石油学会誌
Print ISSN : 0582-4664
35 巻, 4 号
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  • 古橋 敬三, 高木 基福
    1992 年 35 巻 4 号 p. 301-311
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    土壌より分離したプロピレン資化性菌 Nocardia corallina B-276をグルコース培地で生育させた菌体を用いて, 種々のオレフィン化合物を空気酸化し不斉エポキシ化することができる。微生物によるエポキシ化の最大の障害である生産物阻害と基質阻害は有機溶媒を反応系に添加する方法により軽減され, エポキシドを反応液中に高濃度に蓄積できるようになった。生産物は溶媒から蒸留により回収される。また, ガス状のオレフィンでは高通気速度で反応を行い, 反応液中の生産物濃度を低下させることにより生産速度が向上した。気相中の低濃度の生産物は溶剤を用いた吸収プロセスにより効率よく回収できる。生産物阻害が弱い長鎖長のエポキシドでは, 原料オレフィンを炭素源とする培養法での生産も可能である。微生物を用いて生産された光学活性なエポキシドは, 強誘電性液晶合成の出発物質として用いられるほか, 生理活性物質合成への応用も期待される。
  • 加藤 昌弘, 村松 輝昭, 植田 裕樹, 山口 正人, 小澤 智樹
    1992 年 35 巻 4 号 p. 312-317
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    メタノールとヘキサン, シクロヘキサン, およびヘプタンからなる3種2成分系溶液の溶解度曲線と298.15Kにおける液密度を測定した。得られた液液平衡と液密度挙動を状態方程式で相関した。
    Table 1に実験で用いた試薬の物性値を示す。Table 2に298.15Kにおける液密度の実験値を示す。ここで, 括弧内の数値は2液相分離しているときの上相と下相の密度を示す。密度はデジタル密度計で測定した。液密度挙動を Fig. 1に示す。液密度曲線での屈曲点から相互溶解度を決定した。298.15Kにおける密度測定から得られた相互溶解度をTable 3に示す。
    溶解度の測定は, まずガラスアンプルに望む組成の溶液を仕込み, ガラス上部を溶かして密封した。このアンプルを恒温水槽に人れ, 試料アンプルを振りながら液相の状態を観察した。温度を変化させ, 2液相状態と均一液相状態との境界温度を測定して, その組成での溶解度温度とした。得られた溶解度温度の実験値をTable 4およびFigs. 2~4に示す。
    得られた液液平衡と液密度データを, Eqs. (1)~(5) に示す状態方程式で相関した。今回は, 係数abの温度依存性をEqs. (6)~(10) に示すように持たせ, 298.15Kにおける密度と蒸気圧を満足させた。Table 5に各純物質に対する補正係数の数値を示す。
    状態方程式を混合流体に適用するために, Eq. (11) で示す Huron-Vidal 型の混合則を導人した。ここで関数Fには, Eq. (12) に示す3定数 Wilson タイプ, およびEq. (13) に示すNRTLタイプを用いた。また, パラメーターbおよびθについては Eqs. (15)~(17) に示す混合則を用いた。3定数 Wilson タイプのパラメーターとNRTLタイプのパラメーターはEqs. (18) および (19) に示す温度の関数として整理した。Table 6に, 液液平衡と液密度の実験値を同時に状態方程式で相関して得られたパラメーターの数値および液密度の相関精度を示す。Fig. 1の実線は, 状態方程式による液密度の計算結果を示す。Figs. 2~4に溶解度曲線の計算結果を示す。ここで,実線はNRTLタイプ, 破線は Wilson タイプを示す。
  • 加藤 昌弘, 相澤 一徳, 金平 隆史, 田中 裕之, 村松 輝昭, 小澤 智樹, Benjamin C.-Y. LU
