整形外科と災害外科
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66 巻, 1 号
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  • 岩元 俊樹, 善家 雄吉, 濱田 大志, 栗之丸 直朗, 弓指 恵一, 岡田 祥明, 永吉 信介, 酒井 和裕, 酒井 昭典
    2017 年 66 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性で,特記すべき既往歴はない.受診10日前より誘因なく腰痛を認め,以後両手背部の腫脹,疼痛が出現した.症状の増悪と発熱,歩行困難のため,前医より壊死性筋膜炎の疑いで当院に救急搬送された.初診時,両前腕から手背に水疱形成を認め,特に右手部は軟部組織の腫脹,変色が急激に進行した.また,右膝関節痛と腫脹を認め,四肢壊死性筋膜炎,toxic shock-like syndrome,敗血症性ショック,右膝化膿性膝関節炎の診断で抗菌薬の投与,複数回の洗浄・デブリドマン,NPWTを行い,感染の沈静化後,両上肢の軟部組織欠損に対し,腹壁有茎皮弁,遊離広背筋皮弁術にて軟組織再建を行なった.経過中致死的な合併症を併発したが,他科との連携により救命し,機能肢を目標にリハビリテーションを継続中である.壊死性筋膜炎は急速に進行し,診断,治療の遅れが四肢切断や死亡に至る重篤な感染症であり,稀な病態である.四肢すべてに波及した重症軟部組織感染症(化膿性関節炎・壊死性筋膜炎)を救命・救肢し得た.
  • 竹内 潤, 宮本 俊之, 福島 達也, 田口 憲士, 水光 正裕, 尾﨑 誠
    2017 年 66 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    トシリズマブは抗IL2受容体抗体に作用し関節リウマチの治療に使用される.今回,トシリズマブ使用患者で血液検査上炎症所見が軽度であるが短時間で重篤な経過をたどった壊死性筋膜炎の一例を経験したので報告する.86歳女性,前日から右肘関節が腫脹し左前腕の水疱を自覚した.他院を受診するも血液検査上白血球は正常範囲内でCRPは軽度の上昇であった.抗菌薬加療を行われ翌日,当院皮膚科紹介となる.当院の血液検査でも,炎症所見は軽度であったが短時間で皮膚色調変化が進行し当科紹介となる.患部よりレンサ球菌が検出され壊死性筋膜炎として加療を行った.両上肢の壊死が進行し左肩関節離断および右上腕骨切断を行い救命し得た.本症例からトシリズマブは炎症を抑制する
  • 河野 俊介, 北島 将, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2017 年 66 巻 1 号 p. 8-9
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術(total hip arthroplasty: THA)後の感染は,implantの存在から難治化しやすく,複数回の手術加療を要することがある重篤な合併症である.今回,THA後感染に対して外科的治療を行った36例36股を対象に,感染再燃の指標となる因子の検討を行った.検討項目は,股関節の手術歴,先行感染の有無,Revision症例,感染症例,Primary THAの施設,起炎菌,治療方法,治療後ドレーン培養の結果とし,感染再燃の有無で2群に分類し,比較検討した.早期感染(p=0.02),耐性菌(p=0.004),混合感染(p=0.023)で有意に感染再燃が多かった.早期感染は有意に感染率が高かった.これは有意差はなかったものの晩期感染で二期的再置換術(p=0.051)を選択した症例が多く,治療法の選択による影響と考えられた.
  • 城下 卓也, 本多 一宏, 岡村 直樹, 林田 洋一, 岡野 博史, 井本 光次郎, 石松 憲明, 細川 浩, 岡田 二郎, 宮本 和彦, ...
    2017 年 66 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【背景】整形外科手術における手術部位感染(surgical site infection; SSI)の発生率は,手術方法や部位別には報告されているが,骨折手術全般のSSI発生率を検討した報告は限られている.【対象と方法】当院で2010年1月から2015年8月に手術を行った脊椎外傷,人工関節手術以外の骨折手術症例を抽出し,深部SSI発生率とリスク因子の検討を行った.深部SSIの定義はCDCのガイドラインを使用し,追跡期間が90日未満の症例は除外した.また,主要評価項目を深部SSI発生率として,リスク因子の多変量ロジスティック解析を行った.【結果】深部SSI発生率は1.49%,うち閉鎖性骨折1.03%,開放骨折5.44%であった.また,多変量ロジスティック解析を行い,開放骨折(OR4.45)と下肢・骨盤手術(OR20.91)が統計学的に有意なリスク因子となった.手術部位別では下肢のSSI発生率が高く,上肢と比較して下肢各部位のSSI発生リスクが有意に高かった.一般的にリスク因子とされている糖尿病,喫煙歴,高齢者については,本研究ではリスク因子として抽出されなかった.
  • 上田 幸輝, 佐々木 大, 田中 宏毅, 溝口 孝, 伊東 孝浩, 内村 大輝, 水城 安尋, 萩原 博嗣
    2017 年 66 巻 1 号 p. 13-15
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    症例は43才女性.バイク事故による右脛骨プラトー骨折で創外固定と2回のプレート固定術を施行後,創より浸出液がつづき,培養でMRSEが検出されインプラント周囲感染と診断したが,インプラントが抜去できなかったため,術後2週よりリネゾリド,ミノマイシン,リファンピシンで治療開始した.開始後7日でCRP陰転化,16日で排液がなくなりその後再増悪を認めていない.骨接合術後に感染を生じた際はbiofilmの存在を考慮して,骨髄移行性とバイオフィルム透過性に優れた抗生剤を使用するべきである.
  • 内田 泰輔, 松本 嘉寛, 播广谷 勝三, 川口 謙一, 林田 光正, 岡田 誠司, 岩本 幸英
    2017 年 66 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】環椎後弓切除術後に環椎前弓骨折をきたした1例を経験したので報告する.【症例】67歳女性.既往歴に脳性麻痺があり,環軸椎亜脱臼と頚椎症性脊髄症に対して環椎後弓切除+C3-6椎弓形成術を施行した.その後経過良好であったが,術後3か月頃より後頚部痛を認めていた.術後約4か月目に転倒,その2日後より徐々に後頚部痛が増悪し,体動困難となり救急搬送となった.CTにて環椎前弓骨折を認め,後頭骨頚椎後方固定術(O-C2,3,4)を施行した.頚部痛は術後早期より軽減し,現在の所経過良好である.【考察】過去の報告では,環椎後弓切除後の前弓骨折は低エネルギー損傷で出現している例が多い.本症例では遷延する頚部痛,転倒という低エネルギー損傷,CTで骨折部の骨硬化を認めたことから,不顕性骨折が存在していた可能性がある.環椎後弓切除のみを行った症例では,定期的にCT等による経過観察が望ましいと考えられた.
