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中島 正治, 藤正 嚴, 井街 宏, 渥美 和彦, 木船 絋爾
1985 年14 巻2 号 p.
868-871
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
カニの甲羅などの主成分であるキチン(poly-N-aeetyl-D-glueosamine)を用いた様々な医用吸収性材料を開発した。今回検討したものは, 縫合糸, シート, スポンジ, ビーズなどであり, いずれも強度等の物理的性質は臨床応用上充分なものと考えられた。動物実験において, 組織反応, 治療状況, 吸収過程などを検討し, 生体適合性の良い吸収性材料であることを確認した。シート, スポンジ, ピーズなどは, キチンが様々な薬剤との親和性が良いことを利用して, 徐放性担体としての応用も可能である。キチンは, 他に治療促進効果などをはじめとする生物学的活性が知られており, これらの効果を利用した能動的医用吸収性材料の開発が期待される。
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岡崎 正之
1985 年14 巻2 号 p.
872-874
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
アパタイトの歯科生体材料への応用を目的として, フッ素化アパタイトを合成した. 得られた試料をX線回折により同定したところ, F
-がアパタイトの結晶内に取り込まれていることが確認できた. F含有量の増加に伴ってアパタイトの結晶性は予期せぬ複雑な変化をとげ, 一方溶解性は急激に減少した. このフッ素化アパタイトをフィラーとして, 2.2'ビス(4メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパンをマトリックスとするコンポジットレジンを作成したところ, その機械的性質はフッ素化度の影響をほとんど受けなかった. 圧縮強度は歯質エナメル質および市販の歯科用コンポジットレジンには及ばなかったが, SiC Whiskerを混ぜることにより圧縮強度, 靱性はかなり改善された. また, 熱膨張係数は硬組織アパタイトのそれに近く, 歯質との接着性も良好であった.
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戸川 達男, 辻 隆之, 青木 秀希, 秦 美治, 請川 洋, 東方 正章, 大内 成美
1985 年14 巻2 号 p.
875-878
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ハイドロキシアパタイト焼結体を用いて, 皮膚電気端子および磁気結合コイルを製作し, 慢性実験による評価を行った. 電気端子は直径24mmの円板の中心に体外に露出する部分として直径10mm, 高さ13mmの円筒を立てた形で, 中心に導体を通してあり, リード線をスクリューにより固定できる. 磁気結合コイルは, 皮下に埋没する部分が24mm×48mmの板で, 円筒2本を立てた形で, 体外に半円形の銅パイプを露出した形のもので, パイプ内に巻数20回のコイルを通した. コイルの体外部に鉄芯を通してトランスを形成することにより, 電力の伝達が可能である. 慢性実験には成犬を用い, 電気端子2個と磁気結合コイル1個とを背部に植え, 磁気結合コイルのリードを体内で電気端子に接続した. 4ケ月の観察の結果, アパタイト部分が皮膚とよく結合し, 感染が認められず, 機械的によく固定されており, 電気的にも電磁結合が良好であることを確認した.
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秦 美治, 青木 秀希, 請川 洋, 辻 隆之, 戸川 達男, 東方 正章, 大内 成美, 佐伯 達哉
1985 年14 巻2 号 p.
879-882
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
昨年の本学会において我々は経皮的に埋入した水酸アパタイト焼結体が皮膚組織と優れた親和性を示すことを明らかにした。本研究では, この経皮端子を通して実際にセンサーを成犬に埋め込み, 血圧や深部体温等の生体内情報を安定的に長期間連続計測することを試みた。センサー埋入2週間後に端子埋入部の創傷が完治したのを確認したのちこの犬を箱の中に固定し, 24時間連続計測を行った。この結果, 本実験犬の平常時の血圧は収縮期120~150mmHg, 拡張期80~100mnHgであった。また, 興奮時には血圧及び心拍数が, ケタラール麻酔時には血圧, 心拍数及び深部体温が著しく上昇した。また10ケ月に及ぶ長期経皮的埋入実験では, 水酸アパタイト端子は感染や炎症もなく皮膚内で安定していた。これらのことから, 水酸アパタイト焼結体の経皮端子は生体内情報を長期間安定的に連続計測するために非常に有効であると考えられた。
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三宅 仁, 宮木 義行, 瀬 和則, 五十野 善信, 藤本 輝雄
1985 年14 巻2 号 p.
883-886
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ミクロ相分離構造と表面荷電をさまざまに有することが可能な5元ブロック共重合体およびその誘導体は、抗血栓性機序の解明の理想的モデル高分子であり、我々はさまざまな評価を行なってきた。本研究においては、組織適合性in-vitro評価としての細胞培養法を用い、細胞とこの材料との応答についての基礎的な解析を行なった。その結果、上皮性細胞を用いた場合は、材料間に増殖性の差異は認められなかったが、形態的な変化が特にプラス荷電材料においてみられた。マイナス荷電をもつ材料では、血清を先に接触させると細胞の接着・増殖性が改良された。線維芽細胞では、荷電が大きくどちらかに傾くと接着・増殖が抑制されたが、荷電による形態の影響は観察されなかった。このような事実から、5元ブロック共重合体は、抗血栓性材料としてのみならず、細胞との相互作用を知る上でも理想的かつ実用的なモデル高分子であることが明らかとなった。
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戸川 達男
1985 年14 巻2 号 p.
887
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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松本 博志, 吉良 一明, 宮脇富 士夫, 中田 恵, 浅野 献一, 高松 俊明
1985 年14 巻2 号 p.
