日本歯周病学会会誌
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32 巻, 4 号
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  • 小野寺 健
    1990 年 32 巻 4 号 p. 971-983
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では実験的歯周炎を誘発し, オキシタラン線維の動態を検索した。成犬ポメラニアン11頭を用い, 実験群は, 歯肉縁下グループを形成し縫合糸で結紮し, 1, 3, 6ヵ月経過させた結紮群と, 結紮6ヵ月後に縫合糸を除去し, 1, 3, 6ヵ月経過させた除去群とした。その結果, 1. 病理組織学的に, 実験群は辺縁性歯周炎の発症, 進行, 治癒過程を示した。形態計測学的に, 1) 上皮・結合組織成分比率は, 歯頸部で, 結紮群では増加, 除去群では減少傾向を示した。2) 血管の数・面積は, ポケット底部で, 結紮群では増加傾向を, 除去群では減少傾向を示した。3) 骨成分比率は, 歯頸部で, 実験群では減少傾向を示した。2. オキシタラン線維は, 病理組織学的に, 歯肉と歯根膜で, 異なる分布・走行を示し, 結紮群では, 対照群および除去群と比して, オキシタラン線維は長く, 数も多かつた。形態計測学的に, オキシタラン線維の長さの平均および総和は, 結紮群では増加傾向を, 除去群では減少傾向を示した。
  • 武内 義晴
    1990 年 32 巻 4 号 p. 984-991
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎罹患者の歯肉溝滲出液 (GCF), 炎症歯肉 (GT), 末梢血 (PB) におけるリンパ球サブセット比について, 二重染色法によりフローサイトメトリーを用いて検索した。GCFはcrevicular washing法で採取した。GTは細切後, 0.1%コラゲナーゼ処理調製し, PBは対照として使用した。FITC標識Leu 4とPE標識Leu 12, FITC標識Leu 3aとPE標識Leu 2aの各モノクローナル抗体によりT細胞/B細胞比 (T/B), ヘルパー・インデューサーT細胞/サプレッサー・サイトトキシックT細胞比 (Th/Ts) を調べた。T/BについてはPB (4.61±1.13), GT (3.45±2.03), GCF (2.39±1.56) の順に低く, 各群の間には有意な差がみられた。一方Th/Tsにおいて, GC F (1.38±0.76) とGT (1.26±0.44) は, PB (1.93±0.67) より有意に低かったがGCF, GT間に差はみられなかっ た。以上のことからGCFにおけるリンパ球サブセットは, PBに対して, GTと異なる部分もあるが, 同様の傾向を示すことから, 歯肉溝局所における炎症性反応を反映しているものと考えられる。
  • 寺島 勝彦
    1990 年 32 巻 4 号 p. 992-1019
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周外科処置後に歯周包帯を適用した33名の患者について, 歯周包帯各部位の微生物相を検索した。手術直前, 包帯交換時, 包帯撤去時及び術後1ヵ月の試料を暗視野顕微鏡, 細菌培養法及び走査型電顕で検索した結果, 次のような成績が得られた。1) 歯周包帯下の創面で術前に比較してStraight rods及びMotile rodsが有意に増加し, Coccoid cellsは有意に減少した。菌種別にはB. intermediusが有意に増加し, S. sanguisIは有意に減少した。2) 歯肉溝のポケット深さは術前に比較して減少し, Coccoid cellsが有意に増加し, Spirochetes, Motile rodsは有意に減少した。3) 包帯内面の走査型電顕像からも球・桿菌及びSpirochetesの存在が明らかになった。以上より, 歯周包帯下は術前に比較して微生物相が嫌気的に変化する事が確認されたが, 歯周包帯の適用により治癒遅延を引き起こした所見は見られなかった。
  • 山田 了, 高 橋 敬人, 松本 恭宜, 山之内 一也, 石川 達也
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1020-1027
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, 組織誘導再生法における保護膜が新付着治癒にいかなる影響を及ぼすかについて検索した。実験には雑種成犬3頭を用いた。実験部位は下顎臼歯部の近心根の頬側歯槽骨を歯槽骨頂より根端側方向へ5mm除去した。その後, 露出した根は十分にスケーリング・ルートプレーニングを行った。実験群に関してはテフロン膜 (Gore-Tex社製) を応用し, 対照群に関しては膜を応用せず歯齦弁を元の位置に戻した。膜の除去は術後4週に行い, 術後5, 6, 7週にそれぞれ屠殺し病理組織学的に検索した。その結果, 実験群では治癒初期に根表面に広い範囲で吸収窩が認められ, その後この吸収窩は再生白亜質によって覆われ, 広い範囲で新付着治癒が認められた。対照群では歯齦縁部からの上皮の侵入による長い上皮性付着の治癒が示された。以上の結果より, GTR法における保護膜は組織誘導する場を確保するものと考えられる。