    1992 年 35 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では先に提案した高圧相平衡測定装置1)を用いて非揮発性のトリデカン, テトラデカン, トリデカンとテトラデカンの等モル混合物へのCO2の溶解度と液密度を測定した。Fig. 1に本研究で用いた高圧相平衡測定装置を示した。実験方法は前報1)とほぼ同様である。測定原理は物質収支より Eqs. (1)~(4) の関係が得られ, ここで, 液混合物は非揮発性と仮定すると Eqs. (5)~(9) が得られ, Eqs. (7)~(9) より Eqs. (10)~(12) のガスの溶解度の関係式が求まる。これらより, ガスと液の仕込み量, 全容積, 気液相の密度を測定すればガスの溶解度が求まる。Table 1に純物質の物性を示し, Tables 2, 3Figs. 2~4にCO2-トリデカン系, CO2-テトラデカン系, トリデカンとテトラデカンの等モル混合物におけるCO2の溶解度と飽和液密度データを示した。CO2の溶解度と飽和液密度の相関には先に報告した擬三次型状態方程式を用いた2)~4)。トリデカンとテトラデカンの補正因子Ka, Kbは温度313.15Kの蒸気圧と密度を満足するように決め, Table 4に示した。変数aに対する混合則を Eqs. (15), (16) に示し, 関数Fには三定数型 Wilson 式を用いた。変数bに対する混合則をEqs. (17)~(19) に示した。式中のパラメーターを Table 5に示した。変数θに対する混合則を Eq. (20) に示した。CO2-トリデカン-テトラデカン系において, トリデカンとテトラデカン間の相互作用は無視し, 計算には2成分系混合物から得られたパラメーターのみを用いた。温度313.15Kにおける非揮発性液混合物へのガス溶解度と液密度の計算結果をFigs. 2~4Table 6に示した。
  • 中沢 宣明, 横地 俊弘, 栗木 安則, 佐古 猛, 菅田 孟, 大久保 悌二, 佐藤 眞士
    1992 年 35 巻 4 号 p. 324-331
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    オイルショック以来, 非産油国において再生可能な植物油脂を石油代替エネルギーとする技術開発が行われてきた。内燃機関関連分野ではディーゼル燃料代替油として, 植物油脂エステルが注目されている。ディーゼルエンジンのシリンダー内に噴霧された燃料粒子径は, 燃料の粘性率, 表面張力等に関係し, エンジン性能に影響を及ぼすことから, これらの物性はエンジン設計に必要なデータである。代替油としての脂肪酸エチルエステルと軽油の混合油に関するデータはほとんど知られていない。そこで本研究では, 脂肪酸エチルエステルと軽油の混合油の粘性率を知るため, 第一段階として二成分系を取り上げた。代表的植物油脂としてパーム油を想定し, これのエチルエステルの主成分であるパルミチン酸エチルエステルとセタンの混合液の粘性率を大気圧下, 300~353Kの範囲で, 回転粘度計により測定した。得られた粘性率データの確度は±2%であった。また, 測定値はいずれも Andrade の式で精度よく相関可能であった。次いで代表的な粘性率推算法による計算値と測定値との比較を行った。その結果, 純液体については化学構造式からだけでも平均偏差5.5%で推算でき, 混合液体については Grunberg らの式で測定系全般にわたり比較的小さな偏差で推算できることを示した。また, 純液体の粘性率が Andrade の式で表されている場合には, 混合液に対する Andrade 式の温度係数Aを純液体についての温度係数Aと混合割合から決定し, 定数Bは両純液体についてのBの平均値を代入することで比較的良好に推算可能であることを示した。
  • (第1報) 骨格構造と反応性の関係
    三木 康朗, 杉本 義一, 山田谷 正子
    1992 年 35 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    ニッケル-モリブデナ/アルミナ触媒上におけるチオフェン, ベンゾチオフェンおよびジベンゾチオフェンの脱硫反応性を比較, 検討した。反応はバッチ式装置を用い, 温度250~350°C, 水素圧力12MPaで行った。
    チオフェンおよびベンゾチオフェンの反応では, 反応中間体の含硫黄化合物への付加反応が認められた。
    チオフェンの主脱硫生成物はブタン, ブテン類, テトラヒドロチオフェン, ブタンチオール, ブチルチオフェン類, 硫化ブチル類およびオクタン類であった。反応温度が高くなるにつれて付加反応への選択率は減少した。
    ベンゾチオフェンの反応では付加化合物の生成が顕著であった。付加化合物は, 分子量238, 240および242に相当する含硫黄化合物と分子量208および210に相当する硫黄を含まない化合物に分けられた。それ以外の主生成物としてエチルベンゼン, エチルシクロヘキサン, トルエン, ベンゼン, ジヒドロベンゾチオフェン, ペルヒドロベンゾチオフェン, 2-エチル-フェニルチオールおよび2-フェニル-1-エチルチオールが認められた。これらの含硫黄反応中間体の中では, ペルヒドロベンゾチオフェンの脱硫反応性が特に低いことが示された。
