気管支学
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40 巻, 6 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
追悼
論評
原著
  • 石井 聡, 鈴木 学, 勝野 貴史, 田村 賢太郎, 辻本 佳恵, 橋本 理生, 仲 剛, 飯倉 元保, 泉 信有, 杉山 温人
    2018 年 40 巻 6 号 p. 536-541
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.局所麻酔下胸腔鏡検査は,局所麻酔で施行しているため疼痛を伴う症例が散見される.海外ではミダゾラムを使用している施設が多いが,日本では少ない.目的・方法.2015年2月から2016年9月までのミダゾラム非使用群14例(A群)と,2016年10月から2017年12月までのミダゾラム使用群16例(B群)を比較した.鎮静はRamsayスコア4を目標とし,導入時にミダゾラム1 mgを2分かけて静注.疼痛がある場合は1 mgずつ追加した.①外来で胸腔穿刺を行った時の疼痛,②胸腔鏡施行時の皮膚切開,ファイバー挿入までの疼痛,③生検時の疼痛,④皮膚縫合時の疼痛,⑤術後翌日のドレーン挿入に伴う疼痛に関して,疼痛スコアはNRS(Numerical Rating Scale)を用いてアンケートを行った.結果.B群ではミダゾラム使用量中央値3 mg(1~9)であった.NRSに関しては,①A群3.2±1.8,B群3.1±1.8(P=0.95),②A群4.3±2.3,B群0.8±1.4(P=0.0002),③A群4.6±2.4,B群1.2±1.7(P=0.001),④A群3.8±1.9,B群1.3±1.9(P=0.01),⑤A群4.5±2.9,B群4.6±3.2(P=0.94)であった.合併症はB群において低血圧を1例認めた.考察.静脈麻酔を使用することにより苦痛の少ない検査を遂行できた.静脈麻酔の併用など,今後検討が必要である.

  • 青木 亮太, 叶 宗一郎, 藤倉 雄二, 神崎 裕二, 太田 真一郎, 黒川 敦志, 淡島 舞子, 児玉 達哉, 田上 陽一, 川名 明彦
    2018 年 40 巻 6 号 p. 542-547
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.サルコイドーシス(以下,サ症)に対する気管支粘膜生検(endobronchial biopsy:EBB)は,組織診断において安全かつ補助的な有用性が報告されている.目的.サ症の気道内病変の検出,EBB施行部位の選択において自家蛍光気管支鏡(autofluorescence imaging bronchoscopy:AFI)の有用性を検証する.方法.AFI未施行群39例,AFI施行群22例について,EBB施行症例における肉芽腫病変の検出率を比較検討した.結果.AFI未施行群でEBBが施行されたものは21例で,そのうち10例(47.6%)で肉芽腫陽性であった.AFI施行群では13例にEBBが施行され,11例(84.6%)で肉芽腫陽性であり,AFI施行群で肉芽腫陽性率が高い傾向があったが有意差はみられなかった(p = 0.067).特に認識しづらい非結節性病変に対するEBBにおいてAFI未施行例では9例中2例(22.2%),AFI施行例では3例中3例(100%)で肉芽腫陽性であり,AFI使用による非結節病変での検出率,肉芽腫陽性率の向上が示唆された.また症例毎の肉芽腫陽性率での比較検討では,AFI施行群で高い肉芽腫陽性率であった(p=0.032).結論.サ症の診断においてAFIを用いたEBBは病変部位の検出,診断率向上に寄与する可能性が示唆された.

