人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
14 巻, 3 号
選択された号の論文の184件中51~100を表示しています
  • 満淵 邦彦, 藤正 巌, 井街 宏, 中島 正治, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 塚越 茂, 本村 喜代二, 渥美 和彦, 河野 明正, 小野 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1227-1230
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 空気圧駆動型完全人工心臓において種々の制御方法を検討するために使用しうる汎用の自動制御システム開発のための, 制御アルゴリズムを開発することである。1)任意の制御パラメータの一定の目標値に対し, 生体側の外乱の引加にかかわらず, 制御量を一定に保つ定値制御, 2)目標値をあらかじめ設定した関数に沿つて変化させた場合, 制御パラメータの制御量がそれに追従しうるような追従制御, 3)機械系のトラブルや血栓などによる血液ポンプのトラブルに対処するための制御, の3種の制御に対する制御アルゴリズムの開発を行った。入力情報は右心, 左心のストローク状態と右心流量である。操作パラメータは, 駆動陽圧, 駆動陰圧, 駆動陰圧, 収縮期比率, 拍動数で, 基本的にこのうちの2パラメータ以上を変化させている。変化させる操作パラメータの優先順位及び許容範囲は, あらかじめ任意に設定しておき, これに従った。制御装置にはマイクロプロセッサを用いている。
  • 申谷 武嗣, 梅津 光生, 高野 久輝, 妙中 義之, 田中 隆, 岩田 博夫, 松田 武久, 野田 裕幸, 安達 盛次, 福田 幸人, 関 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1231-1234
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全患者の循環管理を効果的に行うために, 補助人工心臓(VAD)における定値制御系の開発を進めてきた。これは左房圧と総流量(心拍出量+バイパス流量(BF))を目標値とし,それぞれが設定範囲に入るようにBFをポンプ収縮時間比(Fs)を介して自動制御を行うシステムであるが, Fsの変化幅及び変域が外部より入力可能とした。本制御系を動物実験で検討したとこち, 循環動態が不安定な時期には, Fsの変化幅を+6~+4%とし, 安定してからは+4~+2%とすることが適当であった。又減少については-2%で行うのが, 生体の過剰な反応を引きおこさず安全であった。Fsの変域についてはポンプの流量特性が症例毎に, 又同一例でも経時的に変化するので, 適宜流量特性を把握し各時点における適当な範囲を設定することにより, きめ細かな循環管理を安全に行い得た。本制御系を用いることにより, 重症心不全患者の循環管理は簡素化され, 又臨床使用においても充分に有用であることが確認された。
  • 高木 啓之, 高木 登志子, 神納 美紀子, 早川 政史
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1235-1238
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しい弁評価法として, 自動制御のパンピングを利用する方法を開発し, それを導入して, TAHを高能率化するためには, 流入弁にどんな性格が必要かを, pocketless leaflet弁, modified duct ball弁, hinge弁を使用して検討した。その結果は, 低圧の右心系では, leaflet弁が最もすぐ地ていることが判明, 高圧の左心系では, 上記3種の中ではball弁が最も望ましいものではあったが, diastoleが長いという欠点がある。したがって, leaflet弁では, 血栓形成を100%予防するデザインの改良が, 上記ball弁では, diastoleを短縮するという基本的改良が必要であると判明した。市販のdisc弁は, 恐らくhinge弁と同様で, 弁閉鎖のための逆流が多く, そのための血液が無限にある大動脈弁にはよいが, サック型ポンプの流入弁としては, stroke volumeが減るから不適当と思われる。
  • 佐藤 尚, J. SNOW, W. SMITH, 原崎 広章, 兼古 悟, 松下 昌之助, J. KASICK, R. KIRALY, 能勢 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1239-1242
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    機械的駆動による完全植込み式人工心臓では、拍動毎の非血液接触側での容積変化を吸収する機構が必要で、その目的のたあに、胸腔内に植込まれるcompliance chamberが開発された。Uacron velourで被覆されたHexsyn rubberによるflexing diaphragmを持つchamberは、病理組織学的に安定した、薄いtissue capsuleにより覆われ、植込み後1年間でコンプラィアンスが半減したものの、その後は変化することなく、植込み2年後でも良好な値を維持していた。Compliance chamberを使用することによるエネルギー消費は多く見積っても0.2 Watts-sec程度で、システム全体の効率には大きな影響を及ぼさないと考えられた。Chamberおよび血液ポンプのdiaphragmは気体の透過性があり、1.2ml/日程度の気体が失われた。またdiaphragm周辺環境のガス分圧に応じて気体のガス組成も変化していた。この気体の容積変化を補正する限り、compliance chamberは本来の目的を十分に達し得るものと思われた。
  • 藤正 巖
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1243
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 岩谷 文夫, 星野 俊一, 猪狩 次雄, 井上 仁, 薄場 彰, 安藤 正樹, 阿部 俊文, 高野 光太郎, 丹治 雅博, 佐戸 川弘之, ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1244-1247
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓置換動物で心不全モデルを作成し, 一定期間後に容量の大きな人工心臓で再置換を行ない, 心不全より脱却を図ることを実験目的とし, 併せて再手術手技についても検討を加えた。体重60kg前後の3頭のホルスタイン雄仔牛に初回手術として1回拍出量30~60mlのトーマス型人工心臓を置換した。1頭目は, 術後早期にBrisket edemaが出現, 相対的低心拍出量による心不全症状を示し, 再手術を予定したが術後23日に突然死した。2頭目は術後24日には左房圧が25mmに上昇し, 初回手術と同側の右開胸にて両側人工心臓の再置換手術を行なったが, 術中出血の為, 救命できなかった。3頭目は, 手術・術後ともに順調に経過したが, 術後8日, 胃潰瘍からの出血にて失った。以上より心不全に陥った仔牛に対する右開胸による両側人工心臓の再置換は可能であったが, 癒着が高度で, 初回手術における工夫を必要とした。
  • 田中 隆, 高谷 節雄, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1248-1251
