気管支学
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45 巻, 2 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 西根 広樹, 平本 雄彦, 松澤 慎, 木田 博隆, 半田 寛, 丸田 勝弘, 井上 健男, 宮澤 輝臣, 峯下 昌道
    2023 年 45 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.高度の気道狭窄では気流制限による呼吸困難や,換気・血流不均衡による呼吸不全を来す.我々は以前から呼吸器インターベンションにおける局所肺機能の評価の重要性を報告してきた.2020年1月にマルチ呼吸機能測定装置(FB-8010)が医療機器として認証された.目的.気道狭窄症例に対し,気管支鏡下にマルチ呼吸機能測定装置で気流制限と換気・血流不均衡を評価した.方法.ダブルルーメンカテーテルで2か所の気道内圧を同時に測定し,2点間の圧較差を計算した.さらに2か所の気道内圧から圧圧曲線を描出し,吸気と呼気のピークを結んだ線と基線でできる角度を計測した.また,シングルルーメンカテーテルで目標部位での酸素分圧,二酸化炭素分圧を測定した.結果.気道狭窄部位で圧較差が生じ,圧圧曲線の角度は小さくなった.ステント留置で気流制限が解除されると圧較差は消失し,圧圧曲線の角度は45度に近づいた.また気管支が高度に狭窄している側では,健側と比べて酸素分圧の波形の基線が低く推移したが,二酸化炭素分圧は左右の気管支で大きな差はみられなかった.治療で気道が開存すると,酸素分圧の波形の基線は左右差がほぼ消失した.結論.マルチ呼吸機能測定装置は,気管支鏡下に局所肺機能が評価できる新しい医療機器である.気道内圧と酸素分圧,二酸化炭素分圧の測定で病態の把握,治療の効果判定をリアルタイムに評価できた.

  • 庄司 哲明, 品川 尚文, 高島 雄太, 菊池 創, 池澤 靖元, 高階 太一, 今野 哲
    2023 年 45 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.抗血栓薬内服患者において,休薬して経気管支生検を行った場合の安全性は明らかではない.今回,休薬して経気管支生検を行った場合の有害事象発生率を内服していない患者と比較した.対象と方法.2010年8月から2015年7月までに北海道大学病院内科Iで施行したガイドシース併用気管支腔内超音波断層法下生検,超音波気管支鏡ガイド下針生検,経気管支肺生検,直視下生検について,有害事象と抗血小板薬のみ内服,抗凝固薬のみ内服,両方内服との関連を後ろ向きに検討した.年齢,性別などの因子も含め単変量解析,多変量解析を行った.内服患者では日本呼吸器内視鏡学会手引き書Ver. 2.0およびVer. 3.0に従って休薬した.結果.経気管支生検の施行件数は1320件で,抗血栓薬なし1145件,抗血小板薬のみ131件,抗凝固薬のみ24件,両方20件だった.有害事象発生率は全体7.0%,抗血栓薬なし7.2%,抗血小板薬のみ4.6%,抗凝固薬のみ0.0%,両方15.0%だった.単変量解析,多変量解析いずれも内服なし群と各内服群に有意差はなかった(多変量解析,抗血小板薬のみ:p=0.463,抗凝固薬のみ:p=0.988,両方:p=0.249).結論.抗血小板薬・抗凝固薬を内服している患者でも適切な休薬期間を設けることで有害事象発生が有意に増加することなく経気管支生検を施行できる可能性が示された.

症例
  • Tsukie Kin Tsukuda, Tetsuya Kubota, Shintaro Miyamoto, Masashi Eda, Ak ...
    2023 年 45 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    A 22-year-old asymptomatic woman was referred to our hospital after chest radiography showed a mass shadow in the right upper lung field. Computed tomography showed a 3-cm mass shadow in the upper lobe of the right lung. Initially, malignancy was suspected, but a thorough examination of reconstructed images, ventilation/perfusion scintigraphy, and bronchoscopy showed congenital bronchial atresia. She has been followed up without any interventions for nine years, with no serious complications. There are no clear guidelines for diagnosing or treating asymptomatic bronchial atresia, including indications for surgery, which are controversial.