888-890
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ABバイパス手術にも使用可能な小口径人工血管の実用品の開発を目的にセグメント化ポリウレタン8種類を素材として選び, 有孔性を種々調節した直径3mの人工血管を20種類作成した。これらの人工血管は種々の程度のコンプライアンスを有するが, この20種類の人工血管のコンプライアンスを求めるとともに, 雑種成犬の大腿動脈に長さ5~7cmの範囲に置換移植した。移植後の開存性は移植人工血管上で拍動を触知しながら観察し, 1ケ月以上開存したものについて移植片を摘出して開存率を算出した。作成人工血管の開存率はN-1:0%, N-10, -11:30.3%, N-12:80%, N-15:30.3%, N-16:50%であった。特にN-12のものは4ケ月以上開存した。至適なコンプライアンスと多孔質をもつセグメント化ポリウレタンでは開存性が改善され, 臨床応用可能な人工血管の開発に使用できるものと考えられる。
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―細小動脈置換例の開存率の検討―
田村 康一, 中村 達雄, 水野 浩, 岡田 賢二, 人見 滋樹, 清水 慶彦, 加藤 弘文, 日野 常稔, 城 靖, 寺松 孝
1985 年14 巻2 号 p.
891-893
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
小口径の動脈(4mm以下)に置換し得る人工血管の開発を目的とし, heparinized PVA-SiO
2, Cardiothane塗布人工血管を作製しin vivoの実験をおこなった。移植後1ヵ月目の開存率は, 内径4mm:外腸骨動脈置換-H・PVA-SiO
2 4/5, Cardiothane 3/3。Extra anatomic bypass-H・PVA-SiO
2 1/2, Cardiothane 1/1。内径3mm:外腸骨動脈置換-Control 2/6, H・PVA-SiO
2碗であった。移植後1ヵ月半後に摘出をおこない, 吻合部および内腔の観察をおこなった。いずれの群でも吻合部にパンヌスを認め閉塞していたが, コントロール群でもっとも大で, H・PVA-SiO
2, Cardiothane群では限局していた。中央部の内腔の状態は,コントロール, Cardiothane群共に, フィブリンの付着を認めたが, H・PVA-SiO
2群では, 血栓, フィブリンを認めなかった。開存率では, Cardiotbane群, 内腔の状態ではH・PVA-SiO
2群が優っていた。1ヵ月半以後の開存率に問題はあるが, H・PVA-SiO
2とCardiothaneの塗布が有効であると考えられる。
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毛井 純一, 板岡 俊成, 長柄 英男, 貝塚 秀樹, 曽根 康之, 入江 利明, 横山 正義, 和田 寿郎, 岡野 光夫, 桜井 靖久, ...
1985 年14 巻2 号 p.
895-901
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
抗血栓材料(Poly-hydroxyethylmethacrylateとPoly-styreneから成るABA type block copolymer)を表面Coatingした内径1.5mm, 長さ4cmのtube-graft(HSG)を用い, 雑種成犬において冠動脈血行再建術の実験的検討を行った。再建手技としてGut down法を用い, 体外環境を要しない冠動脈バイパス術を追求した。その結果, HSGによる心筋灌流量はほぼ充分であり, その抗血栓性については最高4週間の開存が得られ, 従来の人工血管に比し優れた成績が認められた。また術後4週間までのHSGの内面において, その血小板活性の抑制が認められ, 内腔の狭窄はほとんどなかった。9週目の月SGは血栓により閉塞していたが, Cut downにともなう吻合部のHSGと自家血管の間のわずかなすきまがその原因と考えられた。吻合部の問題を解決することにより更に長期の開存が得られると考えられる。
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―Heparinized Polyvinyl Alcohol-SilicaとCardiothane―
岡田 賢二, 中村 達雄, 水野 浩, 田村 康一, 人見 滋樹, 清水 慶彦, 加藤 弘文, 日野 常稔, 城 靖, 寺松 孝
1985 年14 巻2 号 p.
902-905
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
heparinized polyvinylal cohol-silicaおよびCardiothaneで加工したDacronを犬の上大静脈に挿入し, これらの物質の抗血栓性を調べた。壁在血栓は無加工のDacronや耳PTFEにおけるよりも薄く, これらの物質の抗血栓性が示唆された。またheparinized polyvinyl alcoholsilicaにより加工したDacronで犬上大静脈を置換したが, 1日後開存していた。
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井島 宏, 山内 栄五郎, 宮 淳, 湊直 樹, 寺田 康, 榊原 謙, 児玉 亮, 井街 宏, 筒井 達夫, 酒井 章, 三井 利夫, 堀 ...
1985 年14 巻2 号 p.
906-909
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
静脈用人工血管として臨床的に満足できる材料は現在のところ, 大口径静脈に対するEPTFEの分節的使用以外にはないといっていい。しかし, 演者らは静脈血行再建術に一時的動静脈瘻を併設することにより, かなり多くの種類の人工血管が静脈用としても使用し得ることを動物実験的に明らかにし, 報告してきた。今回は, 一時的動静脈瘻の静脈再建術における意義とともに, 腸骨―下大静脈領域に使用し得る人工血管としてどのような材料あるいは加工が適当であるかを, 主として慢性動物実験を基に検討したので報告する。使用人工血管の種類は, Dacron, collagen特殊処理Dacron, EPTFE, 外側補強(EXS)Dacron, EXS-EPTFE, cardiothane塗布Dacron, cardiothane塗布EPTFEで, これまでに検討できた摘出標本数は82検体である。その結果, 人工血管の種類に関わらず動静脈痩併設群の開存率は95.8%(23/24)と極めてよかった。それに反し, 動静脈瘻非併設群の開存率は24.1%(14/58)と悪いとともに, 本群における静脈用人工血管材料としての有用性は, これまでのところEP餌Eのみにしか認められなかった。
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宮本 巍
1985 年14 巻2 号 p.
910-911
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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栗林 弘, 水谷 哲夫, 近藤 博, 藤丸 俊樹, 圓谷 敏彦, 柿田 章, 中西 昌美, 佐野 文男, 吉木 敬
1985 年14 巻2 号 p.