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    in-vivoのTAH実験いおいて, 左心ポンプ流量が右心側い比べ10~25%多いことが報告されている。当研究所のTAHシステムではプッシャープレート型ポンプを用いて, ホール信号をもとに毎分流量を算出している。この方法では, 弁の逆流や右房から肺動脈への流れ込みは測定されず, 左右ポンプの流量差に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では, 心房の拍動を考慮したin-vitro実験を行い, 右房から肺動脈へ直接流れ込む条件を明確にするとに, 弁の逆流による影響について調べ, これらの測定誤差を定量的fr把握した上でホールセンサによる流量測定法の妥当性について検討した。その結果, VR (variable pulserate)及びA-SYN (atrial synchronous)モードで駆動することによって測定誤差は5%未満におさえることができ, ホールセンサを用いた流量測定法の妥当性が確認できた。左右ポンプの流量差については, 計測上の問題よりも気管支循環等の生理学的な要因が大きいと思われる。
  • 高野 久輝, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 梅津 光生, 松田 武久, 岩田 博夫, 安達 盛次, 田中 隆, 野田 裕幸, 福田 幸人, 林 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1252-1255
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Single artificial heart (SAH)とは, 機能を停止した心臓に代わり, 左心系に挿入した1つの血液ポンプのみで, 全身の循環維持を計る方法である。今回慢性実験で長期間の循環維持に関し, 山羊を用いて検討を加えた。(1) PVR・I (肺血管抵抗×体重)が10,000-15,000 dynes. sec. cm-5. kg以下であれば, 右房圧を10-16mmHgに保つ事により, 全身の循環維持(血流量が80ml/kg/min以上)が可能であり, 山羊は普通の生活が可能であった。(2) PVR・Iが高ければ必要血流量が得られず, LOSとなった。PVRが高い場合には, torazeoline等の肺血管拡張剤が効を奏する場合があった。(3) RAPを高く保つために, 山羊においては胸水等の貯溜を認め, 頻回の胸腔穿刺を必要とした。(4) LVAD施行中に遭遇する心停止や心室細動は, 本法を応用することにより対応でき, 回復不能の場合でもTAH置換, 又は心臓移植までの時間を稼ぎ得ると考える。(5)収縮しない心臓は, 心筋の萎縮や繊維化等退行性変化を招来した。
  • 薗 潤, 荻野 均, 橋平 誠, 立道 清, 福増 廣幸, 青田 正樹, 田中 洋三, 湯浅 貞雄
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1256-1259
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヤギを用い, 空気駆動膜型完全置換型人工心臓(東マス技研製)の体内植込み実験を12例におこない, 最長8日間の生存記録をえた。ヤギの体重は42~70kg(平均57kg), 体外循環時間は132~266分(平均206分), 生存記録は0~8日(平均2日)であった。人工心臓自体が死亡原因となったのは, 僧帽弁のstuckingをおこした1例のみで, 他の11例では人工心臓は順調に作動し, 血栓形成も認められなかった。死因としては出血が最も多く5例に認められ, 肺合併症3例, 腹満2例, hypovolemia 1例の順であった。現在迄の主な改良点は(1)左心側にBjörk-Shiley弁に代りMedtronic-Hall弁を使用する(2)輸血用血液をヘパリン採血からACD採血に変更(3)人工心肺中はクロールプロマジンを積極的に使用し, 80ml/kg/minの送血量を保つ。(4)術前3日間の絶食を徹底し, 麻酔に笑気を使用せず, OF麻酔をおこなうことなどである。今後は電磁流量計を上行大動脈に装着し, 至適な駆動条件の把握に努めたい。
  • 塚越 茂, 藤正 巌, 井街 宏, 中島 正治, 満渕 邦彦, 本村 喜代二, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 河野 明正, 小野 俊哉, 滝戸 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1260-1263
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環下に自然心臓を切除し人工心臓置換を行なう完全置換型人工心臓(TRAH)植え込み実験において今回344日の世界最長生存を得た。このヤギの病理所見を調べ, 循環障害病変を中心とした人工心臓の問題点について検討した。その結果, 主要病理所見として, 石灰化をともなう多臓器の血栓および血栓塞栓病変, および肝の小葉中心性壊死と繊維化をともなう循環障害様病変が観察された。しかし他の臓器には特に異常は認められず, これら二つの問題点の解決が今後の人工心臓開発上の重要な課題であると考えられた。
  • 渥美 和彦, 藤正 巖, 井街 宏, 中島 正治, 塚越 茂, 満渕 邦彦, 本村 喜代二, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 河野 明正, 小野 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1264-1267
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環下に自然心臓を切除する完全置換型人工心臓のヤギの実験に論いて, 344日の世界最長生存を得た。術後226日目に発生した血栓による肺栓塞が生じたので, 両心の血液ポンプを交換した。
    血栓は血液ポンプのサックに生じた石灰化に関連して形成されたものと考えられる。
    以後, 低酸素血症, 循環障害, 慢性貧血を示し, 全身状態が悪化したため実験を終了した。剖検により, 感染はなく, 全身の浮腫, 肺, 腎臓などの血栓による栓塞, 肝臓の循環不全による病変がみとめられた。
  • 星野 俊一
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1268
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 野田 裕幸, 梅津 光生, 吉原 稔貴, 山寺 芳美, 中谷 武嗣, 野川 淳彦, 田中 隆, 福田 幸人, 岩田 博夫, 松田 武久, 土 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1269-1272
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    置換用心臓代用弁の開発を目標に, 医用高分子材料(セグメント化ポリウレタン)を用いて, ステント部の構造, 弁葉形態, 弁葉肉厚のそれぞれ異なる弁を作製し, それらに対してin-vitroの機能評価試験を行ない, 各項目の水力学的特性との関係を検討した。その結果, 定常流試験では, Coaptation zoneが面接触である弁は, 他の弁とは異なり抵抗の増大が一様ではなかった。定圧もれ試験では試験弁は全て150ml/min自とBjork-Shiley傾斜型Disk弁(B-S弁)の約1/3程度であり, 各弁間の差はなかった。拍動流試験では, ステントの可動性を増す事で算出有効弁口面積(EOA)は大動脈弁位では29%増大した。又Coaptation zoneを5mm増す事で大動脈・僧帽弁位のEOAは, それぞれ12及び25%の減少を認めた。弁葉の肉厚を0.28mmから0.1mmへ薄くする事により, 流量は大動脈・憎帽弁位でそれぞれ5及び7%増大し, EOAでは両弁位共に70%もの増大を認め, 結果的にB-S弁を水力学的に凌ぐ弁を試作できた。
