知能と情報
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
目次
巻頭言
挨拶
解説
報告
書評
用語解説
  • 中村 剛士
    原稿種別: 用語解説
    2013 年 25 巻 2 号 p. 59
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    ロボットサービスイニシアチブ(RSi)は,ネットワークを介して公共空間や生活空間でサービスを提供するロボットを対象としたロボットサービス向けソフトウェア基盤の整備をする団体であり,2004年3月に設立された.RSi が提供するロボットのサービスモデルは,ロボットやサービスプロバイダ,サービスポータル,ユーザ等から構成される.そのモデルでは,同期・非同期の通信による動作や動作パターンの指示や結果の取り出し,ロボットからプロバイダへの問合せ・通知,サービスの提供,ユーザを含む外界とのやり取りを行うことができる.

    ロボットをインターネットに接続する利点は,人とロボットが協調してサービスを提供するロボットを実現できること,インターネット上のコンテンツを再利用できることにある.これによりサービスコストの軽減や新しいビジネスの創出が可能となる.RSNP(Robot Service Network Protocol)は,このモデルに従ってサービスのプロトコルを規定し,異なるベンダが独立して開発したロボット/サービスの間での相互運用が実現できる.

    RSNPのアーキテクチャは,ロボットがネットワークに接続して通信する上で必要となる共通機能を提供するための「RSi共通サービス」と,様々なロボットの機能に対応できるように機能ごとに提供する「プロファイル群」の二つから構成されている.RSNPは,このモデルに従ったサービスのプロトコルをWSDLを用いて標準として規定しており,異なる実装間の曖昧性を排除し,相互接続を実現することにより,異なるベンダが独立に開発したロボットとサービス間での相互運用が実現できる.また,WSDLを用いることで下位層との独立性を実現しており,Webサービスで用いられるHTTPだけでなく,ロボット起点のプッシュ通信に対応している.

  • クーパー エリック
    原稿種別: 用語解説
    2013 年 25 巻 2 号 p. 59
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    ネットワークコンピューティングにおいて,機械と機械の間のやりとり規約はプロトコル(protocol)と呼ばれるが,同様に,人間と機械の間の規約をセレモニー(ceremony)と呼ぶ.セレモニーはプロトコルの拡張概念であり,Intel 社のJesse Walker の提唱によるものである [1].セレモニーが注目されている理由は,特に情報セキュリティのプロトコルにおいて,ユーザインタラクションの重要な役割を明確にできる点にある.情報セキュリティのためのセレモニー,たとえば認証のためのパスワード入力過程やHTTPSの証明書確認などは,セキュリティの弱点として近年ますます問題とされつつある.そのような,認証・暗号化と復号・デジタル署名と検証など,情報セキュリティの基本作業をセレモニーとして記述することができる.また,セキュリティに限らず,他のプロトコルに対しても,認知工学の立場から分析する上で効果的な手法であるとされる.人間を含む分散システムをセレモニーとして記述することにより,ソーシャル・エンジニアリング(social engineering)など,人間の認知的・社会的な隙間を狙うエクスプロイト(exploit )を予測することが期待される.セレモニー図(ceremony diagram)はシーケンス図(sequence diagram)の一種であり,ネットワークやシステム内のやりとりを含むセレモニーとプロトコルを明確にするものである.UMLなどで定義されているシーケンス図を用いて,分散システムのプロトコルの確認と検証をする作業に慣れているエンジニアが,容易に人間工学に関しても検証できることは,セレモニーのメリットのひとつである.また,認知工学やインタラクションの面からシステムを見るインタフェースデザイナーが,ユーザが直接アクセスする部分のみではなく,システム全体とそのプロトコルを考慮することで,より信頼性のあるシステムを構築することができると考えられている.

