知能と情報
Online ISSN : 1881-7203
Print ISSN : 1347-7986
ISSN-L : 1347-7986
36 巻, 4 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
目次
巻 頭 言
特集: 「人間共生システム」
特集解説
報 告
用語解説
会 告
学会から
編集後記
総目次
特集論文:人間共生システム
原著論文
  • 楓 紘希, ジメネス フェリックス, 宮本 友樹
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 677-686
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    近年,教育支援ロボットが注目されている.従来の教育支援ロボットでは,学習者が解答する問題の数(以下,解答問題数)があらかじめ定められている.これにより,従来ロボットとの共同学習では,学習者の自主的な学習環境を構築することができていない.しかしながら,学習者の自主的な学習を促すことは,学習者のロボットとの長期的な共同学習を実現するのに重要である.本研究ではポライトネス理論に基づいて会話するロボットが,学習者と会話しながら解答問題数を決定する問題数提案手法を構築する.本論文では,あらかじめ問題数が定められた従来型ロボットや,学習者が問題数を自由に決めることができるロボットと比較しながら,本手法の印象効果を検証する.

    実験結果から,本手法に対しポライトネス理論のPPS(ポジティブ・ポライトネス)とNPS(ネガティブ・ポライトネス)を使用したロボットは学習者のロボットに対する印象を向上させることがわかった.また,学習者との会話により自由に問題数を決めさせるロボットに比べて,問題数提案手法を用いて会話するロボットは,解答問題数が高くなることがわかった.

  • 石川 育恵, ジメネス フェリックス, 三谷 真優, 中島 卓裕, 吉田 翔子
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 687-694
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    近年,通常学級における発達障害児の割合増加に伴い,心理検査を行う臨床心理士の需要も増加している.心理検査の訓練方法として,座学による訓練や,演習・実習による訓練がある. しかしながら,実習先や検査対象者の確保が困難であることから,臨床心理士が十分に心理検査の訓練を受けることができる環境が整っていない.そこで本研究では、臨床心理士から知能検査を受ける児童型ロボット(以下、提案ロボット)を開発する。提案ロボットには,知能検査を受けている児童と同様な発話内容が搭載されている.臨床心理士はロボットとの会話を通して知能検査を訓練する.本論文では,提案ロボットに対して臨床心理士が心理検査を実施することで,訓練に有効かどうかをアンケートにて調査した.実験結果から,身体動作を実行せず,音声会話のみで検査を受ける提案ロボットとの訓練は,心理検査の訓練に有効である可能性を示した.

  • 窪田 智徳, 小川 浩平
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 695-702
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    操作型対話ロボットの研究において,ロボットと操作者が同一空間に存在し,ロボット・操作者・対話相手が三者で対面対話できる近接操作型対話ロボットの有効性が示されている.我々は,近接操作型ロボットが操作者と対話相手との対話促進に寄与できる効果として,操作者がロボットを操作して好意的な発話をさせることで,操作者の対人印象を向上できると考えた.本研究では,仮説「操作者がロボットを操作して好意的な発話をさせることで,操作者の対人印象が向上する」を検証するため,操作者とロボットの距離の違いを考慮した2つの状況を含むオンライン実験を行った.その結果,ロボットと操作者の距離が近い場合には仮説が支持されたが,より遠い場合には支持されないことがわかった.本研究により,近接操作型ロボットによる対話促進効果の一つを示し,またその効果が得られるかはロボットと操作者の距離によって異なることを明らかにした.

  • 増田 寛之, 南部 駿太, 布施 陽太郎, 澤井 圭, 本吉 達郎, 高木 昇
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 703-712
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    近年,世界中で自動運転車に関する研究開発が進められているが,乗員が自動運転車の挙動から周囲の認識状態や制御意図を認識することができず不安を抱く要因となっていることが問題視されている.特に,危険が差し迫っていない通常走行時は,システムへの過信を防ぐ為にも乗員にとって煩わしくない情報伝達が必要となる.本研究では,小型の人型ロボットを車載インタフェースとして使用し,ノンバーバルコミュニケーションを通して乗員に認識状態や制御意図を伝達することを提案する.一方,車載環境においてロボットと乗員のコミュニケーションを通して,周辺環境や車両の挙動認識にどのような影響を及ぼすかに関する有効なロボットモーションや動作タイミングが明らかにされていない.本論文は,ロボットのモーションと動作タイミングに焦点を当てて,乗員の環境認識と自動運転車の挙動認識に及ぼす影響を評価する事が目的である.ドライビングシミュレータと実機の車載人型ロボットを用いた実験を通して,ロボットのノンバーバルコミュニケーションと乗員による車両挙動認識について議論を行った.

