知能と情報
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28 巻, 2 号
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目次
巻頭言
解説
論説
報告
用語解説
  • マッキン ケネスジェームス
    原稿種別: 用語解説
    2016 年 28 巻 2 号 p. 50
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2018/04/15
    ジャーナル フリー

    人の意識の仕組みについては古くからいくつも仮説が提案されているが,ニューロイメージング技術(ポジトロン断層法:PET,機能的磁気共鳴画像法:fMRI,脳磁図法:MEG,等)の発展により,近年再び研究が活発に行われている.

    意識は脳の機能により発現すると考える立場から,意識は志向性をもつ高次な脳の情報処理の一様式(苧坂 1997)と定義できる.特定の脳の活動のみが意識と相関を持つと仮定し,脳内の神経細胞の活動から意識を解明しようとする神経科学的アプローチがNeural Correlates of Consciousness(NCC:意識と相関する神経活動)である.つまり,NCCは,特定の意識的知覚を共同して引き起こすのに十分な,最小の神経メカニズム(Crick&Koch 1990)と定義できる.

    しかし,意識そのものについても定義が難しい問題を抱えている.意識と無意識の関係に加え,意識の内容や,意識の状態に対応する複数の階層があると定義することができる.覚醒(arousal/vigilance)は,刺激の受け入れに対して準備ができた状態,アウェアネス(awareness)は,刺激を受け入れている状態,つまり知覚している状態であり注意に基づく刺激や反応への選択性がある状態,そして自己意識(self consciousness)は,注意の対象が自分の意識そのものである状態がある.自己意識は,自己に向かう再帰的(リカーシブな)意識と考えることができる.(苧坂 1997)

    NCC の研究では,再現実験における刺激の操作性の良さから,特に視覚的意識(visual consciousness)が研究対象に選ばれることが多い.視覚的意識には,盲視(blind sight),両眼視野競争(binocular rivalry),視覚的注意(selective visual attention),半側空間無視(parietal neglect)等,いくつもの特徴がすでに見出されており,これら視覚意識のNCC を研究することにより,現象的意識(phenomenal consciousness)解明に繋がることが期待されている.

  • 片上 大輔
    原稿種別: 用語解説
    2016 年 28 巻 2 号 p. 50
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2018/04/15
    ジャーナル フリー

    人が集まりコミュニケーションする場では,人は「雰囲気」を感じる.複数の人が発する言葉,表情,視線,うなずき等から人は雰囲気を感じ取り,次に起こり得る雰囲気を意識的あるいは無意識的に予測しながら対話コミュニケーションを進めている.人は雰囲気に基づき多様なコミュニケーションを進めている一方,雰囲気は言葉にして説明することが困難である.

    雰囲気を工学的に扱う領域は雰囲気工学(Mood Engineering)と呼ばれ,2013年から分野の異なる関連の研究を集中して議論する場所を提供することを目指して,筆者らを中心に活動が行われている.雰囲気工学では,複数人が構成する人工的な雰囲気の工学的なモデルを作成することを試みる.雰囲気を工学的に議論することは,人間の新しいコミュニケーション基盤の構築につながる.

    言葉で説明がしにくい雰囲気を解明するためのアプローチは,従来の工学的なやり方だけにこだわることなく,ロボットなどを用いた構成的手法,エスノグラフィーのような人の観察手法,発汗や脈拍計測のような生理指標や脳計測実験の利用など,様々な手段で取り組んでいく必要がある.具体的な研究対象としては,多人数の会話の場,複数の会話ロボットなどの人工的な言語・非言語情報による会話の場,Web メディアにおける複数人の言語活動(twitterやSNS)から推測されるネット上の雰囲気などが挙げられる.これらから,複数人が創り出す「雰囲気」を構成する工学的モデルを探り,モデルに基づいた新たな対話システムや新しいネットワークコミュニケーションシステムの確立を目指している.これらの議論は始まったばかりであり,今後の研究の発展が期待される.