    1.Chris K. Karlof: Human Factors in Web Authentication, Technical Report No. UCB/EECS-2009-26, UC Berkeley PhD Dissertation( 2009)

会告
論文概要
学会から
編集後記
一般論文
原著論文
  • 竹内 潤子, 井出野 尚, 玉利 祐樹, 今関 仁智, 竹村 和久
    2013 年 25 巻 2 号 p. 641-650
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    本論文では,個人が持っている物語の背景にある多元的な価値構造を可視化し,定量的に分析するための半構造化面接の手法として,コルクボード・イメージ・マッピング法を提案する.提案手法の手続きは1)物語からの主要項目の抽出,2)コルクボードへの布置(コルクボード・マップ)とその解釈,3)多次元尺度構成法(MDS)を用いたイメージ・マップ(MDSマップ)の作成とその解釈,4)両マップの比較検討,によって構成される.また,作成された両マップの解釈は,各実験参加者自身への面接で行わせる.提案手法を用いた実験の結果,各実験参加者の物語から価値を抽出できることが確認され,提案手法の有効性が示された.また,軸や布置の解釈から,価値構造を定量的に探索可能であること,また,コルクボード・マップとMDSマップの比較により,個人ごとの布置方略の定量的な判別が可能であることが示唆された.本研究の提案手法を用いることによって,物語の背景にある価値構造の特徴を記述することが可能であり,社会における議論の共通基盤や論点の差異を明らかにできる可能性が示された.
  • 岩満 優美, 竹村 和久, 松村 治, 王 雨晗, 延藤 麻子, 小平 明子, 轟 純一, 轟 慶子
    2013 年 25 巻 2 号 p. 651-658
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    精神医科学や臨床心理学においては,投映描画は個人の人格的理解と行動の全般的理解のために用いられている.特にコッホによって開発された樹木画(バウムテスト)は,医学的診断の補助や心理学的評価のために用いられることが多い.投映描画の解釈では客観性に乏しく,信頼性が低いため,われわれは,いくつかの画像解析技法の手法を統合した方法を用いて,精神障害患者の描画を解釈することを試みた.本研究で提案された方法は,下記のとおりである.(1)濃度ヒストグラム法(GLHM 法),(2) 空間濃度レベル依存法(SGLDM),(3)濃度レベル差分法(GLDM),(4)矩形行列を実行列または複素行列に分解する特異値分解,(5)画像の波形成分を分解するフーリエ解析,(6)画像解析をもとにした描画の臨床心理学的解釈である.これらの投映的樹木テストの画像解析諸技法は,精神障害の心理学的過程を解釈するために利用された.
  • 川畑 宣之, 徳永 憲洋, 古川 徹生
    2013 年 25 巻 2 号 p. 659-675
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    本研究は自律移動ロボットにおけるハイブリッド地図の自律的構築に自己成長型モジュラーネットワーク(Self-Evolving Modular Network : SEEM)を用いた手法を提案する.SEEMはグラフ構造を持つモジュラーネットワークであり,学習時にモジュールとパスが自己組織的に生成される.本手法は SEEM を用いることにより,ロボットが移動しながらオンラインでハイブリッド地図を構築することが可能である.本研究では SEEM を用いたハイブリッド地図の自律的構築システムの開発を目的とし,目的に対して次の二つの研究を行った.(1)ハイブリッド地図の構築に適した SEEM のバックボーンアルゴリズムの選定,(2)SEEM を用いたハイブリッド地図構築システムの設計.(1)において,我々は SEEM のバックボーンアルゴリズムとして Growing Cell Structure(GCS),Growing Neural Gas(GNG),Evolving Self-Organiz-ing Map(ESOM)の三種類の成長型ニューラルネットワークのアルゴリズムを挙げ,地図構築の課題で比較実験を行った.その結果 SEEM のバックボーンアルゴリズムは ESOM が適していると示唆された.また(2)において,ESOM のアルゴリズムをベースに SEEM のアルゴリズムを設計し,SEEM による地図構築の実験を行った.その結果,提案手法は視覚情報のみからハイブリッド地図の構築が可能であると示唆された.