  • 春田 陽平, 前田 健, 森 英治, 弓削 至, 河野 修, 坂井 宏旭, 高尾 恒彰, 益田 宗彰, 植田 尊善, 芝 啓一郎
    2017 年 66 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    非骨傷性頚損は最も高頻度な外傷性頚損だが,高齢化に伴い大きな社会問題となりつつある.今回,非骨傷性頚損の受傷機転・臨床所見との関連を詳細に検討した.2012―15年の非骨傷性頸損144例(平均年齢66.1歳,男126例・女18例)を対象とした.落差のある転倒は転落と定義し,交通事故は自動車・バイク・自転車を含めた.受傷機転は転倒38%・転落38%・交通事故18%・その他6%と,転倒・転落が全体の約8割を占めた.また,全受傷者の30%に飲酒が関連していた.ASIA motor scoreは転落受傷で最も低かったが,特に転落重症例(AIS A/B群)の80%は60歳以上の高齢者であった.転落機転は仕事中の受傷が半数を占めたが,転落の高低差では差がなかった.転落受傷例は高低差が小さくても麻痺が重篤であり,特に作業中の高齢者や飲酒後の受傷が目立ち注意を要する.
  • 柴田 遼, 大友 一, 清水 建詞
    2017 年 66 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々は,硬膜外膿瘍を併発した肺炎球菌による化膿性脊椎炎(pneumococcal vertebral osteomyelitis: 以下PVO)の1症例を経験したので報告する.【症例】65歳,女性.約2ヶ月前から微熱と右肩痛,腰痛を認め,近医で局所注射等で加療されたが,下肢脱力による歩行障害が出現し紹介となった.既往歴:易感染性を示す特記事項なし.検査:CRP 14mg/dl,WBC 13770/μl,MRIで胸椎硬膜外膿瘍を認め,また右肩関節も関節炎が疑われた.培養結果:肺炎球菌検出(血液,椎体・椎間板,肩関節液).治療:椎弓切除・病巣掻爬・洗浄,抗生剤投与行い,検査データ・症状ともに改善し独歩可能となった.【考察】PVOは発熱等の全身症状が乏しく診断が遅れることが懸念されるが,硬膜外膿瘍を伴うことを踏まえると早期診断が重要である.関節炎・髄膜炎・肺炎などの他部位感染が併存する腰背部痛を認める場合はPVOも念頭に診療を行う必要がある.本症例ではonsetから治療開始まで8週経過しており手術が必要となった.
  • 野原 博和, 宮里 剛成, 仲間 靖, 小浜 博太, 新垣 寛, 古堅 隆司, 知念 弘
    2017 年 66 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    脊椎硬膜外膿瘍は比較的稀な疾患である.入院中に対麻痺で歩行不能となり減圧排膿手術を要した脊椎硬膜外膿瘍の3例を経験したので報告する.【症例1】43歳,女性.腰痛で発症し救急搬送.入院中,対麻痺,尿閉が出現し腰椎硬膜外膿瘍の診断で緊急手術施行.麻痺,尿閉は消失し独歩可能.【症例2】71歳,男性.発熱,頚部痛,左下肢痛で発症.外科で甲状腺膿瘍の切開排膿術後,腰痛と対麻痺が出現.腰椎硬膜外膿瘍と診断し緊急手術施行.後咽頭など膿瘍が多発し内科で播種性ブドウ球菌感染症と診断されVCMを投与.両下肢麻痺は消失し独歩可能.【症例3】63歳,男性.発熱で発症.胆管炎疑いで内科へ入院中対麻痺と尿閉が発症.腰椎硬膜外膿瘍と診断され,麻痺発生5日目に整形外科で緊急手術.対麻痺は改善したが尿閉は残存し杖歩行.【考察】早期減圧排膿手術で対麻痺,尿閉は改善するが,治療の遅延で神経症状が残存する可能性がある.
  • 吉野 伸司, 富村 奈津子, 山下 芳隆, 前之園 健太, 今別府 信吾, 川内 義久
    2017 年 66 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    亜脱臼性股関節症(Crowe 2~4)に対するDirect anterior approachによるTHAの治療成績について検討した.症例は術後6ヶ月以上経過観察しえた36例44股(両側例8例)で,Crowe 2;35股,3;6股,4;3股であった.手術時年齢平均65歳,術後経過観察期間は平均2年2ヶ月であった.JOA scoreは術前平均39点が最終観察時平均85点であった.カップの設置状態は外方開角平均43°,前方開角平均21°で,Lewinnekの安全域内設置は88.6%であった.片側例においてカップ中心高位を見てみると,平均健側+4mmとなり,脚長差術前平均健側-20mmが術後-2mmとなっていた.合併症として術後脱臼を2股に認めたが,保存的に治癒した.DAA-THAは臼蓋形成不全を伴う亜脱臼性股関節症に対しても良好なカップ設置が可能で,安定した成績が期待できる方法である.
  • 天辰 愛弓, 瀬戸口 啓夫, 中村 俊介, 泉 俊彦, 栫 博則, 石堂 康弘, 永野 聡, 小宮 節郎
    2017 年 66 巻 1 号 p. 35-37
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    人工股関節手術における術後疼痛に関与する因子を検討した.当院で施行した人工股関節手術73股を対象とし,疼痛はVisual Analog Scale(以下VAS)で評価した.術後7日目安静時VASを目的変数とし,術前日本整形外科学会股関節機能基準JOAスコア(以下JOAスコア),麻酔法,手術内容,手術時間,出血量,術後1日目Hb,術後7日目Hb,術後7日目CRP,術後内服鎮痛剤,車椅子移乗開始日,術前安静時VAS,術後3日目安静時VASを因子として単変量解析を行ったところ,麻酔法,術前安静時VASが有意な因子であった.術後7日目安静時VASを目的変数とし,手術内容,手術時間,出血量,麻酔法,術後内服鎮痛剤,術前安静時VAS,術後3日目安静時VASを因子として重回帰分析を行ったところ,術前の安静時VAS,麻酔法が術後7日目の疼痛に有意に関与していた.術前の疼痛対策およびブロック併用による麻酔が術後7日目の疼痛管理において有効であると考えられる.
  • 渡邉 弘之, 相良 孝昭, 畠 邦晃, 竹村 健一, 上川 将史, 永田 武大, 酒本 高志
    2017 年 66 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当科では京セラメディカルのセメントレスTHAシステムを使用してきたが,今回ポリエチレンライナーが脱転し再置換に至った稀な症例を経験したので報告する.【症例】71歳,男性,農業従事者.左末期変形性股関節症に対しTHA施行.京セラメディカルのAMS HAシェル クラスターホール52mm,AMSライナーCP,ジルコニアボール26mm,PerFix HAカラーレスP+ #13を使用した.術後7年頃より左股関節に違和感出現,左下肢を捻ると痛むようになり,術後9年でポリエチレンライナーの脱転を認めた.シェル,ポリエチレンライナー,骨頭ボールを抜去し,AMS HAシェル クラスターホール54mm,アクアラAMSライナー スタンダード,メタルボール32mmで再置換した.抜去したインプラントを詳細に観察し,原因について検討した.【考察】抜去したインプラントを詳細に検討した結果,農作業の立ちしゃがみ動作などにより後方亜脱臼が繰り返されたことが原因と思われた.