  • 第1報歯周治療への応用を目的とした半導体レーザー装置の基礎的研究
    西山 俊夫, 佐藤 雅人, 長谷川 明
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1028-1038
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    最大出力4Wの半導体レーザー装置を開発し, この装置を口腔領域, 特に歯周治療に応用する前段階として, その特徴, 応用可能範囲について検索する目的で, 1) 色素選択反射・吸収・透過試験, 2) 水・血液透過試験, 3) 血液凝固試験, 4) 蛋白凝固試験, 5) 出力と凝固・切開能力試験, 6) 色素と凝固・切開能力試験を行った。その結果, 本レーザー装置の色素に対する特徴は, 色紙の黒色で吸収性大, 白色で反射性大, 赤色で透過性大であった。水, 血液に対する特徴は, 水は透過, 血液は吸収, 凝固炭化した。卵白や肉片を用いての実験結果より非接触型では色素に影響を受けたが, 接触型ノンコーティングチップでは, 蛋白凝固はしなかった。接触型セラミックコーティングチップでは, 色素に関係なく凝固, 切開ができた。以上のことより, 温熱療法や, 止血・凝固・切開を目的とした歯周治療に応用の可能性が十分あることが示唆された。
  • 高田 耕平, 西村 和晃, 山田 実, 山岡 昭
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1039-1047
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    著者らは前回, 露出セメント質の深層部は保存可能かどうか形態的な面から検索を加えるため, ヒト歯周疾患歯セメント質をSEM, TEMを用いて観察した。その結果, ポケット対応セメント質の深層部は何ら形態的変化がみられず, 露出セメント質の完全除去は必ずしも必要でないことを示した。今回は, 深層セメント質の形態的変化を, より客観的に分析するため, 50本のヒト歯周疾患歯を, アタッチメントロスが4mm未満の群 (A群), 4~7mmの群 (B群), 8mm以上の群 (C群) の3つの群に分け, 各群ごとに, セメント質割断面ならびに根表面をSEMにて観察, 割断面の形態的変化を数量化し, 統計処理を行った。その結果, A群試料の露出セメント質においては, その表層部, 深層部ともに, intactなセメント質と比べて統計学的に有意な形態的差異は認められなかった。B群ならびにC群の露出セメント質においては, 表層部に種々の形態的変化が見られたものの, 深層セメント質にはほとんど変化はみられず, 統計的にも有意の形態的差異はみられなかった。このことから, 露出セメント質深層部の健全性がより確実となった。
  • 植毛本数と歯ブラシの毛全体の硬さ (座屈強度) の異なるナイロン毛歯ブラシについて
    鈴木 丈一郎, 伊藤 嘉彦, 関 規子, 夏目 幾人, 福島 將人, 渡辺 孝章, 新井 高, 中村 治郎
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1048-1058
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    スクラッビング法に適した歯ブラシについて, 第6報として植毛本数と硬さの違いがプラーク除去効果とブラッシング圧に与える影響について比較検討した。
    今回は, 植毛本数 (毛の直径) (0.20mm, 0.25mm, 0.30mm) と毛の硬さ (座屈強度) (7kg, 10kg, 12kg) の異なる9種類の歯ブラシを試作した。被験者9名にスクラッビング法によるブラッシングを行わせ, 前後のプラークのスコアーを測定し, プラーク除去率を算出した。ブラッシング圧は, 渡辺のブラッシング圧測定装置を用いて測定した。
    その結果, プラーク除去率は3種類の植毛本数および3種類の毛の硬さの間には有意差は認められなかった。
    ブラッシング圧は, 毛の硬さ (座屈強度) 別に7kg (平均296.3g/cm2), 10kg (411.99/cm2), 12kg (405.7g/ cm2) となり, 3種類の毛の硬さの間に有意差 (P<0.01) を認めたが, 3種類の植毛本数の間には有意差は認められなかった。
  • 上田 雅俊, 寺西 義浩, 中垣 直毅, 山岡 昭, 林本 忠浩, 岡西 昭典, 小西 浩二, 井上 純一, 藤田 康一, 尾上 孝利, 福 ...
