気管支学
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38 巻, 5 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 多田 光宏, 神田 響, 岩本 信一, 西川 恵美子, 門脇 徹, 木村 雅広, 池田 敏和, 矢野 修一
    2016 年 38 巻 5 号 p. 358-364
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.軟性気管支鏡の性能は飛躍的に向上し,各種挿入デバイスの開発とともに多様な手技が可能となった.一方で挿入デバイスを駆使する鉗子孔は未だ単一のままであり,2本のデバイスの同時使用は不可能である.目的.鉗子孔を増設するために,消化器内視鏡領域で既に市販されている鉗子孔の外付けアタッチメントを軟性気管支鏡用に改良し,デュアルチャネル化軟性気管支鏡の有用性について検討した.方法.ブタの肺を用いた気道インターベンショントレーニングキットを使用し,2本のデバイスの同時使用による異物除去や手技の検討,中枢気道病変生検後の出血に対するアルゴンプラズマ凝固や吸引手技の検討を行った.また,シリコンステント留置後にmigrationを生じた患者において,その位置調整に使用した.結果.異物除去の検討では2本のデバイスを同時に駆使することで,異物把持の安定性が向上した.鉗子生検後の出血に対するアルゴンプラズマ凝固や吸引手技の検討では,シングルチャネルに比べてデュアルチャネルで有意に手技時間の短縮を得ることができた.ステントの位置調整でも,把持力が向上し,短時間で安定的に手技を遂行することができた.結論.軟性気管支鏡のデュアルチャネル化が,気管支鏡手技において有用である可能性が示唆された.これまで硬性鏡手技を必要としていた一部の手技に対して補完的な役割を担うことができる可能性があり,今後,症例を重ねて検討していく必要がある.

症例
  • 高野 聡子, 馬嶋 秀考, 原 哲, 貫井 義久, 川上 直樹, 島田 裕之, 井上 幸久, 山内 秀太, 中川 淳, 小林 亜紀子, 山崎 ...
    2016 年 38 巻 5 号 p. 365-370
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.医療の進歩に伴い,近年では癌治療後においても長期生存が望めるようになってきたが,その一方で治療関連癌を含む二次癌の報告が増加している.今回我々は,一次癌治療後に発症した放射線誘発癌の1例を経験したので報告する.症例.78歳男性.重喫煙歴とアスベスト曝露歴を有する.2008年9月に上大静脈症候群の原疾患検索目的で当科へ紹介された.精査で中縦隔原発の未分化癌と診断し,化学放射線同時併用療法で完全奏効が得られた.その後は再発なく経過していたが,2012年1月頃より湿性咳嗽,呼吸困難が出現した.CT検査では縦隔と接する放射線照射肺野に広がる腫瘤を認め,気管支鏡下生検を行うと組織型は縦隔癌診断時とは異なり小細胞癌であった.進展型小細胞肺癌として化学療法を行ったが,同年5月に永眠された.剖検を行うと一次癌は寛解しており,再発ではなく放射線照射により発生した二次癌であったことが確認できた.結論.一次癌治療後の経過観察において,とりわけ発癌リスクを複数有する者に対しては,再発のみでなく二次癌発症の可能性も留意する必要があると考えられた.

  • 加藤 高英, 三好 誠吾, 山本 千恵, 仙波 真由子, 山本 将一朗, 片山 均, 檜垣 實男
    2016 年 38 巻 5 号 p. 371-376
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.消化性潰瘍治療薬での薬剤性肺炎の報告は少ない.症例.症例は68歳,男性.労作時呼吸困難,胸部異常陰影の精査目的で当院を紹介受診した.胸部単純CTでは両側肺胸膜下優位にびまん性の網状影,浸潤影を認めた.血液検査,気管支肺胞洗浄液では好酸球比率の上昇を認め,経気管支肺生検の結果,気管支上皮下に好酸球や形質細胞を含む炎症細胞浸潤を認めた.薬剤リンパ球刺激試験を行い,ポラプレジンクのstimulation indexが729%と強陽性であったことから,ポラプレジンクによる薬剤性好酸球性肺炎と診断した.結論.本症例のように,長期に消化性潰瘍治療薬を内服していても,原因不明の呼吸器症状や画像上の異常陰影を認めた場合,薬剤性肺炎を疑う必要があると考えられた.

