本研究では,全国の詳細な地域分割に基づく交通データ及び需要予測モデルを構築する.これを用いて,現在の国土構造・交通体系のもとで効果的なCO2排出削減を推進するための地域別削減割当てについて検討する.モデル分析では,自動車燃料課税の強化を想定して,CO2削減効果を地域別に計測し,さらにその結果が全国の排出削減の総費用最小化を達成するという性質に着目して,経済効率的な地域別CO2削減割当てを決定する一つの考え方を提示する.本分析の設定条件のもとでは,課税による1人あたりCO2削減量は,都市部よりも地方部で大きくなるが,削減率でみると都市部の方が若干大きくなることが示された.
乗合バス事業において,バスターミナルやバス停留所は事業に不可欠なインフラであり,新規参入者が既存のバスターミナル・停留所を利用することが難しい場合,しばしば参入障壁を形成する.英国では従前より,既存事業者と新規参入者の双方が平等にバスターミナル・停留所を利用できる仕組み(イコール・アクセス)が制定されており,近年,域内バスについてイコール・アクセスのいっそうの徹底が図られたところである.本稿では,英国のバスターミナル・停留所の利用にかかわる制度と実態をレビューし,バスターミナル・停留所へのイコール・アクセスの担保が乗合バスの競争施策にもたらす効果について考察する.
大手民鉄・JR・地下鉄では,認可運賃の基礎となる総括原価の算出において,一部にヤードスティック方式を用いており,特に各鉄道事業者のデータを用いた重回帰分析によるコスト算出を特徴としている.本研究は,大手民鉄を対象とした重回帰モデルについて,経済学的,統計学的な信頼性の検証を行ったが,1997 年の適用開始から15 年を経た現行モデルは,パラメータの符号,有意性に関していくつかの問題を抱えており,見直しの必要性があることが分かった.一方で,近年,関東と関西(関東以外)の大手民鉄における経営環境の違いが指摘されるが,重回帰分析において明確な地域差は見られなかった.