1920年Spence
1)の報告以来, 高令者の糖忍容力の低下については少なくない報告がある
2)3)4)7).しかしその原因についての検討はまだ十分とはいえないように思われる.それは一つにはヒトにせよ動物にせよ個体差が強く, その時間的な年令と, 個体, 細胞の実際の加令の度とは必ずしも平行していないこと, またヒトの場合には, その上に極めて多種の遺伝因子, 環境因子が加わつて, それに対する反応が極めて複雑であることなどが, 問題を混乱させている主要な因子と考えられる.動物実験の場合には, この後半の理由は比較的容易に一定化出来る.もちろんネズミとヒトの糖代謝が完全に同一であるとはいえないが, 条件をきめ易いという動物実験の利点を活用して得た2~3の新しい知見をここに報告したい.
さて糖忍容力の異常を来たす原因は解糖に関係する全身すべての部分にあると思われる.しかし時間の制限もあるので今回は, 「膵ラ氏島」そのもの, それも主としてβ細胞内のインシュリンの動きに限り, また手技も出来るだけ新しいものを用いて, 今までに明らかにされていない方面を追求しようとつとめた.
抄録全体を表示