    ジベンゾチオフェンの反応では, 付加化合物はほとんど生成しなかった。主生成物はビフェニル, シクロヘキシルベンゼン, ビシクロヘキシルおよびその異性体, テトラヒドロジベンゾチオフェンおよびヘキサヒドロジベンゾチオフェン類であった。
    脱硫生成物間あるいは含硫黄化合物間の直接の付加反応は非常に起こりにくいことが示唆された。
  • 杉本 義一, Kesorn TUNNUKIJ, 三木 康朗, 山田谷 正子
    1992 年 35 巻 4 号 p. 339-348
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    石油中の高沸点留出油である減圧軽油 (b. p. 300~500°C) は非常に複雑な混合物であるために, その詳細な分析例は多環芳香族やバイオマーカーなどの一部の化合物グループに限られていた。そこで本研究では, 減圧軽油を化合物クラス別の成分に分離し (Fig. 1), 各成分の主要な化合物をキャピラリーGC, GCMCにより分析した。
    飽和成分 (Frs. S1, S2, A1), 芳香族成分 (Frs. A2~A7) および極性成分 (Fr. PO) の含有率はそれぞれ54.9, 39.7, 5.4wt%であった。飽和成分では直鎖パラフィン類, C16, C18, C19, C20のイソプレノイド類, メチルアルカン類, アルキル-シクロヘキサン/シクロペンタン類が検出された (Fig. 3)。Fr. A2およびFr. A3はアルキルベンゼン類を主とする単環芳族成分であり (Fig. 4), Fr. A3のクロマトグラムには長鎖のアルキル基とメチル基とをもつベンゼン類が規則的に流出した (Fig. 5)。飽和および単環芳香族成分のFPD-GC分析では, 硫黄化合物がほとんど検出されなかった。
    Fr. A4ではナフタレン類 (MW156+14n), アセナフテン/ベンズインダン類 (MW182+14n) とともに, ベンゾチオフェン類 (MW176+14n) を主とする硫黄化合物が多く検出された (Figs. 6, 7)。高沸点領域に規則的に流出するベンゾチオフェン類は, その質量スペクトルから長鎖のアルキル基とメチル基をもつものと考えられた (Fig. 8)。Fr. A5は硫黄化合物であるジベンゾチオフェン類 (MW184+14n) が主成分であり, ほかにフルオレン類 (MW180+14n) が含まれていた (Fig. 9)。
    Fr. A6はフェナントレン類 (MW178+14n), ベンゾナフトチオフェン類 (MW234+14n) が主成分であり, そのほかにピレン類 (MW202+14n), 2-フェニルナフタレン類(MW204+14n), ジベンゾチオフェン類が含まれていた(Fig. 10)。Fr. A7にはピレン類, クリセン類 (MW228+14n), ベンゾピレン類 (MW252+14n), ベンゾナフトチオフェン類などが含まれていた。Fr. POでは, カルバゾール類(MW167+14n), ベンゾカルバゾール類 (MW217+14n) が検出された (Fig. 12)。本成分の硫黄含量は2.0wt%であり, 相当量の硫黄化合物の存在が示唆されたが, FPDガスクロマトグラムはベースラインが盛り上がるのみで, 明瞭なピークが現れなかった。
    本研究で用いた減圧軽油は, (1)石炭液化油等に多く含まれているアントラセン, フルオランテン, ビフェニルなどが非常に少ない, (2)長鎖のアルキル基がついたベンゼン類やベンゾチオフェン類が多く含まれている, (3)Fig. 7に示されるようにメチル基がエチル基やプロピル基に比べて非常に多い, といった特徴があった。また, フェナントレンやメチルフェナントレンはかなり多く含まれていたが, それらの2水素化物や4水素化物は検出されなかった。
  • 杉本 義一, 三木 康朗, 丹羽 吉夫, Kesorn TUNNUKIJ, 山田谷 正子
    1992 年 35 巻 4 号 p. 349-352
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    原油中の高沸点留出油である減圧軽油 (沸点300~500°C) は非常に複雑な混合物であり, その詳細な分析例は多環芳香族化合物やバイオマーカーなどの一部の化合物グループに限られている。そこで前報では, 減圧軽油の化合物タイプ別成分のキャピラリーGCおよびGCMS分析により主要な化合物の構造を明らかにしたが, クロマトグラムのベースラインが顕著に盛り上がる成分もあり, 非常に多くの化合物が存在することが示された。本研究では, 前報で得られた化合物タイプ別成分 (Fig. 1) をFI質量分析法により解析し, 化合物タイプ別の組成について検討した。
