日本臨床外科医学会雑誌
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50 巻, 12 号
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  • とくにurea cycle系のアミノ酸について
    福井 四郎, 青木 春夫, 水島 康博, 藤井 惇, 池山 淳, 滝 和美, 早坂 滉, 宇野 賢
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2499-2506
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患について
    A:甲型肝硬変症25名,乙型肝硬変症15名,B:脳症を伴わない群30名,伴う群10名,C:乙型肝硬変症の起因群である脂肪肝10名,肝線維症23名,甲型肝硬変症の起因群である亜急性肝炎15名,肝癌5名,末期肝癌10名についてわけ,urea cycleに関与しているアミノ酸について検討を加え,つぎの結果を得た.
    1. Orn. Glu, Asp, Arg, Cit, Glnらのurea cycleに関与しているアミノ酸は肝実質障害の悪化する度合が強くなるにしたがって乱れるアミノ酸である.
    2. とくにOrn, Gluはこの傾向が強い.
    3. Gln, Gluはともに肝実質障害の悪化の度合に比例して高くなる.この際,Glnの上昇する率よりもGluの上昇する率が高いのでGln/Gluの比は低くなる.したがって,これらの数値は,各種肝疾患術前,術後の栄養管理において各代謝とその主要臓器である肝の機能との関連性を知るためには良い指標となりうる.
  • 特にceftizoximeとpiperacillinの効果の比較
    品川 長夫, 石原 博, 福井 拓治, 真下 啓二, 水野 章, 由良 二郎
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2507-2512
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1986年4月より1987年12月までに手術を施行した上部消化管手術例を対象とし,CZXとPIPCの感染予防効果を比較した.薬剤の第1回投与は,無作為に割り付けた薬剤の2gを手術開始と同時に点滴静注した.第2回以後は1gを8時間ごとに点滴静注し,合計4日間の投与とした.解析症例数は,CZX投与群45例,PIPC投与群51例の合計96例であった.平均年齢,男女比,対象疾患,対象手術および術前の臨床生化学検査などの背景因子では両群に有意差はなかった.術後感染症はCZX群に8例(17.8%), PIPC群に19例(37.3%)みられ有意差(p<0.05%)があった.しかし,薬剤投与前後における臨床検査値の変動および副作用の発現については両群に差はなかった.両薬剤ともその投与期間が4日間であればMRSA感染症の問題は少ないと考えられた.上部消化管手術ではCZXはPIPCより優れた感染予防効果を示した.
  • 岡崎 裕, 成松 英明
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2513-2526
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    原発性乳癌腫瘤314例の組織切片についてestradiol (E2)の免疫組織化学的染色を行い,その所見とdextran-coated charcoal (DCC)法によるER測定結果を,腫瘍径,穿刺吸引法による細胞異型度,年齢,組織型などの因子別に比較検討した.
    両者の陽性陰性判定の一致率は69.1%と必ずしも高くなかった.加齢に伴ってE2陽性率は低下し,ER陽性率は上昇したことがその最も大きな理由と考えられた.若年者ではER測定結果は内因性のE2によって低値化し,一部の症例ではfalse-negativeを呈したものと思われた.ER陰性例の中でE2陽性細胞の占める比率の高いものでは内分泌療法の有効性が期待される.ERとE2はさまざまな相関を示すことから,乳癌組織切片におけるE2染色所見は内分泌療法の効果との関連において重要であり,乳癌のestrogen依存性についてはERとestrogenの両面から検討する必要がある.
  • CEAおよびCA15-3との比較検討
    徳田 裕, 田島 知郎, 太田 正敏, 奥村 輝, 則久 洋子, 久保田 光博, 三富 利夫
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2527-2531
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    新しい腫瘍マーカーNCC-ST-439 (ST-439)の臨床的意義を明らかにするため,乳癌症例135例(原発乳癌9例,再発乳癌27例,非再発乳癌99例)において同一検体にてCEA,CA15-3と比較検討した.sensitivityは,ST-439 66.7%, CEA 41.6%, CA15-3 38.9%で,ST-439は,CEA (p=0.063), CA15-3 (p=0.031)より高いsensitivityを有していた.specificityは,ST-439 82.8%, CEA 91.9%, CA15-3 97.0%でST-439は,CA15-3に比して有意に低かった(p=0.0014).ST-439とCEAあるいはCA15-3との間には有意な相関性はなく,ST-439とCEAまたはCA15-3とを組み合わせることによりCEA,CA15-3単独,あるいは,両者を組み合わせた場合より有意に高いsensitivityを得た.以上より,ST-439は,乳癌術後のmonitoring markerとして有用であると考えられた.