症例
  • 今瀬 玲菜, 遠藤 駿, 笹原 有紀子, 新村 卓也, 小澤 貴裕, 馬嶋 秀考, 原 哲, 島田 裕之, 山内 秀太, 神 靖人
    2018 年 40 巻 6 号 p. 548-552
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.Fibroepithelial polyp(線維上皮性ポリープ)は,良性上皮性のポリープであり,気管支に発生することは比較的珍しい.我々は気管支鏡下で高周波スネアにより切除した,気管支原発fibroepithelial polypの1例を経験した.症例.53歳男性.胸部異常陰影にて当科を初診した.胸部CTでは健診で指摘された部位に異常はなく,偶発的に右主気管支にポリープ状病変を認めた.気管支鏡検査を施行したところ,右主気管支入口部の粘膜にポリープ型腫瘤を認め,同部位の生検結果ではfibroepithelial polypと診断された.後日,気管支鏡下で高周波スネアを使用しポリープを茎部より切除した.結論.気管支原発のfibroepithelial polypに対して内視鏡的に切除可能であった1例を経験した.

  • 藤原 弘之, 中西 正教, 北川 弘祥, 中島 潔, 小林 敬典, 八木 健郎, 山木 健市
    2018 年 40 巻 6 号 p. 553-557
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡ガイド下経気管支針生検法(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)は,縦隔腫瘍や縦隔リンパ節病変の診断において低侵襲で有用な検査であり,近年19ゲージ穿刺針も用いられるようになった.症例.51歳男性.腹痛で救急受診した際の胸腹部CTで,上縦隔右側と右鎖骨上窩に腫瘤性病変を指摘された.造影MRIの所見から神経鞘腫が疑われ,21ゲージ穿刺針でEBUS-TBNAを施行したが検体が微小であり,確定診断に至らなかった.後日,よりサイズの大きな検体採取を目的に19ゲージ穿刺針を用いてEBUS-TBNAを再度施行し,組織学的に神経鞘腫と診断した.結論.本例では太径の穿刺針を使用したEBUS-TBNAで上縦隔神経鞘腫を診断した.EBUS-TBNAにおいて,特に良性疾患を疑う症例では,細胞成分の多い部位を選択して穿刺することが重要である.また,組織構築を保った検体採取に太い穿刺針が有用と考えられる.

  • 小泉 達彦, 横内 浩, 吾妻 啓佑, 梅田 隆志, 峯村 浩之, 井口 正寛, 國井 泰人, 金沢 賢也, 谷野 功典, 棟方 充
    2018 年 40 巻 6 号 p. 558-562
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    症例.64歳女性.前医胸部CTで,左S6に15 mm大の周囲にすりガラス影を有する結節影を指摘された.3か月後の経過CTでも陰影に変化は認められなかったが本人の不安が強く,精査目的のため当科紹介となり気管支鏡検査を行った.検査中はバイタルサインや意思疎通に変化は認められなかったが,検査を終了し1時間後の診察の際,主治医の名前・検査内容・来院した目的などの記憶がなくなっていた.諸検査の結果,一過性全健忘との診断となり,家族の付き添いでその日は帰宅し,翌日の再診時には健忘は軽快していた.結論.検査後に生じた一過性全健忘は,健診時から本検査までの不安増幅が主な原因と考えられ,検査について説明する際の患者への十分な配慮や事前の抗不安薬投与の検討が重要と思われた.

  • 高橋 一臣, 柘植 彩花, 早川 美帆, 竹内 知子, 米田 一樹, 石原 明典, 若山 尚士
    2018 年 40 巻 6 号 p. 563-568
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)の肺合併症の1つに肺浸潤があるが,画像所見による他疾患との鑑別が困難であり,診断に難渋する場合がある.症例.66歳,男性.CLLの経過中,CTにて左肺下葉の結節影を認めた.CTガイド下肺生検を施行しCLLの肺浸潤と診断した.その2年後,同部位周辺に新たにすりガラス影と浸潤影を認め,気管支鏡検査を施行した.気管支内腔には多発の隆起性病変が観察され,生検結果から気管・気管支病変を伴ったCLLの肺浸潤の再燃と診断した.オファツムマブによる化学療法を行い,病変は消失した.結論.CLLの経過中に出現する肺病変に対して,病理組織学的な検討を行うことが診断や治療方針の決定に有用であった.