  • 筒井 達夫, 前田 肇, 酒井 章, 岡村 健二, 井島 宏, 三井 利夫, 堀 原一, 北条 正樹
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1273-1276
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは人工三葉弁の水力学特性の改善, 耐久性の向上を目的として, ナイロンメッシュ強化ポリウレタンにより斜円錐面の一部として弁尖を作成した。抵抗係数, 逆流率などの水力学特性は良好であり, 耐久試験では20×106サイクルでも破断を示していない。ポリウレタン単材を用いた人工三葉弁のin vivo試験では良好な抗血栓性を示したが, 製作上不整形になりやすい部位の抗血栓性は低下した。以上より, 弁尖をメッシュ強化ポリウレタンを用い, 座屈しやすい曲面により作成することは耐久性, 水力学特性の向上に有効であることが示された。また充分な抗血栓性を発揮するためには, 製作上の品質管理が重要であると考えられた。
  • 木島 利彦, 横山 能周, 日下部 正宏, 大川 恭矩
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1277-1280
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    主として、補助循環用血液ポンプに組込むことを目的とした新型人工弁を考案した。本弁は円錐状の弾性膜と3本の支柱により構成され、弾性膜が中心方向にすぼまることによつて開放する偏心流型の三葉弁である。今回は円錐面の中心軸が管路中心軸と一致するものと、ある傾きを持つものの2種をポリウレタンにより試作し、Björk-Shiley弁と流体力学的な弁機能特性を比較検討した。比較は定常流試験, もれ試験, 大動脈弁位におけるMOCK回路試験の3つの実験によつて行った。その結果、膜厚が0.2mm以下のものについては、拍動流下でもBjörk-Shiley弁と同等の拍出流量が得られ、心拍数の増加に対する追従性も同等以上であることが確認できた。また、本弁は非常に単純な形状をしており、成形も容易であつた。
  • ―XPSによる表面分析―
    勇田 敏夫, 三田村 好矩, 斉藤 剛
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1281-1284
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工弁の材料として, その生体適合性, 耐食性および強度などの点からチタンが注目され, 実際にチタンを材料とした機械弁も市販されている。しかし一般にチタンは合成高分子材料に比べて, 抗血栓性に劣ると評価されているが, 筆者らの実験では, スパッタ蒸着により作製されたチタン表面は, 合成高分子材料である, Siliconeより優れた抗血栓性を示した。これらの相違について調べるため, 市販人工弁とチタンスパッタ蒸着面をX線光電子分光法により表面分析した結果, 一方スパッタ蒸着Tiの表面はTiO2が支配的であり, その厚さは約数+Å以下である。人工弁表面はTiO2とTiO2にOHまたはH2Oが結合した状態にあり, その厚さは少なくとも100Å以上存在し, この人工弁表面のTiO2に結合されているOHまたはH2Oの存在により, その表面が親水性となり抗血栓性を低下させていると考えられる。また人工弁表面には, 素材のチタンに存在しないSnや人体に有害なPbの存在が認められた。
  • 松本 昭彦
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1285
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 梅津 光生, 野川 淳彦, 田中 隆, 野田 裕幸, 中谷 武嗣, 福田 幸人, 藤井 尚文, 川副 浩平, 高野 久輝, 藤田 毅, 阿久 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1286-1289
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    この一年間に入手した心臓代用弁7種の水力学的特性試験を行ない, 従来弁との比較を行なった。その結果, 僧帽弁位では, 一般的傾向として機械弁とウシ心膜弁の算出有効弁口面積(EOA)がブタ弁を上回った。最大のEOAは二葉機械弁のSJM, その同型弁のDuromedics弁, さらにCarpentierの心膜弁を含む新しいウシ心膜弁において得られた。Björk-Shney (BS) 弁の改良型であるBS monostrut弁はそれに続く群に属した。開放角変更のBicerval弁, 中国上海製ウシ心膜弁, 及び広東製ブタ大動脈弁はそれぞれBS, Ionescu-Shiley, Hancock Standard弁と同等の特性であった。医用高分子を用いた米国製三尖弁Coraflex弁は高拍動域の特性に優れていた。次に大動脈弁位ではCarpentierを含む4種の新しいウシ心膜弁において, ブタ弁, 機械弁より大きなEOAを得た。また, 他の新しい弁の大動脈弁位の特性も僧帽弁位における傾向と類似したものであった。
  • 藤井 尚文, 梅津 光生, 田中 隆, 鬼頭 義次, 小坂井 嘉夫, 曲直 部寿夫
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1290-1293
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Hancock pericardial弁の水力学的特性を, 心房細動(Af)リズムおよび低心拍出量状態をも想定したシミュレーション実験にて検査した。5種類の心臓代用弁を用い, 有効弁口面積(EOA)を比較することにより弁機能特性の評価を行った。
    Af状態はデータレコーダーに記録したAfリズム患者の心電図にトリガーさせて駆動装置を作動させ, 低心拍出量状態は駆動空気ラインを延長することにより作成した。
    規則正しいリズム, Afリズムいずれの状態においても, また低心拍出量状態においてもHancock pericardial弁が大きなEOAを保持し優秀な弁機能特性を示した。今回の実験結果を参考にして, われわれはHancock pericardial弁の臨床応用を開始した。
  • ―左心体循環系モデルによる特性評価―
    海老沢 嘉伸, 南谷 晴之, 村田 孝一, 直井 克之, 梅津 泰洋, 井上 正, 今村 洋二
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1294-1297
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, 生体左心を模擬した左心・体循環系モックシステムを用い, 構造の異なる3種の人工僧帽弁の流体力学特性とそのValve Orientation依存性を検討した。評価した人工弁はBjörk-Shiley standard, St. Jude Medical, Carpentier-Edwards(29mm径)であり, Valve OrientationとしてBS弁で3方向, SJM弁とCE弁では2方向を選択した。流体力学的特性の評価にはエネルギー損失とPerformance Indexを用い, また流れの可視化により心室内のflow processを観測し, Valve Orientationとの関連性を議論した。各弁の諸特性はBS弁でPosterior位が他のorientationに比べ10%, SJM弁でA-P位と直交するorientationが他方に比べ10数%, CE弁では大動脈尖側に1枚のリーフレットが位置するorientationで他方に比べ20%程度の特性向上をみた。これらは弁の装着方向と僧帽弁部位の幾何学的構造によるflow processに大きく依存するものと考えられる。