  • 大内 政嗣, 井上 修平, 尾﨑 良智, 赤澤 彰, 和田 広, 御園生 昌史
    2023 年 45 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.頸動脈小体腫瘍は稀な腫瘍で,組織学的には傍神経節細胞腫である.多血性腫瘍のため,原発巣を含めてその生検は困難であることが多い.症例.65歳,女性.13歳頃に右頸動脈小体腫瘍に対して手術歴があった.乳癌術後の経過観察中に血痰が出現し,CTで左肺下葉にB6内腔に突出する強い造影効果を伴う結節影が認められ,当科に紹介となった.PET-CTでFDG集積を伴う両肺多発小結節と多発骨硬化像を認めた.気管支鏡検査で左B6入口部に赤色,ポリープ型の隆起性病変を認め,B6は狭窄していた.比較的多量の出血があり,局所麻酔下での生検は断念した.後日,全身麻酔,気管挿管下に気管支鏡下生検を行い,半導体レーザーで止血,出血の制御は容易であった.組織学的に傍神経節細胞腫であり,頸動脈小体腫瘍の多発肺転移,骨転移と診断した.気道出血の制御のため左S6肺腫瘍に対して放射線治療を行い,腫瘍は縮小し,血痰も消失した.結語.頸動脈小体腫瘍肺転移に対して全身麻酔・陽圧換気下で安全に気管支鏡下生検を行い,組織学的に確定診断を得ることが可能であった.

  • 大津 佑希子, 松本 裕, 井上 聡, 片 佑樹, 三神 直人, 髙安 宏和
    2023 年 45 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.近年高齢化に伴い高齢者における気道異物の症例が増加傾向にある.症例.1例目は80歳,男性.歯科治療中にメタルコアを誤嚥.軟性鏡下に鰐口生検鉗子を用いてメタルコアの支柱部分を把持して摘出した.2例目は79歳,男性.脳梗塞で入院中に誤嚥性肺炎を併発し,画像検査で偶発的に異物を確認.軟性鏡下に癒合歯を確認し,消化器内視鏡用大型鰐口鉗子で把持し内視鏡ごと抜去した.3例目は76歳,男性.歯科治療後からの咳嗽があり,画像検査で異物を確認.軟性鏡下に歯冠を確認し,歯冠の平坦な部分を短軸方向にW字鉗子で把持し摘出した.結論.歯科領域関連の気道異物は,特に高齢者では臨床症状に乏しく,疑った場合は速やかな画像検査施行が望ましい.異物の存在部位や形状を把握し,多くの手段を準備した上で適切なデバイスを使用することが必要である.自然脱落の可能性もあり,固定の悪い歯,義歯,歯冠は早期治療が必要である.

  • 本橋 巧, 仲村 泰彦, 臼井 優介, 関谷 宗之, 磯部 和順, 坂本 晋, 髙井 雄二郎, 深澤 由里, 本間 栄, 岸 一馬
    2023 年 45 巻 2 号 p. 116-122
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.メトトレキサート(methotrexate:MTX)は関節リウマチの治療におけるキードラッグであるが,長期内服により多彩な肺病変を呈することが知られている.症例.26歳時から関節リウマチの既往があり43歳時からMTX内服中であった65歳の女性.一週間前から続く発熱,咳嗽を主訴に受診し,胸部CTで両肺多発結節性病変,左顎下及び上縦隔リンパ節,気管分岐下リンパ節腫大を認めた.血液検査ではC反応性蛋白,可溶性インターロイキン2レセプターの上昇,リンパ球数の減少を認めた.気管支鏡検査では,気管内,気管分岐部に白色の不整な隆起性病変を認めた.同部位の直視下生検と左顎下リンパ節の生検では,小~中型リンパ球の密な増殖を認め,免疫染色の結果と臨床経過を合わせて,T細胞性のMTXによる医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患(other iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders:OIIA-LPD)の診断に至った.結論.気管支鏡直視下生検がMTXによるOIIA-LPDの診断に有用であった.本疾患による肺病変を疑った場合には気管支鏡検査を施行し,気道病変を認めた場合には直視下生検を行うべきである.