  • 中村 慧一, 黒田 光, 鈴木 北斗, 堂下 和志, 高橋 政明, 藤田 結花, 山崎 泰宏, 藤兼 俊明, 玉川 進, 辻 忠克
    2018 年 40 巻 6 号 p. 569-573
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.健常成人でのピーナッツによる気管支異物の報告は少ない.また,左上葉支で発症した気管支異物の症例は稀である.症例.59歳女性.ピーナッツ入り南部煎餅の欠片を摂取してから約1か月後,発熱,咳嗽,喀痰のため当科を受診した.胸部CTで左上葉の閉塞性肺炎を認めた.気管支鏡検査で左上葉支入口部にポリープ様の病変を認めた.病理組織検査で,生検標本から植物細胞壁を検出した.患者からの病歴聴取によりピーナッツの誤嚥による閉塞性肺炎と診断した.気管支異物の除去を行った後,症状は消失した.結論.治療抵抗性の肺炎では,健常成人でも発症部位に関わらず気管支異物を念頭においた詳細な病歴聴取が重要である.

  • 嶋田 喜文, 土岐 善紀, 瀬川 正孝, 本間 崇浩, 山本 優, 尾嶋 紀洋, 北村 直也, 明元 佑司, 井村 穣二, 芳村 直樹
    2018 年 40 巻 6 号 p. 574-579
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.メトトレキサート(methotrexate:MTX)は関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者に対する治療薬として広く用いられ,それに伴いメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorder:MTX-LPD)の報告もみられる.症例.78歳,女性.嚥下障害と咳嗽を主訴に受診した.精査の結果,胸部中部食道癌と多発する縦隔リンパ節の腫大を指摘された.RAに対して10年間のMTX内服歴があり,MTXを中止したところ症状と画像所見の改善を認めた.同時に,縦隔鏡下リンパ節生検を施行したところMTX-LPDと診断した.食道癌は内視鏡的粘膜切除にて治療した.結論.肺門や縦隔リンパ節の腫大を伴ったMTX-LPDは,胸部領域の癌の評価に際して病期の過剰診断を誘導する危険性がある.治療適応を決定する上で影響があることを念頭に,正確な組織診断を行うことが大切である.

  • 金井 友宏, 足立 雄一, 米田 翠, 山本 悠司, 安藤 紘花, 森村 治, 大谷 安司, 阿部 欣也
    2018 年 40 巻 6 号 p. 580-583
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.Pulmonary ossificationは稀な疾患で,多くは外科的肺生検,剖検にて診断されている.気管支内視鏡検査で診断した報告はさらに少ない.症例.32歳女性が,健診で胸部異常陰影を指摘された.胸部CTでは石灰化を伴う粒状影を認めたため気管支内視鏡検査を施行した.気管支肺胞洗浄液では有意な所見は認めなかったが,経気管支肺生検で肺胞腔内に沈着する骨組織を認めた.追加の検査で基礎疾患は認めず,idiopathic pulmonary ossificationと診断した.結論.侵襲性を考慮し,pulmonary ossificationを疑った際は気管支内視鏡検査も選択肢となり得る.

  • 葉山 牧夫, 森山 重治, 佐久川 亮, 田村 麻衣子, 高橋 友香, 細川 忍, 別所 昭宏
    2018 年 40 巻 6 号 p. 584-589
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.特殊型肺腺癌である腸型腺癌は,大腸癌肺転移との鑑別が困難となることがある.病理組織検査では確定診断に至らず,診断に難渋した腸型肺腺癌の1例を経験したので報告する.症例.70歳代男性.胸部X線にて異常を指摘され,CTで右上葉に長径21 mmの結節を認めた.気管支鏡下に生検,病理検査にて高円柱状細胞による不規則な腺管形成状の増殖を認め,免疫組織化学染色(免染)ではcytokeratin(CK)20陽性,CK7陰性,thyroid transcription factor-1陰性を示し,大腸癌肺転移が疑われた.PET/CT検査では右肺結節にFDGの集積を認めるとともに,上行結腸にも集積を認めた.大腸内視鏡検査で同部位にポリープ病変を認め,低異型度管状腺腫との病理診断を得た.大腸に悪性病変を認めなかったことから肺腫瘍は原発性肺腺癌cT1bN0M0(肺癌取扱い規約第7版)と診断,胸腔鏡下右上葉切除術を施行した.手術検体での免染では,CK7が一部弱陽性であったものの,他の免染結果は生検とほぼ同様の結果で,総合的に判断し,原発性肺腺癌acinar type,pT1aN0M0 stage IA(肺癌取扱い規約第7版)と診断した.組織型は第8版肺癌取扱い規約に準じると,腸型腺癌に相当するものと判断された.結論.病理組織検査だけで腸型肺腺癌と大腸癌肺転移を鑑別することは困難なことがあり,そのような場合には大腸内視鏡検査も施行する必要がある.