  • 篠崎 登, 内田 賢, 長原 修司, 南雲 吉則, 細谷 哲男, 桜井 健司
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2532-2535
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳癌の遠隔転移部位としては骨が最も多く,その診断法は,骨単純X線,骨シンチグラム,骨生検,骨髄穿刺,臨床所見により総合的に判断するのが一般的である.中でも骨シンチグラムは転移性骨腫瘍の発見に最も感受性が高い検査法であるが,特異性に乏しくfalse positiveとなる例もある.
    そこで外来でも安全かつ容易に施行できる穿刺吸引細胞診(fine needle aspirationbiopsy cytology: ABC)で乳癌患者の骨転移をどこまで診断できるかどうかを臨床経過・所見,骨シンチグラム,単純骨X線などの面から検討し以下の結果を得た.1) ABCは,乳癌の肋骨や頭蓋骨への転移の診断に関して信頼性が高かった.このように体表から容易に触知可能な薄い骨に対しては,外来で積極的に施行すべき診断方法と考えられた.2) 椎体は,偽陰性例が多かった.椎体のように厚くかつ硬い骨の場合には,現在施行しているような単純な方法によるABCでは診断困難と考えられた.
  • 木村 秀, 宇山 正, 原田 邦彦, 門田 康正
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2536-2539
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌255例,肺癌198例,食道癌27例,食道静脈瘤23例,計503例に対して術後呼吸器合併症,特に無気肺の発生について術式別に検討した.無気肺の発生は胃癌,肺癌の70歳以上の術前呼吸器併存症の多い症例に多く発生していた.術前の肺機能検査では4疾患全例で無気肺群と非無気肺群との間に有意差は認めなかった.術式別では肺癌の上葉切除例,胃癌では胃亜全摘術より胃全摘術例さらに食道癌手術例に多く発生していた.発生部位は肺癌では開胸側の上中葉に多く,胃癌全摘術例と食道癌は左下葉に多く発生していた.発見時期は胃癌は3日目,肺癌は1~2日目,食道癌は3日目に多く発生し,全体では3日目までに頻発していた.高齢者の呼吸器併存症例で,術中開胸開腹の術式の差に気をつけ,術後は発生時期,部位を考慮し適切な時期に気管支鏡による喀痰吸引,除痛を施行して無気肺に対処する必要がある.
  • 長期生存例を中心に
    宮本 幸男, 竹下 正昭, 大和田 進, 内田 治, 泉雄 勝
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2540-2544
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌の胃全摘術後5年以上の長期生存症例について術後愁訴をアンケート調査,外来面接に基づいて検討した.症例は最近の13年間に胃全摘が施行された174例のうち1年以上生存し再発の徴候が認められない53例である.術後5年以上生存例(長期観察群):21例を研究対象に,1年から4年生存例(短期観察群):32例と比較し以下の結果であった.両群の手術時背景因子は年齢,性別,stageには偏りはない.再建術式で短期観察群でRoux-en-Y,膵脾合併切除が有意に多かった.食生活では摂取量が減少し,体重が術前値に回復する例は5%と極めて少なかった.逆流性食道炎症状はRoux-en-Y,空腸間置では術後年数の経過とともに軽快していた.社会復帰の状態は80%の症例が術前の生活にもどっていた.
  • 水谷 郷一, 宇都宮 利善, 大西 英胤, 花上 仁, 徳田 裕, 三富 利夫, 田島 知郎, 幕内 博康, Oh SHINOHARA, T ...
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2545-2551
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    intestinal splinting法を癒着性イレウス50例に行い,最長15年間の観察に基づく術後成績を,癒着剥離のみを行った44例ならびに癒着剥離に腸切除を加えた19例と比較した.再発率はintestinal splinting群4.0%,癒着剥離のみの群15.9%,癒着剥離に腸切除を加えた群5.3%であり,最も低率である.合併症は3例に認められたが,いずれも軽快しており,また本法が原因による死亡例はない.最長15年経過例を含む38例の追跡調査では全員経過良好である.以上より癒着性イレウスの再発防止手術として,本法は簡便で有用な方法と考えられる.