  • 大貫 次利, 中山 雅之, 坂東 政司, 中野 智之, 佐多 将史, 中屋 孝清, 間藤 尚子, 山本 真一, 山沢 英明, 遠藤 俊輔, ...
    2016 年 38 巻 5 号 p. 377-381
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.大量喀血は,凝血塊による中枢気道閉塞から窒息を招くクリティカルな状態である.速やかな換気と気道の確保に加えて,確実な緊急止血処置が要求される.症例.既往に関節リウマチ,気管支拡張症を持つ77歳男性.右下腿蜂窩織炎による敗血症と急性呼吸促迫症候群を発症し,集中治療室で人工呼吸器管理となった.集学的治療により呼吸不全は改善し,気管切開術後に一般病棟で治療を受けていた.下肢深部静脈血栓症を併発しワルファリンを内服中に血痰を認め,同薬を中止したが,大量喀血による急性呼吸不全をきたした.気管切開孔から気管支鏡を挿入したが,気管は凝塊血で閉塞され内腔を観察できなかったため,気管切開孔から挿入したハイマン鉗子で凝血塊を把持して一塊に摘出した.その後気管支鏡で観察し,出血源が右B10bと左B6であることが確認できた.左B6にはEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)による気管支充填術を行った.右B10bからの出血に対しては気管支動脈塞栓術(bronchial artery embolization:BAE)を行い,止血することができた.結語.大量喀血による凝血塊で気道閉塞をきたし呼吸不全を生じたが,ハイマン鉗子による凝血塊の摘出,EWSによる気管支充填術,さらにBAEにより救命できた1例を経験したので,報告する.

  • 高木 努, 山﨑 啓, 川口 貴子, 松永 崇史, 立和田 隆, 石本 裕士, 矢寺 和博, 迎 寛
    2016 年 38 巻 5 号 p. 382-385
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.Pasteurella multocidaはイヌやネコの口腔内の常在菌であり,人畜共通感染症である.症例.83歳の男性.ペット飼育歴はないが,ネコとの接触が考えられた.当院で不安定狭心症の治療を受けていた.3日前より悪寒,2日前より38.5℃の発熱,黄色痰を認めたため当科を受診した.胸部CTでは右下葉に浸潤影,すりガラス影が出現しており,血液検査では白血球増多および炎症反応の上昇が認められた.右下葉から気管支洗浄を施行し,Pasteurella multocidaが培養された.また気管支洗浄液から細菌のDNAを抽出し,16S rRNA遺伝子の塩基配列の一部(約600 bp)を決定し,basic local alignment search tool(BLAST)を用いて基準株との遺伝子配列の相同性検索を行った結果,Pasteurella multocidaの基準株に最も相同性が高く,血液培養でも同菌が検出され,Pasteurella multocidaによる肺炎および菌血症と診断した.SBT/ABPC 1.5 g×2/日による抗菌薬治療開始で速やかに改善した.結論.Pasteurella multocidaによる肺炎は稀であり,本症例において気管支洗浄液16S rRNA遺伝子解析が診断に有用であった.

  • 古堅 智則, 河崎 英範, 平良 尚広, 比嘉 太, 石川 清司, 川畑 勉
    2016 年 38 巻 5 号 p. 386-389
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.成人の義歯誤嚥による気管支異物に対し,軟性鏡下に摘出した1例を経験した.症例.68歳男性.前医で気管支喘息の診断で治療中であったが,改善せず当院内科に紹介となった.胸部聴診で呼気時に喘鳴を聴取した.半年前に義歯を誤嚥したことが問診で確認できた.胸部CT上で異物を疑い気管支鏡を施行したところ,左主気管支入口部に義歯を認め,周囲に肉芽形成を来しており局所麻酔下では摘出困難と予想された.このため全身麻酔下でスネア鉗子を用いて摘出した.経過は良好で,術後1カ月目に気管支鏡を施行したところ,肉芽による狭窄は改善していた.結論.気管支異物はほとんどの症例で軟性鏡を用いて対応可能である.しかし嵌頓期間が長い症例では,摘出困難な場合に備えて硬性鏡や開胸術の選択肢も考慮しておく必要があると考える.

  • 近藤 展行, 橋本 昌樹, 多久和 輝尚, 松本 成司, 長谷川 誠紀
    2016 年 38 巻 5 号 p. 390-394
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.肺過誤腫はほとんどが肺実質型で,気管支型は稀である.長期間の喘息様症状の原因が左主気管支を閉塞する過誤腫であると判明した症例に対して,気管支鏡下の治療を経験した.症例.症例は70歳代男性.20年以上前から呼吸困難を自覚し,気管支喘息として診療されていた.前医を受診した際に,胸部CTで左主気管支内に腫瘤陰影を初めて指摘された.石灰化を伴う良性の画像所見であったため観察していたが,2年後の再診時に腫瘤が増大したため,治療目的に当施設へ紹介となった.胸部CTでは左主気管支末梢側に腫瘤を認め,気管支内腔をほぼ閉塞していた.気管支鏡検査を行い,左主気管支内の表面平滑な腫瘤を生検し,過誤腫を考える良性腫瘍の組織所見を得た.このため,全身麻酔下に経気管支的切除可能と考え,高周波スネアを使用して分割切除し,腫瘍のほとんどを切除した.術後,呼吸困難の自覚症状が消失し,翌日軽快退院した.術後3年目の経過観察中,気道の開存に変化はなく,狭窄,軟化や残存腫瘍の増大も認めない.結論.長年の呼吸困難の原因であった大きな気管支内過誤腫に対し,内視鏡的切除が効果的であった.