912-915
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
目的:門脈再建の代用血管としてのGA HUCVの有用性を実験的に検討した。
方法:雑種成犬の門脈本幹に約2傷長のGA HUCVを間置した。門脈遮断時間は平均25分であった。
成績:25分間の門脈遮断及びGA HUCV移植の術後の肝機能に及ぼす影響は極めて軽微である。移植されたGA HUCV研の開存率は4週までは14/16(87.5%)、3月では3/7(42.9%)、6月では3/8 (37.5%)、15月では1/3(35.5%)であり、移植後の時間の経過とともに低下した。閉塞の原因は、移植後5月以上経過すると著明になってくる吻合部から始まる内膜の線維性肥厚によるものと組織学的に推定された。
結論:門脈再建に移植されたGA HUGVは、15月の長期開存もあり有用と考えられたが、線維性内膜肥厚という問題が残った。
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大原 正己, 江里 健輔, 善甫 宣哉, 野村 真一, 毛利 平
1985 年14 巻2 号 p.
916-919
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
大腿動脈末梢側グラフトとして, 自家大伏在静脈が使用できない閉塞性動脈硬化症例に対し, Mindjchグラフト8例8肢, Dardikグラフト8例9肢に移植し, 術後25か月から42か月の観察期間で両者の遠隔成績を比較し, 以下の結果を得た。開存率はMindichグラフト2/8肢, 25%。Dard瓶グラフト5/7肢, 71%であった。閉塞原因としては血栓形成はMiodich, Dardikグラフトそれぞれ2肢, 感染各1肢, 吻合部仮性内膜過形成はMndichグラフト3肢, 末梢動脈硬化性病変進行によるものはDard瓶グラフト1肢, グラフト不良1(よるものはDardikグラフト1肢であった。
DardikグラフトはMindichグラフトに比し組織反応が低く, 良好な開存率を得た。自家大伏在静脈使用不能例に対してはDardikグラフトを第1選択にすべきである。
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郷 一知, 松居 喜郎, 子野日 政昭, 堀口 裕司, 立木 利一, 枝沢 寛, 合田 俊宏, 佐久間 まこと, 松波 己, 安田 慶秀, ...
1985 年14 巻2 号 p.
920-923
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
大腿動脈以下の慢性閉塞性動脈疾患の血行再建には第1選択グラフトとして自家大伏在静脈を用いる。これを使用できないとき, 最近我々はグルタールアルデハイド処理ヒト臍帯静脈(Dardik biograft)を用い良好な成績を得たので報告する。対象は昭和55年6月から59年9月までに当科で本グラフトを用いて血行再建を行った34例45肢である。18例23肢に大腿―膝窩動脈バイパス, 1例1肢に大腿―脛骨動脈―バイパス, 7例に大腿―大腿cross-over bypass, 8例14肢に腋窩―大腿動脈extra-aratomic bypassを行った。6例を遠隔期に失ったがそのうち5例はpoor riskでextra-anatomic bypassを行った症例であった。累積開存率は, 全体で, 2年目で86%, 3年目で61%であった。Dardik biograftの開存性は良好で, 高齢者, poor risk, extra-anatomic bypassに有用であった。あわせて, 本グラフトの弾性特性, 組織学的特性についても報告した。
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境 普子, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 小窪 正樹, 稲葉 雅史, 和泉 裕一, 森本 典雄, 中山 一雄, 佐藤 綾子, 鮫島 夏樹
1985 年14 巻2 号 p.
924-927
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
小動脈血行再建で充分な長さの自家静脈が得られない場合、自家静脈の不足を他の代用血管で補うcomposite graftが適用されることがあるが、一般にその成績は不良である。教室のcomposite graftの臨床的観察からその主要な原因が連結部にあり、その部の内膜肥厚が問題となると推察された。そこでこの連結部内膜肥厚を阻止する目的で基礎的検討を試みた。雑犬の腎動脈下腹部大動脈に6cmのBigraft+Biograftのcomposite graftを移植する。その場合連結部を2cmのシリコン管で被覆し、非被覆例を対照としてその結果を比較検討した。移植早期では、被覆例, 非被覆例共、内面は一様に薄いフイブリン膜で被われ差異はみられない。移植後6ヵ月の被覆例では、連結部はフイブリン膜で被われ平滑であり、組織侵入は全くみられない。composite graftにみられるgraft連結部の内膜肥厚の防止は、組織侵入を許さない材料による連結部の被覆で可能と左り、graft予後の改善に有用と思われた。
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上野 明
1985 年14 巻2 号 p.
928
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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―人工血管表面性状の違いによる比較検討―
芦沢 賢一, 近藤 治郎, 鈴木 弘治, 中村 俊一郎, 梶原 博一, 真下 好勝, 蔵田 英志, 熊本 吉一, 後藤 久, 松本 昭彦
1985 年14 巻2 号 p.
929-932
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工血管表面性状の違いによる吻合部抗張力の変化を比較検討した。あらかじめ内径6mmのVelour型とnon-Velour型の人工血管を縦につなぎ合わせた長さ3cmのcompositeg raftを作成し, これを雑種成犬22頭の腹部大動脈に中枢末梢交互に置換移植し, 器質化の安定する16週後に両側吻合部抗張力を測定した。縫合糸は吸収性のpolyglycolic acid sutureを使用した。人工血管は1群woven Teflonとknitted Dacron Velour2群woven Dacronとknitted Dacron Velonr 3群woven Dacronとwoven Dacron Velourであり, それぞれ5頭ずつ結果が得られた。平均抗張力は1, 2, 3群ともVelour型人工血管において勝っていたが, 3群においては有意差はなかった。又断裂部はnog-Velour型人工血管では新生外膜がgr8れより剥離されて離開しているのに対し, Velour型人工血管では新生外膜のズレはなく, このことが吻合部抗張力の増強につながったと考えられる。
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―E-PTFEとヒト臍帯静脈との比較検討―
梶原 博一, 近藤 治郎, 鈴木 弘治, 中村 俊一郎, 真下 好勝, 芦沢 賢一, 蔵田 英志, 熊本 吉一, 後藤 久, 松本 昭彦
1985 年14 巻2 号 p.
