているものと考えられた。
  • 青山 兵五郎, 大井 明彦, 小渕 存, 大内 日出夫
    1987 年 30 巻 3 号 p. 195-198
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    炭化水素のセタン価を推測するための混合セタン価の妥当性を調べ, 20種類の炭化水素のセタン価を測定した。6種類の炭化水素の混合セタン価が, その実測セタン価と一致することを確かめ, これに基づいて14種類の炭化水素の混合セタン価を求めた。合計20種類の各炭化水素の化学構造とセタン価の関係は, ディーゼル燃料の炭化水素組成とセタン価の関係について公知の傾向と一致していることを認めた。混合セタン価法は, より広範囲な純炭化水素類のセタン価の推測を可能にするため, 炭化水素の化学構造とセタン価の基礎的な関係を調べるうえで有効な手法であることを示した。
  • 今村 成一郎, 西村 浩之, 石田 信伍
    1987 年 30 巻 3 号 p. 199-202
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    著者らが開発した廃水の湿式酸化処理に有効なマンガン-セリウム複合酸化物触媒の活性におよぼす触媒調製条件の影響を, 酢酸をモデル汚染物質として用い検討した。共沈法, 含浸法, 混練法で得た触媒のうち, マンガンとセリウムの混合溶液から共沈法で得られた触媒が最も活性であった (Table 1)。触媒焼成時の温度と雰囲気の影響を Fig. 1Table 2に示す。酸化雰囲気 (O2, 空気) の方が還元性雰囲気 (N2, H2) よりも良好な結果を与え, このことは触媒表面の4価のマンガンが重要な役割をはたすことを示す。焼成温度は450°Cが適当であり, したがって共沈法で得た触媒を酸素中450°Cで焼成したものが最高活性を示すが, その活性は現在までに知られている最も活性な可溶性銅塩のそれをしのぐものである。
  • 迫口 明浩, 岩井 芳夫, 服部 慶子, 荒井 康彦
    1987 年 30 巻 3 号 p. 203-206
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石炭液化油の分離•精製や近年注目されている超臨界ガス抽出のプロセス開発において, 対象とする高沸点化合物とくに多環芳香族化合物の工学物性値が不可欠となる。なかでも蒸気圧データが基礎物性として重要となるが, データの蓄積はいまだ不十分である。そこで, 比較的簡単な構造を有し, 容易な操作で精度の良い測定が期待できる流通法に基づく蒸気圧測定装置を試作した。ナフタレンを用いて装置の検証を行ったところ, 得られた蒸気圧データは, 固相および液相にわたり測定原理の異なる文献値と良好に一致した。このことから本測定装置は, 高沸点化合物の蒸気圧収集に役立つものと思われる。
  • 小沢 泉太郎, 近藤 康彦, 荻野 義定
    1987 年 30 巻 3 号 p. 207-210
    発行日: 1987/05/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石炭液化反応の雰囲気ガス中のメタンの影響を調べるため, 種々の組成のH2/CH4ガス雰囲気下で新夕張炭の液化を行い, H2/N2ガス雰囲気下の結果と比較した。ただし, 反応温度は420°C, 全圧は5MPa (初圧) と一定に保ち, 触媒には液体スズを使用した。
    液生成物のうち, プレアスファルテン (PA) と油分 (OL-1,2) の収率は, 雰囲気ガス中の水素分圧 (pH2) によって余り大きくは変化しなかった (Figs. 1a~c)。しかし, アスファルテン (AS) の収率は, pH2によって大きく変化した (Fig. 2)。これらの結果と既往の知見を考慮すると, 反応初期に石炭の保有水素のシャトリングで生成するのは, おそらくPAであり, ASは内部水素が消費されてから生成する2次的な留分と考えられる。PA, AS, OL-1,2いずれの収率も, 反応雰囲気がH2/CH4であってもH2/N2であっても実質的には変わりなかった (Figs. 1, 2)。このことはCH4が不活性ガスとして振舞うかのような印象を与えるが, 主液生成物であるアスファルテン (AS) の平均分子量は, H2/CH4雰囲気下で得られたASについては, CH4含有率を増すほど小さくなった (Fig. 3a)。そして, このようなASの平均分子量を低下させる効果は, N2よりもCH4の方が大きかった (Fig. 3b)。さらに, ガス生成物 (C2H6, C3H8, C4H10) の収率は2/CH4雰囲気の方がH2/N2雰囲気下よりも高い値となった (Figs. 4a~c)。これらのことは, 石炭液化反応において, CH4が必ずしも不活性とは言えぬことを示唆するように思われる。
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