  • 島津 和彦, 清水 健, 金戸 善之, 坂本 滋, 入山 正, 岩波 洋, 会田 博, 伊藤 芳和, 加藤 茂雄
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1298-1301
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体気中の0圧でわずかな隙間を有する閉鎖位をとる様固定されているMitroflow®牛心膜弁の臨床的機能評価を行う目的で術中有効弁口面積計測, 術後心房ペーシング負荷心拍出量計測, および弁口造影を施行した。対象は4例, 6弁(大動脈弁位2, 僧帽弁位4)である。
    有効弁口面積測定の結果, 21A弁2.28cm2, 23A弁277cm2, 27M弁3.12cm2, 29M弁でそれぞれ3.24, 3.52, 3.6cm2であった。この有効弁口面積測定結果は梅津(2)のIn Vitroのデーターと近似していた。
    術後心房ペーシング負荷では毎分170心拍まで心拍出量の増加を認めた。
    術後弁口造影では3弁尖の均等な開放, 閉鎖運動を認め, 開放中期では最大開放位までの弁尖の開放を認めた。
    以上より本弁は3葉が均等に開閉し, 比較的大きい有効弁口面積を有し, 頻脈追従性が比較的良好な弁である事が結論された。
  • ―ドプラ断層を用いて―
    朝野 晴彦, 横手 祐二, 森田 紀代造, 田村 文彦, 安達 秀雄, 許 俊鋭, 高本 真一, 尾本 良三
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1302-1304
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は, ドプラ断層装置を使用して, 各種人工弁を通過する血流のflow patternを観察し, 比較, 検討した。症例は, 僧帽弁置換術31例, 機械弁, St-Jude Medical Valve18例, Starr-Edwards Disc弁2例, 生体弁11例, 正常例5例の計36例である。それぞれの人工弁で, 特徴的な流入Patternを示した。SJM弁, 生体弁(Hancock弁, C-E弁)ともに良行な中心流が確認されたが, すべての症例で流入血流は心室中隔の方向に向かっていた。
  • 関 淳二, 中村 孝夫, 梅津 光生, 林紘 三郎
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1305-1308
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    in vitro拍動流下に3種のBjörk-Shiley傾斜型ディスク弁(flat disk, convexo-concave disk, monostrut convexo-concave disk)をテストし, レーザ・ドツプラ流速計を用いて弁近傍の流れを解析した。これにより人工弁下流の流れを精確にかつ全体の特徴を把握できた。3種の弁に共通した特徴として, 拍出初期の断面内で一様な流速の増大, デイスク周囲の開口部からのジエツトによる殻状の流速ピーク, 最大流速期から減速期たかけての乱流強度の増大が見られた。また3種あ弁のなかで, flat disk弁ではminor orificeから中心軸における流速が最も小さく流れの非一様性が最大であり, 乱流強度はcc disk弁が最大であった。monostrut弁とcc disk弁とのデイスクの開放角の違いは, 流速プロフイルには現われていないが, 乱流強度は開放角の大きいmonostrut弁において減少していることが認められた。
  • 工藤 武彦
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1309
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 今村 栄三郎, 原田 昌範, 中野 清治, 天野 茂夫, 小柳 仁
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1310-1313
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弁尖運動様式を正常化することによって弁寿命の向上を狙いとした中心開放型異種生体弁を臨床9例に応用した。年齢は51~61歳。置換部位は僧帽弁7例, 大動脈弁2例。全例満足すべき術後経過をとった。術後ワーフアリンは3~6ヵの短期投与のあと中止した。血栓塞栓症の発生はみていない。臨床症状の改善は顕著であった。機能分類で術前III度がII度以下になった。心胸郭比は術前平均64.5%から術後559%に減少した。心係数は平均2.31から3.25に上昇した。また平均肺動脈楔入圧は術前18mmHgから全例正常値に回復した。術後心音図で拡張期ランブル波形がない点は在来型異種生体弁と対照をなす。以上の早期臨床成績からみて, 今後応用例数の増加とより長期の観察に値するものと考える。
  • 下川 新二, 丸古 臣苗, 森下 靖雄, 有川 和宏, 豊平 均, 山下 正文, 湯田 敏行, 宮崎 俊明, 川島 淳宏, 山内 励, 平 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1314-1317
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1975年より1983年までに教室で施行した異種生体弁(Hancock弁31個, Carpentier-Edwards弁60個lonescu-Shiley弁6個)置換術89例(僧帽弁置換〔MVR〕68例, その他21例)の遠隔成績について検討した。病院死亡率は全症例で16.9%, MVR例で16.2%であった。手術生存74例中, 追跡可能の73例の平均5.9年, 最長9.5年, 累積追跡期間426.5 patient-year(pt-y)の遠隔追跡では, 生存65例, 晩期死8例(1.9% per pt-y)であった。病院死を含む5年, 9年生存率は全症例で76%±4.5%, 62%±8.8%で, MVR例でもほぼ同様であった。弁機能不全を10例(2.3% per pt-y)に認め, 7例はprimary tissue failue, 3例は感染性心内膜炎で, そのevent free rateは全症例で5年95%±2.6%, 9年76%±6.8%であり, MVR例でもほぼ同様であった。血栓塞栓症は10例(2.3% per pt-y)にみられた。以上生体弁のもつ諸問題を勘案した上で, 教室では原則として60歳以上の高齢者, 妊娠出産を希望する女性, 抗凝血療法が困難と思われる症例に生体弁を使用している。
  • 遠藤 将光, 三崎 拓郎, 麻柄 達夫, 飯田 茂穂, 済藤 裕, 川筋 道雄, 岩 喬, 二俣 秀夫
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1318-1321
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1974年より後天性弁膜症の106例に異種弁, 68例にSJM弁を用い, それぞれ99%, 100%の症例を追跡調査し両人工弁の遠隔成績を検討した。異種弁の平均追跡期間は5.5年, 早期死亡率4.7%, 6年生存率86.3%, 10年生存率74.8%であつた。34.7%に抗凝固療法を施行し2.5%/P-Yの血栓塞栓発生率であつた。SJM弁では平均2.5年追跡し早期死亡率7.4%, 6年生存率98.3%, 全例に抗凝固療法を行ない血栓塞栓発生率は1.9%/P-Yで, 共に異種弁と差はなかつた。