  • 高橋 毅, 景山 陽一, 西田 眞
    2013 年 25 巻 2 号 p. 676-689
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    発話に伴う口唇の動き特徴である口唇の縦幅や横幅の伸縮度合いの時系列変化は,個人識別ならびにコマンド識別に有用な特徴となることが明らかとなっている.この口唇の動き特徴はパスワード等と同様,必要に応じて登録データ(発話内容)の変更が可能であり,登録データの盗難に対する強みを有する.また,ビデオカメラやウェブカメラなど,共通の機器で特徴量が取得可能であるため,個人認証(ログイン操作)に引き続き,コマンド認識(情報機器等の入力や操作)が可能である.しかしながら,多数のユーザーが使用する状況を想定した場合,その個人認証・発話認識の信頼性は高くないのが現状である.このため,口唇そのものが有する個人固有の形状特徴を解析し,得られた結果を信頼性向上に用いる手法の開発は,口唇の特徴を用いた個人識別・発話認識システムの構築において,重要な課題と考える. そこで本論文では,口唇が有する局所的な形状特徴を統計的に解析し,形状解析に基づいた個人のグループ化手法について検討を行った.提案手法では,口唇を3つの矩形領域A ~ C(以後,局所領域A ~ C と呼ぶ)に分割し,①上唇および下唇の厚さ比率,②口裂の凹凸形状,③アスペクト比を特徴量として算出し,その解析結果に基づいてグループ化のための口唇形状カテゴリ(27 カテゴリ)を構築した.なお,カメラにより得られる画像データには撮影環境の微小な変化によるあいまいさが含まれるため,提案手法のグループ化アルゴリズムではファジィ推論を用いて口唇の形状分類処理を行った. グループ化の精度を確認するため,被験者52 名を対象に分類実験を行ったところ,80%以上の精度で登録データおよびその類似形状と同一の形状に分類され,照合対象の絞り込みが可能であることが示された.また,k - means 法との比較においても提案手法は良好な分類精度を有することが明らかとなった.
  • 金城 敬太, 海老名 剛
    2013 年 25 巻 2 号 p. 690-700
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    書籍などの財の購買行動は,ランキングや全体の販売数といった外部の情報(外部性)に強く影響される.口コミなどの小さな準拠集団による外部性に関する研究は多く行われてきたが,上記のような大きな準拠集団による外部性が購買にどれくらい影響するのかについて,あまり研究が行われてこなかった.本研究では,上記の外部性を組み込んだ階層ベイズモデルを提案した.その上で,書籍に関してコンジョイント分析に用いられる調査を行い,調査データを用いてモデルのパラメータを推定した.加えて,推定結果を用いて販売数のシミュレーションを行った.結果,外部性がどのような分布になっているか,さらには外部性に関連する属性を明らかにした.特に,書籍市場で,性別では女性,また年齢としては高齢になるほど,外部性が高くなる傾向にあることを示した.加えて販売数のシミュレーションにより,最終的な需要量が外部性によって一定程度の影響を受ける可能性があることを示した.
  • 大谷 誠, 古川 徹生
    2013 年 25 巻 2 号 p. 701-720
    発行日: 2013/04/15
    公開日: 2013/06/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,形状集合を取り扱う形状空間法を理論的に確立し,さらに形状のトポロジーに関する事前知識がない場合でも形状空間が推定可能なアルゴリズムを開発することである.この目的を実現するため,まず形状集合の確率的生成モデルを多様体を用いて構築した.次にトポロジー制約のない自己組織化マップTFSOM を開発し,これを高階SOM に組み込んだTFSOM × SOM を作った.さらに形状の非均一な伸縮にも対応できるようにアルゴリズムを拡張した.提案手法を手書き数字識別に応用したところ,10人分の手書き数字を学習させるだけで1000人分の手書き数字を95%の精度で識別できた.本手法は線画に特化したものではないため,フォルムのデザイン分析などさまざまな形状に応用が可能である.本提案手法は形状集合を扱う汎用的な手法を提供する.
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