本稿では,第一に羽田空港利用実態調査を実施することで,従来把握できなかった行動特性や利用者意向を把握した.特に各交通手段に関する利用者意向については,鉄道利用に関しては定時性が大きな要因となっており,バス・自動車に関しては乗換や混雑などの移動抵抗に対する敬遠が大きく影響していることが把握できた.第二に実態調査で得られたデータを活用し,利用者の行動特性やニーズを反映した精緻なモデルを構築した.第三に構築したモデルを用い,空港アクセス輸送サービス改善施策実施の効果について定量的に把握するとともに,輸送サービス以外の定量的に把握できない改善施策およびその効果について総合的に整理した.
高齢化の進展,地球環境問題,都市再生等,近年,わが国が抱える主要な問題に対し,歩行者交通は大きな役割を担っている.これまでの歩行者空間整備は,供給者側の視点が重視されてきたが,先に述べたわが国の主要な問題に対処していくためには,需要者である歩行者側の視点も踏まえることが必要であることは論を俟たない.そのため,歩行者行動を観測し,データを取得する必要性はこれまで以上に高まっている.本研究では,ターミナル駅構内で実施した旅客行動追跡調査を例に,歩行者行動の連続観測と歩行者属性に関する多くの情報を取得する追跡調査の有用性について言及する.
米国においてアセットマネジメントシステム(AMS)は発展してきているが,AMSの導入に際していくつかの障害が指摘されている.本報告は,AMSの一つの要素である舗装マネジメントシステムの導入事例に焦点を当て,AMS導入を成功へ導く要因を明らかにすることを目的とする.はじめに導入過程,導入障害の解決に必要なリソース及びストラテジー,AMS導入によりもたらされる利益を海外事例より把握する.そして米国における事例を取りまとめ,海外事例と比較し,米国における導入を成功に導くための要因を捉える.最後に,導入を成功させるための方向性を検討し,障害に対応するための将来における必要性を提示する.