    再弁置換を要した弁不全例は異種弁には6例あつたがSJM弁には一例も認めていない。異種弁再置換例中3例(50%)にPVEを認め, PVEは異種弁機能不全発生の大きな要因となりPTFの有無に拘らずその発生を助長すると思われた。又, 超音波検査では弁機能不全は7~8年目でほとんどの症例に発生しており追跡調査はさらに厳重に行なう必要があると思われた。
  • 小机 敏昭, 鈴木 茂, 益子 健男, 江本 秀斗, 橋本 和弘, 古川 仁, 望月 吉彦, 新井 達太
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1322-1325
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ISLMは、ISUに様々な改良が加えられ、弁高を減少した新しい牛心膜弁である。1984年1月から10月の間に、ISLMによる房室弁置換術を17症例に施行した。ISUとの比較を行った所、手術成績・NYHA機能分類の改善・CTRの変化に差はみられず、術後早期血行動態(術後24時間・48時間のCI, SI, LVSWI, SVR, PVRの変動)にも大きな差はみられず、良好な結果が得られた。また、MR・MSR群における差もなく、使用弁サイズ(No. 29・31)による差もみられなかった。明らかな差がみられたのは弁圧較差で、ISUNo.29-3.3mmHg、No.31-2.9mmHg、ISLMNo.29-2.3mmHg、No.31-1.7mmHgと、ISLMのNo.29はISUのNo.31よりも弁圧較差が少ないという結果が得られた。この事は、心断層エコードプラーによる比較でも同様の結果で、ISLMの弁圧較差が小さく、そのパターンは正常例により近く、弁機能が優れている事が確認できた。ISUからISLMへの改良は、臨床的に成功したと考える。
  • 安達 秀雄, 横手 祐二, 許 俊鋭, 高本 真一, 尾本 良三
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1326-1329
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高度の三尖弁閉鎖不全症に対し, 三尖弁を切除せずに右房側に生体弁を挿入固定する術式がある。この術式の利点は(1)三尖弁complexを温存する(2)刺激伝導系の損傷の心配がない(3)視野か良く容易で早いの3点である。問題点として(1)ぜい弱な右房に人工弁を固定する(2)人工弁が中隔方向を向く(3)右房狭小化の可能性(4)残存三尖弁による障害(5)冠静脈洞の位置等があげられるが, いずれも適応を選べば解決可能と考えられる。この術式の利点を評価して重篤なMS, AR, TRの症例にMVRとこの術式を合わせ実施した。結果はほぼ満足すべきもので, 患者は2カ月後に退院した。ドプラ断層による検討を行なったが, 自然弁と人工弁が重複された特殊な状態の中で, 挿入された人工弁が十分に機能していることが確かめられた。人工弁を通過する血流は層流となり三尖弁を通過して中隔にそい心尖部に向った。この術式は適応を選べば, 症例により有用な術式になりうることがドプラ断層の所見より示唆された。
  • 山口 保, 菊池 洋一, 泉山 修, 山本 直樹, 山田 修, 佐々木 孝, 数井 〓久, 小松 作蔵, 管原 直毅
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1330-1333
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位摘出生体弁12個(Hancock弁11個, Liotta弁1個)の石灰化について種々の角度から検討を加えた。軟X線像では4年以上のもので89%に石灰化が認められ, 石灰化部位は交連部で必発であり, 交連部にdisruptionが多いこととの関係が示唆された。病理組織学的には石灰化はspongiosaに多く認められ, 電顕像では主にcollergen fibrilにそった石灰化が認められた。通常Glutaraldehyde処理Hancock弁, T6処理Hancock弁, およびウシ心膜弁の各弁尖の石灰化について, ウサギ皮下移植法にて検討した。病理組織像より判定した石灰化スコア, および弁組織のカルシウム含量より, 石灰化は通常処理Hancock弁, T6処理Hancock弁, ウシ心膜弁の順で少なく, 前者に比し, 後2者では有意に石灰化は少なかった。また弁組織のカルシウム含量およびリン含量はともに経時的増加を示し, 両者間にはy=0.6614+0.4390x, r=0.9672なる有意な一次相関が得られた。
  • 平 明
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1334
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 川内 義人, 吉利 用和, 富永 隆治, 三谷 淳夫, 富田 幸裕, 古森 正隆, 田中 二郎, 徳永 皓一
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1335-1339
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1981年10月より'84年3月までに115例の患者(年令4~67、平均48.0才、男性53名、女性62名)に対し、St. Jude Medical(SJM)弁及びIonescu-Shiley(I-S)弁で弁置換を施行した。内訳はSJM弁72例、I-S弁47例(重複4例)であり、単弁置換68例、多弁置換47例であった。術後1ヵ月以内の早期死は、多弁群の8例(17.0%)におこり、単弁群ではなかった。術後0.1~2.5(平均1.2)年の追跡中に、晩期死を、多弁群3例(7.7%)、単弁群3例(4.4%)に認め、Overall actuarial survival rateは28ヵ月で単弁群95%、多弁群76%であった。血栓塞栓症が、Aortic SJM及びMitral I-S弁の各々1例に発生した。弁機能不全は、SJM弁の2例(Aortic及びPulmonary)で組織過剰増殖による弁開閉障害として発生し、いずれもI-S弁にて再置換を施行した。今回の検討ではI-S弁での左室破裂、SJM弁での弁機能不全及び血栓塞栓症の発生が特に注目された。
  • 粟津 篤司, 中山 健吾, 山田 公彌, 岡本 好史, 斉藤 正一, 羽根田 紀幸, 楫野 恭久, 森 忠三, 大仏 正隆
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1340-1342
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Pyrolytic carbon製二葉ディスクを有するS. J. M. 弁は血行力学的に優れた面をもち, 広く臨床応用されている. 我々も, 1980年9月以来, 三尖弁置換3例・肺動脈弁置換8例を含め, 93症例・107個の置換術を施行した. 右心系弁置換11例中, 不適切な抗凝固療法のため, Ebstein病症例に, 血栓による弁機能不全を呈したことからも, 諸家の報告にもある通り, S. J. M. 弁においても抗凝固療法は必要であると考えられた. ブタ心膜パッチによる右室流出路拡大術を伴う幼少児in situ肺動脈弁置換術の2例に, 術後各々24日後・18ヵ月後より抗凝固療法に無関係に, 間歌的に人工弁の閉鎖不全が出現した. 同術式を施行した成人例及びexternal valved conduitを用いた幼少児2例には, 弁閉鎖不全現象は認めなかった. in situに人工弁を挿入する場合, その使用するパッチの材質とともに, S. J. M. 弁においても弁挿入方向・角度に留意すべきであると考えられた.