  • 石川 正志, 余喜多 史郎, 倉立 真志, 中田 芳夫, 古味 信彦
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2552-2558
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    当科において過去3年6ヵ月の間に手術を施行した下肢末梢動脈閉塞性疾患17例を対象として,Doppler脈波の臨床的有用性を検討した.Doppler脈波を4型に分類し,血管撮影,容積脈波,ankle/arm pressure index (API)などと比較検討した.大腿動脈ではDoppler脈波は血管撮影とよく相関したが,後脛骨動脈,足背動脈については血管撮影で開存していても,Doppler脈波でIII型ないしIV型を呈することがあった.このような症例では測定部位よりも中枢側にて,血管撮影上著明な狭窄像を示すことが多かった.またDoppler脈波は容積脈波,API, Fontaine分類ともよく相関した.一方イヌを用いた急性実験では血流量100%でI型,80%でII型,50%でIII型,30%以下でIV型を呈した.
    以上のことからDoppler脈波の分類は末梢動脈閉塞性疾患のscreeningやfollow upに有用であるばかりでなく,末梢のrun-offの情報を得ることができ,手術の成否を確かめる指標にもなりうると思われた.
  • 久留宮 隆, 安藤 芳之, 三田 孝行
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2559-2563
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺のadenolipomaの2例を経験し超音波検査をする機会をえたので,その超音波画像を中心に若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例1は49歳の主婦で左乳腺腫瘤を主訴として来院.左乳腺ABE領域に弾性軟,表面平滑な腫瘤を触知し脂肪腫の診断にて摘出術を施行した.摘出腫瘍は7×5×3.5cm,卵型で表面に菲薄な被膜を有しており,外面色は淡黄色で,割面は黄色の脂肪織の中に乳腺組織を思わせる白色網状部分が混在していた.症例2は61歳の主婦で乳癌検診にて右乳腺腫瘤を指摘され当科受診.右乳腺BD領域に弾性軟表面平滑な腫瘤を認めadenolipomaの診断にて摘出術を施行した.腫瘍は3×2.8×1cm,長円型で症例1と同様薄い被膜を有しており,脂肪織の中に乳腺組織を思わせる白色部分が混在していた.
    本症の超音波画像所見は,高エコーで,辺縁整な腫瘤として描出され,内部エコーは不均一であった.これは腫瘍組織が音響的に均一でなく,多様性のある本腫瘍の組織像を反影しているものと思われた.
  • 本邦報告例の検討
    山崎 眞一, 古味 信彦, 田村 利和, 田村 阿津王, 平野 恵子, 長谷 川匡
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2564-2568
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺の管状腺腫(tubular adenoma)は極めて稀な疾患である.今回われわれは本疾患の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は19歳女性.右乳房腫瘤を主訴として来院した.腫瘤は径約2.5cm,表面平滑で弾性硬,可動性良好であった.乳腺超音波検査では内部エコーは均一で低エコーであった.
    以上の所見から線維腺腫の診断のもとに腫瘤の摘出術を行った.組織学的検索により間質の増生を伴わない密な小腺管の増生を認め,乳腺に発生した管状腺腫と診断した.
    臨床所見や補助診断などにより術前に管状腺腫と診断することは困難であり,本疾患を独立した疾患単位とする認識をもって腫瘤の詳細な病理組織学的検討を行い,他疾患と鑑別することが重要であると思われた.
  • 畠山 優一, 君島 伊造, 吉田 典行, 鈴木 正人, 二瓶 光博, 六角 裕一, 土屋 敦雄, 阿部 力哉, 野水 整, 冨永 邦彦, 若 ...
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2569-2573
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳癌はエストロゲン依存性の癌であることが古くから知られているが,その他のホルモンとの関連性については知見が少ない.今回,われわれは乳癌と末端肥大症とが合併したまれな症例を経験したので,成長ホルモン(GH)と乳癌との関係について若干の文献的考察を加えて報告した.症例は43歳,女性.左乳癌にて拡大乳房切断術が施行されたが,組織型は硬癌であり,術後の病期はT2n1βm0 Stage IIの乳癌であった.術前より特徴的な顔貌より末端肥大症が疑われ,内分泌学的検査,トルコ鞍X-P,頭部CTスキャンにより下垂体腺腫(GH産生腫瘍)と診断し,乳切後,当院脳外科にて経蝶形骨洞的に腺腫摘出術が施行された.組織学的には好酸性腺腫であった.本症例は組織型が硬癌,リンパ節転移陽性で,Flow cytometryによるDNA histgramはaneuploidであり,これまでの報告とあわせ,GHが腫瘍増殖を促進し,その悪性度を高める可能性があることが示唆された.