  • 鹿野 幸平, 中村 純, 廣石 拓真, 巴山 紀子, 藤田 哲雄, 天野 寛之, 平野 聡, 中村 祐之, 一ノ瀬 修二, 清水 辰一郎
    2018 年 40 巻 6 号 p. 590-595
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.肺動脈内膜肉腫は稀な疾患で,手術や剖検による診断例が多い.超音波気管支鏡ガイド下生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)による生検,診断例が報告されているが,出血が危惧される.症例.45歳.男性.胸部異常陰影にて紹介となった.胸部造影CTにて,左下葉肺動脈を閉塞する造影が不均一な腫瘤性病変を認めた.病変は血管に沿って数珠状に発育し,中枢側の肺動脈は拡張していた.PET-CTで血管壁にFDG集積亢進を認めた.気管支鏡検査では,左下葉支からのEBUSで腫瘤を認めた.カラードップラーで血流がないことを確認し,EBUS-TBNAを施行した.出血を含めた合併症は認めなかった.肺動脈内膜肉腫と診断され,左肺全摘術を施行した.結論.肺動脈内膜肉腫の診断において,EBUS-TBNAは選択肢の1つとなりうる可能性が示唆された.

  • 幸田 敬悟, 横村 光司, 後藤 彩乃, 赤堀 大介, 小谷内 敬史, 佐藤 慈子, 長谷川 浩嗣, 小澤 雄一, 松井 隆, 須田 隆文
    2018 年 40 巻 6 号 p. 596-600
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.肺動脈瘤は極めて稀な疾患であり,経気管支生検を行った場合には大量出血につながる可能性が高く注意が必要である.症例.66歳男性.慢性腎不全に対する透析導入時に撮影された胸部X線で異常を指摘された.胸部CTで左上葉に12 mm程度の境界明瞭な結節が認められ,左B1+2aの気管支が結節の近傍を通過していることが確認された.結果.気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography:EBUS)で観察したところ,内部は均一な低エコーで血管病変が疑われた.造影CTおよび肺動脈造影で結節は孤立性末梢性肺動脈瘤と診断されたため,血管内カテーテルによるコイル塞栓術を施行した.今回,合併症を来すことなく気管支鏡検査を施行できたが,細径プローブによるわずかな刺激であっても病変部よりの出血につながる可能性は否定できず,気管支鏡検査は避けるべきであったかもしれない.EBUSや極細径気管支鏡などにより末梢肺病変への到達率が向上していることもあり,生検による出血のリスクを避けるため,標的病変部の血流評価および血管性病変の除外目的に造影CTは事前に施行しておくべきと考えられた.結論.末梢性肺動脈瘤に対しEBUSを施行した症例を経験した.

  • 田原 正浩, 山﨑 啓, 安藤 裕之, 中垣 憲明, 今永 知俊, 矢寺 和博
    2018 年 40 巻 6 号 p. 601-607
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)は,縦隔リンパ節腫大を評価する上で低侵襲で有用な検査方法である.症例.80歳代,男性.肺炎で入院した際に,胸部CT検査で右下葉の肺炎像に加えて,縦隔リンパ節の腫大と少量の心囊水貯留を認めた.抗菌薬治療後に気管分岐下リンパ節に対してEBUS-TBNAを行った.リンパ節の病理組織標本のhematoxylin-eosin染色では好酸性無構造沈着物を認め,同構造物はCongo red染色陽性で,偏光顕微鏡下で緑色の偏光を呈するアミロイドの沈着を認めた.他臓器にはアミロイドーシスの所見を認めず,総合的に縦隔リンパ節限局型アミロイドーシスが疑われた.結語.縦隔リンパ節腫大を呈する限局型アミロイドーシスの診断に,EBUS-TBNAは有用であると考えられる.