  • 楊 井剛, 青柳 成明, 大石 喜六, 磯村 正, 島田 昇二郎, 石井 博明, 柴田 栄次郎, 安藤 文彦, 春田 泰伸, 赤川 治夫, ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1343-1346
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は1980年5月より1983年12月までに, St. Jude Medieal Heart Valve(SJM弁)による僧帽弁置換術(MVR)を229例に行い, 輸血を要した急性期溶血性貧血は9例で, 中5例は重症溶血性黄疸を呈し腎不全または多臓器不全にて他界した。弁の縫着方向はSJM弁の支軸が僧帽弁交連部に直角と平行の2種類を行っており, 溶血発生の増強因子として軽度大動脉弁閉鎖不全(残存Ar)と弁縫着方向が推察された。そこで術後急性期(11~17日目)と慢性期(6ケ月以上)のLDH値を, GPT値が50(K. U.)以上の肝機能障害の疑われる症例を除き調査した。その結果残存Ar症例では弁縫着方向が直角より平行の方が急性期と慢性期のいずれにおいてもLDHにおいて有意に高値を示した。以上の事から, 従来よりSJM弁の弁縫着方向に関して血行動態の違いはなく考慮する必要がないとされているが, 溶血発生の点から僧帽弁位では弁縫着方向は僧帽弁交連部に直角にする事が望ましい。
  • 大谷 信一, 林 純一, 中沢 聡, 藤田 康雄, 江口 昭治, 花野 政晴, 服部 晃
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1347-1350
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体弁を含めた人工弁置換遠期67症例について血小板数, ハプトグロビン, ヘモペキシン, β-TG, 血小板凝集能, 血小板外形1)2), VIII因子, AT-III, MDA recovery rateを測定した。各指標とも異常値を示す症例が多かったが, 弁種により差があったのは血小板数, ヘモペキシンで, ハプトグロビンは生体弁と機械弁で差があった。ヘモペキシンが特に低値のものは臨床上から血液に対する物理的障害のある症例であることが推測された。
  • 工藤 龍彦, 石川 幹夫, 本保 秀三, 秋元 直人, 矢尾 善英, 杉江 三郎
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1351-1354
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術後の25例を対象とし、術後約1ヶ月間の血液凝固能の変化について検討した。検査項目は血小板数、トロンボテスト、フィブリノーゲン、FDP、AT-IIIの5項目で、術後第1日目から35日目までの期間に12、3回にわたって測定した。各項目別の測定結果は、血小板数は術後6日目までは減少するが、それ以後急激に増加し、35日以降に術前値に戻った。トロンボテスト値は4日目以後に治療域内に安定した。フィブリノーゲンは2日目から上昇し、7日目には461mg/dlの高値を示し、35日目まで高値が続いた。FDPは術後1日目から上昇し、5日目に90μg/mlと最高値に達し、その後は徐々に低下した。AT-IIIは4日目と10日目に低下したが、比較的変動が少かった。以上、人工弁置換術後の血液凝固能は術後1ヶ月間はやゝ亢進した状態が続き、その後徐々に術前値に回復する傾向がみられた。
  • 大石 喜六
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1355
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 山崎 順彦, 岡部 学, 水谷 哲夫, 木村 誠, 矢田 公, 草川 実
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1356-1359
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    傾斜型disc円板弁の大動脈弁位におけるOmniscience弁をBjörk-Shiley弁と臨床的特性について比較検討した。O-S弁置換を行った弁膜症例は37例で, 近接死亡は3例8.1%であった。血行動態的変化では全例術後CI, mpcwは良好に改善した。圧較差は安静時でO-S弁#21 22.0mmHg, #23 10.7mmHg, #25 10.6mmHg, #27 5.0mmHg, 弁口面積はそれぞれ1.20cm2, 1.86cm2, 2.32cm2, 3.10cm2で, 血行動態的変化ではO-S弁はB-S弁と有意差はなかった。
    O-S弁21例につきCineradiographyを行い弁機能特性を検討した。O-S弁はdisc最大開放角度は洞調律で60.8±7.5°, 心房細動で53.8±6.7°で開放角の制限がみられた。頻脈負荷にて開放角の増大を認めた。discの開放, 閉鎖速度はやや閉鎖速度が早く, 一方B-S弁では最大開放角度は比較的安定しており, discの開放速度は閉鎖速度より早く, O-SはB-S弁と比較し開放速度は遅く, 閉鎖速度は速かった。
  • 林 純一, 大谷 信一, 藤田 康雄, 中沢 聡, 横沢 忠夫, 江口 昭治
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1360-1363
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1966年9環より84年9月までに新潟大学第2外科教室にてAVRを施行し, 病院死を免がれた88例(S-E非被覆弁21例, S-E被覆弁15例, B-S弁10例, L-K弁7例, OS弁11例, SJM弁17例, ウシ心膜弁6例)の後天性弁膜症を対象として, 実測生存率, 代用弁関連event-free rateを比較検討し, 脳塞栓, PVEの発生頻度と背景を検討した。更に32例について, 遠隔期の弁機能を弁種間・サイズ別に比較し, 小サイズSJM弁の左室への影響, OS弁の開放角の変化も調べた。術後5年の生存率, event-free rateの点でB-S弁, SJM弁が他弁に比し優位にあった。至適抗凝固療法下ではいずれの弁でも脳塞栓症はなかった。弁機能は25mm以上のSJM弁, B-S弁で満足すべき状態であったが, 23mm以下の弁および傾斜円板弁の一部では今後慎重な経過観察を要すると考える。
  • 河内 寛治, 大山 朝賢, 飯岡 壮吾, 宮城 康夫, 高 義昭, 森田 隆一, 山田 義帰, 金 烱澤, 西井 勤, 北村 惣一郎
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1364-1367
