気管支学
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45 巻, 6 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 村田 大樹, 大野 修平, 貞松 宏典, 梅口 仁美, 久保田 未央, 岩永 健太郎
    2023 年 45 巻 6 号 p. 374-378
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.近年,クライオ生検が普及しているが,末梢肺病変に関する報告が多く,中枢気道病変に関する国内の報告は少ない.目的.中枢気道病変に対するクライオ生検の有効性と安全性について検討を行う.方法.当館において2019年9月から2022年12月の間に中枢気道病変に対してクライオ生検を施行した11例を後方視的に検討した.有効性はクライオ生検による病理学的な診断率を評価した.安全性は処置中の重篤な出血の有無と処置後の呼吸状態悪化の有無の2点を評価した.結果.病理学的な診断率は100%であった.出血は11例中10例(90.9%)で認めたが,全例制御可能であった.クライオ生検後に呼吸状態が悪化した症例はなかった.また一部の症例では気道狭窄を解除することができ,呼吸器症状の改善を得ることができた.結論.中枢気道病変に対するクライオ生検は病理学的な診断において有効かつ安全に施行可能であった.本邦における中枢気道病変に対するクライオ生検について,今後さらなる報告の集積が期待される.

  • 石井 聡, 橋本 理生, 泉 信有, 森田 智枝, 鈴木 学, 放生 雅章
    2023 年 45 巻 6 号 p. 379-384
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.経気管支クライオ生検は多くの学会・論文報告がされているが今までに手技難易度に関しての報告は少ない.対象と方法.2019年8月1日から2023年3月9日までに経気管支クライオ生検を施行し,術者を経験した修練医19人に対して,検査終了後アンケートを行い,手技の難易度を評価した.アンケートの結果を点数化し,平均点による順位付けを行った.結果.19人の修練医が術者を経験し手技を完遂した.男性13名・女性6名,医師になってからの年数中央値5年(3~7年),検査時間中央値は53分(40~90分)であった.アンケーㇳ9項目に関して手技難易度の1番高い項目はクライオプローブでの生検,2番目は透視画像を使用してどの部位を生検するかであった.修練医の診断率は84.2%であった.これは気管支鏡指導医・専門医の診断率と比べて有意差は認めなかった.結論.今回のアンケート調査では1番難易度が高いのはクライオプローブでの生検であり,2番目に難易度が高いのは透視画像を使用した生検部位の選択であった.

症例
  • 林 大樹, 中川 龍星, 伊藤 礼, 中嶋 真之, 舩山 康則, 鈴木 恵子, 関 皓生
    2023 年 45 巻 6 号 p. 385-390
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.原発性小腸癌は稀な悪性腫瘍であり,進行が速く転移を有することも多いため治療困難な症例が多い.本論文は原発性小腸癌の肺転移を気管支鏡で組織学的に診断し得た初めての報告である.症例.66歳女性,腸閉塞で入院した際に左肺門部にspicula,pleural indentationを伴う腫瘤影と右副腎腫瘤を認め,原発性肺癌が疑われた.しかし腸閉塞解除のために施行した小腸切除術により原発性小腸癌と判明した.気管支鏡検査では左B6は突出する腫瘤により完全に閉塞しており,生検により小腸と同様の病理所見が認められたことから,肺病変は原発性小腸癌の肺転移であると診断した.化学療法を施行したが奏効せず4か月後に死亡した.結語.転移性肺腫瘍の内視鏡所見は原発巣や組織像によって多彩な所見を呈する可能性が考えられた.また,画像所見が原発性肺癌と矛盾しなくても,他に原発巣が存在する可能性に留意して鑑別を行うべきである.

  • 渡邊 安祐美, 中川 隆行, 野中 水, 兵頭 健太郎, 金澤 潤, 林原 賢治, 石井 幸雄, 大石 修司, 齋藤 武文, 南 優子
    2023 年 45 巻 6 号 p. 391-397
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.外傷性肺囊胞は鈍的外傷による気道内圧の上昇を契機に発生する囊胞性病変であり,交通外傷によるものが多く知られている.多くが自然経過で縮小するものの,確実な治療法が確立されておらず,拡大傾向の場合の対処は明らかでない.症例.66歳女性,特発性肺線維症と診断し,副腎皮質ホルモンと免疫抑制剤を服用したにも関わらず,急性増悪を来たし入院となった.急性増悪の原因診断のため気管支鏡下に気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)を施行した.BAL後に気胸が発生し,その後,囊胞が出現したため,BALによる外傷性肺囊胞が疑われた.囊胞が拡大し,それに伴い呼吸困難が悪化したため,チェックバルブが増悪の原因と考え,責任気管支にendobronchial Watanabe spigot:EWSを用いた気管支充填術を施行し,一過性ではあるものの囊胞の縮小が認められ,呼吸困難が軽快した.結論.本結果は,進行性に拡大する肺囊胞に対して外科的切除が不可能な場合,気管支充填術が奏効する可能性を示唆するものである.責任気管支の特定と充填材料の特性について,さらなる研究が必要である.