933-936
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
小口径代用血管として使用されているexpanded polytetrafluoroethylene(E-PTFE)人工血管と保存ヒト臍帯静脈(PHUV)の抗張力を実験的に比較検討した。雑種成犬11頭の腹部大動脈に内径5mmのE-PTFE graftと内径5mmのPHUV graftのcomposite graftを移植し, 4週間まで観察した。結果は, 開存率は72.7%で, 開存例の抗張力は, E-PTFE側では3.91±1.26kg, PHUV側では, 3.46±0.77kgで, 両者に有意の差は認められず, 充分な抗張力であった。離開時の吻合部の状態を検討すると, E-PTEF側は, 新生外膜と代用血管の間に“ズレ”が認められたが, PHUV側は, ほとんど認められず, 両者に著しい相違があった。“ズレ”の少ないPHUV graftは, 感染などにより新生外膜の形成が悪い状態でなければ, 吻合部仮性動脈瘤の予防において, E-PTFEよりは, 優れた代用血管と考えられる。
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小窪 正樹, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 境 普子, 中山 一雄, 石川 雅彦, 和泉 裕一, 稲葉 雅史, 森本 典雄, 佐藤 綾子, 鮫 ...
1985 年14 巻2 号 p.
937-940
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Smooth Surface Vascular Materialの吻合部内膜肥厚発生機序に関し、Abastonotic geometryの異常Compliance mismatch及び代用血管の血液適合性などの諸因子を基礎的に検討した。端側吻合モデルによるAbastonotic geometryの異常に関する検討では、Heel方向への流量配分増大はBamdary layer separationに一致した内膜肥厚を招来し、内膜肥厚と、流出路血流配分が密接に関係している事がわかつた。端側吻合部の内膜肥厚発生には血行力学的変化による内皮細胞剥離が推測されているが走査電顕でpanmus Hyperplasia部の細胞はむしろ密に配例し、剥離の所見は得られなかつた。Compliance mismatchと血液適合性の検討では、Compliance mismatchの補正のみでは内膜肥厚の発生を阻止し得ず、血液適合性の重要性が示唆された。Smooth surface materialではLunen shaping mechanusmを有さない事から、Anastomotic geometryの異常は主に乱流に起因する内膜肥厚を招来すると推察される。
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森本 典雄, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 山崎 弘資, 和泉 裕一, 平田 哲, 稲葉 雅史, 佐藤 綾子, 境 普子, 中山 一雄, 小窪 ...
1985 年14 巻2 号 p.
941-944
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
いかなる代用血管でも吻合部pannus hyperplasiaによる晩期閉塞の可能性が指摘されておりその原因について数々の因子が考えられている。今回はその1つの因子として吻合部内皮細胞に関する基礎的・臨床的検討を行った。ヒト第VIII因子関連抗原を用いたpemxidase-antiperoxidase (PAP)法によりイヌの年常血管の内皮細胞の同定が可能でありイヌとヒトにおける第VIII因子関連抗原の交差反応性が示唆された。雑犬に移植後6ケ月のVelour Knitted Dacron graftではgraft中央においても内腔の一層の細胞はPAP法にわいて内皮細胞と同定された。同様にPTEF graftでは中枢及び末梢吻合部より約5mm graft側に伸びるPannusが認められ細胞はPAP法において内皮細胞と同定された。臨床で術後1年後に吻合部内膜肥厚を呈した自家静脈graftはPAP法では染色されなかつたことから内皮細胞様細胞と考えられ細胞の由来が内膜肥厚に関与している可能性が未唆され今後の検討が必要である。
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三島 好雄
1985 年14 巻2 号 p.
945
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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増田 秀雄, 尾形 利郎, 菊地 敬一, 高木 啓吾, 田中 勧, 吉津 博, 瀬野 尾章
1985 年14 巻2 号 p.
946-949
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
上大静脈再建は原因疾患が悪性腫瘍である場合には一般にその成績は不良であるが, 最近では浸潤性胸腺腫に対してGore-Texを用いた再建例で長期開存がえられている。自験例でも48ヵ月開存を認めるが, graftは強いkinkingを示しておりその長期開存性についてに充分の検討が必要である。したがって我々は雑種成犬5頭を使って, 長さ3cm, 内径10mmのGore-Texを用いて上大静脈再建を行い, 再建後30~41ヵ月の開存性について組織学的検討を行った。閉塞が1頭にみられその原因は感染であり術中汚染によるものと考えられた。開存例の光顕では肉芽形成および再建部中央での内皮細胞下の結合組織増生の不良が認められ, 電顕でも再建部中央に内皮細胞の紡錘形化, 内皮細胞表面の凹凸不整および内皮細胞の易障害性が確認された。これらの結果より市販のGore-Texは比較的再建長の短い上大静脈浸潤を示す悪性腫瘍症例に対してのみ使用されるべきであると考えられる。
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―細小動脈並びに大静脈血行再建を中心に―
岡田 昌義, 高橋 洋, 鶴田 宏明, 伊佐 治進, 中村 和夫, 安岡 俊介
1985 年14 巻2 号 p.
950-956
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工血管の開発や改良と相俟って, 近年人工血管を用いる血行再建術がかなり増加し, しかもその応用範囲もバラエティに富むようになった。大動脈に対する血行再建術には人工血管を用いても, とくに問題はみられないが, 細小動脈や大静脈の血行再建術にはなお多くの問題点が残されている。この点を解明すべく実験的に犬を用いて大腿動脈に静脈, 人工血管としてSauvage及びGore-texを置換, さらに心筋梗塞犬を作成して三種のbypass材料を使用してaorto-coronary bypass (A-C bypass)を行いこれらの有用性を比較検討した。一方では, 34例の臨床例において大静脈の血行再建術を行い, その成績を再建部の開存率から検討した。以上の結果, 細小動脈での血行再建術には静脈使用群で最もよい開存率を示し, Gore-tex, Sauvageもこの順で有用であったが後二者では, なお改良の余地がみられた。一方大静脈の血行再建術ではリング付Gore-texで80%の開存をえ, 現 点では最も秀れた人工血管と考えられた。
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―その実験的評価―
野尻 知里, 今村 栄三郎, 今井 康晴, 森島 正恵
1985 年14 巻2 号 p.