  • 元嶋 尉士, 森 俊陽, 川崎 展, 佐羽内 研, 松浦 孝紀, 塚本 学, 酒井 昭典
    2017 年 66 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    当院における大腿骨ステム周囲骨折の治療成績を調査した.対象は,2007―2015年に入院加療を行った11例で,入院時平均年齢74.9歳,Vancouver分類は,A:2例,B1:5例,B2:4例であった.Aに保存療法,B1に骨接合術,B2で活動性の低い3例に骨接合術,活動性の高い1例に再置換術を施行し,手術症例は5-8週免荷とした.全例で骨癒合を得たが,B1の1例,B2の骨接合術例全例に術後のステム沈下を,B1の3例,B2骨接合術例の1例に歩行能力の低下を認めた.大腿骨ステム周囲骨折は,B1とB2の判別が困難であるが,B2の骨接合術後の骨癒合は良好で,歩行能力低下率も再置換術と同程度であるため,B2においても骨接合術が治療の選択肢となりうることが示唆された.
  • 鈴木 正弘, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 萩尾 友宣, 蓑川 創, 山本 卓明
    2017 年 66 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】足関節固定術の術後成績は一般的に良好であるとされる.鏡視下足関節固定術後の臨床成績と足関節底背屈時の隣接関節可動域との関連について調査した.【対象と方法】2011年6月から2014年12月までの期間に鏡視下足関節固定術を施行し,術後にX線画像で隣接関節可動域を計測し得た9例9足(男性3足,女性6足;平均年齢67.6歳)を対象とした.平均観察期間23ヵ月.原疾患は全例末期変形性足関節症.X線学的評価は足関節側面像(最大底背屈位)を用い,各隣接関節(距踵関節,距舟関節,楔舟関節,内側楔状骨―第1中足骨関節)の可動域を測定し行った.臨床評価は,JSSF scale score,FAAM(Foot and Ankle Ability Measure)を使用した.【結果】JSSF scoreの平均は術前60.6点,術後89.0点であった.FAAMは平均70%.隣接関節(距踵関節,距舟関節,楔舟関節,内側楔状骨―第1中足骨関節)の可動域はそれぞれ14.1°,8.2°,14.7°,0.9°であった.【結論】距踵関節,距舟関節,楔舟関節,内側楔状骨―第1中足骨関節の可動域と術後成績との間に有意な相関はみられなかった.
  • 中村 厚彦, 尾上 英俊, 廣田 高志, 柴田 光史, 柴田 達也, 真田 京一, 鈴木 正弘
    2017 年 66 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】脛骨粗面裂離骨折は骨端線閉鎖期の若年者に生じる比較的まれな骨折である.本骨折の4例に対して手術治療を行ったので報告する.症例は4例4膝で性別は全例男性,年齢も全例14歳であった.平均BMIは21.2で肥満症例はなかった.Watson-Jones(+Ryu)分類に従うと,Ⅰ型1例,Ⅱ型1例,Ⅲ型1例,Ⅳ型1例であった.手術は4例ともcancellous screwを用いて内固定した.術後約3~4週のcast固定を行い,術後4週以降で荷重歩行を開始した.術後4~5か月でスポーツに復帰し,術後6か月以降で抜釘を行った.短期ではあるが最終経過観察時に疼痛や可動域制限は認めず経過は良好であった.
  • 生田 拓也, 倉 明彦, 阿南 敦子, 細山 嗣晃
    2017 年 66 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    脛骨粗面剥離骨折に対して手術治療を行い良好な結果を得ているので報告した.症例は5例で,性別は全例男性で,年齢は13―17歳,平均15.4歳であった.骨折型はWatson-Jonse分類に従うとⅠ型1例,Ⅱ+Ⅳ型1例,Ⅲ型2例,Ⅳ型1例であった.Ⅲ型はCCSのみで固定し,Ⅰ型およびⅡ,Ⅳ型はCCSとtension band wiringにて固定した.術後はknee brace固定の上,手術翌日より荷重を開始し,術後3週より可動域訓練を開始した.全例において可動域制限はなく骨癒合が得られた.本骨折は成長期にみられる骨端線損傷の一つであり比較的稀とされているが,骨折は膝蓋腱に牽引されて発症する場合が殆どであり関節面のダメージを伴っていることは殆どない.観血的治療を適切に行えば骨癒合はもちろん機能的な回復は良好に見込める骨折であると考えられた.
  • 藤井 陽生, 播广谷 勝三, 小早川 和, 松本 嘉寛, 川口 謙一, 林田 光正, 岩本 幸英
    2017 年 66 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    思春期特発性側弯症患者の発見理由を調査した.【対象と方法】2008年から2015年に当院を受診した259例(女性236例,男性23例,平均13.7歳)の発見理由,主カーブCobb角,初期治療を調査した.【結果】発見理由は学校検診(S群)115例(44.4%),家族・本人(F群)79例(30.5%),病院・医院(H群)65例(25.1%)であった.発見時年齢は各々平均12.9歳,13.1歳,13.7歳であり,S群は,H群よりも年齢が低かった.3群間の性差に有意差はなかった.主カーブは各々平均36.8°,40.4°,36.0°で,有意差はなかったが,40°以上の患者の割合はF群に比べてS群,H群で低い傾向にあった.3群間で初期治療に相関はなかったが,S群およびH群は,F群よりも手術率が低い傾向にあった.【考察】学校検診のあり方や早期発見方法について検討の余地があると考えられた.
  • 美山 和毅, 寺田 和正, 小原 伸夫, 宮崎 清, 櫻庭 康司, 宮原 寿明
    2017 年 66 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    転移性脊椎腫瘍疑い患者の原発巣検索でBリンパ芽球性リンパ腫(B-LBL)と診断できた一例を経験したので報告する.症例は43歳女性で急性発症の左下肢痛を認め紹介.腰椎MRI施行しL4/5左外側ヘルニアTh11~L3椎体で信号変化を認め左下肢痛はL4/5ヘルニアによるもの,椎体信号変化に関しては転移性脊椎腫瘍が考えられ入院.安静にて左下肢痛改善.原発巣検索開始し血液検査で腫瘍マーカー上昇は認めず全身造影CT,骨シンチ施行したが原発巣は不明.PET-CT施行し十二指腸乳頭部,脊椎,肋骨に高度集積認め十二指腸生検,Th11椎弓根生検施行しリンパ芽球検出.血液内科コンサルトし骨髄生検施行.節外病変型のB-LBLと診断され現在化学療法施行中.ALLは通常小児に多く発症し骨髄浸潤を認めることが多いが今回の症例では成人発症であり,節外病変型であったという点で比較的稀な症例であった.