会告
論文概要
学会から
編集後記
一般論文
原著論文
  • 奥村 健太, 酒向 慎司, 北村 正
    2016 年 28 巻 2 号 p. 557-569
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,特定の演奏者が持つ表情の特徴に忠実な演奏の自動生成を目的とした手法を提案する.多くの既存手法は演奏生成に際して演奏者が有するような専門知識の入力を必要とする.それらは使用者自身が演奏者として介在する用途には有用であるが,本提案の目的には不向きである.提案手法では演奏者による実際の演奏事例から得られる表情の特徴に対し,楽譜から専門知識を用いることなく得られる情報を関連付けたモデルを定義する.さらに楽譜の指示を基準に用い,個々の演奏事例について定義したモデル群をその表情の特徴別に分類することで,任意の演奏事例に付与された表情の特徴と楽譜の指示との因果関係を体系的に記述した規則を構造化できる.この構造を辿ることで,未知の楽譜の指示に対応する演奏事例の候補が得られる.これらの候補の中から最適な表情を備えた演奏事例の系列を探索する問題を,動的計画法の適用によって解決する.客観評価実験により,提案手法は最適な事例の系列を効率的に探索できることを示した.また,主観評価実験によって提案手法による表情の品質の高さを確認したほか,多様な楽曲で演奏者に忠実な表情の特徴を再現できることを示した.なお,提案手法による演奏は,自動演奏表情付けシステムのコンテストにおいて自律生成部門の第1位を獲得している.
ショートノート
  • 室伏 俊明, 堀尾 尚史
    2016 年 28 巻 2 号 p. 570-575
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    本論文は,有限集合E上の2単調集合関数(すなわち,単調な優モジュラ集合関数)が,Eの真部分集合上の単調な集合関数の和に加法的に分解できるかという「分解問題」を扱っている.E上の2単調集合関数全体に対する「分解問題」を,E上の2単調集合関数全体の作る凸多面錐の有限個の生成元に対する「分解問題」に帰着することによって,解の計算機探索を可能にしている.この探索を5要素と6要素の集合上の「分解問題」に適用し,5要素集合上では肯定的に,6要素集合上では否定的に解決している.
  • 加藤 真梨子, 山下 利之
    2016 年 28 巻 2 号 p. 576-582
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    CMCにおける絵文字のように,線画による表情には幾つかの特定の色が使用されることが多い.本研究では線画表情からの感情認知が,色によってどのように影響されるかを考察した.実験1では,喜び,悲しみ,怒り,驚きを表していると認知されやすい線画表情,中性表情を表す線画表情,あいまいな線画表情の計6つの線画表情を用いて,顔色の部分を赤,黄,青と変化させ,その表情認知を比較考察した.実験2では,背景色を変化させて,感情認知への影響を考察した.実験1,2ともに,主として眉毛や口の形態を感情認知に用いているが,顔色や背景色も感情認知を促進することを明らかにした.具体的には,実験1では,顔の赤色が喜び感情と怒り感情の認知を促進する一方,青色が喜び感情の認知を抑制した.また,青色が悲しみ感情の認知を促進した.実験2では,赤と黄の背景色が喜び感情の認知を促進し,青の背景色は悲しみ感情を促進した.
  • 塚本 弥八郎
    2016 年 28 巻 2 号 p. 583-587
    発行日: 2016/04/15
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    ファジィ積分の中で,ショケ積分の別表現として包除積分あるいはメビウス変換による表現があるが,本論文では,もう一つの別表現を提案し,それを直接用いた簡単な計算手法を示す.通常,ショケ積分の計算にはあらかじめ並べ替えの操作が要求されるが,提案される別表現,T-formula,ではその必要はなく被積分関数そのままで計算可能である.また,測度が加法的ならば通常のルベーグ積分,確率分布ならば確率変数の期待値の表現としても適用可能である.
    本論文では,まずT-formulaがショケ積分になることを証明し,このT-formulaから出発した誰もが容易に使えるデータベース関数のみを用いたショケ積分の簡単な計算手法について述べる.
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