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    傾斜型人工弁で最大開放角度80~82度を有する新しい人工弁のBicer-Val弁を大動脈領域に使用し, 臨床使用が30例となった。そこで, 遠隔成績ならびに本弁の収縮期及び拡張期弁機能に検討を加えた。11例に術後平均6ヵ月に安静(R)時及び運動負荷(Ex)時に検査を施行した。1)本弁の最大開放角度は平均79±1度を示した。2)本弁を介するR時及びEx時の左室―大動脈収縮期圧較差(Δp)は, 各々21mm弁では9mmHg, 14mmHg, 23mm弁では3±2mmHg, 9±4mmHg, 25mm弁では2±2mmHg, 9±6mmHgとなり, 21mm弁でEx時に10mmHg以上の値を示したが, 23及び25mm弁では10mmHg以下の低圧較差を示した。3)R時及びEx時の有効弁口面積(AVA)は21mm弁では各々1.51cm2, 1.79cm2団と低値を示し, 23mm弁ではR時4.53±0.97cm2, Ex時3.71±1.00cm2を, 25mm弁ではR時329±1.05cm2, Ex時2.78±1.03cm2となり, 23及び25mm弁では充分大きな値を示した。4)大動脈造影による人工弁逆流はcohn分類I度と軽度であった。30例中1例に, 術中, 人工弁閉鎖障害が発生したが, Discを180度回転させることにより, 閉鎖障害は消失した。より安全性を高める為に現在は開放角75°に低下させた人工弁を使用している。5)また, 3年たらずの遠隔ではあるが, 遠隔生存率は100%で, 血栓発生も皆無であることから, 大動脈弁位においては, B-V弁は他の人工弁に比してなんら遜色はなく, むしろ良好な弁であるといえる。
  • ―とくに弁開放角度について―
    柿本 祥太郎, 西本 孝, 近藤 敬一郎, 岸田 尚夫, 麻田 邦夫, 志熊 粛, 井上 隆夫, 大関 道麿, 佐々木 進次郎, 武内 敦郎
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1368-1371
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Omni-Science弁による大動脈弁置換術30例を4年間にわたって追跡し、本弁の問題点について検討した。うち17例ではシネによる弁開放角度の測定を行なった。早期死は1例、晩期死は2例(3.4%/p-y)であったが血栓塞栓症は5例(8.5%/p-y)と比較的高率であり、これは僧帽弁置換術の発生率を上回っていた。臨床症状ではNYHA分類, CTR, 心電図などすべて改善をみとめた。弁開放角度は洞調律例では安静時54.5±11.°からエルゴメーター負荷時63.5±11.3°に増加し、心房細動例は安静時47.4±4.6°~61±8°から負荷時53.4±8.1°~72.6±9.3°に増加した。また心室ペーシング例では心拍数を70から130に変化させると6~8°の減少をみとめた。弁開放角度は、心拍数、一回拍出量の増減によって変化するが、80°の最大開放角度に達するものは少なかった。このようにO-S弁は血栓症の頻度が高く、開放制限もみられ、臨床的に問題があると考えられた。
  • 青木 啓一, 宮本 巍, 村田 絃崇, 川原 勝彦, 岡 良積, 前田 信証, 山下 克彦, 吉田 哲人, 北井 公二, 寺井 浩, 田中 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1372-1375
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Björk-Shiley弁にて大動脈弁置換術を施行した20症例(22個)を対象に, 弁の開放角度および弁座のち動揺の検討をcineradiographyを用いて行なった。相馬法による測定では平均5&6±3.7度, verdel法では59.3±4.2度であったが, 計測時のばらつきの小さい点で, 相馬法がより実用的と考えられた。相馬法を応用した弁座の動揺の計測では, 平均3.3±1.5度(1.1~5.8度)であった。2度のdetached valveでは, 著明な弁座の動揺(40度, 13度), 開放角度不良(40度, 54度)と著明なdiscのfluttering現象が認められた。以上より弁座の動揺の正常域は, 6度以下と考えられた。cineradiographyによる人工弁の観察は, 開放角度のみでなく, 弁座の動揺を計測することにより, より有用となると考えられた。
  • 柳生 邦良, 松本 博志, 古瀬 彰, 吉竹 毅, 水野 明, 浅野 献一
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1376-1379
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性大動脈弁閉鎖不全症では、臨床症状が出現する前に不可逆的な左室機能不全が進行し、いったん症状が出現すると急速に悪化して、たとえ手術が成功しても術後遠隔期にうっ血性心不全で死亡する危険が高いといわれる。われわれは、最近3年半の教室の症例で、慢性大動脈弁閉鎖不全症の単弁症患52例のうちMedtronic Hall弁で弁置換手術を受けた36例に関して、術後の心機能改善の推移を心エコー法で検討した。その結果、CTR、LVDs、LVDdは術後2週間~3ケ月でほぼ正常化したが、LVEF、%FS、mVcfには術後1年半の間では有意な変化はみられなかった。またLVDsが55mm以上で、%FSが25%以下の重症症例7例のうち、術前にPrazosin投与と安静臥床による保存的心機能改善療法を受けた4例は全例が生存しており、術後4~9ケ月で心拡大は正常化したが、収縮機能は1年~1年半後に徐々に改善してきた。
  • 鷲尾 正彦
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1380
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 松永 仁, 松本 博志, 吉竹 毅, 浅野 献一
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1381-1383
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1981年4月より1984年5月までに当教室では227症例に対し人工弁置換術を施行し、術後23例(10.2%)にMOFの発生を見た。手術方法別ではAVR後に5例(6.6%)、MOR後13例(123%)多弁置換術後に5例(12.8%)のMOFの発生であった。死亡は12例(52.2%)と高率であった。不全臓器数からみると3臓器以下が11例中1例(9,1%)の死亡であったのに対し、4臓器以上では12例中11例死亡(91.7%)と後者が高値を示した。術前に何らかの異常を示したMOF症例は8例中7例死亡で術前に異常を認めなかったMOF症例では15例中5例死亡と前者の救命率は低値であった。しかし術前異常値を認めたものは全体で21例であり、うち8例がMOFとなったが一方13例はMOFを来すことなく治癒した。我々のMOFの対策としては術前術中術後を通じた積極的全身管理によるMOFの予防が第一でありまたMOF症例に対しても重症感染を防ぎ、不全臓器数を極力少くする努力が重要であると考えている。