  • 尾下 豪人, 井上 亜沙美, 佐野 由佳, 熊田 高志, 吉岡 宏治, 池上 靖彦, 宮原 栄治, 山岡 直樹
    2023 年 45 巻 6 号 p. 398-402
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.リポイド肺炎は肺内に脂肪貪食マクロファージを認める肺炎であり,内因性の原因には腫瘍による気道閉塞や胃食道逆流症などが知られている.症例.ALK陽性肺腺癌の術後再発に対してアレクチニブを投与されていた80歳の男性.湿性咳嗽があり,右肺S2にすりガラス影を指摘された.薬剤性肺炎や誤嚥性肺炎を疑われ,アレクチニブ休薬,抗菌薬投与などで対応されたが,改善しなかった.気管支鏡検査では消化液が右肺B2に垂れ込んでいるのを観察し,気管支肺胞洗浄液中には脂肪貪食マクロファージを認めた.胃食道逆流によるリポイド肺炎と診断し,ステロイドを投与したところ陰影は消退した.食後の臥床禁止,リクライニング位での睡眠を指導し,再燃を認めなかった.結論.気管支鏡検査中に病変部への消化液の垂れ込みを観察できたことが,リポイド肺炎の原因特定に寄与した.気管支鏡検査では気道内の動的現象に注意を払うべきである.

  • 鈴木 淳也, 河内 利賢, 朝倉 充司, 榊原 昌, 四万村 三恵, 清水 哲男, 權 寧博, 増田 しのぶ, 櫻井 裕幸
    2023 年 45 巻 6 号 p. 403-407
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.呼吸器外科手術後,縫合材料が気管支内腔に迷入した症例は稀である.症例.67歳,女性.右肺癌に対し胸腔鏡補助下S6区域切除術を施行.手術時に,B6aとB6b+cが別個で分岐しており,ステープラーで一括にして切離した.B6aの断端からエアリークを認めたためテフロン製プレジェットを用いて閉鎖したが,術後は合併症なく経過した.術後1年3か月経過時,徐々に増悪する咳嗽と呼吸困難が生じ,来院した.胸部エックス線検査で右下肺野に浸潤影を認め,肺炎を疑い胸部CT検査を施行した.CT上,右中間気管支幹に高吸収の構造物を認め,右中間幹の閉塞を生じていた.気管支異物を疑い気管支鏡を施行したところ,右中間幹に白色の異物を認め,鉗子で容易に摘出できた.摘出物は手術時の縫合糸とプレジェットであり,摘出後に症状は改善した.結語.我々は縫合糸とテフロン製プレジェットが気管支内腔に迷入した原因として,肉芽形成によって,縫合糸とプレジェットが気管支内腔へ排出されたと推測した.

  • 渡邊 理愛, 辻 泰佑, 山本 航平, 田中 駿也, 合田 志穂, 明石 京子, 上島 康生, 浅井 由美, 浦田 洋二, 平岡 範也
    2023 年 45 巻 6 号 p. 408-412
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.低悪性度子宮内膜間質肉腫(low-grade endometrial stromal sarcoma:LG-ESS)は稀な子宮腫瘍であり,肺への転移が報告されている.今回我々は,両肺に多発囊胞を認め診断に苦慮したLG-ESS肺転移の1例を経験したので報告する.症例.45歳女性.LG-ESSに対して根治切除術後.補助療法としてホルモン治療を施行中,胸部CTで両肺に薄壁囊胞が多数出現した.リンパ脈管筋腫症などびまん性囊胞性肺疾患の可能性を考えた.病理学的診断を得るため気管支鏡検査を施行したが診断は確定せず,胸腔鏡手術による囊胞切除を行いLG-ESS肺転移の診断が得られた.肺転移は増悪傾向であったが,その後LG-ESSに対する全身治療により肺転移の縮小が得られた.結論.LG-ESS患者に生じる囊胞性肺病変は転移性腫瘍の可能性を考慮し,確実な検査及び診断を行う事が重要である.

  • 福島 光基, 森尾 瞭介, 泊 慎也, 須山 尚史, 泉川 欣一, 泉川 卓也, 泉川 公一, 迎 寛
    2023 年 45 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.気道異物の症例は遷延する咳嗽など慢性の症状で外来を受診する症例が多い.今回,2年前に誤嚥した魚骨を気管支鏡下にて除去し得た1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.症例.症例は71歳女性,主訴は慢性咳嗽.20XX年10月に胸部CTで左上葉無気肺および左上葉支に内部に線状の高吸収域を認める腫瘤を認めた.結果.気管支鏡検査で左上葉支に魚骨を認めた.気道出血のリスクを考慮し,呼吸器外科バックアップのある高次医療機関へ紹介し,気管支鏡下に魚骨の摘出を施行した.処置中に出血を認めたため,止血しつつ把持鉗子で魚骨を抜去した.結論.慢性咳嗽を主訴に来院した症例では,誤嚥の詳細な問診とCTを主とする早期の画像検査が重要である.また,魚骨を抜去する際は気道出血を想定し,術前の検査と準備が重要である.