957-961
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
チアノーゼ心疾患に対し, B-T shunt不能例ではE-PTFE tubeを用いた大動脈―肺動脈間短絡術(Ao-PA shunt)が行をわれている。しかしAo-PA shuntの場合両血管が近接し, 短絡路が短い為, 市販のstraight tubeでは屈曲, 変形がおこり易く早期閉塞の原因となる。そこで我々はあらかじめ円孤状に成形したcurved tubeを考案, 雑種成犬においてAo-rPA shuntを作成し従来のstraight tubeと比較した。Straight tubeでは, 術後僅か10日目に大動脈吻合部直下の屈曲部外側に血栓形成を認め, 術後18日目, 3ケ月目の血管造影でも屈曲に一致して内腔狭少化の進行が認められた。1年3ケ月後の剖検例では内腔全域にわたる血栓形成, 機質化が著明で, 特に大動脈側では, 石灰化, 骨化成等の所見がみられた。一方curved tubeでは, 術後3ヵ月目の造影は滑らかな円孤状の内腔を示し, 1年3ヵ月後の剖検では, 血栓形成は全くなく, 比較的smoothな為内膜形成がみられた。
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星野 修一, 副島 健一, 河田 政明, 黒沢 博身, 高梨 吉則, 今井 康晴, 高尾 篤良
1985 年14 巻2 号 p.
962-965
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
肺動脈低形成のチアノーゼ性心疾患に対する短絡手術々式は, Blalock-Taussig手術をはじめとして数多くの術式がある。さらに, FPTFE人工血管など人工血管の導入により, その術式は多種多様となってきた。しかし, 従来多く用いられてきた人工血管は, 屈曲による狭窄が生じやすい。そこで, 彎曲による狭窄の生じることの少ないリング付EPTFE人工血管に着目し, 1983年9月より12症例に臨床使用した。その結果, 術後, 末梢動脈酸素分圧は有意(P<0.005)に上昇し, ヘモグロビン値は有意(P<0.005)に低下し, 心胸廓比は有意(P<0.005)に増大し, 有効な短絡量が得られた。また, 術後最長13ケ月の現在まで閉塞した症例はない。鎖骨下動脈が細く十分な短絡量が期待できない症例. 再短絡術症例及び年長児症例など短絡術に人工血管を必要とする症例に対しては, リング付EPTFE人工血管は有用な人工血管と考えられた。
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勝村 達喜
1985 年14 巻2 号 p.
966
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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赤羽 紀武, 山本 敬雄, 氏家 久, 梅沢 和正, 三浦 金次, 養田 俊之, 桜井 健司
1985 年14 巻2 号 p.
967-970
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
E-PTFE人工血管の長期移植成績で, 吻合部とぐに末梢側に狭窄が生じやすく, それが閉塞につながることが問題となっているがその原因は解明されていない。F-PTFE血管は血栓付着しにくい表面性状を持つとされているが, 移植後の器質化で形成される新生内膜は剥離しやすく安定しない。そこで吻合部の狭窄もこれに関連し, 伸長するpanusの先端が繰返し剥離し次第に肥厚した内膜を形成すると推測してみた。そしてE-PTFE人工血管の吻合部内面に新生内膜が固着しやすい性状を付加する目的で縫針による乱刺で多孔性粗面を作成し実験犬の腹部大動脈への移植実験を行なった。結果は2ケ月の時点で末梢側の乱刺加工した半周にpanusの伸長が大きく, 安定した固着が見ちれた。無処置の半周では吻合部近くに内膜肥厚の発生が見出された。この所見は伸長するpanus先端の固着性が晩期末梢吻合部狭窄の発生に関与するとの仮説の第一段階として有意であると考える。
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佐藤 綾子, 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 稲葉 雅史, 和泉 裕一, 森本 典雄, 小窪 正樹, 境 普子, 中山 一雄, 鮫島 夏樹
1985 年14 巻2 号 p.
971-974
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血管吻合治療に対して縫合糸がどのように関与し影響を与えているのかを、吸収性ならびに非吸収性縫合糸を用いて基礎的に検討し、吸収性縫合糸の血管吻合への応用の得失について明らかにした。雑犬39頭の腹部大動脈に代用血管を吸収性Polyglycolic Acid(PGA)糸, Polydloxanon (PDS)糸, contrlとして非吸収性のPolypropylene (PP)糸を用いて移植した。PGA糸吻合部は縫合糸が吸収された後では異物反応は消失し、長期になる程良好な組織治癒を示した。PP糸側は硝子化結合織が存在し、吻合形状の平滑化を妨げていた。全例に吻合不全、動脈瘤の発生をみず、12ヵ月後の引つ張り及び耐圧試験ではPGA側とPP側の間に有意差を認めなかつた。縫合糸の吻合部強度への関与は長期になる程少なくなる事が確認された。PDS糸はmonofilament構造の吸収性縫合糸であり、抗血栓性に優れ組織損傷が少なく、小口径血管吻合ではより理想に近い糸であると考えられた。
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小出司 郎策, 稲村 俊一, 金渕 一雄, 福田 崇典, 小川 純一, 井上 宏司, 川田 志明, 正律 晃
1985 年14 巻2 号 p.
975-979
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
過去5年間に下肢虚血に対して行ったEPTFEグラフトによるextra-anatomic bypass (EAB)25例, 33肢について, 術後合併症, 救肢率, 開存率を検討した。
EAB不成功が3例にみられたが, EABグラフトの急性期閉塞は1例も認めなかった。遠隔期閉塞はAx-Fバイパスの2例にみられたが, 再手術により開存が得られている。末梢病変を伴う場合, 初期にはtwo-step bypassを用いたが, 最近ではsequential bypassを行っている。
EABによる重症虚血下肢, 19肢の救肢率は4年間で70%であった。また, EAB成功22本の累積開, 存率は4年間で90%で, 現在開存中の12例, 14肢の足首/上腕血圧比の平均値は, 0.94±0.14と良好な開存を示している。EPTFEグラフトによるEABの長期開存率, 開存状態がともに良好で, グラフトに関連する合併症も少なく, 本グラフトによるEABの適応を拡大しても良いと考える。
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窪山 泉, 森田 茂樹, 徳永 皓一, 原澤 泰比古, 渡辺 義明, 野瀬 善明, 砂川 賢二, 中村 元臣
1985 年14 巻2 号 p.