    Fig. 2に Fr. S2, Fr. A2~Fr. A7および Fr. POの質量スペクトルを示す。これらの実測スペクトルから同位体ピークを除去し, 試料中の分子量分布を直接表示する分子イオンスペクトルを計算した。Fig. 3には, 例として Fr. S2および Fr. A6の分子イオンスペクトルを14質量ごとにわけて示した。各分布はいくつかの共通の骨格構造をもつアルキル同族体を示している。
    各成分の分子イオンスペクトルから, Fig. 4に示す化合物タイプ別の組成が得られた。各タイプにはいくつかの骨格構造が考えられるが, 代表的なものだけを図中に示した。本試料では飽和分が54.9wt%と多く, なかでもナフテン類が多かった。ナフテン類の環数分布について, 1環が最も多く, 環数が増えるにしたがい減少した。芳香族類の環数についても同様に, ナフテン環が増えるにしたがい減少する傾向がみられた。ナフテン環をもたない芳香族類に比べて, ナフテノ芳香族類の方が多く含まれていた。前報のGC, GCMSクロマトグラムでのベースラインの盛り上がりは, Fig. 4に示されるようなナフテン環を多くもつ化合物の異性体数が飛躍的に増加するためであると考えられる。
  • 森吉 昭博, 川村 和将
    1992 年 35 巻 4 号 p. 353-357
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は低温領域におけるアスファルトの破壊ひずみの値および破壊ひずみが温度, 載荷速度等によりどのように変動するか検討したものである。実験は著者らが新たに開発したもので, あらかじめひずみを測定した鋼板にアスファルトを塗布し, それをフラースぜい化点試験機に装着し一定温度で曲げ作用を与え, 様々な温度のアスファルトの破壊ひずみを求めるものである。
    実験により, 以下の結果を得た。温度が低下するに伴い破壊ひずみは減少し, 最小ひずみに漸近した。アスファルトの温度-破壊ひずみ曲線は, 載荷速度等の条件により温度軸方向に平向移動し, その形状はほぼ一定であると考えられる。また, 載荷速度を遅くした場合, その曲線は温度軸方向に平行移動した。
  • Xian-yong WEI, Eisuke OGATA, Etsuo NIKI
    1992 年 35 巻 4 号 p. 358-361
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    Hydrocracking reactions of diarylmethanes (DAMs) were carried out with FeS2 at 300°C to examine the structural effect of DAMs on their reactivities toward hydrocracking. The reactivities were dominated by the hydrogen-accepting abilities of the ipso-carbons in DAMs and the resonance stabilities of the resulting arylmethyl radicals.
  • 植嶋 陸男, 矢野 斉, 服部 英
    1992 年 35 巻 4 号 p. 362-365
    発行日: 1992/07/01
    公開日: 2008/10/15
    ジャーナル フリー
    The characteristics of Si-alkali metal-P-O mixed oxide catalysts in the vapor phase intramolecular dehy dration of monoethanolamine to ethylenimine have been studied.
    It has been found that these catalysts of which both acidity and basicity were extremely weak showed high catalytic activity and selectivity to ethylenimine in the above dehydration reaction, and this reaction proceeds effectively by acid and base bifunctional mechanism.
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