  • 石井 達也, 瓜生 拓夢, 神宮 達也, 堂阪 啓起, 仲田 庄志
    2023 年 45 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.肺原発の悪性リンパ腫は,肺原発悪性腫瘍の0.5~1%,そのうちB細胞リンパ腫が70~80%を占めるため,T細胞リンパ腫は稀である.症例.80歳代女性が3週間続く呼吸困難を主訴に近医受診,胸部単純X線写真にて左上肺野に浸潤影があり,精査加療目的に当院紹介受診した.胸腹部造影CTにて左上葉にリンパ節と一塊になった腫瘤を認め,気管分岐下リンパ節,対側肺門部リンパ節,さらに膵周囲リンパ節の腫大があり,確定診断目的に気管支鏡検査を施行した.内腔所見として左上葉支の圧排性狭窄,上皮下血管の拡張がみられ,左上支で経気管支生検を施行,病理組織学的所見として間質に多数の小型リンパ球浸潤が認められ,免疫染色にてCD3(+),CD4(+),CD8(-),CD20(-)であり,T細胞リンパ腫と診断した.ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type-1:HTLV-1)抗体陽性であり成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)を疑ったが,生検組織のHTLV-1プロウイルスDNAは陰性であった.他院の血液内科に紹介,受診時に左胸水を認め胸水からATL細胞が検出されたためATLリンパ腫型と診断した.シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,およびプレドニゾロン(CHOP)療法が奏効した.結論.ATLのリンパ腫型は予後不良であり,気管支鏡検査にて迅速に診断の足掛かりを得て,早急な治療が可能であった.

  • 白羽 慶祐, 瀧川 雄貴, 佐藤 賢, 山下 真弘, 井上 智敬, 中村 愛理, 藤原 美穂, 藤原 慶一, 神農 陽子, 柴山 卓夫
    2023 年 45 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.経食道的気管支鏡下穿刺吸引生検法(endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine-needle aspiration:EUS-B-FNA)は超音波気管支鏡を用いて経食道的に縦隔病変を生検する手法である.症例.84歳女性.70歳時の2009年10月に顎下腺腫瘍に対して当院耳鼻咽喉科で右顎下腺摘出術を施行され,多形腺腫と診断された.2019年7月の検診で多発肺結節影を認め,その局在から気管支鏡検査が困難のためCTガイド下生検や外科的生検を勧めたが,治療希望なく通院終了となっていた.2023年3月に多発肺結節影の増大及び頸椎C6に転移性骨腫瘍を認め,緩和的放射線照射目的に当院に再紹介となった.Air bronchus sign陽性の左上葉B1+2の中枢側腫瘤影に対してendobronchial ultrasonography with a guide sheath法で病変にadjacent toであることを確認し生検を施行したが,生検捺印のrapid on-site cytologic evaluationは陰性であった.食道に接した22 mm大の肺野病変から21 G針を用いてEUS-B-FNAを行った.EUS-B-FNAの組織検体が2009年に切除した多形腺腫の病理所見と一致し肺転移と診断した.結論.EUS-B-FNAが診断に有用であった転移性多形腺腫の1例を経験したので報告した.

  • 阪本 仁, 五明田 匡, 磯和 理貴, 小阪 真二
    2023 年 45 巻 6 号 p. 431-435
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/09
    ジャーナル フリー

    背景.2 cm以下の早期肺癌に対する区域切除のエビデンスが集積されてきた.症例.76歳,男性.右下葉の16 mmのすりガラス陰影に対して,CTガイド下肺生検にて肺腺癌の診断を得た.術前のSYNAPSE VINCENT™によるCT画像解析では陰影はB8aから分岐する分岐異常気管支がS領域に存在し,SにはA9+10から分岐があることが判明した.Virtual assisted lung mapping(VAL-MAP)を行い,すりガラス陰影の位置及び切除ラインの設定を行った.手術はA6とA9+10から分岐した2本のA,B6とB8aから分岐した分岐異常気管支を切離して,S6+S区域切除を行った.病理病期はpT1miN0M0,IA1期であった.結語.近年,肺癌に対する区域切除の必要性が増加しており,本症例のようにSに存在する肺癌に対する区域切除を行う機会があると考える.そのため,術前の気管支及び肺血管の慎重な読影がより必要になってきている.

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