  • ―周術期合併症について―
    井上 哲二, 水溜 正也, 福田 和昭, 田上 学, 横田 秀峰, 阿部 靖之
    2017 年 66 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    2012年1月から2015年11月までに当院にて施行した脊椎手術1465手術のうち透析患者77手術(5.3%)について検討した.男48女29手術,手術時年齢66.6歳(48~86)であった.透析歴15年未満群(A群)と透析歴15年以上(B群)の2群に分けて検討した.糖尿病,高血圧の罹病率はどちらもA群の方が多かった.透析原疾患はA群にDM腎症が多かった.周術期輸血はA群に多かった.周術期合併症はSSI:A群2例,B群3例,術後硬膜外血腫はA群1例,B群2例,消化管出血はA群2例であった.尿路感染1例と胆のう炎1例をA群に,不全片麻痺を1例B群に認めた.周術期死亡例はなかった.少なくとも後方からの除圧術,短椎間固定術であれば,長期透析患者であっても,注意深い管理のもと手術は可能と考えられるが,透析歴だけでなく,基礎疾患,全身状態等により周術期リスクを評価すべきと考えられた.
  • 原口 和史, 加茂 健太, 谷口 秀将
    2017 年 66 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    近年,強直性脊椎炎(AS)に対して抗TNF-α製剤が使用され,臨床症状の著しい改善が期待できるようになった.しかし,抗TNF-α製剤は骨新生を抑制できず,臨床症状の改善とXP所見の進行には乖離があるとされている.今回,抗TNF-α製剤を投与し長期期間経過を見たASの2例を報告する.症例1(58歳男性,投与期間82カ月)29歳時ASの診断を受ける.50歳で両股関節痛のため初診.脊椎全体が強直,両仙腸関節は癒合,両股関節は高度に変形しており,MTX投与開始.両THA施行後,Infliximab 3mg/kg/8W開始,その後5mg強/kg/8Wまで増量する.症例2(42歳男性,投与期間60カ月)32歳頃より上顎洞炎,腰背部痛などあり,SAPHO症候群診断で治療を受ける.38歳時初診,MTX,Infliximab 5mg/kg/8W開始.効果減弱傾向あり,32か月後Adalimumab 10mg/2Wに変更.両例とも抗TNF-α製剤投与後,臨床症状は著しく改善したが,症例2では腰椎XP病変の進行を認めた.
  • 畠 邦晃, 相良 孝昭, 渡邉 弘之, 竹村 健一, 上川 将史, 永田 武大, 酒本 高志
    2017 年 66 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    術中MEP波形の消失を繰り返した胸椎OPLL症例を経験したので報告する.症例:57歳男性,歩行障害,臍部以下のしびれ.55歳時に頚椎OPLL手術施行し経過良好であったが,術後1年頃よりふらつき自覚し術後1年6ヶ月には歩行困難,排尿障害出現.T9-10胸椎OLF手術施行し下肢筋力,排尿障害に改善認めたが痙性麻痺残存.6ヵ月後胸椎OPLL手術を計画.T6/7嘴状,T4/5,5/6平坦の形態でT3-10後方固定しT6-7椎弓切除施行.術中にスクリューを1本設置するたびにMEP波形全消失.約15分待つと波形出現し徐々に回復.クロスリンク設置時や仰臥位への体位変換時も消失し,最終波形振幅は30%であった.幸いにして術後麻痺は無くJOA改善率57%で独歩可能となった.考察:MEPは反応が鋭敏で微細な刺激でも低下する.術中操作に伴う僅かな脊髄のたわみなどが影響したのではないかと推察する.
  • 記伊 祥雲, 篠原 道雄
    2017 年 66 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    腰椎圧迫骨折後遅発性神経麻痺発生例に対して,X-Core2® Systemによる前方椎体置換術を施行し良好な経過を得た1例を経験した.症例,78歳女性.骨粗鬆症とパーキンソン病の既往あり.転倒によりL2骨折を生じ,腰痛出現し歩行不能となり,遅発性に両下肢麻痺が出現した.手術は2期的に行った.1期目に前方よりX-Core2® Systemを用いてL2の椎体置換とL3/4/5の間接除圧を行い,2期目に後方除圧固定(Th12-L5)を行った.術後は麻痺の改善を認め,歩行器歩行が可能となった.椎体圧迫骨折後の麻痺症例に対する後方椎体置換術は高侵襲であるが,X-Core2r® Systemによる前方椎体置換術は比較的低侵襲であり,骨粗鬆症例に対しても有用であると考えられた.
  • 篠原 道雄, 記伊 祥雲
    2017 年 66 巻 1 号 p. 84-86
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    経大腰筋アプローチによる腰椎椎体間固定術は幅広いケージに十分な骨移植を行うことができ近年施行件数が増加するとともに特有の合併症も報告されている.目的は同術式の合併症及び短期成績を検討することである.2015年6月から2016年3月までに当院で行ったXLIF®施行件数45例のうち,腰椎側弯(後弯)症,すべり症,椎間板変性症,MOBによる腰痛,下肢症状を主訴とした30例を対象とした.XLIF®を行った後,後方から経皮的椎弓根スクリュー固定を行った.検討項目は術中合併症,JOAスコア・改善率である.術後脳梗塞発症のため麻痺を残存した1例を除き全例で症状の改善を認めた.一過性の大腿痛・しびれ・運動障害を6例(20%)に認めた.JOA改善率は75.5%であった.XLIF®の臨床成績は良好であったが進入側の大腿症状が一過性に見られる傾向にあり術式の特徴と考えられた.今回の調査では認めなかったが重篤な合併症を起こさないために術式の確立,情報の共有が必要である.
  • 藤井 幸治
    2017 年 66 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    cortical bone trajectory(CBT)法の利点は,traditional pedicle screw(PS)と比較して低侵襲手技で,スクリュー引き抜き強度が高いことである.欠点としてスクリューが短く椎体支持が弱いため,臨床成績がPSに比べて劣ることが指摘されている.この欠点を補うため,CBT法で椎体前方柱までスクリュー刺入が可能かナビゲーションシステムを用いて検討した.刺入位置を一般的なCBTの頭側・外側とし,Roy-Camille法に準じると,コンピューター上では全例椎体前方柱までスクリュー刺入が可能であった.臨床応用した78本のCBTは,ナビゲーションプランニングと術中透視を利用することで,椎間関節を損傷することなく92%のスクリューが前方柱まで到達し,69%で5.5mm径以上のスクリューが使用できた.CBT法の低侵襲性を維持しつつ太く長いスクリュー刺入が可能であった.
  • 千住 隆博, 白澤 建藏, 嶋 勇一郎, 上原 慎平, 矢野 良平, 橋川 和弘, 渡邊 哲也, 原田 岳, 山下 彰久
    2017 年 66 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】Sacral alar-iliac screw(以下SAI)によって,腰仙椎の固定性と矯正保持能力は著しく向上した.今回,成人脊柱変形(以下ASD)に対して,SAIを使用して腰仙椎固定を行った症例における,骨癒合および術前後の脊柱骨盤アラインメントを調査し,その有用性と問題点を検討した.【対象と方法】2012年から2015年までに,SAI screwを用いて腰仙椎を含む脊椎矯正固定術を行い,6カ月以上経過したASD症例16例(男性3例,女性13例)を対象とした.骨癒合,脊柱骨盤パラメーター,合併症を調査した.【結果】SAIを用いた矯正固定術では,L5/S1間での骨癒合率は16例中15例(93.8%)に認め,最終観察時の脊柱骨盤アラインメントも保たれていた.【結論】SAIは,腰仙椎間の固定として非常に有用であった.