  • 原田 幹彦, 吉村 耕一, 瀬山 厚司, 竹中 博昭, 藤岡 顕太郎, 大原 正己, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2574-2577
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去13年間に教室で経験した腎動脈下腹部大動脈瘤は非破裂性88例,破裂性14例の計102例であった.このうち破裂性14例に対し,手術成績を左右すると思われる因子,すなわち年齢,発症から手術までの時間,術前ショックの有無,大動脈遮断時間,手術時間,術中出血量,Fitzgerald分類及び破裂部位についてretrospectiveに検討した.手術死亡例は5例(35.7%)であった.手術成績に大きく関与したものは術前ショック状態,Fitzgerald IV型(腹腔内出血),破裂部位であった.死亡した5例はすべて術前ショック状態を呈し,かつFitzgerald IV型であった.
  • 梅原 靖彦, 宮原 透, 吉田 雅行, 大場 範行, 原田 幸雄
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2578-2582
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    転移性肺腫瘍切除例の中でも比較的稀である胃癌肺転移切除症例を2例経験したので報告する.症例1は,77歳男性で胃切後1年目と2年目に結節型肺転移に対して,それぞれ肺部分切除術を施行し胃癌術後6年4ヵ月,肺転移巣切除後4年2ヵ月経て,再発徴候なく現在も生存中である.症例2は,58歳女性で胃切後3年目と3年8カ月目に結節型肺転移に対して,それぞれ肺部分切除術を施行した.胃癌術後5年5ヵ月,肺転移巣切除後1年9カ月で死亡した.
    近年転移性肺腫瘍に対する外科的治療が積極的に行われているが,胃癌の肺転移は癌性リンパ管症,癌性胸膜炎の形をとるものが多く切除対象となる結節型肺転移は少ない.今回,2例の胃癌肺転移症例に対し4回の肺切除を施行し良好な成績を治めた.胃癌肺転移でも切除可能であれば,積極的に切除すべきであると思われる.
  • 近藤 宗廉, 桑田 雪雄, 大浪 優二, 大森 浩明
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2583-2587
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂は,多くは嘔吐に引き続き激しい胸痛・上腹部痛で発症する重篤な疾患であるが,比較的稀な疾患であるため他疾患と誤診され,適切な処置が遅れ予後不良となることが多い.最近,外科治療により治癒せしめた本症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は39歳の男性で,食後などに嘔吐することがしばしばあったという.今回,嘔吐後に突然,前胸部から心窩部にかけて激しい疼痛がみられ,開業医を受診,胆石症の診断で紹介となった.しかし腹部超音波検査,CT検査で胆石は認めず,また心電図,胸部および腹部X-Pでも異常所見は認めなかった.上部消化管内視鏡検査では体動が激しく観察不十分であったが,その後に皮下気腫,縦隔気腫が出現し,胸部X-Pで左胸腔内に液体貯留を認めたため,食道透視を行い,造影剤の漏出を確認し食道破裂と診断.直ちに開胸,穿孔部縫合閉鎖を行った.術後経過は良好で術後第28日目に退院した.
  • 藤井 輝彦, 藤田 博正, 山名 秀明, 坂本 和義, 白水 玄山, 南 泰三, 掛川 暉夫
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2588-2593
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去8年間に当教室で経験した食道アカラシアに併存した食道癌の3例を報告するとともに,同期間中の食道癌330例,食道アカラシア10例との臨床像を比較検討した.食道アカラシア併存食道癌では女性の比率が高く,年齢は平均61歳で食道癌の好発年齢とほぼ同じであった.癌腫の長径は平均9cmで比較的長く,占居部位はIuが多かった.進行度は全例stage IVで,2例に姑息的切除術が施行され,もう1例は切除不能であった.予後は著しく不良で,早期発見の重要性が痛感された.
  • 田島 幸一, 久下 裕, 島田 良昭, 都築 英雄, 林 一彦, 大朏 祐治
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2594-2598
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.腹部腫瘤及び心窩部痛を主訴として来院した.初診時臍上部正中やや左側に小児頭大の腫瘤を触知したが可動性は大であった.腹部超音波検査やCTでも巨大な嚢腫様病変を認めたが,発生部位は同定できなかった.開腹術施行し,腫瘍は胃より発生したものと判明,有茎性胃外性に発育したものであったので,腫瘤茎部根部のであったので,腫瘤茎部根部のが,腫瘍の破裂によるものかどうかはっきりしなかった.術後病理検査にて胃平滑筋肉腫と判明,術前画像診断で予想されたごとく,嚢腫様変性が著明で中に出血を伴っていた.本例では組織学的に核分裂像も多く,腫瘍径も18cmと巨大であり,他臓器への浸潤がみられなかったものの予後に関しては悲観的と思われた.また腹腔内出血も予後不良の兆候かと考えられたが,幸いにして患者は術後15ヵ月を経た現在再発の兆はない
  • 西本 知二, 谷向 茂厚, 天池 寿, 池田 栄人, 武藤 文隆, 橋本 京三, 栗岡 英明, 大内 孝雄, 田中 貫一, 原田 善弘, 伊 ...
