知能と情報
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27 巻, 2 号
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目次
巻頭言
解説
理事会だより
報告
用語解説
  • 脳科学総合研究センター 岡本洋
    原稿種別: 用語解説
    2015 年 27 巻 2 号 p. 63
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    コネクトーム

    脳における情報処理は,多数の神経細胞(ニューロン)のつながりがつくる「ネットワーク」を舞台として,その上を信号が縦横に伝搬することにより演じられる.現在,この舞台の「構造」およびそこに演じられる「機能」を記述する全脳ネットワーク地図−「コネクトーム」−の解明が活発に進められている.線虫の一種であるC.elegans の神経系は302個のニューロンからなり,それらの間の接続構造は電顕写真再構成法により完全に特定された.より高等な動物の脳の領野間接続の解明には,古くから神経線維連絡解析(tract tracing )が用いられてきたが,近年,拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging,DTI )の発達により,領野間の結線構造を生きたままで一挙・包括的に明らかにすることが可能になった.核磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging,fMRI )により記録された活動信号に基づいて部位間の関係を時間相関で定めることにより,機能ネットワークが構成される.様々な種(ヒト,サル,線虫,その他),様々なレベル(ニューロン自体,あるいは,測定方法の解像度によって定められる区画をノードとする粒度)のコネクトームデータが蓄積されつつあり,その多くが公開され,利用可能となっている.

    複雑ネットワーク科学

    「複雑ネットワーク科学」は,現実世界の様々なネットワーク( WWW/インターネット,ソーシャルネットワーク,遺伝子制御・タンパク相互作用ネットワーク,その他)の性質を,主に物理学の方法を用いて明らかにするものであり,この十余年に急速に発展した新しい学問分野である.複雑ネットワークの性質の中で,特に重要なものが「コミュニティ構造」である.「コミュニティ」とは,ノードが密につながったかたまり部分のことである(図1).個々のコミュニティには一つひとつの意味が対応すると考えられる.したがって,ある複雑系を理解するためには,その複雑系を記述するネットワークに内在する個々のコミュニティを特定すること,さらには,これらのコミュニティがどう組織化されているかを知ることが本質的に重要である.そのため,ネットワークから効果的・効率的にコミュニティを検出するアルゴリズムの開発が,複雑ネットワーク科学の中心テーマの一つとなっている.

    全脳ネットワーク分析:コネクトームと複雑ネットワーク科学の融合

    「全脳ネットワークの個々のコミュニティが脳情報処理における一つひとつの機能モジュールに対応する」ならば,全脳ネットワークのコミュニティ構造を明らかにすることが,脳の情報処理アーキテクチャにせまるための本道ということになる.こうして,複雑ネットワーク科学で開発された分析手法を用いてコネクトームデータを分析する試み−「全脳ネットワーク分析」−がはじまった.すでに,全脳ネットワークにおける個々のコミュニティが実際の脳機能に対応すること,これらのコミュニティが「リッチクラブ」とよばれる背骨構造を通じて統合されること,などがわかってきた.全脳ネットワーク分析は,脳の情報処理アーキテクチャ解明のための主要なアプローチとして,また,近年の「ビッグデータ」の潮流とも相まって,今後大きく発展すると期待される.