980-983
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Thromboexclusion techniqueにおける血行動態を解明するために, 犬を用いて実験的検討を行った。正常な血流のCONTROLと, 上行大動脈・腎下部腹部大動脈間に人工血管でバイパスし下行大動脈を遮断したBYPASSの両者について比較した。両者間に心拍数や左室拡張末期圧, 左室収縮末期径, 左室拡張末期径, 1回拍出量, 右房圧, LV dp/dt, 平均動脈圧, 体血管抵抗は差がみられなかった。CONTROLに比べBYPASSでは, 有意に収縮期動脈圧が上昇し, 拡張期動脈圧は低下し, 更にdouble productは増大していた。大動脈入力インピーダンスの結果から, 動脈系のコンプライアンスは同等であったが, BYPASSでは特性インピーダンスが倍増していたことが判明した。Thromboexclusion techniqueは心筋酸素の消費と供給の面で心臓にとって不利な循環動態であり, その原因は特性インピーダンスの増加に基くと推測された。
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松本 博志
1985 年14 巻2 号 p.
984
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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石原 和明, 中江 世明, 土田 弘毅, 秋山 一也, 平山 統一, 高 秀成, 橋本 明政, 森 有一
1985 年14 巻2 号 p.
985-988
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ヘパリン化親水性材料(以下H-PSD)をコーティングしたチューブを一時体外バイパスとして用い, 胸部大動脈手術において良好な成績を得たので, 若干の実験結果も合わせて, 検討し報告する。症例は7例で, 男4例, 女3例, 年令は16歳から60歳までであり, 疾患は大動脈瘤5例, 大動脈縮窄症2例である。全例に一時体外バイパス下に, 人工血管置換術あるいは大動脈再建術を行ない, 死亡例はなかった。術中の血行動態は極めて安定しており, 上下肢の圧差は平均圧で10~15mmHgであり, 尿量も十分確保された。手術手技の上でも, 視野の妨げにならず, バイパス作製も容易であった。術後, 血栓塞栓症, 腎不全, 対麻痺などの合併症はなかった。
今後とも症例を重ねることにより, その適応は, より拡大されるものと考えでいる。
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小川 恭一, 鶴田 宏明, 山本 信一郎, 中尾 守次, 麻田 達郎, 良原 久雄
1985 年14 巻2 号 p.
989-991
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
1981年11月より1984年9月までの約3年間に入院治療を行った大動脈解離症は19例であり, そのうち9例で外科治療を施行しうち4例が生存した。9例中6例で発症後1~3日(平均1.5日)以内の急性期に手術を施行したが最近の急性期の3例(A型2, B型1)ではIntraluminal graftの内没を行い, 1例が縦隔炎で1か月半後に死亡したがA型の1例, B型の1例で生存が得られた。Intraluminal graft内没法は手術時間の短縮と出血量の節減という点で急性期の本症に有用であり、ことにreentryを有するA型や胸腔内に出血しているB型によい適応であると思われる。
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―体外循環下使用の実験的研究―
束茂 樹, 今村 洋二, 梅津 泰洋, 鈴木 暁, 内藤 千秋, 川田 光三
1985 年14 巻2 号 p.
992-995
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
high porous graftの体外循環下使用の可能性につき検討するため, knitted double velour dacron graft (porosity 1900ml/cm
2/120mmHg)およびwoven double velour dacron graft (porosity 280ml/cm
2/120mmHg)をヒト血漿を用いてpreclottingし, 70℃で熱処理後, 全血にてpredottingした。この血漿熱処理人工血管を実験犬の体外循環回路内に組込み, 平均120mmHgの圧をかけ漏血量測定を120分間施行し, 漏血に対する線溶およびporosityの影響につき検討した。次にヒト体外循環回路内に血漿熱処理人工血管を組込み, 漏血量測定および線溶活性測定を行なった。実験犬およびヒトの体外循環下における血漿熱処理人工血管の使用に際し, 漏血量減少には線溶活性阻止が重要な因子であった。また, 本法によりpreclottingしたwoven double velour dacron graftはトラネキサム酸併用により, 120分までの体外循環下使用に耐え得ると思われる。
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北條 浩, 高本 真一, 長谷川 和康, 森田 紀代造, 安達 秀雄, 許 俊鋭, 横手 祐二, 尾本 良三
1985 年14 巻2 号 p.
996-999
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
我々は, 83年5月より, 人工血管のPreclottingに際し, Albmin熱処理Preclotting法(以下AAP法:25% Albminに浸した後, 135℃5分間オートクレーブする。)を使用してきたが, 今回, AAP法の体外循環非使用例につき, その臨床的有用性を検討すると共に, 臨床例及び動物実験により摘出したAAP法の走査電顕による所見を検討した。体外循環非使用例, 17例(胸部大動脈3例, 腹部大動脈11例, 末梢血管2例, 一時的腋窩大腿動脈バイパス7例)にAAP法を使用した。
AAP法は簡単に短時間ででき, Knitted Dacron人工血管にも使用でき, 血液の漏出がほとんどなかった。長期的にも血栓塞栓症はなく, 人工血管の開存は良好で, 感染症も見られなかった。臨床例と動物実験の走査電顕所見では, 仮性内膜形成までは見られないが, Fibrin Netの形成が密で, 表面はスムーズであった。
今後長期の内膜形成については検討を要するが, AAP法は臨床的に有用なPreclotting法である。
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佐々木 孝, 松崎 智哉, 山本 直樹, 菊地 洋一, 山田 修, 渡辺 祝安, 数井 暉久, 小松 作蔵
1985 年14 巻2 号 p.
