東京医科大学外科における過去17年間の胃全摘症例442例中,のべ112例に対し,二重腸嚢代用胃群を中心とし,他再術式群を対照として,逆流性食道炎および再建腸管に関して,臨床的,内視鏡学的,病理組織学的に検討し,次のごとき結論を得た.
1. 逆流性食道炎について
a. 愁訴率では代用胃群が最も低く,術後1年で完全にみられなくる.
b. 内視鏡学的には,代用胃群は色調変化型がほとんどで,術後早期に認められるのみである.
c. 病理組織学的には,代用胃群では,上皮の浮腫状変化は各期間を通じてみられたが,粘膜下層の炎症性細胞浸潤は術後早期例(3カ月未満)のみである.
2. 二重腸嚢代用胃について
a. 内視鏡学的には,単脚部,二重腸嚢部ともに, 3年未満例で発赤,浮腫を認めたが, 3年以上例では異常所見は全く認めなかった.
b. 病理組織学的には,単脚部,二重腸嚢部ともに, 1年未満例で粘膜下層の浮腫を認め, 3年未満例で粘膜固有層の炎症性細胞浸潤および浮腫を認めた.また,単脚部では3年以上,二重腸嚢部では1年以上経過例で,粘膜筋板の軽度の肥厚,線維化を認めた.
c. 組織化学的には,粘液産生能は正常に保持されていた.また,間質結合組織中の酸性ムコ多糖の含有量は, 3年までは弱陽性を示すが,それ以後は減少し,線維化傾向は軽度で,高度進行例は認められない.
d. 電子顕微鏡学的には, 1年未満例で細胞基底部の細胞浸潤,浮腫を認めるが, 1年以上例では消褪していた.また,粘膜上皮細胞,各種小器官,には異常がなく,各期間でも差異はみられなかった.
3. 胃全摘後の再建術式としての二重腸嚢代用胃は,形態的および機能的にすぐれた再建法であることが実証された.
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