発熱, 咽頭痛および前頸部腫脹を主訴として入院した43才の女子において甲状腺腫, 嗄声, 顔面浮腫, 皮膚乾燥およびアキレス腱反射遅延などの甲状腺機能低下症状を認めた.甲状腺機能検査成績はすべて低下しており, 血清TSHは高値であつた.抗甲状腺抗体は上昇しており, 甲状腺試験切除によつて慢性甲状腺炎の像をみとめた.本例にプレドニゾロン30mgの連日42日間, ついで隔日投与を30日間行なつたところ, 炎症症状の消褪とともに, 血清T
3およびT
4が増加し, 血清TSHは抑制された.それと同時に甲状腺機能低下症状も消失した.ステロイド剤投与によつて, 以上のような経過をとつた報告例はなく, 臨床的にまた病態生理学的に非常に興味ある症例と考えられる.
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