  • 福地 晋治, 橋本 明政, 今村 栄三郎, 中野 清治, 高梨 吉則, 今井 康晴, 小柳 仁, 関口 守衛
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1384-1388
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1967年より1984年9月までに, re-AVR後の5例とre-MVR後の7例に再々弁手術を施行した。再弁置換を含め再々手術に到った主因は弁輪部縫合不全であった。
    3rd-MVR群での縫合不全は, 機能不全に陥いった人工弁縫合弁輪部の遺残や, 弁輪部石灰化組織を除去し, 新しい人工弁縫合輪との適合を計ることにより良好な経過をとった。これに反しleakによる3rd-AVR群では, 修復後も高率にleakが残存し遠隔期に2例を失なった。剖検で左室心筋の一部瘢痕化, 心筋肥大と間質の線維化が認められた。3rd-AVR時の左室心筋生検例でも, 心筋の線維化が進行し, 再々弁置換術後の逆流遺残による左室拡張性病変の進行が考えられ, 予後不良と思われた。弁輪部にかかかるmycotic aneurysm形成例では, 右房, 右室流出路を利用し, ほぼ全周にわたって, 大動脈外側より縫合を試みても, re-AVR後にも縫合不全が残存し(4/68例)これらでは初回IEでのtranslocationの適応はあると考える。
  • 浅井 康文, 柳谷 晶仁, 塚本 勝, 山岸 真理, 数井 暉久, 安倍 十三夫, 小松 作蔵
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1389-1392
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弁置換後16年以上を経過したStarr-Edwards silicon ball弁25例およびSmeloff-Cutter弁2例について, その長期予後を検討した。
    男女比は15:12で, 手術時年令は平均23歳10カ月で, 経過観察年数は平均18年8カ月であった。
    術後血栓・塞柱の合併症は11例にみられそのうち10例は抗凝血療法を施行していなかった。11例中口語障害1例, 軽い手の麻痺を1例に認めたが, 他の9例は完全に回復した。現在抗凝血療法のみ7例, 抗凝血・抗血小板剤併用例は6例, 抗血小板剤のみ9例, 他の5例は使用していない。
    UCGよりみた左室機能はCardiac Output 5.31±1.83l/min (n=18), Ejection Fraction 65±17% (m=18)等を示し, ほぼ満足すべきものであった。
    以上よりsilieon ball弁は, 血栓・塞栓症の合併症に注意をすれば, さらなる長期予後が期待できる。
  • 青景 和英, 長尾 俊彦, 中山 頼和, 水取 悦生, 重信 雅春, 村上 泰治, 名和 清人, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1393-1396
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    岡山大学第二外科にて昭和40年より58年までに行なわれたMVRは162例である。MVR例のうち昭和45年から49年に用いたStarr-Edwards (S-E) disc弁置換例にっき遠隔期の動向を検討した。S-E disc弁置換例は26例で, 早期死亡例, 消息不明例を除く16例を今回の対象とした。置換後11~13年間ほぼ問題なく経過したと考えられる例はわずか4例(25.%)である。遠隔期死亡3例, 経過観察中の弁機能不全3例, 再弁置換を必要とした6例の計12例(75%)に何らかの問題を持っていた。再弁置換例は6例で, うち5例に高度のTRを合併していた。2例を早期に失った。S-E disc弁によるMVR例は, 遠隔期に種々の問題を残す例が多い。再弁置換例では臨床症状の改善は認められるが, 心機能の回復の度合は充分でない。従って未再弁置換症例の厳重なフォローが必要で, 何らかの異常所見が得られた場合, 早期に再弁置換を含めた処置を考慮すべきである。
  • 井上 健治, 須磨 幸蔵, 竹内 靖夫, 城間 賢二, 小山 雄二, 成味 純, 小塚 裕, 西山 清敬, 厚美 直孝, 今酉 薫, 鳥井 ...
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1397-1399
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和49年1月から昭和59年11月までに, 小児の人工弁置換術を11例経験した。とのうち9例が僧帽弁置換(MVR)であった。MVRのうち2例にBjork-Shiley弁を使用したが, 1例は術後1年で血栓形成のため人工弁機能不全を来し, SEボール弁で再弁置換をした。他の1例は術後約1年で突然死を来たした。死亡原因は血栓形成による人工弁の機能不全が疑われた。他の7例にStarr-Edwardsボール弁を用いたが, 1例に成長に伴う再弁置換をSEボール弁(0Mから2M)で行った。この例を含み全例すべて順調に経過している。Starr-Edwardsボール弁は左室容積が大きく, かつ左室流出に狭窄を来さないと考えられる時は, 抗血栓性がdisc弁と同程度であり, かつ耐久性がよいことから小児の僧帽弁置換術に際し, 好ましい人工弁と考えられた。
  • 中埜 粛, 広瀬 一, 松田 暉, 白倉 良太, 榊原 哲夫, 佐藤 重夫, 谷口 和博, 河本 知秀, 大久保 修和, 川島 康生
    1985 年 14 巻 3 号 p. 1400-1402
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Björk-Shiley弁の新しい型のものが登場した。Björk-Shiley valve with integral monostru比称されるもので, 従来のものと異なり打ち抜き工法で作られ, これまでの2つのU字型strutのうち流出側のものがなくなり一本の爪状の突起となった。discはconvexo-concaveであり, その開放角度は60度から70度に増大した。1983年10月より使用開始し1984年10月まで44個使用した。内訳は僧帽弁位に27個, 大動脈弁位に15個および三尖弁位に2個である。3例の術後早期死亡があるが人工弁に起因したものではなかった。術中圧測定による圧較差は従来のconvexo-concaveと差はなかった。血清LDH値は僧帽弁置換術症例で平均718±296単位を示し高値であった。遠隔死亡はなく術後経過は順調であり現時点では問題はない。今後とも症例を重ねて溶血の可能{生および原因の追求とともに, 長期遠隔成績の検討が必要であると思われる。
feedback
Top