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2599-2602
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    患者はBehcet病の既往のある61歳の女性.多量の下血による出血性ショックにて緊急開腹術を施行した.小腸潰瘍の右外腸骨動脈への穿破による出血で,小腸切除および動脈形成術を施行し救命し得た.患者は,S46年に某院に下血で入院し,同時に,口腔内アフタ,眼症状,陰部潰瘍,下肢の結節性紅斑を指摘され,Behcet病と診断された.その後も,Behcet主症状と共に,下血発作を数回繰り返していた.病理組織学的には小腸の潰瘍部は悪性所見を伴わない穿孔性潰瘍で右外腸骨動脈と瘻孔を形成していた.外腸骨動脈は壁の肥厚を伴い全層性の血管炎の所見を呈していた.以上の所見より,この症例は,腸管ベーチェットと血管ベーチェットが合併したまれな症例と考えられた.
  • 廣本 雅之, 日下部 輝夫, 嘉悦 勉, 津嶋 秀史, 前田 隆志
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2603-2609
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    今回,穿孔性腹膜炎をきたした原発性小腸悪性リンパ腫のまれな1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は61歳,男性.約1ヵ月前より腹痛と腹部膨満を訴え例は61歳,男性.約1ヵ月前より腹痛と腹部膨満を訴え当院受診,入院となった入院後,上部および下部の消化管造影・内視鏡を行うも異常はみられなかった.経過中突然腹痛強度となり,腹部は板状硬を呈し,白血球数11,400/mm3と上昇,胸部X線にて横隔膜下にfree airを認めたため,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.開腹するで緊急手術を行った.開腹すると,回盲弁より約30cm口側に弾性硬の腫瘍と穿孔を認めたため,約50cmの回腸を切除した.腫瘍は長さ約10cmにおよび全周性の狭窄を呈しており,病理組織学的には悪性リンパ腫(diffuse, large cell type)の像であった.
    原発性小腸悪性リンパ腫の穿孔例は本邦においては過去66例の報告をみるのみであり,まれと考えられたので報告した.
  • 桑原 義之, 片岡 誠, 榊原 堅式, 渡会 長生, 林 聰一, 春日井 貴雄, 辻 秀樹, 谷脇 聡, 正岡 昭
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2610-2614
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は稀な疾患であるが,その多くは虫垂炎症状,腹部腫瘤として発症すると報告されている.最近われわれは,鼡径ヘルニァ嵌頓様症状で発症した虫垂癌の1例を経験したので報告する.
    症例は81歳女性で,右鼡径部有痛性腫張を主訴に来院,右鼡径ヘルニア嵌頓を疑い手術施行した.ヘルニア内には虫垂原発の径約2cm大の腫瘍を認めた.腫瘍より先端の虫垂は強い炎症により壊死し,膿瘍を形成していた.ヘルニアにて発症した虫垂癌は,本邦には報告例がなく,欧米でも4例を数えるのみで,極めて稀と思われる.
  • 小島 靖彦, 中川原 儀三, 岩堀 嘉和, 勝田 省吾, 渡辺 騏七郎
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2615-2619
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    初回手術後に局所に再々発,および再発をみている大腸単純性潰瘍の各1症例を経験したので報告する.
    症例1は47歳,男性で10年前に回盲部潰瘍で回盲部切除を受けた.その4年後,吻合症例1は47歳,男性で10年前に回盲部潰瘍で回盲部切除を受けた.その4年後,吻合が再発した.
    症例2は55歳,女性で8年前に盲腸潰瘍で結腸右半切除を受けた.その6年後に吻合部に潰瘍が再発した.
    2症例の切除標本所見では,いずれの潰瘍も,いわゆる“打ち抜き状”で,病理組織所見では非特異性炎症病変を呈し,単純性潰瘍と診断された.2症例とも再発がみられていることから,特に腸管型Behcet病との鑑別が必要となるが,現時点ではBehcet病の診断基準に合致する所見はみられていない.病理組織所見のみでは鑑別は困難であり,注意深い経過観察が必要であろう.