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1059-1067
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    0.02%ポビドンヨード水溶液を併用した超音波スケーリングの2回操作の有効性について, 歯周ポケット内微生物の動態から検討した結果, 位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数および総微生物に占める運動性微生物の構成率は, 各実験群ともに, instrumentation後1週日に急激な低下を示し, その後は, 所々でやや低下およびやや後戻り傾向を示した。ポビドンヨード併用超音波スケーリング群が他の実験群 (超音波スケーリング単独群およびルートプレーニング群) に比較して, 各実験期間ともに, 総微生物数および運動性微生物の構成率が低い傾向を認めた。また, 培養による歯周ポケット内微生物の観察における総菌数については, ポビドンヨード併用超音波スケーリング群では経週的に低下傾向を示し, 他の2群では2週日に低下を示したが, その後は, やや後戻り傾向が認められた。黒色色素産生性Bacteroides (BPB) 数および総菌数に占めるBPB数の構成率については, ポビドンヨード併用超音波スケーリング群では2週日に低下を示し, その後は, やや後戻り傾向を認めたが, 他の2群では経週的な変化はわずかであった。
  • 米田 栄吉, 鈴木 敬子, 佐伯 訓子, 堀内 博
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1068-1076
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    女子中高生を対象にCPITN (Community Periodontal Index of Treatment Needs) を用いて歯周疾患を6年間にわたり調査した。対象歯は上顎左右第一大臼歯, 上顎右・下顎左中切歯, 下顎左右第一大臼歯の6本である。中学1年生の健常者は10%程度であり, 約90%は歯周疾患を有していた。CPITN値は高学年になるにつれて増大し, 6年間連続受診者95名も同様の傾向であり, 特に歯石の保有率が増加した。部位別では左右差はなく, 前歯部・臼歯部とも下顎の方が上顎より疾患の程度が有意に高かった。上顎では臼歯部は前歯部より健常の割合が少なく, 歯石は多かった。下顎臼歯部は前歯部よりポケットの形成が有意に多かった。悪化傾向が認められる群は初年度は軽度であり, 経年的に軽度・中度・重度群に分かれた。一方改善群は当初重度または中度が多かった。6年間で急激な悪化を示したのは全体の0.4%であり, それらは若年性歯周炎が疑われた。
  • 佐々木 俊明, 米田 栄吉, 堀内 博
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1077-1085
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    フェニトインを服用している重症心身障害者19名について服用期間, 累積服用量, 服用量, 血漿中のフェニトイン濃度, PD, GIおよび歯肉増殖度の調査を行うとともに増殖の程度を部位別に検討した。またフェニトイン服用者7名およびフェニトイン非服用者3名に対し口腔清掃を行い, 歯肉増殖症に対する口腔清掃効果の検討を行った。
    その結果, 服用期間, 累積服用量, 服用量, および血漿中のフェニトイン濃度と歯肉増殖度との間には有意な関係は認められなかった。歯肉増殖度は前歯部, 小臼歯部, 大臼歯部になるに従い大きな値を示し, 上顎では大臼歯部は前歯部に対し危険率1%で有意に大きな値を示した。また口腔清掃を行った結果, GIは減少したが, PDの有意な減少は認められず, 歯肉の炎症の消退にもかかわらず, 線維性増殖が残存したままであった。
  • 窪田 道男, 矢沢 裕, 太田 美樹代, 飯田 正人
    1990 年 32 巻 4 号 p. 1086-1092
    発行日: 1990/12/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    原発性免疫不全症候群での歯周組織を含む口腔内所見や顎顔面形態について詳細な報告は見られないことから, 今回そのことについての検討を行った。患者は虎ノ門病院内科で分類不能型の原発性免疫不全症候群と診断され, 現在その治療継続と歯周疾患についての相談のために奥羽大学附属病院を紹介された。患者は, 典型的な低γ-グロブリン血症であり, 経静脈的にγ-グロブリン, 経口的に抗生剤の投与を受け感染予防の治療がなされている。
    口腔内所見としては, 歯肉縁上歯石を伴う歯肉炎, 口腔粘膜のアフタおよび舌のびらんが認められた。重度な骨吸収を伴う歯周炎は, 臨床的に観察されなかった。細菌学的検査では, 歯肉溝や唾液中から黒色色素産生菌やフソバクテリウムが検出された。
    歯周初期治療として, 口腔内清掃指導, スケーリングやリステリン®による洗口の結果, 歯肉炎は消退したが, 舌のびらんは存在したままであった。頭部X線規格写真からは, 生理的な成長や顎顔面形態に異常は見られなかった。
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