ビデオチャットにおいて,カメラから得られた映像を加工することなく相手に送信した場合,人物の背景情報(オフィスなどの部屋の内部)に含まれる個人情報も同時に相手に送信される.その対策として,オブジェクト(前景となる人物領域)のみをリアルタイムに抽出し,目的に応じて背景情報を任意の画像や映像に差し替える方法が有効である.また,差し替え画像に風景画像を用いた場合,背景の差し替えによって「風景画像の示す場にいるような映像」を送信可能である.しかしながら,前景と新しい背景の間に色味の差が生じることによって,背景差し替え映像に違和感を感じる場合がある.この色味の差異は,画像取得時における光源色の色温度の差に起因して生じる.そこで本論文では,色温度特徴に着目し,背景差し替えの違和感を軽減する方法を提案する.
提案手法は3つのステップから構成される.はじめに,前処理として人物領域の抽出に用いる動的背景差分法の初期値を設定した.また,カメラ画像と差し替え画像の色温度推定を行い,色温度変換行列を生成した.次に,背景差分結果を用いて取得した人物領域に対して色温度変換を施した.最後に,色温度変換結果と差し替え画像を合成し,背景差し替え画像を取得した.
被験者14名を対象とした評価実験の結果,提案手法は色被りのある風景画像を用いた背景差し替え映像の違和感を軽減可能であることを明らかにした.
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