整備新幹線建設や地方空港開港等,国内旅客幹線交通の基盤整備は着々と進捗している.規制緩和に関する法的整備も行われ,幹線交通の量的及び質的向上を図る環境は充実している.各機関のサービスが活発化する反面,一部路線で新幹線と航空が激しいシェア争いを演じる競合時代へ突入した.将来には互いの長短を補完しつつ融合し,総合交通体系の最適化を画策することが理想である.本稿では,距離帯が広域に渡る幹線旅客の有する時間価値の分散というモデルパラメータ推定上の問題を念頭に置き,全国機関選択モデルの構築を試みる.このため,実証的研究が望まれている Mixed Logit モデルを適用し,感度分析を通じて幹線交通の将来像について考察する.
国内の地域によって,海外観光旅行需要の発生パターンは大きく異なる.この地域格差は,従来より所得水準の差などによるものとされてきた.しかし,実際には,所得格差の数倍の格差が生じている.その格差の発生状況は,個人属性セグメントごとに大きく異なる.本研究では,それらの格差構造パターンを定量的に示すことを試みた.さらに,この状況を海外旅行の普及がS字の成長曲線に従うと仮定し,その普及速度と時期が地域によって異なることを定量的に示した.それらを踏えて地域格差を生じさせているメカニズムを解明することを試みた.また地域別海外旅行発生-目的地選択の統合型モデルを構築し,わが国の地域別海外観光旅行需要の将来動向を試算した.最後に,以上の分析結果を踏まえ,国際空港整備計画のあり方について若干の考察を加えた.
港湾計画や船舶の運航形態等の分析に用いる国際海上貨物流動統計は,その特性や精度が示されている必要がある.本研究は,重量とTEUベースで国・地域間の海上貨物流動量を示す統計を対象とし,その現状を示すことを目的とする.国際海上貨物流動量は,荷主や船社の輸送量から直接把握されるのに加え,金額ベースの貿易統計を用いた推計から把握される.そのため,最初に,国連統計局の既存研究である貿易統計から重量ベースの国際海上貨物流動量を推計する手法を検討する.次に,アメリカ,EU,アジア地域の重量とTEUベースの国際海上貨物流動統計の現状を示す.特にアジア地域においては,既存の統計を比較し,その特性と精度を示す.
これからの社会資本整備は行政と市民との協働作業により進められる必要があるといわれている.ではその過程で生じる行政と市民,あるいは市民間の利害対立はいかに調整すればよいのであろうか.本稿は,社会資本整備における計画策定段階での市民参加について,これまで土木・都市計画分野であまり紹介されていない利害調整手法と組織について紹介する.
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