  • 篠原 博彦, 大和 靖, 林 芳樹
    2016 年 38 巻 5 号 p. 395-398
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.神経鞘腫は末梢神経の存在するあらゆる部位から発生するが,肺・気管・気管支から発生した神経鞘腫は稀である.今回我々は,気管支から発生し,無気肺を呈していた症例に対して気管支鏡下に診断し,肺葉切除を行った1例を経験した.症例.70歳女性.検診の胸部エックス線検査で異常陰影を指摘され,前医を受診した.胸部CTで左上葉肺門部に2.5×1.5 cm大の結節とS3の無気肺を認めた.気管支鏡検査では左B3を閉塞し,血管の怒張を伴う表面平滑で浮腫状のポリープ病変を認め,生検ではS-100蛋白,vimentin陽性の紡錘形細胞を認め,神経鞘腫が疑われた.手術は悪性の可能性も否定できないため胸腔鏡補助下左上葉切除を行った.術後病理診断も神経鞘腫であり,悪性所見は認めなかった.術後経過は問題なく,術後17カ月現在,再発は認めていない.結語.稀な気管支から発生した神経鞘腫に対し,気管支鏡検査で診断し,外科的切除にて治療し得たので報告した.

  • 石橋 昌幸, 桐田 圭輔, 青景 圭樹, 松本 慎吾, 梅村 茂樹, 仁保 誠治, 大松 広伸, 坪井 正博, 後藤 功一
    2016 年 38 巻 5 号 p. 399-404
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.気管支インターベンションは悪性気道狭窄に対して重要な緩和治療の選択肢だが,複数回の緩和的な光線力学的治療(PDT)による治療効果の報告は少ない.症例.76歳男性.肺扁平上皮癌,pT3N2M0に対して左肺全摘出術13か月後に,脳転移および多発気管・気管支内転移で再発した.脳転移に対する全脳照射後,気道病変に対して複数回PDTを施行することで,1年間気道狭窄・閉塞による症状悪化を回避し全身状態の維持が可能であった.結論.他の治療選択肢が乏しい場合,複数回のPDTは気道狭窄の緩和治療として有効な可能性がある.

  • 榛沢 理, 藤江 俊秀, 高野 聡子, 稲瀬 直彦
    2016 年 38 巻 5 号 p. 405-409
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection;CAEBV)と,それに伴うEBウイルス関連NK/T細胞リンパ増殖症は稀な疾患であり,肺病変に関する報告は少数のみである.症例.37歳女性.発熱,頸部リンパ節腫大および肝逸脱酵素上昇に対して精査され,末梢血中のEBウイルスDNAの増加からCAEBVと診断された.約1か月後,咳嗽と呼吸困難を自覚し,急性呼吸不全を認め入院した.胸部CTでびまん性すりガラス影があり,BAL液のCD4陽性細胞の増多とEBウイルスDNA増加を認めた.末梢血中にEBウイルス感染T細胞の腫瘍性増殖があり,EBウイルス関連T細胞リンパ増殖症(EBV+T LPD)およびその肺病変と診断した.結論.気管支鏡検査がEBV+T LPDの肺病変の診断に有用であった症例を経験した.

  • 鳥羽 博明, 先山 正二, 松本 大資, 河北 直也, 坪井 光弘, 梶浦 耕一郎, 川上 行奎, 滝沢 宏光, 近藤 和也, 丹黒 章
    2016 年 38 巻 5 号 p. 410-414
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/10/08
    ジャーナル フリー

    背景.気管支動脈瘤は喀血の原因になるが,特に小さな末梢病変では時に部位診断に難渋することがある.症例.84歳男性.5年前に喀血にて他院に救急搬送されたが,その際には原因は特定できなかった.3年7か月前に再喀血(2回目)があり,かかりつけ医を受診.CTにて右S2に区域性の浸潤影を認め,当科紹介.極細径気管支鏡を用いて観察したところ,右B2biiβに1 mm程度の表面平滑な拍動性の隆起性病変を認め,周囲に血餅が付着しており,気管支動脈瘤による喀血と診断した.2か月前に再喀血(3回目)あり.CTでは気管支動脈瘤を指摘できなかった.気管支動脈造影では動脈瘤を指摘することはできなかったが,右気管支動脈塞栓術を施行した.結論.自験例では6次分枝に位置するような1 mm大という非常に小さな病変であったが,極細径気管支鏡を用いたことで診断することができた.

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