  • 戸次 将史, 平川 洋平, 南谷 和仁, 志波 直人
    2017 年 66 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    上腕骨遠位端coronal shear fractureは,上腕骨小頭と滑車の冠状面に剪断力が加わり生ずる比較的稀な骨折であり,その1例を経験したので報告する.(症例)53歳女性,歩行中誤って水田に転落し受傷.単純X線及びCTにて,後方骨皮質の粉砕のない上腕骨遠位端coronal shear fracture(Dubberley分類type3A)及び橈骨頭骨折(Mason-Morrey分類type1)と診断.受傷後5日目に前外側アプローチにて,headless compression screwを用いて骨接合術を施行.術後2週外固定後,右肘関節可動域訓練開始.術後6か月の現在,右肘可動域;-30°~130°と伸展制限を認めるが,JOA score;78点・Grantham評価;Goodであった.本骨折は,骨片が軟部組織との連続性が乏しく,骨接合術を行うにあたり,より解剖学的整復と強固な内固定が必要とされる.また,骨折型により適するアプローチや固定法が異なると思われ,術前に正確な骨折型評価を行う必要がある.
  • 永尾 保, 大茂 壽久, 佐保 明, 長島 加代子, 大友 一, 濱田 賢治, 清水 建詞, 田原 尚直
    2017 年 66 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    小児の肘外傷に伴う肘関節脱臼は多くは骨折を合併することで生じ,骨折を伴わない単独脱臼は非常に稀である.骨折は上腕骨内顆骨折がもっとも多く,その他に上腕骨外顆,尺骨鉤状突起,肘頭などもあるがいずれも稀である.今回,6歳小児の上腕骨外顆骨折に伴った肘関節後方脱臼の1例を経験した.手術室搬入前にMRIを撮影できたことで上腕骨骨端線離開との鑑別診断が可能であり,正確な診断のもと,同日に後方脱臼に対する徒手整復術と上腕骨外顆骨折(Milch 2型)に対する観血的整復固定術を施行した.後療法は術後3週間の上腕からのギプスシーネ固定を行った.受傷後6か月の最終調査時ROMは伸展0°/屈曲145°,回内90°/回外90°,異所性骨化や転位なく骨癒合を得た.
  • 柴田 光史, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 亀川 史武, 野田 昌宏, 稲光 秀明
    2017 年 66 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨近位骨端線損傷は比較的稀な骨折である.今回我々は当院で手術的加療を行った上腕骨近位骨端線損傷の症例について検討した.【対象・方法】2007年9月~2015年10月までに当院で手術を行った上腕骨近位骨端線損傷5例を対象とした.受傷時平均年齢は12.4歳(9~14歳)で,骨折型はSalter-Harris分類で全例Ⅱ型で,Neer-Horowitz分類ではⅢ度が2例,Ⅳ度が3例であった.手術は全例全身麻酔下に徒手整復,Kirschner鋼線での経皮的固定を行った.これらの症例の受傷時,術後での転位の程度を単純X線で評価した.術後平均経過観察期間は13ヶ月(3~30ヶ月)であった.【結果】全例骨癒合が得られ合併症は認めず術後の転位角は平均13.6°改善し,肩関節可動域制限は認めなかった.
  • 小杉 健二, 目貫 邦隆, 田島 貴文, 平澤 英幸, 善家 雄吉, 酒井 昭典
    2017 年 66 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    症例は14歳女性.6歳時に右上腕骨顆上骨折術後に前腕コンパートメント症候群を生じ,術翌日に減張切開術を受けた.その後リハビリテーションを継続したが,右手関節の掌屈制限が残存し,母指から中指のしびれ,手指の伸展制限を認め,当院を紹介された.手術創は肘関節の内外側にあり,前腕伸筋群は過緊張し,手関節自動可動域は肘関節伸展位で掌屈-35°,肘関節屈曲位で掌屈20°とdynamic tenodesis効果を認めた.また,後骨間神経麻痺及び正中神経麻痺が合併していた.前腕伸筋群の拘縮による手関節伸展拘縮の診断で手術を施行した.前腕近位部にて伸筋群は線維化と癒着が著明であり,上腕骨外顆付着部より順次筋解離術を行うことで手関節掌屈制限は改善した.また正中神経及び後骨間神経は,減張切開時の手術創レベルで瘢痕組織により絞扼されていたため,同部の切離と神経剥離を行った.術後7ヶ月経過し,現在神経麻痺は消失,可動域は改善しており経過良好である.
  • ―改良Desmanet変法―
    田中 寿人, 笠原 貴紀, 秋山 菜奈絵
    2017 年 66 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】当院では65歳以上の橈骨遠位端骨折で背側骨皮質の粉砕があるAO typeA 3に対して手術適応があるものには髄内弾性ピンニング法(Desmanet変法)を行っているが,骨にかかる応力が強すぎてCut outする事があったため改良を行った.【対象と方法】平成23年から平成26年までに当院を受診した65歳以上の橈骨遠位端骨折患者のうち骨折型はAO A 3の場合で手術適応があるもの5例に改良Desmanet変法を施行した.性別は全て女性,平均年齢76歳,平均観察期間は9.2ヶ月であった.改良点はピンの末梢部をヘアピン状に加工し,接触面積を広げることで骨にかかる応力を減らした.また同部位を骨形状に合わせてベンディングし,ピンの刺激を減少させた.【結果】臨床結果は最終観察時での齋藤の評価法でExcellent 2例,Good 3例であった.Cut outや神経,腱合併症なども認めず,全例骨癒合した.
  • 髙田 真一, 住吉 康之, 末永 英慈
    2017 年 66 巻 1 号 p. 120-122
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】手指において動物咬創は骨・関節に達しやすく,感染に注意を要する.犬咬創による化膿性DIP関節炎・骨髄炎に対し腸骨移植を行った1例を報告する.【症例】62歳女性.主訴:右環指痛.現病歴:糖尿病等に対して加療中.右環指DIP関節部を飼い犬に咬まれ受傷.受傷2日後に近医受診し局所麻酔下に切開,抗菌薬投与を行い,受傷後23日目に骨髄炎を疑い当科紹介受診.所見:右環指DIP関節の腫脹,発赤,排膿を認めた.単純X線にてDIP関節破壊像を,MRIにてDIP関節内膿瘍を認めた.病巣掻爬を行い,感染は鎮静化し創閉鎖したが,骨欠損があり不安定であったため,病巣掻爬後25日目に腸骨移植術を行った.移植骨は鋼線固定し,骨癒合後抜去した.【考察】徹底的な病巣掻爬を行い感染の鎮静は得られ骨欠損を生じたが,腸骨移植により安定した指長を温存することができ整容的に良好な結果を得ることができた.
