大手民鉄の大都市の路線に対する外資ファンドの廃止要求が株式の公開買付けに際して明らかになり,外為法の規制の適用,個別法への外資規制の導入,事業廃止規制の復活が要望されている.対象の5線のうち4線は輸送密度が8千人を超えているが,5線すべてが赤字と推定される.この問題は鉄道業の収支構造からみて他の大手民鉄にも可能性があり,大部分の大手民鉄には買収防衛策があるが機能しないこともありうる.しかし外為法の適用は容易でなく,外資規制の導入は前提条件に欠ける.鉄道特性のある路線の廃止の申請は,鉄道事業法が想定していなかったことであるので,事業廃止の部分認可制の創設又は事業改善命令の活用が必要である.
本稿は,一般貨物自動車運送事業における取引階層(下請運送)が事故発生に影響することを定量的に示すことを目的とする.まず,一般貨物自動車運送事業において下請が多重化する実情と,「取引階層(下請運送)」が交通事故の人的要因に影響する可能性を論じた上で,過去の事故情報を統計的に分析し,取引階層の違いが事故発生に寄与する要因のひとつであることを定量的に示す.また,本分析から貨物自動車運送事業で普及が進む「Gマーク(安全性優良事業所認証)」取得が死亡事故削減に寄与する可能性があることを示す.