  • 野川 ひとみ, 濱田 顕, 鈴木 潤, 加藤 博久, 大泉 弘幸
    2018 年 40 巻 6 号 p. 608-611
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.高圧酸素療法(Hyperbaric oxygen therapy,以下HBOT)は,創傷治癒促進や軟部組織感染症に有効性が示されている.症例.61歳男性.既往に糖尿病,高血圧.喫煙歴は40本/日×41年間で現喫煙者.血痰を主訴に当院を受診し,肺癌が疑われ右下葉切除+ND2a-2を施行.病理組織は多形癌,pT1aN2M0-stage IIIAであった.術後第6病日の気管支鏡検査で中間気管支幹および気管支断端に白苔付着,潰瘍形成,粘膜壊死を認め,虚血性気管支炎が疑われ,今後気管支断端瘻のリスクが高いと考えて,同日より12日間HBOT(2 atmosphere,60分,1日1回)を開始した.その2日後に胸水貯留に対し胸腔ドレーンを挿入したが,膿胸には発展しなかった.定期的に気管支鏡検査を施行し,徐々に潰瘍の改善を認め,術後第28病日に退院した.結論.右下葉切除後の虚血性気管支炎に対して,HBOTが気管支断端瘻を防ぎ得たと考えられた.

  • 川口 諒, 山沢 英明, 小野 真里花, 瀧上 理子, 山内 浩義, 長井 良昭, 中山 雅之, 間藤 尚子, 鈴木 拓児, 萩原 弘一
    2018 年 40 巻 6 号 p. 612-616
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.成人水痘肺炎は重症化する可能性があり,早期診断,治療が重要である.症例.35歳女性.発熱,全身の皮疹,呼吸困難感を主訴に来院した.胸部CTでは両側肺野に大小不同の結節影,びまん性多発粒状影を認めた.気管支鏡検査で粘膜に白苔を伴う結節と白色潰瘍性病変を認めた.気管支肺胞洗浄液より水痘・帯状疱疹ウイルスDNAを検出し,原発性水痘肺炎と診断した.アシクロビルを投与し症状,画像所見ともに速やかに改善した.結語.特徴的な気道粘膜病変が診断の一助となった症例を経験した.水痘肺炎の確定診断に加えて,二次感染による続発性肺炎との鑑別にも気管支鏡検査は有用であると考えられた.

  • 宮原 隆成, 山中 美和, 赤羽 順平, 後藤 憲彦, 滝澤 秀典, 吉池 文明, 平井 一也, 横関 万里, 境澤 隆夫
    2018 年 40 巻 6 号 p. 617-622
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル フリー

    背景.気管内挿管に伴う気管損傷は比較的稀ではあるが,重篤な合併症である.症例.83歳,女性.18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography検診にて間質性肺炎を指摘された.胸部CTでは網状影,スリガラス影を認め,間質性肺炎に対する精査のため,気管支鏡による気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)を行った.TBLB施行後出血し,呼吸不全をきたしたため気管内挿管下血栓除去を行った.翌日,胸部CTにて皮下気腫,縦隔気腫,下部気管膜様部の損傷を認めた.気管支鏡終了時の胸部X線を見直したところ縦隔気腫を認め,血栓除去操作中に損傷が引き起こされたと判断した.修復手術も考慮し,高次医療機関に転院した.人工呼吸器管理を必要とせず,自発呼吸で安定し,皮下気腫の悪化を認めず,保存的治療で改善できた.結論.気管損傷は稀であるが,気管支鏡検査中でも起こり得る合併症である.

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