2010年の羽田空港の再国際化により,2014年以降の羽田空港国際線発着枠は年間9万回に拡大する.一方,成田空港においても発着能力を年間30万回まで段階的に拡大される予定であり,首都圏の空港容量は今後増加する.本研究では,成田空港における国内線拡充・国際線多頻度運航が地方空港からの内際乗継旅客および関東甲信地方の旅客の利便性向上に与える影響を検討し,利便性向上に寄与する成田空港新規発着枠の利用方法を検討した.また,将来の首都圏空港の運用シナリオを想定し,成田空港で国際線多頻度運航を行っても発着枠には余裕があり,国内線拡充は十分に可能であることを示した上で,運用シナリオによって成田空港の国際線拡充が利用者便益に与える影響を分析した.
本稿は,2006年から2009年までの米国航空産業のデータ(サンプル数18,779)を用いて,2008年に行われたデルタ航空とノースウエスト航空の合併が航空会社の運賃に及ぼす影響について分析するものである.分析手法として,需要関数と疑似供給関数の同時推定を行っている.分析の結果,デルタ航空もしくはノースウエスト航空の運航しているいくつかの路線において航空会社の運賃は合併により低水準になることを示した.この結果はLCCからの競争圧力により生じた可能性がある.
港湾を取り巻く環境はサプライチェーン・マネジメントの本格化により構造的に変化し,海陸輸送の結節機能に主眼を置く伝統的な港湾経営は多くの限界に直面している.本研究は,こうした問題点を分析し,新時代の港湾経営がロジスティクス・システムの拠点形成へと脱皮すべきことを提示したうえで,その基本的な戦略と経営組織が満たすべき要件を考察した.とくに新しい港湾経営の有力な組織形態として公企業化に着目し,欧州の港湾の実態調査を行い,意思決定や財務運営の自立性さらに事業の多角性などを総合的に評価し,公企業化の戦略的意義を確認するとともに課題を抽出した.さらに我が国の港湾政策への示唆をまとめた.
相互直通運転が行われ,遅延が発生しやすい路線環境にある東急田園都市線と東京地下鉄半蔵門線を対象に,遅延の連鎖のメカニズムを分析し,列車ごとの遅延時間をマルチエージェントモデルで再現し,遅延対策効果を予測する技術を開発した.中核となる駅間走行時間推計モデルと乗降時間推計モデルの2つのサブモデルの現況再現性は良好な結果を得ることができた.サブモデルを統合したモデルの再現精度は,再乗車旅客の行動の再現に未だ課題があるものの一定の精度は得られたものと考える.またいくつか遅延対策の効果を予測した結果,示唆的な情報を得ることができた.
本論文は,アジア地域を対象とした国際旅行流動についてUNWTO データを用いて分析をしたものである.はじめにアジア諸国における居住国・国籍による国外旅行OD データの整備を行い,国外旅行者数の特性を明らかにしている.さらに,到着国・地域の相対的魅力度と2地域間の交通抵抗を考慮したハフモデルによって流動量が表現可能と仮定し,目的地選択率実績値と推定値との誤差二乗和最小化によって国ごとの相対的魅力度を推定した.推定された相対的魅力度による国・地域間の相対的な大小関係,トレンドの把握に加え,経済危機による事象と相対的魅力度との関係性把握,到着国・地域のポジショニングを明らかにできた.
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