  • 勝木 茂美, 田沢 賢次, 笠木 徳三, 島田 一郎, 安斎 裕, 坂本 隆, 藤巻 雅夫, 若木 邦彦
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2620-2626
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    72歳,男性,4年前に脳梗塞で右半身片麻痺となり,尿失禁,便秘が出現.慢性便秘を主訴として来院し,巨大結腸症の診断で結腸左半切除術および自己腸管平滑筋移植を付加した人工肛門造設術を行い,経過良好であった症例を報告する.切除標本では粘膜面にpseudomelanosis coliを認めたが,器質的狭窄を認めず.拡張していたS状結腸の組織像では,神経叢の数の減少や萎縮像,神経細胞の空胞化を認め,筋層の肥厚を伴っていた.
    特発性巨大結腸症は比較的稀な疾患で,過去10年間の本邦報告例は30例である.本症例では脳梗塞の既往があり,腸管壁在神経叢の数の減少や変性像は脳梗塞によるdenervationの可能性を示唆する.しかし,直腸側に器質的病変のないこと,直腸生検でacetylcholine esterase染色が陰性であることから成人型巨大結腸症も否定できないと思われる.神経学的側面も含め今後さらに多くの症例を積み重ね検討する必要があると思われる.
  • 宗本 義則, 川浦 幸光, 佐々木 正寿, 大村 健二, 山脇 優, 村上 望, 関戸 伸明, 岩 喬
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2627-2630
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1970年から1985年の間に当科で経験した大腸癌286例中まれな組織型を有した症例を5例経験した.症例1は34歳男性で直腸の未分化癌,Milesの手術後3ヵ月で肺,肝転移を認め死亡した.症例2は62歳男性で直腸の未分化癌,手術後9ヵ月で再発死亡した.症例3は63歳男性で回盲部癌を発見され回盲部切除がなされた.組織は未分化癌であった.予後は8ヵ月であった.症例4は60歳女性,癌性腹膜炎で入院,生検組織で上行結腸の腺扁平上皮癌であり3ヵ月で死亡した.症例5は61歳女性,直腸の悪性黒色腫の診断のもとでMilesの手術が施行された.予後は6ヵ月であった.
    5症例とも予後不良であり,有効な化学療法はなかった.
  • 三沢 正男, 村瀬 正治, 赤座 薫, 堀尾 静, 松崎 正明, 佐久間 温巳, 大久保 文雄, 吉川 厚重
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2631-2634
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    進行性の下部直腸癌に対して,腹会陰式直腸切断術や骨盤内臓器全摘術を施行した際,稀に会陰部の難治性瘻孔を形成することがある.一旦瘻孔形成に至ると,その治療には相当の日数を要し,患者の負担は著しい.このような瘻孔には掻爬だけでは治癒が期待相当の日数を要し,患者の負担は著しい.このような瘻孔には掻爬だけでは治癒が期待術後に難治性会陰瘻孔を形成した2例に対して,大腿の薄筋を充填する筋弁形成術にて治癒期間の著明な短縮をみた.しかも,薄筋の利用は組織の移動性も十分で,術後の機能障害も問題とならないので,利用されるべき方法と思われる.
  • 症例報告および本邦報告例の検討
    北川 喜己, 長谷川 洋, 秋田 昌利, 太田 章比古, 吉田 英人, 平松 和洋, 川辺 博
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2635-2639
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝右葉にみられた副肝の1例を経験したので報告する.
    症例は31歳男性,開腹手術時に偶然肝右葉S6と索状物のみによって連絡する1.2×0.8×0.3cmの副肝を認め,これを切除した.病理組織学的には,索状の茎の部分に,胆管,門脈および動脈枝が認められ,副肝の発生学的見地からも興味ある症例と思われた.副肝の実質部分にグリソン鞘は認められるものの,はっきりとした小葉構造は呈していなかった.
    副肝はまれな肝臓の奇形であり,本邦では1904年の田崎の報告以来48例の報告があるに過ぎない.集計しえた症例をもとに副肝の年齢,性別,診断端緒及び病理組織学的所見につき検討し若干の文献的考察を行った.
  • 大川 淳, 山崎 元, 山崎 芳郎, 本多 正治, 籾山 卓哉, 三木 康彰, 森口 聡, 李 鐘甲, 清家 洋二, 桑田 圭司, 松田 裕 ...