会告
特集:「産業応用」
論文概要
学会から
編集後記
特集論文: 産業応用
原著論文
  • 野本 弘平, 丸山 昴
    2015 年 27 巻 2 号 p. 561-569
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    人々がある街を散策する時,どのように道を選び,何を見ているのだろうか.道の選び方は新しい都市景観を展開し,その新しい都市景観は人々を新たな方向へいざなう.したがって,これらは互いに他方を誘発する関係にある.しかし,その街を初めて訪れる来訪者の経路選択と都市景観知覚は,その街に長年住んでいる居住者のそれらとは異なる.多くの都市が試行錯誤で観光産業に多くの力を注いでいるが,来訪者の無意識の行動に関する規則性を科学的に理解し,それを観光に応用することが重要である.本論文は,実験データに基づき,経路選択と都市景観知覚について居住者と来訪者との比較を行う.
  • 景山 陽一, 比佐 光一, 大内 東, 高谷 敏彦, 西田 眞
    2015 年 27 巻 2 号 p. 570-580
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    東日本大震災から得た教訓の1つとして,大規模災害が発生した場合には,災害廃棄物の量,分布,並びに内容の推定を速やかに行い,その後の復旧活動を迅速かつ効果的に行うことのできるシステムの開発がある.また,広域性・周期性などの特徴を有するリモートセンシングデータを用いて,災害廃棄物量の推定を行うことは,その後のすべての処理に係る最優先課題であると考える.しかしながら,精密な災害廃棄物量の推定を行うためには,ミクセル(複数の土地被覆物が複合したDN値を合わせ持つ混合画素)を推定して得られた結果を基に,ミクセルを分解しデータの地上分解能を疑似的に向上させる必要がある.そこで本論文では,データのDN値とテクスチャ特徴量を併用したミクセルの分解法を提案する.
  • 高橋 周太郎, 安信 誠二
    2015 年 27 巻 2 号 p. 581-588
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    列車運転においては,走行状態が所定のダイヤから遅れを生じると,運転手は制約条件変化予告の情報を利用しながら目的地到着時間の短縮が要請される.しかし列車の運転は,効率性,安全性,正確性,快適性と共に,動的に変化する制約条件(制限速度・信号機の表示が切り替わる時刻)を考慮しながらの多目的で困難な作業であり,非熟練運転手に対しての適切な運転支援情報の提供が重要である.本論文では,制御操作量の決定に人間の感覚的評価や対象の動特性に基づく制御知識を取り入れた知的制御方式を適用し,時々刻々の制約条件変化予告と操作間隔などを考慮する運転知識を用いて適切な操作量を求め,これに基づき運転手に対して操作支援情報を提供する構成の知的運転支援システムを開発した.開発システムにより,走行中に制約条件の変化予告を利用して目的地到着時間の短縮(輸送量の確保)を行い,的確かつ柔軟な支援が出来ることを確認した.
一般論文
原著論文
  • 伊佐 勇人, 椎名 孝之, 森戸 晋, 今泉 淳
    2015 年 27 巻 2 号 p. 589-598
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    数理計画法の適用分野は,現実社会の多種多様な場面に及ぶ.現実の数理計画問題には,目的関数および制約条件に不確実要素を伴う場合が多い.不確実な状況下での意思決定にはリスクが含まれるため,現実システムの不確実性をモデル化し,確率的変動要素を考慮した解法が必要となる.そのため,数理計画法の一手法である確率計画法の適用を考える.確率計画法は,数理計画問題に含まれるパラメータが確率変数と定義される問題であり,不確実な状況下での最適化問題を対象とする.従来,各種の設計,計画,運用などの問題に対しては,確定的な数理計画法が用いられてきたが,不確実な状況下での意思決定が重要である.本論文では,ロジスティクス・ネットワーク再編成問題に対する確率計画法に基づく数理計画モデルとその効率的な解法を示す.CVaR最小化モデルでは,費用の期待値は少々悪化するものの,最悪の場合の費用は逆に下がることが示された.
  • 山下 真裕子, 山田 逸成, 安田 昌司
    2015 年 27 巻 2 号 p. 599-607
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    点滅周期を変化させた色データにおける生理的・心理的影響を検討することを目的に,学生16名を対象に実験を行った.その結果,点滅周期の違いによる脳波のa3分布率および主観評価に有意差を認めた.つまり長周期の点滅周期の点滅光に快適性やリラックス感が高まる傾向を認めた.今回得られた結果により,ストレスに起因する心身の不定愁訴を抱える人々に対し,病院や企業,教育現場,地域社会において癒し効果の高い快適空間に提供することが可能と考えている.
ショートノート
  • 岡田 悟, 荒川 達也
    2015 年 27 巻 2 号 p. 608-615
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    電子テキストの小説読書において,質問応答形式で小説の内容を確認できる読書支援システムを提案する.本システムはユーザの小説読書支援のため,入力質問に対して小説本文より回答を検索し,評価値順に並べ替えて出力する基本動作およびネタバレ防止の機能や登場人物の情報を確認するための機能,ユーザの既読部のあらすじを提示する機能等の補助機能から構成される.本稿ではシステムの構成・実装および実行例を示す.10名のモニタによるシステムの評価実験により,提案手法が利用者に受け入れられるものであることが確認できた.
  • MATSUNAGA Tsutomu, KUWATA Shuhei, MURAMATSU Masaaki
    2015 年 27 巻 2 号 p. 616-620
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    Statistical studies in linguistics have shown that relations between word frequencies and their ranks have the regularity of power-law distributions. However, the self-organizing behaviors of word occurrence in the relations have not yet been studied comprehensively. We carried out an empirical analysis of medical term occurrences using the Merck Manual, which is a well-known medical reference book. We investigated medical term connectivity by modeling term occurrences in a text as state transitions in a system. Observing connection frequency distributions, we then found scale-free patterns of connectivity such that frequencies of both incoming and outgoing connections of each term would be power-law distributed. Our results suggest that the term connectivity may give the auto-regulatory dynamic behavior of self-organization. Investigating term connectivity dynamics may significantly advance text processing methodologies.
  • 松永 務, 新海 正吾, 末永 高志
    2015 年 27 巻 2 号 p. 621-625
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    大量で良質な対訳文集合(翻訳メモリ)の確保は,翻訳機能を計算機処理により実現する統計的機械翻訳をはじめ,情報資産の有効活用から重要性が認識されつつある.これまで対訳文の大規模収集が検討される一方で,対訳文の品質改善を目的に誤訳等の修正を行うこと(クリーンアップ)に関する方法論はまだよく知られていない.本稿では,翻訳メモリのクリーンアップに向けて,対訳文における語の対応良否に関する尺度の導入を提案する.日英40万規模の対訳文ランキングの実例を基に,翻訳メモリのクリーンアップのための大規模対訳文集合に対するランキングについて述べる.
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