十二指腸潰瘍に対するSPVの信頼性を調査するために, 1973年以来症例を選別することなくほぼ全例にSPVを施行し,臨床成績,胃内外分泌,胃排出機能の面から検討した. SPV 86例中43例に誘導術を付加した.
手術死亡,遠隔時死亡は1例もなかった.術中食道穿孔,脾出血を各1例経験した.アカラジア様症状の発生率は,腹部食道の脱神経範囲の拡大により22%から65%に上昇した.ダンピング症状,下痢の発生率は,ともに10%で治療を要したものは1%であった.胃内容停滞で再手術を要したものは1例もなかった.十二指腸潰瘍の再発は,疑診を除くと1例のみであったが, 3例に胃潰瘍の発生をみた.
減酸率は,経時的に低下して2年後BAOで平均50%, PAO (TG)で平均27%, PAO (RI)で平均51%であった. Johnston's criteriasでearly positive症例の出現率は,脱神経範囲の拡大により44%から28%に減少した.空腹時血清ガストリン値は,術後上昇して6か月後最高となり,以後高値を維持した. IGR (TM)は,術後亢進して3か月後最大となり,以後高反応を維持した. IGR (RI)は術2週後高反応はみられず3か月後最大となり,以後高反応を維持した.
流動物の胃排出は, SPVsDでは術2週後多少遅延したが, 3か月後術前に回復した. SPVcDでは術2週後から改善された.固形物の胃排出は, SPVsDでは術2年後でも遅延していた. SPVcDでは術2週後から改善された.
術前のPAO (RI), IGR (RI)がともに高値を示した症例の50%が,術後減酸効果不十分であるにもかかわらず高ガストリン反応を示し, SPVの適応外の症例と考えられた.
SPVは,十二指腸潰瘍に対する新しい術式として一応目的を達したが,今後,手術術式の確立,適応に関してさらに研究を進め,一層の成果を期したい.
抄録全体を表示