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2640-2644
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    肝嚢胞腺癌の1治験例を報告する.症例は25歳,女性.肝腫大を主訴として入院.理学所見上,右季肋下に肝を3横指触知した.血液生化学的には,正常肝機能であった.腫瘍マーカーではCEA 1.0ng/ml, AFP 2ng/mlと正常であったが,CA19-9が1,000U/mlと高値を示した.腹部超音波,CTにて肝右葉に隔壁を有する直径17cmの巨大嚢胞と嚢胞壁の一部に充実性の隆起性病変を認めた.腹部血管造影にて嚢胞周囲血管の圧排と腫瘍濃染像を認めた.超音波ガイド下に嚢胞穿刺を行い内容液の分析を行った.細胞診はClass IIであったが,CEA 4,470ng/ml, CA19-9 10,000U/ml以上と高値を示し肝嚢胞腺癌を疑い肝右3区域切除術を施行した.病理組織学的に肝嚢胞腺癌と診断された.また酵素抗体法による特殊染色にて腫瘍部分は,CEA及びCA19-9が染まり,腫瘍部分の抽出液のCEA及びCA19-9は正常肝組織に比べ高値を示した.術前嚢胞穿刺の意義について本邦報告例と共に検討を加える.
  • 竹中 能文, 島村 善行, 岡島 一雄, 遠藤 善裕, 北井 祥三, 石井 正則, 北谷 知己, 松山 智治
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2645-2650
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌は発見時既に根治手術不能で,その治療に難渋する例が多い.51歳男性例で,左第9肋骨の転移で発見され,同部に放射線を照射した後,,原発巣を切除し,更に術後転移を生じた仙腸開節部にも放射線照射を行い,術後肝動脈塞栓療法・OK-432免疫療法を併用したところ,術後4年4ヵ月を経過した現在,就業可能な症例を経験した.AFP値も入院時51,000ng/mlであったが,4年4ヵ月後の現在0.1ng/mlで落ち着いている.文献的には骨転移を認めた報告102例中2年以上生存例は,8例で,内3例は放射線照射を併用していた.骨転移を認めると治療が消極的になりがちであるが,本例の如く集学的治療によって治癒の期待される症例もあり,積極的治療を検討すべきであると考える.
  • 泉 俊昌, 沈 重博, 喜田 晃, 阿部 哲夫, 石山 暁, 林 敬一
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2651-2655
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は3年前に胆石症の診断をうけていた56歳の男性.大量下血と上腹部激痛にて発症し,計4回の下血・ショックを繰り返した.当初,大腸内視鏡にて横行結腸にBorrmann3型様病変がみられたため結腸が出血源と思われた.しかし経過中pneumobiliaが出現し内胆汁瘻の存在が示唆され,ERCPにて胆嚢を介し結腸が造影されたため胆嚢結腸瘻と診断,手術により確認された.
    消化管大量出血の原因として,胆道出血は比較的少なく,その大部分は吐血を中心と統的検索を行い,著変が見られない場合胆道出血を念頭に置くべきである.
  • 齋木 功, 脇坂 好孝, 加賀谷 秀夫, 橋本 博, 檜山 繁美, 富沢 磨須美
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2656-2660
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胆石イレウスは胆石症の合併症としては比較的まれな疾患であり,術前診断は困難とされている.最近,術前に本症と診断しえた1例を経験したので報告した.
    症例は66歳の男性.突然の上腹部痛と嘔吐を主訴に来院した.イレウスの診断で入院後,腹部単純X線写真,経口バリウム造影,追跡造影,腹部CT像などで,Niveau像の増強,移動する腸管内結石像,胆嚢内ガス像,胆嚢十二指腸瘻の所見をえた.胆石イレウスの診断で開腹すると,回盲弁直前の回腸末端に5×3×3cmの嵌頓結石を認め,腸切開で摘出した.同時に胆嚢摘除,瘻孔切除,十二指腸瘻縫合閉鎖術を施行した.術後経過は良好であった.
    近年,本症の報告が増えており,イレウス患者では本症も念頭におき積極的に診断し,腸管系のみならず胆道系に対しても処置すべきと考える.