  • 楊 潔, 菊池 浩史, 菊池 英明
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 713-721
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    大規模言語モデルの登場により,ユーザの対話システムへの対話意欲の課題が解消されつつあるが,まだ十分とはいえない.ユーザの対話意欲を向上させるためには,対話システムによる共感的応答が有効であるとされている.また,繰返し発話には共感を示す機能があり,ユーザの対話意欲の向上に影響を与えると示唆されている.そこで,本研究では共感機能を持つ繰返し発話に着目し,対話ロボットによる繰返し発話の多様性がユーザの対話継続欲求に与える効果を検証する.GPT-4をベースに,繰返し発話を自動生成する雑談音声対話ロボットを構築し,対話実験を行った.その結果,ロボット行動特性不安感が強い被験者ほど,多様性の十分に高い繰返し発話を生成する対話ロボットに対する,被験者の知覚された共感及び対話継続欲求の評価が有意に高いことが確認できた.

  • 布川 智義, 加納 政芳
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 722-730
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,人とロボットが違和感なく共生するにあたって,相補的関係性に焦点を当て,相補的関係性を有するロボットが人の心理に与える影響を調査した.実験では,実験参加者にVR空間上でロボットエージェントと協力して的当てゲームを行ってもらった.実験参加者およびエージェントに対してボールを投げる力である投擲力とボールを制御する力である投擲制御力の2つの能力を用意し,この2つの能力に得意不得意を設計することで相補的関係性を演出した.実験の結果,相補的関係性を有するエージェントは,エージェントの擬人化を促進し,かつエージェントに対して知的な印象を付与しつつ,的当てゲームの楽しさ,エージェントに対する親密度を向上させることが示された.

  • 牧 翔吾, 楓 紘希, 石川 育恵, ジメネス フェリックス, 加納 政芳, 早瀬 光浩, 吉川 大弘
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 731-739
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    近年,ロボット関連技術の進歩により,人の学習を支援する教育支援ロボットの開発が進められている.その中でも,高齢者が運転行動を改善することを促すロボットも存在している.先行研究では,危険運転のビデオを使用してロボットが教えることが,学習システムによる教育よりも効果的であることを示した,しかしながら,運転後にロボットと共に自分の運転を振り返ることの効果は検証されていない.そこで本論文では,ドライブシミュレータを使用して,ドライバーとロボットが共に自分の運転を振り返ることで,ロボットがドライバーに与える印象の効果を検証する.実験結果から,学習システムを用いてドライバーが単独で自身の運転を振り返ることに比べて,ロボットと共に自身の運転を振り返るドライバーは,運転の教示に関して好印象を持つことが示唆された.

ショートノート
  • 西尾 駿一, 澁江 樹, 宮本 友樹, 片上 大輔, 吉原 佑器, 金森 等, 田中 貴紘
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 4 号 p. 740-746
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,実車環境においてドライバを褒める運転支援エージェントの心理評価について報告する.人材派遣会社を通じて募った12人の参加者に対して,運転支援エージェントを搭載した実験車両(トヨタ・カローラスポーツ)を公道において運転し,運転支援エージェントから褒められる体験をしてもらう実験を実施した.体験後の心理評価の結果,運転支援エージェントそのものや,褒めに対する印象評価は全体的に高い値を示した.さらに,印象評価と実験参加者のBig Five性格特性の相関分析を行ったところ,協調性や開放性に関連する特性が高い参加者は運転支援エージェントの褒めに対して良い印象を持つ傾向がみられ,一方で勤勉性や否定的情動性の高い参加者は安全運転に対する意識改善の効果に関する印象評価が低い傾向がみられた.

一般論文
原著論文
  • 糸田 孝太, 渡邊 紀文
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 747-756
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    人の柔軟な協調行動を理解する事は,人と共同活動を行う知的システムを構築する上で重要である.集団行動においては,共有された意図に基づくトップダウンの行動決定過程と,それぞれの行動から推定された意図の調整に基づくボトムアップの過程が行われると考えられる.そのような過程を再現するエージェントモデルの作成のため,我々は人が集団内の動的な意図の調整を行う仕組みを,共有目標に対して協調的な戦略が必要とされる集団行動を抽象化したパターンタスクによる実験をもとに分析する.本研究では,実験の結果をもとにしたエージェントモデルを作成し,モデルシミュレーションを行う事でモデルの妥当性を検証する.

  • 韓 毅弘, Junjie SHAN, 西原 陽子
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 4 号 p. 757-764
    発行日: 2024/11/15
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,社説記事中の意見文を抽出および連結することにより,記事の書き手の価値観を推定する手法を提案する. 社説の書き手は記事を書くときに,最も重要視する1つの価値観を反映させて記事を書くとする. 価値観は記事中の意見文に反映されるため,提案手法では初めに記事から意見文を抽出し,その後記事内の意見文を連結した連結文を作成する. 連結文の価値観を推定するモデルを作成し,推定された連結文の価値観の中で最も頻度が高いものを記事の価値観として推定する. 東日本大震災の原子力発電所に関する毎日新聞の社説記事を用いて評価実験を行った. 実験結果から意見文抽出と連結により,記事の価値観推定の平均精度が87.5%となり,意見文抽出と連結を行わない場合の精度62.5%を上回ることを確認した.

feedback
Top