  • 土肥 憲一郎, 永田 純一, 淺野 圭, 出田 聡志, 石河 利之
    2017 年 66 巻 1 号 p. 123-124
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【背景】短母指伸筋腱(EPB)の単独損傷は稀であり,治療方法が確立していないのが現状である.今回,EPB皮下断裂に対してsuture anchorを用いた再建術を行った2例を経験したので報告する.【症例1】53歳女性.半年前から誘因なく右母指MP関節の自動伸展不能を自覚.φ1.0 suture anchor 3-0を用いた再建術を行った.術後3週間はthumb spica splintで伸展位固定とした.術後6ヶ月,MP関節自動伸展-12度・屈曲55度まで改善した.【症例2】39歳女性.外傷を機に右母指MP関節痛と自動伸展不能となった.受傷後3ヶ月,上記同様の所見であり,suture anchorを用いた再建術を行った.術後6ヶ月,MP関節の自動伸展-5・屈曲55度まで改善した.【考察】EPB断裂に対して腱移行術の報告が散見される.今回,suture anchorを用いることで簡便に再建することができ,術後良好な経過を得ることができた.【結論】短母指伸筋腱皮下断裂に対するsuture anchorを用いた再建術は有効であった.
  • 古庄 寛子, 畑中 均, 高﨑 実, 平本 貴義, 松延 知哉, 泉 貞有, 河野 勤, 鬼塚 俊宏, 今村 寿宏, 平塚 徳彦, 加治 浩 ...
    2017 年 66 巻 1 号 p. 125-127
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    陳旧性volar instabilityは稀な病態であり,外傷性には掌側板損傷やMP関節脱臼後に十分な治療がされなかった結果生じるとされている.今回我々は,外傷により生じた陳旧性Volar instability症例に対して手術的に加療し,良好な成績を得たので報告する.症例:16歳女性.サッカー中に左母指を蹴られMP関節過伸展位となった.近医にて整復行い,副子固定された.2日後,再度左母指をぶつけて同様の処置をうけ,1週間後に当院紹介となった.初診時,MP関節腫脹はなく,掌側の圧痛をわずかに認める程度であった.伸展ストレスX線にて左右差なく,副子固定を継続した.経過中,自動伸展により一旦過伸展位になると,屈曲位に復する事が不能となったため手術加療を要すると判断した.術前可動域は,屈曲50°,伸展45°,Key pinch力2.5kg(健側7.0kg),DASH9.5点であった.受傷より3か月後に手術を施行した.Kessler(1979)は短母指伸筋腱を用いた手術を報告したが,今回我々は長掌筋腱(以後PL腱)を用いて手術を行った.術後経過は良好であり,術後1年時点で無症状であり,可動域は屈曲52°,伸展-22°,Key pinch力5.5kg(健側7.0kg),DASH1.7点であった.陳旧性volar instabilityに対する,PL腱を使用した手術は有効であったと考えられる.
  • 安部 幸雄, 藤井 賢三
    2017 年 66 巻 1 号 p. 128-130
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】Eaton分類 stage III(SIII)の母指CM関節症(CM関節症)に対する手術治療は我が国では関節形成と関節固定が一般的である.関節固定では隣接関節に関節症変化があれば適応を慎重に考慮しなければならない.SIIIの診断は術前のX線にて行われるが,術中の肉眼所見にて舟状骨遠位の変性像がみられる例にしばしば遭遇する.今回,術前にSIIIと診断した症例の舟状骨遠位関節面の状態について観察した.【対象・方法】2003年以降当科にてCM関節症に対し大菱形骨全摘出+関節形成術を行った87関節のうちSIIIは46関節であった.このうち術中の観察において舟状骨遠位関節面に軟骨のびらん,軟骨下骨の露出といった変性所見を認めたのは17関節:37%であった.【考察】X線における舟状大菱形骨(ST)関節の評価は術中の観察における所見とは乖離していた.CM関節固定によりST関節の関節症変化の進展が危惧される.関節固定を行う際はMRIや関節鏡による評価が必要かもしれない.
  • 安部 幸雄, 藤井 賢三
    2017 年 66 巻 1 号 p. 131-133
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【目的】手関節鏡は様々な病態の治療に応用されている.今回,鏡視下に月状三角骨靭帯を縫合し良好な成績を得た一例を経験した.【症例】14歳,女性.遷延する手関節尺側部痛にて紹介受診.術前の理学所見,MRIにてTFCC断裂および豆状三角骨関節由来のガングリオンを疑った.鏡視するとTFCC断裂はなく,ガングリオンと月状三角骨靭帯の断裂(grade 3)を認めた.靭帯は三角骨から剥離断裂し,さらに背側関節包が三角骨から剥離していた.ガングリオンを掻爬したのち,三角骨に骨孔を作成し靭帯にかけた糸を骨孔に通し背側関節包と一体として鏡視下に縫合した.術後4週の外固定を行った後リハビリを開始し,術後4か月で疼痛は消失した.【考察】月状三角骨靭帯の修復に際し,鏡視下に骨間靭帯と背側関節包を一体として修復し良好な成績を得た.
  • 真島 久, 合志 光平, 二之宮 謙一, 牟田口 滋, 山本 俊策, 足達 永
    2017 年 66 巻 1 号 p. 134-136
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】比較的稀な外傷である遠位上腕二頭筋断裂に対し,受傷後6日目に手術加療を施行したので報告する.【症例】60歳男性.3mの高さから転落し受傷.右肘運動時を認め当院受診した.フックテスト陽性,MRI矢状断像で遠位上腕二頭筋腱断裂と診断した.手術時に近位方向へ短縮した断端を認めた.腱に糸をかけて引き下げ,橈骨粗面を愛護的に展開しスーチャーアンカー2本用いて縫着した.術後明らかな神経障害等を認めず,術後9か月時点で健側と同等の可動域を獲得し経過良好である.
  • 佐保 明, 大茂 壽久, 新城 安原, 國武 真史, 長島 加代子, 濱田 賢治, 大友 一, 清水 建詞, 田原 尚直
    2017 年 66 巻 1 号 p. 137-139
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】遠位上腕二頭筋腱断裂の1例を経験したので報告する.【症例】76歳,女性ラーメン店経営.約5Kgの鍋を持ち上げた際に左肘に激痛が走った.その後,経過観察していたが疼痛が持続するため約2か月後に当院紹介受診となった.当院初診時は肘関節掌側の腫瘤を認め,肘関節可動時と重量物を持つ際に肘前面の痛みを強く自覚していた.可動域制限は認めず,MMTは肘屈曲,前腕回外4と低下していた.MRIで左遠位上腕二頭筋腱断裂を認めたため肘関節前外側進入で手術を行った.上腕二頭筋腱は遠位断端で完全断裂しており,cortical buttonとinterference screwを用いて強固に固定した.術後は早期より可動域訓練を行い,経過は良好であった.【結語】遠位上腕二頭筋腱断裂の症例に対してcortical buttonとinterference screwを用いた固定は有用であった.
  • 山﨑 裕子, 西 芳徳, 宮本 謙一郎, 渡辺 英夫
    2017 年 66 巻 1 号 p. 140-143
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    我々は種々の運動器疾患に対して可撓性プラスチックキャストを使用した即席装具療法を行ってきた.今回,肘部管症候群経過中に環指と小指の下垂指を続発した症例を経験した.下垂指は手関節背側部で指伸筋腱の尺側の一部と固有小指伸筋腱の皮下断裂が生じたものによると診断した.また,皮下断裂の原因はX線所見を参考にして遠位橈尺関節変形性関節症と判断した.この症例に対して可撓性プラスチックキャストを使用した即席装具療法を行い良好な結果を得たので報告する.