  • 加藤 雅通, 大村 豊, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 岸本 秀雄, 小川 弘俊, 大谷 享, 織田 誠, 坂本 英至
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2661-2665
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性.左季肋部痛を主訴に来院.脾嚢胞の診断にて,脾摘術を施行.嚢胞内面は多数の肉柱様構造から成り病理組織学的に重層扁平上皮を認めるとともに,扁平上皮を内膜に有する数個のmicrocystを認め,類表皮嚢胞と診断した.類表皮嚢胞は上皮細胞を有し真性嚢胞に分類され,極めてまれとされている.その発生については胎生期の他組織の迷入が想定されているが,いまだ定説をみるにはいたっていない.今回妊娠5週の女性に発見された類表皮嚢胞の1例を報告するとともに,本邦報告46例について文献的考察を行った.
  • 小寺 泰弘, 末永 裕之, 鈴木 祐一, 鳥井 彰人, 禰宜田 政隆, 谷口 健次, 稲垣 均, 竹下 洋基, 余語 弘
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2666-2670
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    子宮内膜癌の根治術後5年を経て診断された重量1,000mgに及ぶ巨大な転移性脾腫瘍の1例を経験したので報告する.
    症例は42歳女性で,左側腹部痛を主訴として来院し,腹部超音波検査,Computerized Tomography,血管造影等により,脾腫瘍と診断された.肝に小転移巣があり,脾摘,肝部分切除術を施行した.病理学的には腺癌であり,子宮内膜癌の転移と考えられた.補助化学療法を施行し,術後2年半を経過した現在再発の徴候なく健在である.
    脾臓に悪性腫瘍の転移がある場合,他臓器にも転移を認めることが多く,脾摘の適応となるのはまれである.しかし,切除し得た場合,本症例のごとく比較的長期生存を期待できる場合があり,孤立性脾臓転移の切除例もすべて報告の時点では生存していることからも,手術の適応があれば,積極的にこれを行うことが望ましいと思われる.
  • 篠原 靖志, 竜 崇正, 渡辺 一男, 藤田 昌宏, 本田 一郎, 渡辺 敏, 坂本 薫, 川上 義弘, 竹内 修, 菅 三知雄
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2671-2675
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性.上腹部痛,下痢を訴え近医を受診.その際施行した超音波検査で肝下面の腫瘤を指摘され精査,治療目的にて当センター入院となった.入院後施行した超音波検査では肝右葉後区域に直径4cmの円形のhyper echoic massが認められた.腹部plain CTでは主腫瘍はCT値-35HUのlow density massとして描出され,enhanced CTにてほとんどenhancementを認めなかった,脂肪成分の多い肝腫瘍,特に脂肪変性を伴った肝癌を疑い根治術の予定となったが,手術前日急激な血圧の下降とショック状態を呈した.諸治療によって全身状態の改善をはかり翌日待期的に肝後区域切除術を施行した.手術により肝右葉下面にはまりこむ大きさ4.5×4.5×3cmの腫瘍が確認され,病理組織学的に副腎骨髄脂肪腫と診断された.肝内に陥入するような発育形式をとった為,術前に肝腫瘍との鑑別が困難であったものである.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 堀内 大太郎, 田中 良典, 高井 計弘
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2676-2679
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    前立腺癌のマーカーとしての,血中酸性フォスファターゼの感受性と特異性の高さは衆知の事実である.しかし,これらのマーカーでさえ,稀には偽陽性を示す症例がある.
    62歳の男性が2年間続く残尿感を訴えて,当科を受診した.触診所見,DIP,尿道造影および超音波走査は総て良性前立腺肥大症の所見を示したが,前立腺癌のマーカーである,血中の酵素測定法による総酸性フォスファターゼ(ACP),前立腺性ACP及びラジオイムノアッセイ法による前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)の3酵素は異常高値を呈した.術前の針生検と摘出した前立腺の組織学的診断でも良性前立腺肥大症であった.
    ACPとPAPとを同時に測定した252例の報告を引用して,前立腺肥大症における酸性フォスファターゼの偽陽性発現について若干の考察を加える.
  • 竹内 護, 鈴木 豊, 衣川 義隆
    1989 年 50 巻 12 号 p. 2680-2686
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.主訴は発熱,腹痛.ショック状態で入院し,腹部超音波検査腹部CT検査で腹腔内出血を認めた.待機的手術を施行し,横行結腸間膜に手拳大の血腫を認めた.病理組織学的に結腸辺縁動脈の破綻と壊死性血管全層炎を認め,結節性動脈周囲炎と判明した.結節性動脈周囲炎は多彩な臨床症状を呈し,消化器症状も多くみられるが,本例のように腹腔内出血を呈した例は,現在まで本邦報告例はない.
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