1000-1004
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
編織人工血管に対するpreclotting法が工夫、考案されているが、著者らは(1)全血法、(2)フィブリン法、(3)アルブミ熱処理法の3者について器質化に対する影響、血液漏出の程度および線溶活性に対する抵抗性、強度劣化の有無、術後肝機能障害の発生頻度につき検討した。
器質化は3者とも置換後15週で内皮細胞が人工血管内腔を覆い、大きな差違は認められなかった。血液漏出に関してはアルブミン熱処理法が最も優れており、フィブリン法は線溶活性に対し抵抗性を有さず臨床においても1例で大量の血液漏出を認めた。アルブミン熱処理法でsuture retentionの減弱を認めた。臨床で直ちに問題となる程ではないが長期耐久性に関する検討が必要と思われた。肝障害発生頻度はフィブリン法、全血法の間に差を認めなかった。これらpreclotting法はそれぞれ長所、短所を有しており、置換部位や補助手段法などにより症例に応じた方法を選択することが肝要と思われた。
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橋本 明政
1985 年14 巻2 号 p.
1005
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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加藤 真司, 永由 昌久, 小林 正治, 塩井 健介, 北川 茂久, 間瀬 武則, 倉橋 忠司, 保坂 実, 佐原 達也, 今村 靖, 杉本 ...
1985 年14 巻2 号 p.
1006-1009
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
代用血液として, 酸素運搬能の含む種々の利点を有するFluosol-DAの心筋保護効果を, 動物実験にて, 心機能の面から比較検討した. 雑種成犬23頭を心筋保護液別に, 電解質液(4℃, K
+20mEq/L)C群, Fluosol-DA (4℃, K
+20mEq/L)F群, 両者混合液(4℃, K
+20mEq/L)FC群の3群に分け, 完全体外循環下(以下ECC)に60分間の大動脈遮断を行った. この間各群の心筋保護液50mlを20分毎に大動脈基部より注入した. 心機能の指標として, 大動脈平均圧(MSAP), LV max dp/dt, 拍出係数(SVI), 心係数(CI), 左室仕事係数(LVSWI)のECC前後の%回復率及びECC後の容量負荷に伴う左室機能曲線を求めた. 結果は, %回復率では, F群がMSAP, SVI, LVSWIにて有意に高く, 左室機能曲線では, FC群が良好であり, Fluosol-DAは心筋保護液として有用に思われた.
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寺岡 慧, 阿岸 鉄三, 山形 桂仁, 小林 峰徳, 江良 和夫, 渕之上 昌平, 本田 宏, 高橋 公太, 太田 和夫
1985 年14 巻2 号 p.
1010-1013
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
perfluorocarbon (PFC)を用いて全身血を交換するNomothermic Whole Body Rinse-outを実験的急性薬物中毒および黄疸犬に施行し, その効果および安全性について検討した。PFCによる血液置換時ヘマトクリット値は5%以下となり, 循環血液量の約90%が交換されたと考えられる。PFCの回収は遠心分離により行い, その回収率は64.8%であった。本法施行中血圧, 中心静脈圧, 尿量などは安定しており, PaO
2は350mmHg以上, 直腸温は36℃前後に維持された。両側尿管を結紮し急性腎後性腎不全の状態としたイヌに, digoxinおよびparaquatを投与して本法を試みたところ, そのclearance rateはそれぞれ90%, 80%であった。あらかじめ総胆管を結紮して得られた黄疸犬においては, 本法によるビリルビンのclearance rateは90%であった。本法は安全かつ有効な血液浄化法として, 将来急性肝不全あるいは急性薬物中毒に対する臨床応用が期待される。
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―Digital Subtraction Angiographyへの応用―
板岡 俊成, 和田 寿郎, 毛井 純一, 笠置 康, 貝塚 秀樹, 横山 正義
1985 年14 巻2 号 p.
1014-1017
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Radiopaque perfluorooctylbromide emulsions were prepared with small particles and effective oxygen-transferring performance and were applied to the angiography. Contrast of FOB was inferior to the conventional iodine compound radiopaque medium. Application of FOB to the digital subtraction angiography was able to show the fine imaging of angiogram.
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安達 盛次, 福田 幸人, 野田 裕幸, 岩田 博夫, 中谷 武嗣, 松田 武久, 高野 久輝, 阿久津 哲三, 川島 康生
1985 年14 巻2 号 p.
1018-1021
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血液中に混入せる人工血液-PFC乳剤の遠心分離法による除去効率の改善を目的として, 除去効率に及ぼす血中PFC濃度の影響を検討した。血中ヘモグロビン濃度1.2~3.9g/dl, PFC濃度4.4, 8.8, 13.1, 17.5, 21.9, 26.3, 30.6g/dlの血液を遠心力1800Gで10分間遠心分離した結果, 回収された血液中のPFC残留量は, 血中PFC濃度13.1~17.5g/dlにおいて最大となり, それより高濃度および低濃度域ほど少量となった。血中PFC除去率は, 血中PFC濃度が13.1g/dlの時最低となり, これより高濃度および低濃度域ほど高値となった。特に血中PFC濃度26.3g/dl以上においては, PFC除去率は95%以上を示した。連続遠心分離装置, IBM2997を用いてPFC濃度14および25g/dlの血液を遠心分離した結果, 回収血液中PFC残留量は前者において高く, PFC除去率は後者において高かった。適切な血中PFC濃度において行なう事により, 遠心分離法の効率を向上し得る事が示唆された。
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―特にマクロファージ機能の抑制について
三浦 純一, 薄場 彰, 井上 仁, 山村 裕宏, 元木 良一
1985 年14 巻2 号 p.
1022-1025
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
Perfluorochemical (PFC)は酸素運搬能を有する血漿増量剤として臨床応用されようとしているが、投与後細網内皮系のMacrophage(Mφ)に取り込まれることによりMφ機能を抑制すると考えられた。著者らはマウスを用いてPFCの免疫抑制作用及びその機序を検討し以下の結論を得た。1) PFCはマウスの脾細胞のTcell mitogenic responseを抑制し、羊赤血球に対する抗体産生能も低下させる。2) PFCは皮膚遅延型過敏反応を著明に抑制する。3) IN VITROではPFCの添加によって抑制されたTcell mitogenic responseは正常MφまたはInterleukin-1 (IL-1)の添加によって回復した。4) Mφ細胞株のIL-1産生はPFCにより抑制された。
以上よりPFCはMφのIL-1産生を抑制することにより2次的にTcellの免疫学的機能を抑制すると考えられた。
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元木 良一
1985 年14 巻2 号 p.