  • 前原 光佑, 救仁郷 修, 中村 俊介, 瀬戸口 啓夫, 泉 俊彦, 栫 博則, 石堂 康弘, 永野 聡, 小宮 節郎
    2017 年 66 巻 1 号 p. 144-147
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    今回,我々は比較的稀な大腿骨頚部疲労骨折の3例を経験したので報告する.症例は全て男性で,発症時年齢は16歳から26歳.持続する股関節痛を主訴に近医を受診,3例中2例は単純X線像で明らかな異常を認めなかった.いずれの症例も基礎疾患のない少年期から青年期の男性で,転倒などの明らかな外傷機転を認めなかったが,2名は陸上部の長距離ランナー,1例は警察官で高い活動性を示していた.CT,MRI,骨シンチグラフィーにて診断を得た.全ての症例において患肢免荷による保存療法にて加療した.荷重開始許可の判断や骨癒合の判定は,単純X線像により行った.スポーツ競技もしくは労務復帰までの期間は2~3か月であった.股関節痛を認める症例に対して大腿骨頚部の疲労骨折は稀であるが,鑑別診断として考慮に入れるべき疾患である.単純X線像で異常を認めない場合でも,アスリート選手等本疾患を疑う際には,MRIが非常に有用である.
  • ―運動器検診をいかに活かすか―
    池永 仁, 宮本 俊之, 福島 達也, 田口 憲士, 竹内 潤, 米倉 暁彦, 富田 雅人, 尾﨑 誠
    2017 年 66 巻 1 号 p. 148-150
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    16歳男性の陸上競技中に上前腸骨棘剥離骨折をきたし,保存的加療とストレッチでスポーツ復帰ができた症例を経験した.若年者の上前腸骨棘剥離骨折の発生原因は,準備運動不足,骨端部の脆弱期等が報告されている.本症例ではタイトネスが関与していると考えられ,タイトネスの改善が有用であった.運動器検診を通して,我々整形外科医はタイトネス改善の重要性について啓蒙する必要があると考える.
  • 来間 裕一, 古江 直也, 岡崎 大紀, 新村 辰臣, 光武 慎一朗, 半仁田 勉
    2017 年 66 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【症例1】51歳,女性.階段より転倒し,救急搬送.左恥骨部に圧痛を認め,レントゲンにて左恥骨骨折の診断で保存的加療となった.入院20分後,突然の血圧低下が出現.CTにて骨折部周囲からの血管外漏出像を認め,血管塞栓術を施行後,ICU入室となった.【症例2】86歳,女性.草刈り作業中に転倒.近医を受診し,右恥骨骨折の診断にて入院となった.入院1時間後,突然の血圧低下を認めたため加療目的に当院へ紹介.右下腹部~殿部にかけて圧痛および腹部膨満を認め,CTにて巨大な後腹膜血腫を認めた.明らかな血管外漏出像は認められず,保存的加療の方針となった.【結語】骨盤骨折は循環動態に影響を及ぼす外傷であるが,単独恥骨骨折は安定型骨盤骨折とされている.しかし本症例のように遅発性に巨大血腫をきたし,循環動態に影響を及ぼしうる場合があり,文献でも症例報告が散見されている.今回経験した2症例に文献的考察を加えながら報告する.
  • 田之上 崇, 中原 真二, 田邊 史, 米盛 公治
    2017 年 66 巻 1 号 p. 156-159
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【抄録】軟骨性外骨腫は比較的高頻度にみられる骨腫瘍であるが脊椎発生例は稀である.今回,我々は,第6頸椎棘突起に孤立性外骨腫が発生し,かつ頸椎症性脊髄症に対して手術的治療を施行した一例を経験したので報告する.症例は54歳女性で主訴は両上下肢しびれ,巧緻運動障害で当院紹介受診された.頸椎単純レントゲン像にて頸椎棘突起部に巨大腫瘤像を認めた.頸椎CT・単純/造影MRIにて第6頸椎棘突起から左側に隆起する腫瘤性病変とC3/4~C6/7までの脊柱管狭窄を認めた.骨皮質・髄質は連続性に病変に移行していたため外骨腫を疑った.骨腫瘍に伴う脊柱管狭窄は認められなかった.第6頸椎棘突起基部で骨腫瘍をen blocに切除し,C3-6正中縦割式の椎弓形成術を施行.術後経過,病理組織検査の結果を報告するとともに,文献的考察を加えて報告する.
  • 阿部 徹太郎, 宮崎 正志, 吉岩 豊三, 金崎 彰三, 野谷 尚樹, 石原 俊信, 津村 弘
    2017 年 66 巻 1 号 p. 160-164
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【諸言】原発性脊椎腫瘍に対しTotal en bloc Spondylectomy(TES)を施行した1症例を経験したので報告する.【症例】症例は78歳男性.半年前より腰痛が出現し,近医で保存加療を受けていた.精査の結果,腰椎腫瘍性病変を認め透視下生検が施行された.良性原発性骨腫瘍であるdesmoplastic fibromaを疑う結果であり,当科紹介となりTESを施行した.腰痛は軽減し,リハビリを開始した.病理結果はMalignant Fibrous Histiocytoma(MFH)であり,術後2ヵ月目に多発肺転移が発見された.パゾパニブ内服開始し,前医へ転院となった.転院後,転移巣の増大により病状は悪化し術後10ヵ月で死亡した.【考察】脊椎発生のMFHは,四肢発生例と比較し非常に稀である.他部位発生と比較して予後は非常に悪く5年生存率は7.7%程度と報告されている.手術療法が選択される場合,Debulking surgeryよりもEn bloc resectionで予後が優れている.【結語】腰椎原発MFHに対し,TESを施行した症例を経験した.治療技術の進歩にも関わらず予後が悪く,更なる治療法の確立が望まれる.
  • 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 永井 琢哉, 川野 啓介, 李 徳哲, 戸田 雅, 川越 秀一, 帖佐 悦男
    2017 年 66 巻 1 号 p. 165-169
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    仙骨骨巨細胞腫(以下GCT)の2例を経験したので報告する.症例1:48歳女性,左殿部から下肢痛出現.腰椎MRIにて仙骨左側に腫瘍を指摘され当科紹介.生検にてGCTの診断を得た.術前に合計4回の動脈塞栓後に腫瘍切除を行った.前方から血管を処置後,後方から骨切りし仙骨全摘を行なった(手術時間17時間13分,出血8300ml).2期的に後方再建を追加した.術後6年の現在,再発転移なく経過良好である.症例2:57歳女性,右殿部痛出現.MRIで仙骨腫瘍を疑われ紹介受診.生検にてGCTの診断を得,計4回の動脈塞栓後に腫瘍切除を行なった.後方掻爬施行し(手術時間6時間32分,出血4760ml)2期的に後方再建を追加した.術後3年で再発を認め再度腫瘍掻爬を行なった.再手術後3年の現在再発転移なく経過良好である.2例とも一時的塞栓物質による腫瘍縮小効果はなく,総酸性フォスファターゼも高値のままであった.
