特殊教育学研究
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30 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 柘植 雅義, 武蔵 博文, 小林 重雄
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    養護学校などの精神遅滞児教育において、新しい観点からの授業分析システムを開発することを目的とした。それは、まず、教師と児童とのやり取りから連続する3つの行動の組(triad)を抽出する。そして、このtriadから3次元行動推移行列(TRIAD TRANSITION MATRIX)を作成し、それを3種類の測度(頻度,情報量,位相)で分析することによって、授業における教師と児童との相互作用を明らかにする。また、このシステム用いてこれまでほとんどなされなかったある程度長期にわたる追跡をすることにより、授業における教師と児童との相互作用の変容を明らかにしようとする意図がある。そして、開発した分析システムの検証として、実際の授業のtriad分析を、dyad分析(2つの行動の組を抽出する)やtetrad分析(4つの行動の組を抽出する)と比較検討した結果、triad分析の有用性が示された。
  • 渡辺 明広
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    障害の重い人達の労働権保障の場として、また学校卒業後の進路先としての精神薄弱者授産施設の利用者が近年、急増している。この授産施設の労働とその指導についての組織化の現状を、教育的対応の視点から明らかにすることを目的に質問紙法による調査を行った(回収率は入所70.5%,通所71.6%)。調査内容は、中心的な作業種目の作業内容や作業の形態とその指導等についてである。その結果、作業種目は企業からの下請け作業が多いが、運営・指導の方針から導入しているのは入所46%、通所33%の種目に留まっている。作業内容については授産施設における一般的特徴が明らかになったが、施設形態(入所,通所)、受注形態(下請け作業,自主生産作業)による相違点も多い。また、作業の形態とその指導については施設形態に規定されることが多い。この結果は利用者の重度化、ニーズの多様化が指摘されている中で、その教育的対応のあり方に示唆するものと考える。
  • 野呂 文行, 山本 淳一, 加藤 哲文
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    無発語自閉症児1名に対して、書字による要求行動の前提条件として、筆記用具を要求するためのサインの形成を行った。その結果、対象児の要求行動を含む行動連鎖場面において、筆記用具を要求するためにサインが使用された。また、先行訓練において反応型が形成されていない非教示サインや、音声モードも行動連鎖場面において使用された。さらに対象児は、3種類のモード(サイン・書字・音声)に関して、要求場面において等価な反応として使い分けが可能になった。これらの結果は、対象児によって示された反応が、特定の反応型に限定されない、要求の機能をもつ反応クラスとして働いていたことを示していると考えられた。加えて、実験条件ごとに示されたコミュニケーション・モードの選択を検討したところ、「先行訓練における強化経験」と「要求アイテムが提示されるまでに必要な反応数と時間」の2つの変数によってその選択が制御されていたことが示された。
  • 戸崎 敬子
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    大阪市立児童相談所と付設学園の成立から廃止の過程を明らかにし、それらの活動の歴史的意義について考察した。相談所は大阪市の児童死亡率を減少させ児童の健康な成長を図ること、および能力の効率的な管理と配置等の実現を目指し、救済事業募金をもとに三田谷啓の立案で建設された。学園は、大阪市の精神薄弱児調査や児童相談所の活動の中で問題化してきた精神薄弱児教育の必要性への対応として併設された。学園では40名程度の精神薄弱児に対して、生活体験学習と感覚訓練を重視した教育が行われた。しかし相談所は、その目的、必要性等について市幹部や市民等の理解が得られなかったことなどにより短命で廃止された。相談所廃止にあたって、学園を拡張し精神薄弱児の市立学校を建設する計画があったが、教育部による公立小学校の特別学級設置推進の動きのなかで実現しなかった。学園の実践は公立小学校の特別学級に継承された。
  • 佐藤 正恵, 中谷 恭子
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    生後1〜6ヵ月の健常児計12名(各月齢7名)とこれとほぼ同月齢のダウン症児1名およびハイリスク児5名の、大人(母親)と事物(ガラガラ)に対する「おはしゃぎ反応」の発現、発達を検討した。その結果、以下のことが判明した。1)「おはしゃぎ反応」は、まず大人のコミュニケーション作用への応答として生後1ヵ月頃初出し、それより約半月遅れてコミュニケーション作用を行わない大人にも生起するようになる。他方、事物では、3ヵ月頃生起するようになる。2)「おはしゃぎ反応」の現われは、人と事物で明確に異なる。3)活気に満ちた活動状態としてのより強い能動性が向けられる対象は、6ヵ月頃に人から事物へと変化する。4)「おはしゃぎ反応」に問題があったハイリスク児では、1、2歳代で発達の遅れが確認され、「おはしゃぎ反応」は障害の有無を診断する時の指標となりうることが示唆される。
  • 谷 晋二
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、「大きい」あるいは「小さい」という音声弁別刺激にしたがって、対応するオモチャを選択し、さらに、訓練で用いられなかったオモチャに対しても正しく反応できるようになることが目標行動とされた。3名の対象児のうち1名は分化強化手続きで訓練刺激に対して正しく反応できるようになり、さらに訓練で用いられなかった刺激に対して正しく反応できるようになった。その他の2名の対象児に対して、修正手続きを加えた訓練を行ったところ2名のうち1名は、音声弁別刺激に対して正しい選択反応を行えるようになり、訓練で用いられなかった刺激に対しても正しく反応できた。残る1名の対象児に対しては、訓練者の音声弁別刺激に対して所定の動作反応をさせた後で、選択反応を行わせた。その結果、訓練で、用いられていない刺激に対しても正しく反応できるようになった。これらの結果に関して、概念形成の準備性、音声刺激の機能化の問題、大小概念獲得の基礎スキルについて論じた。
  • 片岡 義信, 鶴巻 正子
    原稿種別: 本文
    1992 年 30 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 1992/06/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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