1026
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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浜田 良機, 赤松 功也, 福島 博, 中島 育昌, 井手 隆俊, 横山 巌, 佐藤 英貴, 山口 利仁
1985 年14 巻2 号 p.
1027-1030
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
臼蓋形成不全を伴う変形性股関節症に対してセメントレス人工関節を挿入した際、術後にしばしばソケットの移動がみられる。そこで、これを防止する理想的な人工臼蓋の角度をコンピューターシュミレーションにより検討した。方法は川井により開発された「剛体-バネモデル」を用いた離散化極限解析法により行なった。シュミレーションの条件として、(1)臼蓋形成不全のない場合、(2)臼蓋形成不全があり、スパイクが骨盤腔内へ突出しない場台、(3)臼蓋形成不全があり、スパイクが骨盤腔内へ突出している場合である。その結果、最も人工臼蓋が安定する開外角は、臼蓋形成不全がない場合は、35度、臼蓋形成不全がある場合には40、45度であった。しかしその安定性は前者に比べて劣り、結果的には、開外角35度で挿入し、臼蓋底とソケットの間隙には十分な骨移植を行うことが術後の人工臼蓋の安定化に最もよい方注であることがわかった。
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稲垣 豊, 天野 泉, 美濃 和茂, 都築 一夫
1985 年14 巻2 号 p.
1031-1035
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
silicone rubberを用いて小児用flexible single lumen (FSL) catheterを開発した。抜去防止の為に途中にstainless steel pipeを入れ, 先端よりpipeまでの距離が150mmの上大静脈用と200mmの下大静脈用の2種類作製し, dead spaceはそれぞれ0.55mlと0.70mlであった。血流はsingle needle dialysis (SND)において最大約150ml/minで100~120ml/minは安定して得る事が出来た。従来は大人用のFSL catheterを小児に用いていたが, 小児用を開発した事によりSNDにおげる無効血流を大巾に減少させる事が可能となった。次にflexible double lumen catheterをより使用しやすくするとともに再循環を防止しレントゲンで位置の確認出来る様に改良した。各lumenにヘパリシを満してロックする方法はmicropumpで接続注入する方法に比べれば閉塞防止効果が劣るも点滴法と同程度の効果があった。
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望月 政嗣, 梅村 吉弘, 尾崎 安彦
1985 年14 巻2 号 p.
1036-1040
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
現在広く行われている導尿カテーテルの体内留置による持続導尿法においては, 膀胱は常に収縮した状態にあり, その後底部には常に少量の残尿が滞留している。そのために膀胱内に細菌が侵入した場合, その残尿が細菌増殖の絶好の培地として作用することが広く知られている。我々は上記問題点の解決を一つの目的として, カテーテル留置下においても膀胱が生体本来の膨張―収縮を繰り返す簡便な人工補助膀胱装置及びそれを用いた自動間歇導尿システムを開発中である。本報ではそれに先立ち, 間歇導尿システムにおける膀胱内細菌の増殖挙動を, 理論及びin vitroにおける培養実験より検討した結果, 細菌尿を防止する上で, 現行の持続導尿法より優れていることが明らかとなった。
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進藤 剛毅, 宮脇 富士夫, 井手 博文, 小塚 裕, 和気 一夫, 中田 恵, 高浜 龍彦, 横井 泰, 斎藤 寛文, 浅野 献一
1985 年14 巻2 号 p.
1041-1044
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
熱流補償方式による深部温計測はZero-heat-flow理論に基き体表から体内深部の体温を無侵襲で連続的に記録できる非観血的生体監察法である。心臓外科領域では, この深部温の変化が循環動態の変化と相関を持つものと考え研究されて来たが未だ見るべき相関は得られていない。
著者らは生体温が中核温と外殻温の二層構造を持っていること及び体温は経時的に変化することに注目し, 開心術症例に於て中枢温及び末梢深部温を同時にかつ連続的に測定し, これより(1) ICU入室時から末梢深部温上昇開始までの時間(lag time), (2)末梢深部温上昇開始 より上昇完了プラトーまでの温度較差△T, 及び(3)上昇温度勾配tanΘを新しい指標とし, これらが循環動態指標(心係数, 末梢血流量)との間に高い相関を持つ有用な深部温指標であることを明らかにした。
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渕之上 昌平, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三, 光野 貫一, 本田 宏, 林 武利, 大場 忍, 河野 宏子, 中沢 速和, 奥村 俊子, 水口 ...
1985 年14 巻2 号 p.
1045-1048
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
切除不能な進行性固型悪性腫瘍に対し, 米国Norfolk社製Vascular Access Portを支配動脈内に挿入し, これより制癌剤を注入しつつ同時に免疫療法, 局所高温療法を併用した集学的治療法を施行した。対象は, 年齢30歳から73歳までの, 末期悪性腫瘍患者であり, うちわけは, 原発性肝癌2症例, 胆管癌, 胆のう癌, 膵癌, 腎癌, 各1症例である。注入した制癌剤は, MMC, 5-FV, ADM, Hu IFN-β等で投与量, 投与期間は症例により異った。効果は, 3例に腫瘍の縮少を認め, 1例に自確症状の改善を認めた。無効例は1例であり, 胆管癌の症例は, 肝不全のため薬剤の注入が行えなかった。合併症として, 血栓が1例に, カテーテルのSlip outが1例にみとめられたが, 他に重篤な合併症はみられなかった。本法は, チューブ, 注入部とも, 完全に患者体内に埋込まれ, 従来のクロノフューザー使用時の患者の制限は全くないのが特徴である。
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東間 紘
1985 年14 巻2 号 p.
1049
発行日: 1985/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー