環境科学会誌
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18 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 荒木 志奈
    2005 年 18 巻 1 号 p. 5-16
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本論文では,ロジット・モデルを用いて直接投資先選択確率式の推定を行い,我が国製造業企業の直接投資先決定要因を明らかにする。その際に,化学物質事前審査制度という形で企業に課される環境規制が投資誘因に及ぼす影響に分析の焦点を当てる。分析は1980年代における工業化学品製造に携わる日本企業の対外直接投資に限定する。直接投資先国の選択結果を示すデータには財務省の対外直接投資届出実績,および東洋経済新報社『海外進出企業総覧』を利用する。各国の投資環境を表す変数として,化学物質事前審査制度の有無に加え,労働コスト,市場規模,信用度等を取り上げる。結果として,化学物質事前審査制度の実施は投資先選択にマイナスの効果をもたらすことが示唆された。また,労働コストの低下,市場規模の大きさ,信用度,同一産業企業の集積,および過去の投資における選択実績は投資を促進させる要因であることが確認された。
  • 藤見 俊夫, 小林 愼太郎
    2005 年 18 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本論文では,自然環境を大きく変容させる公共事業を円滑に推進するための住民と行政とのコミュニケーションを環境コミュニケーションと呼ぶ。そこでは,計画評価を歪めている誤った計画認識を解消する情報が住民に提供されるべきである。そのため,沖縄市の泡瀬地区埋立事業を対象事例とし,それらを特定する手法の開発を目的とした。まず,アンケート調査によって住民が計画をどのように認識しているかを明らかにした。つぎに,その計画認識が計画評価を規定するモデルを構築した。このとき,計画認識から直接的に計画を評価する「直接モデル」と,計画認識から計画の結果を予想し,その予想結果に基づいて計画を評価する「間接モデル」のどちらが妥当であるかが問題となる。これについて,J検定を拡張したブートストラップGMMJ検定を提案して分析を行った結果,直接モデルのほうが妥当であることが明らかになった。最後に,直接モデルを用いて計画評価を歪めている誤った計画認識を特定した。それらは,費用負担,埋立地の用途,ミチゲーション策に関する誤解が多かった。
  • 荒川 正幹, 船津 公人, 後藤 尚弘
    2005 年 18 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,地域社会における廃棄物処理の最適化を目指したコンピュータソフトウェアとして,ゼロエミッション・シミュレータの開発を行った。本システムでは,シミュレータに表示された地図上に仮想的な廃棄物処理施設と廃棄物発生の分布を設定し,各メッシュにおける廃棄物輸送コストの計算を行うことが可能である。廃棄物輸送コストは各メッシュから処理施設までの距離と廃棄物量との積として定義される。廃棄物の発生分布は統計資料より推計する。距離の算出については,単純な直線距離による近似ではなく,実際の道路地図を用いたより正確な近似計算を行うことにより,より現実に近いシミュレーションを実現した。本システムでは処理施設の設置位置や処理能力,設置個数などを変化させ,それぞれの総輸送コストを計算し,比較,検討することにより,地域社会における廃棄物輸送コストの最小化を実現することが可能である。本論文では,このシミュレータの機能,使用方法および,愛知県における適用例について報告する。
  • 西川 祥子
    2005 年 18 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     近年,環境学の研究が活発化している。だが,研究状況全体からみて,未だ,環境学の学術的な性質(専門の研究領域として環境学を特徴づける性質)があいまいなままに研究が続けられている。このことから,学術用語「環境学」の意味を「環境や環境問題に関する総合的・体系的な科学・学問・研究」とする著書・論文等を取り上げ,「目的」,「研究対象」,「研究方法」,「その他」から分析し,環境学の学術的性質として明らかにすることにした。 その結果,環境学の(1)「目的」は,環境問題を解決することや環境問題を未然に防止することを含めて「よりよい環境を実現する理論を提示すること」,(2)「研究対象」は,「人間とその環境(相互関連性を含む)」,(3)「研究方法」は,「環境や環境問題に関する要素を分析し,関連づけ・総合・評価すること」,(4)「その他」の性質は,「要素還元主義の見直し」,「環境に関する知識,方法,学問の体系化」,「人文・社会・自然科学の融合」,「個人で学際研究をすること」,にあることがわかった。
  • 谷本 能文, 小川 聖嗣, 藤谷 聖美, 藤原 好恒, 泉 俊輔, 平田 敏文
    2005 年 18 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     大腸菌の運動に対する勾配強磁場の効果(最大8T,400T2m-1)を検討した。培地を詰めた細いガラス管の一端に大腸菌を乗せ勾配磁場中に置き移動の速さを測定した。磁場のないときに比べて,高磁場方向へ移動するときは半分になり,低磁場方向へ移動するときは約2倍になった。これらの効果は,磁気力により説明される。すなわち反磁性の大腸菌は磁場により反発力を受ける。高磁場方向に移動するときは反発力に逆らい進むため移動の速さは遅くなる。一方,低磁場方向に移動する場合は,反発力と同じ方向に進むため移動の速さが速くなったものと説明された。
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