  • 原 光司, 平岡 弘二, 濱田 哲矢, 松田 光太郎, 長田 周二, 志波 直人
    2017 年 66 巻 1 号 p. 170-174
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    骨軟骨腫に続発する脱分化型軟骨肉腫は非常にまれである.今回高齢者の腸骨に発生した症例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.以前より多発性骨軟骨腫と診断されていた.2年前より左臀部に腫瘤を認めるようになり,近医にて血腫と診断され,複数回穿刺を受けていた.その後腫脹が増大し,疼痛を伴うようになったため当科を受診した.単純X-Pでは左腸骨の骨軟骨腫を認め,MRIでは腫瘍の一部に肥厚した軟骨帽の存在と連続する軟部腫瘤を認めた.また内部に嚢胞性変化が認められた.切開生検施行するも悪性腫瘍を確認できなかったため,骨軟骨腫周囲の滑液胞炎も考慮し,辺縁切除術を施行した.しかし術後の病理組織では骨軟骨腫に続発した脱分化型末梢性軟骨肉腫と診断された.本疾患は骨軟骨腫から発生した二次性軟骨肉腫の約5.5%の発生と報告され非常にまれではあるが,骨軟骨腫に連続する軟部腫瘍では鑑別として考慮する必要がある.
  • 宮田 倫明, 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2017 年 66 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】診断および治療に難渋した手に発生した平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.【症例】症例は30歳の女性である.右母指球部の30×16mm大の腫瘤にて当科を受診した.切開生検の結果は結節性筋膜炎であった.外来で経過をみていたが増大傾向あり,6週間後に辺縁切除術を行った.病理は結節性筋膜炎の診断だった.しかし3ヵ月後に局所再発,肺転移もみられた.経過を病理部に報告したところ線維肉腫に病名が変更された.アドリアマイシン+イホスファミドによる化学療法(AI療法)2クール後に前腕切断術を行った.病理は平滑筋肉腫grade3であった.AI療法の効果は乏しかったためゲムシタビン+ドセタキセルによる化学療法(GD療法)に変更し,肺転移に対しては切除術を行った.その後,右眼窩に転移し放射線治療を行ったが,経過中に肺転移が急速に悪化.初診から1年2ヵ月で永眠された.本症例について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岩崎 達也, 糸永 一朗, 田仲 和宏, 河野 正典, 津村 弘
    2017 年 66 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    縦隔発生のユーイング肉腫に対して自家末梢血幹細胞移植:peripheral blood stem cell transplantation(PBSCT)併用高用量化学療法を行い寛解に導き,施行後1年現在無増悪生存である1例を経験したので報告する.症例は38歳女性,4ヶ月前から咳嗽が出現し近医耳鼻科で治療したが改善せず,2ヶ月前から呼吸困難感も出現し前医を受診した.縦隔腫瘍を疑われ針生検を施行されEWS/FRI-1が検出されたため縦隔ユーイング肉腫の診断で当科紹介となった.縦隔に長径16.7cmの巨大腫瘤と悪性胸水を認めVDC/IEを3回施行後,放射線照射を追加し,カルボプラチン,エトポシド,イホマイドによる高用量化学療法の後,PBSCTを施行した.施行後1年現在寛解状態を維持しており,ADL制限なく経過良好である.
  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2017 年 66 巻 1 号 p. 183-185
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    [はじめに]高分化脂肪肉腫の比較的稀な亜型である硬化型,炎症型の治療成績を調査した.[症例と方法]2005年から2015年に当科で治療し,病理学的に脂肪肉腫と診断した症例は86例(高分化型63例,粘液/円形細胞型17例,脱分化型6例,多形型1例)であった.高分化型脂肪肉腫の内訳は,脂肪腫類似型55例,硬化型7例,炎症型1例,紡錘細胞型0例であった.[結果]受診時平均年齢は,61.6歳.男性4例,女性4例.四肢発生7例,体幹発生1例.治療は,大腿切断1例,広範切除3例,辺縁切除4例行い,補助治療は,術前照射1例,術後照射4例に行っていた.化学療法は1例も行っていなかった.平均経過観察期間は52.1ヵ月で術後転移,再発ともに認めず,治療成績は良好であった.[考察]硬化型,炎症型高分化脂肪肉腫の治療成績は良好であった.術前に脱分化脂肪肉腫や粘液型脂肪肉腫,粘液線維肉腫等が疑われ,切断術や術前放射線照射を受けた症例がみられた.術前の正しい診断が重要であると考えた.
  • 圓尾 明弘, 大島 隆司, 宮 秀俊, 村津 裕嗣
    2017 年 66 巻 1 号 p. 186-188
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    【要旨】骨接合後の深部感染に対して骨髄針を病巣に留置して高濃度抗菌薬を投与するintra-medullary perfusion(iMAP)を行ったのでその治療成績を検討した.2000~2015年に骨折の骨接合術後に発生した深部感染に,iMAPを行った24例を対象とした.感染の発症後,病巣掻爬を行い,内固定材は出来る限り温存し,骨髄針を感染巣近傍に留置し,そこからアミノグリコシド系抗菌薬を持続投与した.抗菌薬の経静脈投与は併用した.深部感染の発生は術後平均178日(3例を除いて6週間以内)であった.iMAP留置期間は平均17日であった.24例中21例は内固定材を温存して感染を沈静化できた.24例中,4例に再燃をみとめたが,いずれもiMAPで感染を沈静化できた.iMAPは新たなdrug delivery systemとして,局所に高濃度の抗菌薬を分布できる利点があり,骨接合術後感染の治療の選択肢として有用である.
  • 片江 祐二, 田畑 洋司, 松本 康二郎, 近藤 秀臣, 西田 茂喜, 吉田 愛希, 千々和 直樹
    2017 年 66 巻 1 号 p. 189-191
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性椎体骨折の保存療法において,ジュエットコルセットのポリカーボネイト支柱幅の違いによる治療成績を比較検討することを目的に研究を行った.対象は骨粗鬆症性椎体骨折(T11-L2)を受傷し,3ヶ月以上単純X線による評価を行えた65歳以上の女性患者とした.N群(支柱幅30mm)は38例,平均80.6歳,B群(支柱幅40mm)は28例,平均79.6歳であった.それぞれの治療群の初診時から最終観察時の立位楔状角悪化度,立位局所後彎角悪化度,骨癒合率について検討した.立位楔状角悪化度はN群4.0°,B群3.8°,立位局所後彎角悪化度はN群5.8°,B群4.7°,骨癒合率はN群76%,B群86%でいずれも有意差は認めなかった.B群の方が立位局所後彎角の悪化の進行が少なく骨癒合率が高い傾向にあった.ポリカーボネイト支柱の装着感の良さを先行報告したが,B群は装着感の良さと骨癒合率の高さが期待できる装具といえる.
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