  • 増田 佳子, 日隈 大徳, 白神 慈, 松原 恵理, 白石 健治, 池田 公英, 鈴木 実
    2023 年 45 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例.49歳,男性.左上葉肺扁平上皮癌(cT4N2M0 stage IIIB)の診断で化学放射線療法を施行したが,効果判定で進行となり左完全無気肺の状態となっていた.右気胸を発症し,胸膜癒着療法を繰り返したが,気漏が続き当科紹介となった.気漏の程度から胸膜癒着療法による気漏の消失は不可能と判断し,手術の方針とした.CT所見から右上葉に多発しているブラが気漏部位として疑われたため,気管支ブロッカーチューブを用いて右肺上葉分離肺換気を行い,胸腔鏡補助下肺ブラ切除術を施行した.術中良好な視野を確保でき,術中血中酸素飽和度は低下せず,安全に手術を行うことが可能であった.術後胸腔ドレーンを抜去することができ,QOLは改善した.結論.腫瘍による片側完全無気肺状態の患者に発症した対側気胸に対しても,胸膜癒着療法が奏効しない場合は手術療法を除外すべきではないと考えられた.

  • 山田 竜也, 森 毅
    2023 年 45 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.今回右B3が中葉気管支より分岐した右上葉肺癌の切除例を経験したので報告する.症例.68歳,女性.右上葉S1bに最大径47 mm,充実径42 mmの部分充実腫瘤を認めた.右B3が中葉気管支根部より分岐していた.手術手順は肺門処理先行アプローチとしV1-3を切離した後,上幹肺動脈,B1+2を切離した.A3a,A3bをそれぞれ切離し,B3を同定し切離した.最後に上中葉間を形成した.結論.気管支分岐異常を伴う症例では気管支鏡所見及びCT所見を元に術前に念入りな手術計画を立てることが重要である.

  • 柴田 英克, 丸山 広高, 山根 宏美, 安道 誠
    2023 年 45 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.ノカルジア感染を合併した囊胞状気管支拡張を伴う肺分画症の1例を報告する.症例.46歳,男性.感染性肺囊胞の診断で紹介となる.喀痰のグラム染色でノカルジアを検出し,肺ノカルジア症の診断で,2年間加療するも症状の改善,増悪を繰り返した.右下葉に病変が限局することより切除の方針とした.術前検査の造影CTで下行大動脈から右下葉に流入する異常血管を認めた.これにより,ノカルジア感染を合併した肺分画症の診断に至った.胸腔鏡下右下葉切除を施行したところ,呼吸器症状は改善し,術後5年経過したが症状の再燃は認めない.結語.ノカルジア感染症は日和見感染症の一つであるが,肺の器質的異常もリスク因子と報告されている.ノカルジアの分画肺への感染はとても希である.しかし,難治性のノカルジア感染が下葉縦隔側に限局する場合には,肺分画症を念頭に置いて積極的に造影CT検査を行うべきと考える.

  • 高野 峻一, 板井 美紀, 豊田 正昂, 原 健太郎, 小林 頂, 申 悠樹, 相川 政紀, 中川 純一, 前野 敏孝
    2023 年 45 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2023/03/25
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景.気管周囲に線維化を伴う炎症性病変を生じたため,線維性縦隔炎と鑑別を要した胃癌の縦隔転移による気管狭窄の症例を経験した.症例.67歳男性.胃癌に対してX-5年に胃全摘術が施行された.X-1年のCTで気管周囲の軟部組織濃度領域の拡大がみられた.X年には同部位の軟部組織濃度領域がさらに拡大し,気管狭窄を認めた.線維性縦隔炎を疑い,気管前方の組織に対し超音波気管支鏡ガイド下針生検を施行したが,十分な検体は得られず,頭部後屈位で頸切痕部からエコーガイド下針生検を施行した.腺管構造を伴う癌組織片が得られ,胃癌の縦隔転移とそれに随伴する炎症性線維化病変と診断された.胃癌手術検体の再検討でHER2陽性が確認されたため,トラスツズマブ・カペシタビン治療を開始し気管狭窄は改善した.結論.稀ではあるが,線維性縦隔炎と鑑別を要する胃癌の縦隔転移が存在する.気管周囲病変の診断には,画像所見を参考に十分な検体採取が可能な生検方法を選択する必要がある.

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